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253話 これはほんと―に不可抗力です!

少し長いです

 さてさて、この子はいったい誰なんでしょう? 見た記憶が一切ないんだけどなぁ。


『あ、あの、え、えっと』

「あー、そんなに慌てなくていいから。店員さん……じゃないよね?」


 そう訊ねると、コクコクと頷く。はて? なんか見覚えがある仕草のよーな。


「まぁそのまま立ってるより、入った方が良いんじゃないかな?」

『は、はいっ』


 たぶん下の階の共同浴場と間違えたんだろうなぁ。それに、確かここも〝貸し切り中〟みたいな立て看板、無かったはずだし。

 まぁ共同の方もお金持ちっぽい人しか入れないみたいだから、間違ってはいるは問題だけど防犯がヤバすぎるってわけじゃないかな。とはいえ普通はありえないんだけど……。

 そんなわたしの考察とかは置いといて、女の子は少し躊躇いながらも覚悟を決めたのか、ちゃちゃっと体とかを洗いだしたね。


 しっかしなぁ、どうも気になる。

 仕草もそうだけど、声になんか違和感。可愛い顔に可愛い声ですね! って最初は思ったけど、その声がなんか気になる。なんなんだろ?

 それと、どうして水着みたいなのを着ているんですかね? こっちだとお風呂に入る場合、水着とか湯浴み着を使うのが普通なのかしら。それはお風呂に対して失礼です! って言いたいけど、それがこっちの当り前だったらダメね。





 気になるとこは置いといて、どうやら洗い終わったようで女の子も入ってきたけど、なるほどなるほど。


『えっと?』

「あ、気にしないで。わたしの友達に勝るとも劣らない感じだなぁと思っただけだから」


 顔もそうだけど、体つきもなかなかですね。

 身長と体型はアリサに近い感じで、男ウケがよさそうだねぇ……わたしウケも良いけど!

 あとは濃いめの赤紫色をした髪も良いですね。長さもアリサと同じくらいの長さかしら? うん、長い髪もわたしは大好きです!


 なんて下心満載なわたしとは違い、少し心配そうな顔してるけど、はて?


『あの、大丈夫ですか?』

「大丈夫って?」

『その、頭痛くなるとか、くらくらするとか、無いですか?』

「一切ないけど、おかしいのかな?」


 別にのぼせてもいないんだけど、はてさてどういう事だろ?

 だけどやたら心配な顔してるし、何かあるっぽいなぁ。


 とはいえ思い当たる事というか、気になる事と言ったら声くら……あっ!


「声が聴こえるけど、口から声を発してない!?」


 気になる原因はこれだわ。

 口は開いてるけど、どうやら喉から声を発しているのではない、音として聞こえるのではなく頭に直接届いてる感じなんだよね。これは顕現していない状態の精霊神とのやり取りに近いかな?


「なんでなんで?」

『え、えっと、そう言う種族だから、かな』

「それはちょっと変わってて、興味が湧きますね!」


 わたしの知る限り、人の形をとる種族なのに発声器官をもたず、音による会話をしないのは皆無。

 となるとこっちの世界限定なのか、それともわたし達の方にも居るのか、色々と調べたくなっちゃう。


 とゆーか


「ひょっとして、気持ち悪くなるうんぬんって、この会話方法のせい?」

『です。珍しいのですけど、これは魔法の一種なので耐性が弱い人だと押し潰されてしまうのです』

「なーるほど、たしかにこっちの人達、魔法耐性とかほとんどないからヤバそうだね」


 耐性が無い人に魔法を撃ったら効果絶大って感じだからねぇ。

 逆にわたしのように耐性が高い人の場合、無効化したり吸収出来たりする。この会話も、言葉以外の部分は無効化してる感じだわ。


 にしても、魔法経由での会話かあぁ。

 この子自身は特に負荷を感じて無いようだから、魔法適正とでも言うべきか、おそらく魔法や術式を使えるか得意なんだろうね。

 魔法自体ほとんどないようなこっちの世界だと、この子の能力は重宝されてるだろうし、ひょっとしたら有名人って可能性もあるね。


 それにそれに、わたしって魔法の耐性がめっちゃ高いのもあって、魔法による会話は普通は不可なんdなよね。でもこの子はそれをやってのけたわけで。

 そもそも会話できるのはわたしと同じくらい魔力が強いか、魔力の波長が合っている人、あとは意図的にわたしが耐性を下げないとダメなんだよね。耐性は下げて無いから、おそらく魔力が強いか波長が合うって方なんだろうけど。


『あ、あの……』

「おっと、失礼」」


 いかんなぁ、興味が湧いてきたからか、ずいぶん接近してじろじろ見ちゃってたわ。

 だからか、ちょっと手で胸を隠すようにして距離を取られてしまったわ。おっかしいなぁ、そういう下心は無かったはずなんだけど。





『あの、私からも聞いていいですか?』

「いいよー」


 距離は少し空いたままだけど、この子も何か知りたいことがあるみたいね。

 はてさて、何を聞かれるのかしら。


『えっと、その状態が本来なんですか?』

「ほえ? 本来って、尻尾隠してる状態をどこかで見た?」

『あっ、気付いていないんですね』

「気付く? ん~、たしかに会話以外も引っかかってるんだけど」


 仕草を見て、何か既視感があったんだよね。

 それも最近見……って、あーそゆことか。


「ひょっとして、ルミィなの?」

『そうです。やっぱり、仮面のせいで気付いてなかったんですね』

「仮面もそうだけど、その、ねぇ……」


 ごめんなさい、ローブのせいか体型が少し貧相に見えていたので一致しませんでした!

