表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
267/363

267話 本戦ですかー・・・1

少し長いです

 予選も無事終わったので今日から本選、いや本戦って言うべきかな? まぁ開始っと。

 まずは会場からぐるっと観客席見て……やっぱ予選の時より人が入ってるね。お金持ちっぽい人もいっぱいいるわ。

 あっ、ミツキがお母様とシズクさんにいい子いい子されてるわ。当のミツキはちょっと恥ずかしそうね。


『マスター、少し気になったんですけど、マスターの母上様は先程どうやって了承を取り付けたのですか?』

「あぁ、アレね」


 ルミィもミツキ達の方を見ながら、少し疑問っぽい顔してるわ。

 そうなるのも無理ないよね。だってミツキが今日は勇者連中の傍でなく、お母様とシズクさんの傍で見学する事になっちゃったから。


「んとね、わたしたち狐族にもルミィが持っている魅了の力に近いものがあるの。と言っても自分が好意的な相手に対し、こっちにも好意を持ってくれるような効果が主だけど」

『虜にするんじゃないんですか?』

「そこまで強いのは無いよ。何より自分が嫌いな相手に対しては効果が全く無いから、あくまでも好意的な者同士がより仲良くなるって感じなの」

『となると、先程のも?』

「うん。お母様が勇者パーティの面子に対し、その力をちょっと使って交渉しちゃったの」


 受付まで一緒に来た後、勇者と戦士っぽいのがミツキを観客席に案内しようとしたところに、お母様が割り込んで交渉しちゃったからね。まぁ今朝、お母様がわたしに「小精霊を顕現させなくて良い」って言ってくれたから、何かやるとは思ってたんだけど。


『という事は、マスターの母上様とあの方達は』

「でもね、お母様のはちょっと違うの」

『そうなんですか? でもでも、マスターはさっき』

「えとね、わたしが使えるのはさっき言った位なんだけど、お母様になると嫌な相手でも魅了できちゃうの。それこそ虜というか傀儡というか、割と強い効果も発揮できちゃうの」


 お母様が全力でやれば、どんな相手だろうと傀儡化して、己の命を奪わせることまでできちゃうからなぁ。流石にそこまではやらないっぽいけど。


「しかも効果が一時的な状態から永続的な状態まで自由自在なの」

『それって結構、というかかなり凄いですね』

「うん。んで、さっきの受付で、お母様はその力を使ってうまい事交渉しちゃったわけ。ただ、お母様が魅了の力を使うってのは稀な事だから、よっぽどな状況な気もするけど」


 魅了を使うとか、ミツキをあの連中の傍に置いていたらマズい事態になるって予知した可能性があるんだよねぇ。ひょっとしたらミツキが洗脳される可能性があったのかしら? 聖女探しにかなり必死になってたし。

 まぁ単純に、わたしの利益追求した結果な気もしないではないけど……。


『大きな自体が発生しないと良いですねぇ。ところで、マスターのその状態にも意味があるんですか?』

「んっと尻尾を隠してない状態のこと?」

『ですです』


 ルミィがコクコクと頷くけど、たしかに今日は尻尾を隠さずに5本全部出してるからね。おかげで少し目立っちゃってるわけだし。


「コレもお母様に言われたことなんだけど、わりとふかーい理由があるの」

『ふかーい?』

「うん、ふかーいの。でもまぁ簡単に言っちゃうと、わたしと言う存在をしっかり認知させるためなの」

『認知ですか? えっと、よくわかんないんですけど』


 うん、頭の上にはてなマークが浮いてそうな顔してるね。まぁそれだけルミィが〝わたし〟という存在を認知できているからだけど。


「えとね、こっちの人達ってわたしの様な人寄りの獣人って偏見からか、見分けがつきにくいみたいなの。違う顔なのに同じような顔に見えるようなアレね」

『そうなんですか? 私はマスターの様な獣人の方よりも、ディラックさんの様な獣人の方が、同じような顔で見分けがつかないんですけど……』

「獣寄りの獣人は同じ獣人同士でないと難しいからねぇ。でまぁそれと似た様なのが起こってるらしく、わたしがここで優勝しようとも、街中じゃ同一人物だとは思われない可能性が高いの」

『まさかぁって思っちゃいますけど、冗談じゃないみたいですね』


 わたしが割と真面目な顔してたから、ルミィもちゃんと受け取ったみたいね。ほんと冗談の様でマジであり得る話だからねぇ。


「いつもなら目立たない方が良いんだけど、ここだと逆。わたしが化け物な存在というのをしっかりと植え付けて、わたしに馬鹿な真似を仕掛けてくる愚か者を極力減らそうって意図があるの」

『あーたしかに。マスターが強いと認知されたら、お店などでも見下してくる人が減りそうですね』

「そゆこと。まぁわたしはあまり気にしないんだけど、お母様がそういう状況を絶対に許さないって状態だからねぇ……」


 こういう所もちょっと過保護というか、心配性なんだよねぇ。嫌じゃないけど!

