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274話 決起集会みたいなの?

少し長いです

 大会で優勝したので依頼かんりょー、さっさと国に帰りましょー……ってならないのがほんと面倒。

 むしろここからスタートって感じなのがナントモカントモ。


『マスター?』

「あーごめん、なんだっけ?」

『心ここにあらずって感じですね。えーっと、式典があと1時間くらいで始まるそうなので、それまでは会場で待機してないとダメなんだそうです』

「外に出ちゃダメなのかぁ。あまりこういう場に居たくないんだけどなぁ」


 予想はしていたけど、大会の優秀者を集めての式典みたいなのがやっぱりあった。当然わたしもルミィも強制参加だったので指示された会場に来たわけだけど、めんどいなぁ。決勝戦からすぐ開催でなく、翌日に開催だったからマシと言えばマシだけど。

 しっかし〝ドレスなどの正装を着てこい〟という指示付きだったのがなぁ。ドレスは好きだけど命令されるのは大っ嫌い。しかも好きになれないこの国の奴からとか、本当に嫌。


 でもまぁ


「ルミィのドレス姿を堪能できるから良いと言えば良いか」

『私はすごく恥ずかしのですけど……』

「でもほら、お母様とシズクさんが選んだだけあり、人を惹きつける感じがしていいと思うよ?」


 少し恥ずかしそうにしてるけど、着慣れてないからってのもありそうね。

 ルミィが着ているのは、肩出しでちょっとエロカッコいい感じの黒いパーティドレス。スカートは2段になっており、片方が透ける素材を使っているのがエロさを更に上げてる一品。ほんと素晴らしいです!


『分かってはいるのですけど、このような格好初めてですから』

「そこは何事も経験だよ! それにほら、同じ格好をわたしがしてもそうはならないから、自慢しても良いと思うよ」

『そうなんでしょうか? マスターなら何でも合いそうな気がしますよ。今のドレスもすごく可愛いですし。確か〝ゴスロリ〟って言うんでしたっけ?』

「そそ。わたしって身長無いのもあってか、リボンとかフリルが沢山付いたドレスがよく似合うのだ!」


 今日のドレスは白と薄桃を基調とし、リボンとフリルが本当にいっぱい付いてる物。お母様とシズクさんがさんざん悩んだ挙句、ようやく決まった一品です。

 二人とも、わたしを着飾るのが大好きすぎるからなぁ。着飾られるわたし自身も好きだけど!


「それにしても、ミツキが関係者みたいな感じに連れていかれるとはねぇ」

『勇者パーティの要となるからですね。ミツキさん、すっごく嫌そうな顔してましたけど』

「のんびりわたし達と食事して終わりってのを期待してたからねぇ。まぁ拘束時間はそんなに長くないって言われたから、しぶしぶ承諾したみたいだけど」


 迎えに来た執事っぽい人が「挨拶と説明の際、傍に居て貰うだけでいいですから。何も仰られなくて大丈夫ですから」って、えらい必死な感じに説得してたな。

 それだけミツキ、というより聖女という存在が、この国にとって重要なんだろうね。

 とはいえ、ほぼほぼ転生者限定で勝手に付与される〝職業〟って能力に対し、そこまで崇拝するのはどうかな? とは思うけど。職業よりも実力、もしくは実績の方が重要だと思うのになぁ。





 しばしルミィと二人で会場にあった料理を食べまわってるけど、ちょっと面倒ね。

 ある程度は予想してたけど、行く先々でわたし達、というか主にわたしに対して変なちょっかい掛けてくるのが居るわ。

 優勝しちゃったのもあり、大部分は勧誘とか求婚やら息子紹介というくだらないものだけど、一部は敵視してくるんだよね。人寄りの獣人が一番になったのがそんなに納得いかないんですかねぇって感じだけど。


 そんな面倒な状態がしばし続いた後、ようやく始まったようね。いかにも偉い人! って感じのオッサンが、甲冑に近い装備を着た兵士と一緒に入り口から入ってきたわ。

 そしてその後ろを、勇者パーティって言われてる奴らがゾロゾロと。こっちは武装ではなく、礼服の様なものを着てちょっとおめかししてるね。


 その中に一人、むすーっとちょっと不機嫌な顔をしている女の子、ミツキも居たわ。

 う~む、何かされた感じはないけど、ずいぶんおかんむり状態になってるなぁ。何か言われたのかしら?

 とりあえず手を振って~っと……うん、気付いたようで表情がニコっとするだけでなく、こっちに来ようとしたけど止められちゃったね。


「ミツキの気持ちも分かるなぁ。知らない奴に囲われてたら、つい逃げたくなるのもしょうがないわ」

『誰かが傍に居れば大丈夫な気もしますね』

「いきなりでなければ小精霊の子をつけたんだけどね。とはいえ、もしもミツキに変な事を吹き込むとか、嫌な思いをさせる事をしだしたら、こっちもそれ相応の対応をするだけなんだけど」


 腕を組んでちょっとニヤニヤ。おっとルミィさん、その怪しいって感じの目は止めてください。確かに企んでるけど!

