表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/363

260話 待ち伏せじゃないですよ

少し長いです

「ふわぁぁぁぁぁ、むにゅぅ」

『マスター、大丈夫ですか?』

「あー大丈夫大丈夫。わたし、ちょっと朝が弱いだけだから」


 勝手が違うからか、それともアリサが起こしてくれないからか、どうにもまだ眠い朝のお時間。

 ちょっとふらふらしてるけど、ルミィが支えてくれるのでまぁ何とかなるかな。


『でもマスター、そこまで眠いのでしたら』

「それが、ちょっと今日はどうしても行きたいところがあって」

『行きたいところですか? この街はある程度案内できたと思うのですが』

「うん。えっと、実は今日、友達がこっちに来るはずなの。ただ時間が分からないから、少し早めに待っていようかなって」


 大会の開催が明日だけど、その前日にミツキはあの勇者連中と一緒に転移してくるって聞いてるんだよね。

 まぁミツキが討伐パーティの目玉みたいなものだから、当然と言えば当然の日程だけど。


「それにね、わたしは一人でもなんとかなるけど、その子はこの世界に来てまだ日が浅いの」

『日が浅い……転移者の方ですか?』

「そそ。だから色々と不安になりやすいのもあるから、できるだけ一緒に居てあげた方が良いって訳なの」


 しかもなぁ、付き添うのが知り合いじゃない、この国の人だからね。

 安全性は確保できてるのかもしれないけど、ちょっと不安というか、モヤモヤするのです。


『わかりました。それでは転移門へご案内しますね』

「おねがいねー」


 そう言ってルミィと手を繋ぎ……うん、それだけでちょっと照れた感じになるね。

 色々聞いたけど、ルミィは体質の関係で人との交流を限定的にしていたせいで、こういうちょっとしたことでも恥ずかしいんだったっけ。

 しかも仮面をつけていたから自然と人との距離は離れていたので、わたしのように逆に近づくと戸惑い、感情が追い付かなく事もあるとか。『襲いたくなる』発言も、感情を抑え込めなくなりそうって意味だっけか。

 とはいえ種族特性とかじゃないから、そのうち慣れるはず! というか慣れて貰わないと、年がら年中わたしが襲われる事になりかねないし……。





 何事もなく転移門のある施設に到着したので、施設の傍にあるベンチに二人で腰かけ、転移門の使用者をぽけーっと見てるけど


「転移門の先に行く人ばっかだね。もしかして、転移してくる人自体少ないのかな?」

『こちらに来る人ですか? 私が知る限り、この時間だとほとんど居なかったはずです』

「そうなの? わたしの国だと転移門で向かう人も来る人も、時間問わず結構多いんだけど」

『それはきっとマスターの国が魅力的だからですよ。マスターも知っての通り、この国のダンジョンはハンターがあまり利用しない、少し寂れた状態です』

「確かに、ダンジョンの規模はそこそこあるのに人がホント少なかったね。おかげで乱獲しまくっても怒られず、級上げに思いっきり貢献してくれたんだけど」

『ですね。モンスターの討伐難易度も高めなこともあり、多くのハンターは別の狩場、現在は転移門を使った先のダンジョンへ通うことが多いのです。あとはハンター以外の方、主に商売をしている方ですね。そういった方も転移門を朝から使用します』

「ひょっとして、朝出勤して夜帰宅、みたいな感じ?」

『ですです』


 なるほどなぁ。そういえばなんとなくだけど、日中は冒険者と商売人が少ないなって感じることがあったけど、そういう事か。

 みんなして転移門の先、レグラスやアルネイア、セイリアスに行ってるわけね。


「とゆーことは、転移門って誰でもすぐに使える状態なの?」

『そうでもないのです。ハンターですと個人は3級、パーティだと平均5級以上でないと許可がおりません。ハンター以外の方は使用許可証を発行してもらい、なおかつ1回の往復に100万カーネ必要となっています』

「うへぇ、許可証以外にもずいぶん高いお金取るのね。とゆーことは、転移できるのは」

『お金持ちの方ばかりですね』

「利用者を絞ってるってことかぁ。ん? そこまでするって事は、もしかして他にも条件あったりする?」

『はい。実は転移門の先に移住させないため、財産や家族を担保にする必要があります』

「財産は分かるけど、家族まで担保ってやっばいなぁ……」


 思わず天を仰いじゃったけど、ほんと信じられないわ。

 担保っていうけど、要はそれ人質って事だからね。ありえないというかとんでもない事してるなぁ……。ますますこの国、嫌いになってきたわ。





 さてさて、ただ待っているのもつまらないし、ちょっとイチャイチャしちゃいましょー。

 とゆーわけで


『こ、こんな所で、ダメですマスター!』

「何がダメなのかな~? ほらほら、正直に言わないと~」

『は、恥ずかしすぎます!』

「照れちゃって可愛いですねぇ。だけどほら、こんなに大きくてふわふわで」

『うぅぅぅぅ、ますたぁ』


 あらま、恥ずかしさのあまり少し涙目になっちゃったね。これはこれでちょっと可愛い。


「ほらほら、あーんして」

『あ、あーん……あむっ』

「おいしい?」

『は、はい。とても甘くて、大きいのにすぐ溶ける感じが』

「だよね~。やっぱワタアメってこのくらい大きくてふわふわしてるのが良いよね!」


 少し周りを見ていたら、いかにもって感じの屋台があるんだもん。

 しかもワタアメだけでなくりんご飴にかき氷、焼きそばやたこ焼きなんかもあった。とゆーかこの屋台群、あきらかにセイリアスからの出店だよね。店員はこっちで雇ったんだとは思うけど、商品は見た目だけでなく材料も知っている物だったし。ほんと手早いというかなんというか。


