264話 予選の開始です・・・3
さてさて今日は2日目ですか。
ちょっとやり過ぎた感出しちゃったわたしはもちろんだけど、ルミィもちゃんと今日に繋げたのでよし。
まぁあの程度の総当たり戦なら負ける要素って、わたしもルミィも皆無ではあるけど。
ではではさっそく会場に向かいましょー。
「そういえば、今日からは選手も他の試合が見られるんだっけ?」
『ですです。昨日は時間短縮の意味合いが強いので、観客以外は会場に向かう許可が下りませんでしたが、今日からは時間に余裕ができますからね』
「最初に有象無象の雑魚を大量に落とし、2日目からは優良な選手をお披露目って事かぁ」
そのせいでルミィの試合見られなかったからなぁ。
終わった後の様子から、他の選手の自滅をある程度見た後に範囲攻撃ぶっぱで終わらせたっぽいけど、攻撃内容や動きとかを見てみたかったわ。人の動きを見て学び、自分自身の改良に努めるのは常にだもの。
『ところでマスター、本当にお体は大丈夫なんですか?』
「もー、ルミィ迄心配性だなぁ」
会場に続く廊下を歩いていたら、ルミィが少し心配そうな顔をしながら聞いてきたわけで。
まぁこうなる気持ちも分からんでもないかなぁ
今朝もミツキに対しヒトガタによる防御陣と、風と土の小精霊を顕現させて絶対の守りを構築したけど、顕現させたときに少しフラついちゃったからなぁ。
ミツキとルミィはもちろんだけど、小精霊の子まで心配してきたので、ちょっとした騒ぎになっちゃったし。
「わたしって日常生活は魔力だけで補えるはずなんだけど、どうやら精霊力も使ってたみたいでね。そのせいか、思ってた以上に精霊力の残量が少なくなってただからだから」
『でもでも、少なくなったら危ないはずでは?』
「ん~、たしかに枯渇したらヤバいんだけど、この調子なら期間内は大丈夫なはずなんだよね。んで、この期間が過ぎればたぶんミツキの傍にいることができるはずだし」
『ですけどマスター、ふらつかれるという事は……』
「あー、それはあれだよ、軽い貧血みたいなものだから、そこまで大きな問題じゃないよ。それに、ここまで精霊力が減った状態を長時間維持って経験って今までなかったから、少し体が対応できてないってくらいだから」
戦闘中ならまだしも、日常生活で減ったままとか今まで一回も無かったからなぁ。
魔素や霊素が無い環境に対する対応力をあげる訓練とか、思い切ってした方が良いのかしら? ただ、必要だったらお母様が訓練メニューに追加するなり、アドバイスしてくれるはずなんだよね。でもそれが無いって事は不要なのかしら?
『その、言い難いのですけど、マスターは少し楽観視し過ぎな気がします』
「ふぇ?」
ルミィが真面目というか、少し呆れた感じの顔をしてるけど、はて、どういう事かしら?
『仮に大会に優勝したとしても、ミツキさんのお傍に居られる保証はありませんよ?』
「え? そうなの? だって」
『えっと、たしかにミツキさんは聖女ですので、勇者パーティに参画されます。そしてこの大会は、勇者パーティの増員も兼ねているのは確かです』
「だよね。だったら」
『ですけどマスター、勇者パーティは一つでは無いのですよ?』
「へ?」
『それと聖女はミツキさんだけですが、聖人、つまり聖女の男の人版ですね、その方も居ます』
「ま、まって、もしかしてもしかすると」
『はい、ミツキさんが所属する以外の勇者パーティへの参画もあり得るわけです。聖女、もしくは聖人が一人でしたら、そのパーティの戦力強化を優先します。ですけど、実際には複数なので』
「どこに参画するかは決まってないって訳かぁ……。うへぇ、考えが抜けすぎてたわ」
聖女を欲していた事から、てっきりミツキ以外は存在しないと思ってたのに、他にも居たのかぁ。まぁそもそも居ないわけが無いか……。
「ミツキと別パーティになった場合、ミツキが嫌がるのはもちろんだけど、守護用の小精霊分の精霊力も捻出しないとダメなわけかぁ」
『ですです。そしておそらくですけど、魔王討伐が終わるまでは……』
「だよねぇ。でもまぁ、うん、きっとだいじょーぶだよ。だってわたし、すっごい運が良いから!」
『ほんと楽観視し過ぎですよぉ……』
あらま、まーた呆れ顔になっちゃったわ。
でもほんとーにわたし、運が良いんですよ? 誰かが世界を弄ってるんじゃってくらい、運が良いんですよ?
