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269話 本戦ですかー・・・3

 そろそろ開始なのかな? 審判がわたし達を見てきたわ。


「両者、準備は良いですね?」

「いつでもいいドラ!」

「ほーい」

「「……」」


 うん、気の抜けた返事するなですね、分かります。

 でもね、やる気満々になって周囲が見えないのはマズいと思うんだ。気楽に周囲の状況を確認できるくらい余裕を持っておくのは大事なのです。まぁわたしの場合、気を抜きすぎる癖があるけど。





「そ、それでは開始してください!」


 審判が何とか冷静な思考に戻ったようで、右手を振り下ろして開始となった。

 さーてと、サクッとおわら、おや?


「見せてやるドラ、ワレの真の力をドラ!」

「締まんないなぁ、その語尾……」


 本人は真面目なんだろうけど、どうしてもお間抜け感が。見た目からトカゲって印象が強いけど、語尾のせいで〝ドラトカゲ〟っていう謎名称が脳裏に浮かんじゃうくらいだわ。


「竜宝四装、起動ドラァァァァァ!」


 そんなわたしの心情はお構いなしに、頭を天に向けてから竜の咆哮みたいな感じに叫ぶと、ドラトカゲの頭上に武器が4個出現したわ。ふーむ、術装と違って詠唱の必要が無い特殊装備って事か。

 現れたのは〝剣〟〝槌〟〝杖〟〝鞭〟の4種だね。どれも竜の角みたいな持ち手に、鱗みたいな外装がついてる物だわ。


『ドラドーラ選手、最初から全力だぁぁぁ!!』

『前試合同様、油断は一切しないという事ですね』

『これはすぐに決まってしまうかぁぁぁ!?』


 なんか司会の人、ずいぶんノリノリだねぇ。とゆーか、わたしの時が摩訶不思議すぎて本領発揮できなかったのかな?

 それはともかくドラトカゲが顕現させた武器の中から杖を手に取ったんだけど、もしかして魔法でも撃ってくるのかしら?


「ドラゴンスタッフ、起動ドラァァァァァ!!」


 杖を強く握ったまま天にかざして叫ぶと、その叫びに杖が反応したのか青白く光りだしたね。まぁ見た目のせいで綺麗というより不気味って感じなんだけど。


『おーっと、これは出るか!? ドラドーラ選手の究極テクニック!』

『どうやら一撃で終わらせるみたいですね』

「フッ、解説されてるように、ワレの全力テクニックを今から撃つドラ! 悪い事は言わないドラ、受け止めようとせず、すぐに場外に逃げると良いドラ。逃げなければ……無事ではいられないドラ!」

「はぁ、なんていうか、ご丁寧にどーも?」


 杖をこっちに向けてそんなこと言ってきたけど、これはアレかなぁ、観客に向けてのパフォーマンスも入ってるのかなぁ。攻撃予告みたいなものなのか、会場もワーッと盛り上がったし。

 ん~、そういうの無視して今すぐドカンと一発殴って終わらせても良いんだけど、それするとブーイングすごそうだなぁ。評判悪すぎるとミツキに同行する者としてふさわしくないって言われる可能性もあるし、大人しく攻撃待ちますか。


「アイスチャァァァァァジ! ドラァァァァァ!」

『最初からチャージテクニックとは……これはユキ選手を普通の人獣とは見ていない証拠ですね』

『ノーマルテクニックではユキ選手に通じない、という判断でしょうか?』

『おそらく。そしてチャージテクニックはノーマルテクニックに対し10倍以上の力を持ちます。そのような力、いくらユキ選手でも直撃したら無事ではいられないかと』


 へぇ、テクニックって〝ノーマル〟と〝チャージ〟があるんだ。なんとなくゲームみたいね。

 ドラトカゲを見た感じ、たぶん〝アイス〟っていうテクニックを溜めて撃つって事なんだろうけど、魔法や術式とは根本的に違うみたいね。

 魔法や術式は詠唱を長くして威力を高めるとか、発動後に魔力を更に流して強化するのはあるけど、発動状態を維持して溜めるって行為は無いからなぁ。ちょっと不思議。


「くらえドラ! チャージリリィィィィィスッ!!」


 チャージが終わったようで、こっちに向けて氷のブレスみたいのを放ってきたわ。範囲はそこそこね。

 ん~、回避しても良いんだけど、せっかくなんで分析させてもらおうかな。


 直撃までは約5秒、余裕を持って展開できるのは術式10個ってとこか。まぁそこまで要らないけど。

 んじゃサクッと術札を2枚取り出して~、結界と分析の術式をサクッと書き込んで~、そのまま術式展開っと。ここまで1秒とかさすがわたし、カンペキ。


 間もなく結界にテクニックがバシーンと当たったけど、うん、びくともしないね。まぁ氷のテクニックだからか、当たった場所から吹雪が発生して視界が悪くなったけど。

 まぁいいや、それじゃ分析っと。

 ふ~む、攻撃事態はマイナス200度のブレスってとこか。構造は魔道具を使って発動する魔法に近いかな?

