261話 浮気問題からの嫌々展開?
少し長いです
さて、この修羅場になりそうな状況をうまく対処しないと。
これがなぁ、どっちかがどうでもいい子なら適当に済ますんだけど、違うからなぁ。
「えっと、この子はミツキって言って、前世の――」
まずはルミィにミツキの事を丁寧に説明。
ミツキの機嫌を損ねないように配慮しながらだけど、うん、若干惚気っぽくなったのか、ミツキがさらにぎゅーっとしてきたわ。これは嬉し恥ずかしのテレ状態ですね?
「――というわけなの」
『な、なるほど。その、凄く親しい間からなんですね』
「ぶっちゃけるとそうだねぇ。んでミツキ、この子はルミィって言って、こっちに来てから――」
ミツキの説明が終わると、ルミィは何とも言えないって感じになったけど、そのままルミィについても説明を開始。フォローは説明の中でやるのだ。
たぶんなぁ、事前説明をあまりしなかったせいもあるけど、ルミィからするとミツキの事は寝耳に水みたいな感じだろうから、その辺りを考えて説明しないと。うまくフォローできないと、ルミィがいじけるというかちょっと嫌な気分のままになっちゃうもの。
「――てことがあったの。まぁ簡単にまとめると、ルミィのおかげでうまくやってこられたってわけね」
「そう、なんだ。えっと、偶然から、で良い、の?」
「うん。わたしが手当たり次第に声をかけたとかは一切無いからね」
「……ルミィちゃん、少しお話、できる?」
『え、えっと、マスター?』
「あー大丈夫だよ。ミツキも魔力による会話に関する魔道具は持ってるから」
『でしたら、分かりました』
ミツキのネックレスには、わたしのネックレスに近い機能が備わってるからね。魔力会話に関する機能も当然組み込み済みなのです。
問題ないことが確認できたからか、ミツキはわたしから離れ、ルミィと一緒に少し離れたところに移動。どうやら二人っきりで色々と話を付けるみたいだけど、大丈夫かなぁ。なんとなーく今のミツキ、ヤンデレっぽい感じが出てるからなぁ。
移動した二人を見てるけど、むぅ、ちょっと遠いから会話が聞こえない。
だけど……ん~、大丈夫かな?
身振り手振りしてて、ミツキが顔を手で隠してイヤンイヤンしたと思ったら、今度はルミィが顔を真っ赤にしてワタワタしてるし。会話の内容は聞こえないけど、なんとなく想像できるなぁ。
5分くらいかな? 二人の話もまとまって、最後はたがいに頷きあって無事決着ってとこかしら。
そして決着ついた二人が戻ってき……うにゅ。
「え、えっと、今度は二人がかりなの?」
「うん。その、ルミィちゃんも大丈夫、だった、から」
『はい! それにマスターの事も、ミツキさんから色々聞けました』
「そ、そうなんだ。まぁ二人がすぐに仲良くなれそうなのは良い事なんだけど……」
両横から挟まれる感じにぎゅーっとされるとね、ほんとーに変な発言しちゃうくらい理性がヤバイんですけど。
でもこの感触、良いですねぇ。甲乙つけがたい感じがなんともかんとも……って
「あ、あのね、ほんとーにやばいから、そろそろ解放してくれない?」
「……良いのに」
『ですです』
「いやいや良くないってばもう……。とゆーかもう協力プレイできるとか、さっき何を話してきたのやら」
「その、ね、そもそもルミィちゃんの事は、メイちゃんが予想していたの」
「さすがメイ……」
全部お見通しというか、どこまで予知しているのやら。
とゆーかこれ、おそらくメイはミツキに対し、わたしを誘惑しろとか言ったんだろうなぁ。そうすれば他に意識が向かないから、浮気を防げるみたいな感じで。
まぁ、うん、まったくもってその通りなので。ほんとできた妹ですね。
「もしもただの浮気だったら、私も怒るけど、違ったから、良いの」
「えーっと、つまり、これは浮気ではないと?」
「浮気、なの?」
「いいえ、まったくもって違います! 浮気ではございません!」
コワッ!
一瞬ミツキの目からハイライトが消えたように見えたけど、ほんとーにこの子、ヤンデレ化してきてない?