『うぅ、これは本当に恥ずかしいです』

「そうかな? わたしっていつもこんな感じにやっちゃってるけど」

『だ、だって手掴みで口に運ばれますと、その、指が』

「きにしなーいきにしない」


 うん、ルミィが言わんとしてることは分かるよ。今だってワタアメを少しちぎって、それをルミィの口に運んだからね。なので自然と指が唇に触れるわけでして。

 これは確かにちょっと恥ずかしい……というかちょっとエロい? 気もするけど、こういうイチャイチャ、結構好きなのです。


『マスターは恥ずかしくないのですか?』

「ん~、全く無いってわけじゃないけど、小さい頃からよくやってるから自然となれちゃったかなぁ。お母様だけでなく、うちの人みんながやってくれるのもあるし」


 あーんしてもらうのがほんと多いからなぁ。ときおり自分でお箸とかを使わずにご飯が終わる時もあるくらいだし。

 ほんと、わたしって可愛がられ過ぎですね! 悪い気は皆無だから良いんだけど。


「にしても、同性でイチャイチャしててもそこまで問題にならないのね」

『えっと、たしかに同性同士というのは禁忌ではあるのですが、国家施設などの厳しい場所以外でしたら、触れ合っていても罪に問われることはありません。ですが』

「あぁ、あーいうのはどうしてもあるってわけね」


 ワタアメ摘まみながら指さした先には、獣寄りの獣人が5人かな? 思いっきり睨んできてるし、なんかぼそぼそ言ってる。感じからして罵詈雑言ってとこかしら。


『なのでマスター、その』

「気にしなくていーよ。この国に長居する気は無いし、当然ルミィも連れて帰るから。あくまで目的のために来ているだけだから、わたしの評価が落ちまくろうと関係ないのです」


 そりゃこの国に永住するなら外面も考えるけど、ミツキのために一時的に滞在してるだけだからね。

 だったら周囲の評価とか関係なく、わたしの好きなように動くのだ。もしも街中でいちゃつくのすら禁忌で捕まっちゃうになるなら考えたけど、そうでないなら問題ないもん





 いちゃつきながら待つ事2時間くらいかな? お昼も近いのでそろそろ来てくれると良いんだけど……。


「来る時間聞ければよかったのになぁ」

『マスターの国との直接通信をする方法って無いのですっけ?』

「うん。転移門がうちの国が作った物じゃないのもあって、色々と制限があるみたいなの。魔道具を使った通信もその制限に引っかかってるみたいで、できるのは人による手紙のやり取りくらいなの」


 技術力の低さが悪い方に働いてるんだよなぁ。

 普通なら技術力が低ければガバガバの抜け道だらけなので、むしろ通信しやすい状態になってそうなのに、なぜか抜け道がなく意味不明なぎっちぎち状態なんだもの。ちょっと厄介すぎるわ。


『上手く行かないんですねぇ。あっ! マスター、人が出てきましたよ』

「ほんとだ。しかも武装してるなぁ……冒険者かしら?」


 ルミィと一緒に出てきた人を見ると、剣を背負った男とかでっかい盾を持ったオッサンとか、槍を持った熟女に杖を持ったびしょう……


「ユキくん!」

「おー、ようやく来たね。まちくたびれ……わっぷ」


 来たのはミツキを含めたこの国の冒険者だったね。

 まぁミツキが出てくるなり、すぐにわたしを見つけたようで飛び出し、抱きついてきちゃったけど。出てきた瞬間気付くとか、ちょっと凄いというか異常な気もするけど……。


「あの、ちょっとミツキさん? ずいぶんと、その」

「……ダメ?」

「あ、いや、ダメじゃないんだけど。だけどこれは流石に、ちょっと恥ずかしい」


 イチャイチャは好きだけど、こう思いきり抱き締められて、顔が胸に埋まる状態は少し恥ずかしいのです。嫌じゃないんだけど、場所を少し考えてもらいたいなぁという気が悶々。

 しかもこのままだと、その、少し理性がですね? 大きくてふわふわなこの素晴らしい感触が! みたいにね、ちょっとおかしな発言しそうなんですよ?


「でもミツキ、ほんとすごいんだけど、どうしたの?」

「だって、ユキくんと、離れていた、から」

「数日でもダメだったって事?」

「みたい」


 あらま、ミツキが少し涙目で見返してきたわ。どうやらミツキはわたしへの依存度がとんでもないみたいね。

 アリサ達なら耐えられる期間であっても、ミツキにとっては無理って事かぁ。もしかしたらまた生き別れ的な想像をしちゃうのかも。

 まぁ前世だとほぼ毎日一緒だったから、こうなるのも当然と言えば当然か。一緒に居ない時の方がおかしいって感じもあったし。


『あ、あのっ、マスター、その方は?』

「あー、えっとね」

「……ユキくん、その子、は?」

「え、えーっと」


 な、なんだろ、ルミィは少し慌てた感じで、ミツキはジトーって感じに見てきたんですけど。これはアレかしら、修羅場って奴になるのかしら?

 わー、見た事とかはあるけど自分がなるなんて初体験! ……なんて余裕かましてる場合じゃない!

 これ、答え方間違うと、ほんとーにやばい気が。……うん、ちょっと胃も痛くなってきたよ……。

女同士の負けられない戦いが…たぶん始まりません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