 な~に、もともとミツキを勇者パーティと一緒に行動させる予定はないからね。その為にあんなツマンナイ大会に出たわけだし。

 それにお母様からもいざってときは無茶して良いって許可貰ってるからね! なので……ムフフ。だからルミィさんや、そんなジト目しないでよ、てれるわ。





 やってきた偉そうな人たちが部屋の中央に集結するや否や、なんかいろいろと語りだしたわ。

 といっても、大会の内容を称賛する世辞とか、これで魔王を討伐できる決意表明やらと、正直つまらない演説。こういうの興味ないんだよなぁ。


「――故に! 我らは魔王共に対し、反撃を開始する! 異形なモノ共から、人の世を取り戻そうではないか!」


 そう声高々に手も掲げながら叫ぶと、他の人達もワーって感じに歓声を上げたわ。なんか悲願達成に向けてって感じだけど、そんな大ごとになってるのか。

 しっかし


「ねぇルミィ、魔王って複数居るの?」

『ですです。確か10体は居たはずですけど、実際はもっと多いのかも。ちなみにですが、それぞれの魔王には支配領域があります。そのため呼称も、例えば森に住んでいる魔王でしたら〝森の魔王〟なんて言われたりしますよ』

「土地名称とかが呼称になってるってわけね。しっかし最低でも10体って事かぁ」

『この付近にも2体居るそうですよ。おそらく、今回はその討伐なんじゃないかなと』

「なるほどねぇ」


 ルミィの説明を聞きながら少し真面目に勇者パーティの方を見たけど、そこまで強そうじゃないな。まぁわたし基準なだけで、こっちの国基準だと強いんだとは思うけど。

 だけど、こいつらが戦える程度って事ならば、わたし一人でも十分殲滅できる相手って見てもよさそうね。なら大丈夫かな。


『少し悪い顔してませんか?』

「おっといかんいかん。また顔に出ちゃったわ」

『マスター!?』


 そう言ってルミィの頬をフニフニ。なるほどなるほど、アリサ達とは違うけどルミィの感触も良いですなぁ。

 まぁやり過ぎると怒られそうだから、驚いてる状態が終わる前にやめておきましょう……フニフニ。





 そんな事をしていたら、今度は勇者たちの紹介みたいなのが始まったわ。

 その中でもミツキの紹介の際、オッサンが「伝説の聖女の生まれ変わりと言っても過言ではない!」なんて言いやがったので、会場がすっごい盛り上がった。

 コレってあれかな? わたしのミツキに対するいじめって事かな?


『マスター落ち着いてください!』

「でもね」

『お気持ちは察しましたけど、その、この場で争ったらダメです! それに、マスターが捕まってしまいます!』

「むぅ、それはそれで困るわ」


 ルミィがわたしの手を両手で掴んで説得してきたけど、うん、無意識に殺気放ちながら殴りに行きそうだったのね。

 やれやれ、我ながらこういう事に関してはいつまで経っても歯止めが効かない困ったちゃんで、ほんとまいっちゃうね。


『それに、討伐する魔王の発表がそろそろですよ』

「討伐ねぇ。人数からして、1体だけでなく複数相手にするって感じなのかな」

『だと思いますよ。それに大会優秀者を数多く集めたことから、1パーティの人数も多くなりそうです』

「ぽいねぇ。勇者っぽい奴に対し会場に居る大会参加者の数を単純に割り振ると、1パーティ当たり20人くらいか。ちょっとした小隊規模って感じだなぁ」


 会場には本戦通過者だけでなく、予選で目立ったような奴も招かれてるっぽいからね。それが戦力になるのかは置いとくけど。


「――そして栄えある勇者パーティには、〝雪風〟〝泥土〟〝天光〟〝宵闇〟の魔王4体の討伐を依頼する!」


 少し冷めているわたしとは対照的に、オッサンがむさくるしい感じに討伐対象を発表したけど、4体か。

 その数が多いからなのか、それとも別の要因があるのか、会場全体がざわめきだしたわ。


「数が多いから、なのかな?」

『え、えっと、先程魔王が何体も居るって言いましたよね。その魔王の中で、ちょっと強すぎる魔王が何体か居るんです』

「へぇ、そうなんだ。でも強すぎるって事は、攻められたら終わりなんじゃないの?」

『その通りなのですけど、そういった魔王はこちらを敵として見ていないのか、攻めてこないで領地に引き籠ったままなのです。なのでこちらからも挑まず、距離を置こうとしているはずなのですが……』

「なるほどねぇ。つまりあれは、ミツキを見つけたことで欲が出た愚王ってことか」


 この国は上から腐ってそうな気はしてたけど、案の定腐ってたか。

 しかもこっちは単一国家でしょ? それが腐ってるとか、定番すぎるダメダメ展開でほんと呆れちゃうわ。


『今発表された天光の呼称が付く魔王は、空に浮かんでいる光輝く城に住んでいる魔王です』

「それで天光ね」

『ですです。問題は、城を魔王自身の力で創造し、浮かばせているという事実があるので』

「相当ヤバい力を持ってそうって事か」

『です。そして宵闇の魔王ですが、こちらは宵の森に住んでいる魔王です。ただ……』

「さっきよりも青くなってる感じがするけど、そんなにヤバいの?」

『具体的な説明は出来ませんが、凄く危険……です。ただ、天光と宵闇の魔王は〝魔王からは一度も攻めてない〟存在なので、関わらなければ無害なんです。なのに、どうしてこちらから挑もうするのか……』


 ふ~む、どうやらこの国の王は、愚王の中の愚王って事になるか。

 これはアレかな、欲深すぎて破滅コースまっしぐらになるんじゃないかな? 誰も止めなかったら近いうちに終わりそうだねぇ、この国。


 にしてもルミィの感じから、天光って奴よりも宵闇っていう魔王のがヤバそうね。宵闇の説明の時、ちょっと震えてたから。

 だけど一度も攻めて来てないのに、なんでルミィはそう思うんだろ? ちょっと気になるけど、いったん置いておくか。

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