前世でもその兆しはあるにはあったけど、なんかますますなってきてるというか。
まぁ他人を傷つけたりはしないし、どっちかっていうと一途がすごいだけだから良いんだけど。
『す、すごい、マスターが手玉に取られてる……』
「あー、えっとね、わたしって好きな子には結構弱いの。だから……」
『手玉に取られやすいと?』
「そんなとこ……」
言いなりにはならないけど、ホント弱いんだよなぁ。まぁ無茶を言ってくる子も居ないから大丈夫だけど。
そんなイチャイチャをしていたけど、流石に我慢の限界だったようね。ミツキを連れて来た面子の数人がこっちに来たわ。うん、ちょっと怒った顔もしてる。
「聖女様、そろそろよろしいですか?」
「……嫌」
「なっ!? 聖女様!?」
最初に口を開いたのはいかにも魔法使いって感じのオッサン。ぱっと見、あまり強そうじゃないね。
しかもミツキが拒否するとともに、さらにわたしをギューッとしだしたから、すっごい慌てだしたよ。拒否されるとは思っていなかったのかねぇ。
「で、ですが聖女様! 国王と首相にお会いになられる約束をしたではありませんか!」
「……してない。あなたたちが、勝手に決めた、だけ、だから」
「しかし!」
あー、なんかミツキが少しイラっとしてるわ。
おそらくだけど、向こうが勝手な要望とかを色々言ってきたんだろうね。しかもミツキが同意していないのに、さも決った事のように。
にしても
「ねぇルミィ、この国って国王と首相がいるの?」
『ですです。国王様は全ての頂点で、首相様は各都市で一番偉い方となっています』
「へぇ。首相って言うと国の偉い人って感じがあるけど、こっちだと地方領主みたいな感じになるのね」
『と言っても、首相に選ばれるのは本当に巨大な都市の長のみなのです。具体的には、1都市で人口が最低でも1億人以上住んでいることが条件です』
「1億って、わたしの感覚で言うと国規模になるなぁ」
たぶん、首相というのは統一国家になる前の名残なのかもねぇ。元国王が首相、みたいな感じで。
まぁ中央で全て管理するよりも各都市に長を設けて放任、中央は都市の長から必要な情報を吸い上げるだけって方が楽か。都市側も各市町村に長を立てて、そこから情報を吸い上げるってことはするだろうし。
なんて少し納得してたら
「おいっ! いいかげんにしろよ聖女! お前、どんだけ人に迷惑かければ気が済むんだよ!」
「ちょ、勇者様、流石に声が大きいですぞ」
「うるせぇ! しかも獣人じゃない、ゴミの様な人獣に時間を割いてるじゃねーか! ふざけんなよ!」
うん、勇者って呼ばれた20代くらいの男がすごい癇癪を起こしたよ。なんともわたしが嫌いなタイプですねぇ。
しかもこの国特有の、人寄りの獣人に対する差別持ちって訳ですか。予想はしていたけど、やっぱりこの国の勇者も糞みたいだわ。
「えーっと、つまりそこの勇者さん達はミツキを連れてどこかに行きたいわけですか?」
「勇者さんじゃない、勇者様と呼べよなり損ない!」
「あ、はい」
おいおい、樣付けで呼べとかとんでもない感じですね。
しかも一緒に来たオッサンも頷いてるあたり、それが当然って事なのかしら。なんとも嫌な感じですねぇ。
「そもそもオマエ等、聖女の立場を分かってんのか?」
「いーえ、まったくきょーみないので知らないです!」
「はぁ? お前、それでも国民かよ? バカなのか? アホなのか?」
「いやわたし、国民じゃないし」
う~む、わたしに対する敵意が溢れ出したのか、どんどん汚らしい言葉使いになってきてるね。
このままだと物理的な行動に移るかなぁ……。さすがにそれは面倒だし、適当な着地点を設けてみますかね。
「んっと、それで結局、ミツキを連れて行かないといけない理由がるってことなんですよね?」
「当たり前だ! 特に国王との謁見は当然のことだろーが!」
「じゃぁその謁見ってどのくらい時間がかかるんですか?」
「時間だぁ? んなの10分程度に決まってるだろ。今回は着任の挨拶だ、それ以上はねーよ」
「それ以上、ねぇ……」
その言葉を発した瞬間、さらにミツキがわたしをギューッとしてきたあたり、おそらく婚姻とかそういうのだろうな。
確かに勇者と聖女が結ばれるってのは定番と言えば定番だけど、それをミツキにもあてはめるのはどうかと思う、とゆーか断固拒否です!