 ただ、詠唱による効率化を省いてる影響もあるのか、魔力消費が少し多そう。ノーマルとチャージっていう切り替えは興味あるけど、魔力の消費量を考えると微妙かなぁ。


『これは決まったかぁぁぁ!?』

『避ける事ができずに直撃したように見えました。しかし……想像以上の威力です。これではユキ選手も無事かどうか……』

『しかも着弾点からはもの凄い勢いで吹雪が発生しており、誰も近寄れない状態です。このままですと』

『最悪なケースもあり得ます……』


 うん、たしかにドラトカゲのテクニックは10秒も経たずに止まったけど、ブレスっぽい攻撃だけはあるね。残った魔力とかの影響で吹雪は消えずにそのままだわ。

 おまけに外気温がさらに下がったようだし、これだと凍死するとかそういう心配もしちゃうかぁ。


「忠告したのに逃げないとは、愚かドラ」

「ドラドーラ選手、もしもの場合は……」

「分かっているドラ。だがテクニック使いを相手にする場合、殺す気で掛からないとこちらがやられる、ドラ」

「た、たしかに。私も審判を長い事やっていますが、テクニックを使える者同士の試合は悲惨なものが多く――」


 なーんかドラトカゲと審判が終わった事の様に語り合いだすし、それを中継している会場ではドラトカゲを慰めるというか、お前は悪くない的なフォローをしだしてるんだけど。

 先走り過ぎだし、わたし放置しての茶番劇感もすごいし、なんだかねぇ。





 攻撃が止んで1分くらいかな? 吹雪も収まってきたね。

 まぁ途中で解除して反撃してもよかったけど、せっかくなのでテクニックを事細かく分析する時間にしちゃったわ!


『ドラドーラ選手のテクニックによる自然現象もようやく収束してきました! さてユキ選手の安否……はぁぁぁ!?』

『あの短時間にバリアのテクニックを使ったというのですか!?』

『そんなことが!? あっとすみません、無事です! ユキ選手は無事、いえ無傷です!』


 まーた司会と解説の人がわたわたしてるね。

 同時にドラトカゲと審判もあんぐり、会場もざわざわという感じで、超常現象が起きた後みたいな雰囲気。


「そ、そんな馬鹿なドラ! バリアを使う素振りなんて無かったドラ! それにチャージする時間も無かったはずドラ!」

「ん~、まぁヒ・ミ・ツって事で」

「どういう事ドラ!」


 答えなきゃいけない意味って無いからね。なのでつい、口に人差し指を当ててヒミツと言ってしまったわ。我ながらこの仕草、ちょっとあざといです。


「ならば、これならどうドラァァァァァ! フレイムチャァァァァァジ……リリィィィィス!」

『おーっとドラドーラ選手、今度はフレイムのテクニックを炸裂だぁぁぁ!』

『これはもしや……』


 解説が何か気付いたようだけど、アレかなぁ。

 予想があたっているのか、高火力の火属性ブレスみたいな攻撃が結界に当たると、すぐにドラトカゲが構えなおして


「さらにアイスチャァァァァァジ……リリィィィィス! ドラァァァァァ!!!」

『ドラドーラ選手、フレイムとアイスのテクニックを交互に発動したぁぁぁ!』

『やはりそう来ましたか! チャージテクニックに耐えるほどユキ選手のバリアは強固、ですが急激な温度変化を与え続けると』

『疲労破壊ですか!?』


 前世の物語とかによくある定番の奴ですね。たしか固い敵を急激に熱したり冷やしたりしてボロボロにするってやつ。

 まぁガラスじゃないんだから、1.2回繰り返すだけでボロボロになるのは稀だと思うんだけど。


「そしてドラゴンハンマー、起動ドラァァァァァ!!」


 テクニックを撃った後、すぐさま槌に武器を変え大きく振りかぶりながら向かってきたけど、結界にブチ当てる気かしら? 結界の耐久度がボロボロになっていると思ったってとこかな。


『ドラドーラ選手の渾身の一撃、決まるかぁぁぁ!?』

「ドラァァァァァ!!」


 振りかぶった槌が結界に当たり、バッチ―ンってソコソコ大きな音がしたけど、まぁそうよね。


「ドラァァァァァ!?」

『わ、割れていません!? それどころか傷ひとつありません!』

『ユキ選手のバリア、一体どうなっているのですか!? これほどまで強固な物、私も見たことがありません!』


 凄い反応だけど、この程度の打撃でわたしの結界が破れるわけないし、疲労破壊も起こるわけないのです。おまけに打撃だけでなく、法撃や環境に対する防御も相当なのです!


 それはともかく、司会と解説の声で会場がなんかワーッと盛り上がったんだけど、なんで?

 もしかして、この打撃に耐えられる人って皆無だったとか? この程度の攻撃って思うけど、比較対象ってわたしの身内ばかりだから参考にならないしなぁ。

 こういうとこでも自分も含めた周囲と、俗にいう世間一般との差を痛感しちゃうねぇ。

次回、反撃のターンあっさり風味(の予定)

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