 まぁこっちでも狐族が希少とか、複数の尻尾を持つ狐族を欲するクズが多いとかだったらヤバかったけど、どうやら違うっぽいしね。隠す意味は目立つだけっぽいから問題ないわ。





 ルミィに説明とかをしてたら、どうやら試合の組み合わせが決まったみたい。司会の説明も聞こえてくるわ。まぁルミィと話していたので全然聞いてなかったんですけど……。


「んーと、とりあえず順番になったら呼ばれるで良いんだっけ?」

『ですです。それに組み合わせはあちらに映し出されてますよ』


 そう言ってルミィが指さす方を見ると、でっかいディスプレイに組み合わせがずらーっと映ってるわ。あみだくじみたいな定番の書き方だねぇ。


「えーっとわたしは……おっと最初かいな」

『ですね。私は……逆に最後ですね。これならマスターと試合するのは、決勝戦まで無いになりそうです』

「だねぇ。こういうちょっとしたことでもやっぱりツイてるなぁ、わたしって」


 決勝以外でルミィと戦うのは嫌だったからなぁ。なのでこの組み合わせは大いに満足です。

 あとは気になる選手がいるかだけど……。


「いかんなぁ、他の奴の試合って全然見て無かったから、誰がどれなのかさっぱりだわ」

『私もです……。有名な方も居るみたいなんですけど、そちらも聞いたことないですし』

「当然わたしもそっち方面は知らない!」


 ドヤァ! って、ドヤれるとこじゃないね。

 せめて仮面付けたやつくらいはちゃんと調べておくんだったかなぁ。どうにもわたし、こういうとこも抜けすぎてるというか油断しすぎてるなぁ。





『それでは第1試合を開始します!』


 対戦表や他の選手を少し見てたら、いよいよ開始の様で司会の声が会場に響いたわ。それを聞くと同時に観客の雄叫び声が響いて……ちょっとうるちゃい。


「それじゃまーサクッとやってくるわ」

『気をつけてくださいねマスター。相手の力が未知数ですから』

「りょうかーい」


 ルミィに手を振りながら舞台に上がり、対戦相手を……うへぇ、でっかい虎だなぁ。


『第1試合では、その剛腕から繰り出される大剣捌きにて、ここまでの対戦相手を全て再起不能にしているトラジーノ選手と、人獣の子供というハンデをものともしないユキせん……あれ?』


 おや? 司会の人が急に言葉を止めたのと同時に、会場とかも少しざわついてるんだけど? はて?


「えーっと、ユキ選手、で合っていますか?」

「ですけど?」

「そ、そうですか」


 審判の人までこんがらがった風に確認してきたけど、どういう事かな? って、あーそうか、尻尾か。


『おかしいですね、予選ではユキ選手、尻尾は1本だったはずですが』

『5本に増えていますが、これはどういう事なのでしょうか?』

『正直、ユキ選手に関しては私も不明な事ばかりでして……。長い事大会の解説をしていますが、このような方は見たことが無いですよ』


 うん、司会と解説の人もこんがらがってるね。どうやら尻尾を偽装する道具とかも無いみたいだねぇ。


「おい狐モドキ、なんで尻尾が増えてんだ?」


 一人納得してたら、虎だからトラジーノって名前なのかな? というツッコミを入れたい対戦相手がなんか聞いてきたけど、どう答えるべきかなぁ。魔道具うんぬんだとめんどくさそうだし……よし。


「んっと、袴の下に隠してました!」

『それは無いだろ!』

「おっと?」


 虎だけでなく、審判に司会に解説、それに会場の奴等までツッコミを入れてきたわ。どうやら本選だと舞台上の声まで中継されてるみたいね。


『失礼しました。えっと、あのような短いスカートの様な衣装で、隠せるわけないと思いますが、どうなっているのでしょうか?』

『……わかりません。正直、ユキ選手に関しての説明は放棄したいほどです……』


 ひどっ!