しかし謁見か。
たぶんわたしとルミィは付き添えない、だけど謁見をしないと話が終わらない、そんな状況か。
ん~、信用できる面子ならばミツキにがんばってもらうで済むけど、今回は誰一人信用できないからなぁ。
となると、先が少し不安だけど使っておくか。
「ねぇミツキ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「いやだと思うけど、この人たちについていって謁見してきてもらいたいの。もちろん終わったらすぐに戻ってきてほしいんだけど」
「ユキくんのお願いなら、聞いてあげたい、けど……」
「うん、知り合いが居ないから心配だよね。なので、護衛を付けます!」
ポーチからヒトガタを取り出し、ささっと展開。
あとは展開したヒトガタに光学迷彩を発動させ、そのままミツキを守るように指示する。
「まずはヒトガタにミツキの周囲の安全を確保させます。ミツキに触れようとする者に対しても自動攻撃するようにしておくから安心してね」
「う、うん」
『マスター、い、今のは!?』
「あー、細かい説明は後でするね」
ルミィだけでなく、勇者たちもなんかポカーンとしてるね。ヒトガタがこっちだと無いのかしら? まぁいいや。
ヒトガタの後は両手に精霊力を集め、さくっと光と闇の小精霊を顕現させる。うん、顕現したとたんわたしに抱きついいて頬ずりしてきますね。
「えっとね、霊素が無いところで悪いんだけど、ミツキの護衛をしてくれるかな?」
そう言うと、二人ともオッケーって感じに頷いて、わたしに口付けした後ミツキの両肩に座るように移動したわ。ほんとこの子たち、わたしのこと好きすぎだねぇ。
「ゆ、ユキくん!? その、精霊さんを呼んじゃう、と」
「うん、ちょっとというか思いっきりわたしの精霊力使ったけど、まぁ大丈夫。その子たちもミツキが謁見して帰ってくる間は全力で動けるから」
「そ、そんな……」
「あー、もう、そんな悲観的な顔しないでよ」
たぶん、メイから色々聞いたんだろうね。
こっちには精霊のもととなる霊素が無いから、精霊関係の力を使う場合は、全てわたし自身の精霊力で補う必要がある。
だけどわたしの中にある精霊力だって有限、使ったら補充しないとダメ。だけどこの国には霊素が無いので補充は困難、というかたぶん無理。それに半精霊の身だから、補給できないまま使いすぎると死んじゃうわけで。
「んとね、結構精霊力使ったけど、その子たちなら後1000回は呼び出せるくらい残ってるの。それだけわたしの精霊力って化け物級だから、心配しなくていーよ」
「そう、なんだ……」
「そうだよー」
……ごめん、嘘です。
本当は後10回も呼び出せるか分からないくらい消費しちゃったんだよね……。普段なら消費はほぼないのに、霊素が皆無な世界だとここまで消費するとは、わたしも思っていなかったよ。
精霊神を顕現させる時ですらここまで消費しないのに、ほんと異常。ひょっとしたら霊素が無いだけでなく、精霊力自体の効率を落とす何かがあるのかもしれないわ。
「ユキくん、その、無理、しないでね? ユキくんが居ないと、私……」
「あー、まぁ……うん」
どうやらバレてるみたいね。すっごい心配そう、というかちょっと泣きそうなんだもん。
顔だけでなく、体の調子にも出さないようにしてたのになぁ。
『え、えーっと、マスター、その……』
「おっと、ルミィには説明もしないとダメだったね」
『ですです』
ルミィの方は摩訶不思議なことが起こっての驚きと、眷属だからか何か気付いたようね。だって心配そうな顔してるもの。
ミツキが謁見してる間、色々と反しておきますかねぇ。主にわたしの存在についてになりそうだけど。
とりあえずそこの勇者達、さっさと現実に戻って、ちゃんとミツキをエスコートしてきなさい。
まぁお触りとかは厳禁だけどね!
ヤンデレではないです、ヤンデレっぽいだけです