「あれ? 舞台の上に舞台が乗ってるの?」
舞台がある会場に来たら、舞台の上に少し小さい円形の舞台が3つ乗ってるんだもん。舞台の上に舞台とか、意味がちょっとわかりません。
『えっと、2日目は勝ち抜き戦ですけど、1組4人が一度に戦うんです。2人組に分かれて戦い、勝った者が中央にある少し大きめの舞台で戦うんです』
「それって連戦形式になるってこと? しかもわざわざ同じ舞台というか、時間をずらさないでやるの?」
『ですです。あくまで予選ですので、昨日程じゃないですけど時間短縮ですね』
「せっかちだなぁ。とゆーか、それなら最初に範囲攻撃で3人吹っ飛ばしちゃえば」
『それは禁止事項ですよ。対戦相手以外を攻撃した場合、敗退となってしまいます』
「また面倒だなぁ」
しかも効率的のようなどうでもないような、何とも言えない感じだし。
「まぁいいや。それにしても、昨日よりも観客が多いような」
『予選とはいえ、2日目に進んだ人は少し強いという印象がありますからね。そのため、大手企業の方が自社配属ハンターとして勧誘しに来ている、というのもありますよ』
「へぇ、こっちにもそういうのがあるんだ。わたし達の方だと、企業じゃなくて貴族になるけど」
そう言いながら観客席をぐるっと見回すけど、うん、昨日は一般の人ばかりだったけど、今日はちょっとお金持ちっぽい人も大勢いるね。
『社長や会長のような方は、一般の方と違って少し高級な観客席で見ていますよ。ミツキさんたちが見ている席の近くが主にそうですね。……あれ?』
「どうしたの? なんか珍しいもの見たって顔してるけど」
『えっと、そのすごく珍しくて、マスターの様な獣人の方が席に座っているのです。それになんていうか、遠目でもわかるくらい綺麗な感じなんです』
「へぇ、そんな人も居るんだ。どらどら……」
ルミィの視線の先を見てみ……え?
「お母様とシズクさん!?」
『急に、大丈夫ですか!?』
「あ、ごめん、ちょっと予想外過ぎて」
予想外過ぎて、獣耳と尻尾がピーンって立っちゃったからね。
にしても他人の空似……じゃないなぁ。とゆーか間違わるわけないもの。
あっ、お母様、イタズラがバレた子供みたいに少し笑ってるわ。そしてシズクさんが少しやれやれって顔しながら給仕してるから、これはお母様が強引にやっちゃったって事かしら。
とりあえず手を振って……うん、手を振り返してくれたね!
『ま、マスター? その』
「あー、うん、ちょっとはしゃぎ過ぎた」
ルミィがアワアワって感じに少しなったけど、まぁしょうがないよね。
やっぱりわたし、そうとうなマザコンだなぁ。手を振り返してくれたのにはしゃいで、ぴょんぴょん跳ねちゃったもの。
「えっとね、あそこの狐族の人、わたしのお母様なの。隣に居るのはシズクさんで、うちのメイド長なの」
『マスターのご家族ですか?』
「そそ。まぁ来ちゃいけないってルールも無いから、転移門の許可を取ってきたと思うわ。でもなぁ」
『何かあるんですか? 少し複雑なお顔してますよ』
「んとね、お母様が直にくるって事は、結構重大な要件な気がするの。だってお母様、うちの国で一番偉いと言ってもいい人なんだもん」
『なるほど。何かあったのですかねぇ』
「ん~、でもなぁ、お母様だからなぁ」
わたしが心配になったからってオチもあるんだよねぇ。わたしの事になると冷静さを欠くというか、ちょっと過保護になるもの。まぁわたしは嬉しいから良いんだけど!
「とりあえずアレだね、終わったら挨拶しにいこっか」
『ですです。私もマスターのご家族に挨拶したいです』
「だねぇ。それにあの感じ、たぶん問題ないわ」
『問題ですか?』
「気にしなくていいよー」
不思議そうな顔してるけど、気にしなーい気にしない。
さすがに「お母様ってわたしの敵になるような人にはすっごい冷たい」なんて、会う前の子が心配になるような事は言えないもの。
それにお母様が普段通りにニコニコしてるから、お母様から見てもルミィは大丈夫なのが分かったからね。だったら余計なことは言わないのです!
でもあれね、お母様が居るから、ちょーっとがんばっちゃいましょー。
だけど、がんばりすぎてやり過ぎないようにだけはしないと。
狐娘は運が良すぎるせいで楽観的な性格