 いやまぁ解説の人が匙投げたいのも分からんでもないけど。





 何ともグダグダな感じだけど、いよいよ始まるみたいね。司会と解説ができる範囲での説明とかが終わって、審判が少しキリッて感じになったもの。


「両者、準備はよろしいですね?」

「あぁ、いつでも良いぜ!」

「こっちもいいよー」

「「………」」


 あー、うん、そんな気の抜けるような返事するなですね、分かります。でもなぁ、この巨大虎、あまり強そうじゃないもんなぁ。


「で、では……第1試合、始め!」

「行くぞオラァ!!!」


 審判の合図とともに虎がドンッて踏み込みながら大剣で斬りかかってきたけど、やっぱ遅いなぁ。

 ただまぁ予選と違い、闘気みたいなのを手と足に纏っているね。踏み込み速度も昨日の奴らよりは速いし、迫ってくる大剣の速度と威力も少しはありそう。


 だ・け・ど


「ほいっと。ん~、やっぱそこまで強くないなぁ」

「ぬぅわぁにぃぃぃぃぃぃ!?」


 人差し指と中指で挟むようにして大剣を受け止めちゃったら、相手の虎だけでなく審判、それに観客まであんぐりって感じに静まったわ。まぁお母様とシズクさんはうんうんって頷いていて、ミツキとルミィは目がキラキラって感じに見つめて来てるけど。


『え、えーと、これは』

『分かりません!』

『解説放棄ですか!?』

『だってあんなのどう説明しろって言うんですか! 私だって初めて見ますよ!』


 あらまぁ、解説の人がちょっと逆ギレしてるようで、少しヒステリックな声で叫んでるよ。そこまでなる現象かなぁとは思っちゃうけど。


「く、くそっ、動かねぇ。一体どうなってるんだ!?」

「へ? この程度で?」

「な、なめるなよ! 真の力を発揮すれば!」


 そう言って「うぉぉぉぉぉぉ」って雄叫びを上げだしたけど、気合を入れただけかなぁ。すこーしだけ押しが強くなった気もしないではないけど。


「まぁお約束だけど、ほいっと」

「!?!?!?」


 摘まんだまま巨大虎ごと軽く持ち上げたら、何とも面白い顔をしてくれるね。目が点というか、アワアワするというか。


「手、離した方が良いですよ?」

「な、なめ」

「あーそういう威勢だけの反論は結構なので」


 宙にプラ―ン状態なんだから、さっさと手を放して別の攻撃に移ればいいのに、こういう奴らって何故か絶対離さないんだよねぇ。ほんと意味わかんないわ。

 まぁいいや、さっさと終わらせちゃいましょー、


「それじゃいっくよー」

「な、ちょ、ま、まてぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 摘まんだ状態のまま左右にフリフリしてから~、場外の方に投げ!

 うん、そこそこ勢いつけたのでヒューンドッカーンって感じに地面に叩き、というか埋まったね。だいぶ手を抜いたけど、それでもなかなかの威力だったみたい。


「しょ、勝負あり!」


 しばらく審判もあんぐり状態だったけど、何とか戻ったみたいね。ちょっと震えてるけど。


『え、えーっと、今のは』

『おそらくですが、ユキ選手は格闘系のライセンスを取得しているのではないかと。格闘系のライセンスに、相手の力を利用して投げ飛ばすアーツが存在しますから、おそらくそれを使用したのではないかと。というより、そういう事にしておきませんか? 正しい解説なんて無理ですし』

『投げやりになってませんか? ですが、確かにあの小さな体でトラジーノ選手の巨体を持ち上げるなど、アーツ無しでは不可能ですね』


 なんかそれっぽい解説してるけど、ごめんなさい、何も使ってないです。しいて言うならば、怪我しないように指先の魔力を少し強めにしたくらいです。

 正しい説明しなきゃいけないってわけじゃないけど、こっちだと魔力操作という概念がほとんど無いというか、遅れてるなぁって再認識しちゃうね。


 しっかしこうなると、わたしが術式使ったらどうなるんだろ? 余計なトラブル呼び寄せないかしら?

 お母様は使って良いって言ってくれたけど、ちょっとだけ心配になってきたよ。念のためもういっかい相談しておこうかなぁ。

解説がポンコツ気味になるのは狐娘のせい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