 見事にこう、すとーんって感じだったんだもん。着痩せとかそういうのを超えて『もしかして男の人ですか?』ってくらいだったんだもん。

 なのに中身がこうなってるとはねぇ……。


「もしかして仮面もだけど、あのローブも何らかの能力持っているの?」

『そこまで分かっちゃうんですね』

「勘だけどね。認識を狂わせる魔道具かな? って予想してたから」


 少し驚いてるようだけど、だって普通に考えておかしいんだもん。

 街中であの悪魔に似た妙な仮面を付けてるのに、だーれも変な目で見て無いとか、ありえなさすぎ。まだ仮面をつけた人が大勢いるなら別だけど、違ったしねぇ。


『あの仮面とローブは、私の力を封じる効果があるんです』

「へ? 力を封じるって、またなんで?」

『えっと、簡単に言ってしまえば、私が未熟で自分の力を制御できないからです。少し力を使おうとすると、周囲への被害が大きくなってしまうくらい』

「あーそれって、例えば小さな火の術を使おうとしても殲滅級の術が発動しちゃう、みたいな?」

『ですです』


 分かってくれたんですね! って感じにコクコクと頷いたわ。

 どうやらこっちだと理解されないみたいね。まぁ魔法や術が普及してないから当然か。


『先も訊ねたくらい、本来はこうやって私と会話するのも難しい方が多いです』

「なるほどねぇ。だけどあの仮面とローブかぁ……」

『何か問題がありました?』

「いや、ちょっと勿体ないなぁって」

『勿体ない?』

「うん。だって、かわいい子こそおめかしすべきだと思うんです! なのにそれを全部封印するとか、勿体ないとしか言えません!」


 いかん、思わず立ち上がって力説してしまったわ、ちょっと恥ずかしい。

 案の定、ルミィも照れるというかこそばゆいというか、少しモジモジしちゃったし。





「えっと、それでルミィも何か気にしてた感じだけど?」


 こういう時は強引に話を変えちゃいます。恥ずかしい雰囲気のままとか、わたしが耐えられないもの。

 それを察したのか、ルミィも深呼吸して少し落ち着きを取り戻してくれたわ。


『その、尻尾が複数あるんだなぁって』

「あーこれね。わたし達の方だと狐族で尻尾が複数ある存在ってすっごく珍しいの。なので、安全が確保しにくい場所や一人で行動する、なるべく隠しておくの」

『そうなんですね。確かに、私もユキ様のような種族で複数の尻尾を持った方は、おそらく初めて見たかもしれないです』

「なるほど、やっぱり人寄りの獣人だと珍しいのは共通してそうだね」


 とはいえ、おそらく獣人で尻尾が複数いるのは珍しくは無いって事なんだよね。わたしの様な人寄りの獣人では珍しいだけっぽいし。

 この違いは何かあるのかねぇ。単純に、人寄りの獣人は進化することができてないだけかもしれないけど。


 とゆーか


「その、なんで樣付け?」

『あっ、馴れ馴れしくてすみません』

「いやいや、気にしてるのはそこじゃなくて、どういう理由で樣付けなのかがですね」


 そりゃわたしってお嬢様だけど、こっちだと関係ないはずだし?

 だからルミィに樣付けで呼ばれる理由は無いハズなんだけど、どうしてなのかしら。それに名前を呼ぶだけで馴れ馴れしいとか、なーんか嫌な予感もしてきましたよ。


『えっと、その、不可抗力で』

「不可抗力で?」

『主従関係が、できちゃいました』

「はい~?」


 うん、意味が全く分かりません!

 だけどルミィは冗談ではなく、なんていうか、恥ずかしそうな顔して言ってるんですけど。逆に意味深な感じだよソレ……。


『えっと、私の種族の特徴なのですけど、強い力のせいで相手を魅了、というより眷属化してしまうのです』

「眷属化って、穏やかじゃないなぁ」

『ですです。私もそれが嫌なので、仮面とローブで力を抑え込んでいたのです。その、厄介な事に、意識しなくても眷属化してしまうので』

「うへぇ、それはほんと厄介」


 要は自分の味方、というか手下を湯水のごとく増やす能力が常時発動ってことでしょ。

 悪徳王とかなら問題はあるけど納得できる感じだけど、普通の子がそれをやったらどうなるかって事だよね。


『それに、眷属化した者に対して常に力を分け与える必要があります』

「てことは、仮に100人眷属化しちゃったら、その100人に対し常に力を分配しなきゃダメってこと?」

『ですです。幸いな事に、私はこの力が発動する前に仮面とローブで封印できたので眷属化した者は皆無ですが、知人は眷属が増え続けた結果、干からびて……』

「干からびるって、物騒だなぁ……」


 分け与える力が魔力なのか生命力なのか、その辺は分からないけど、干からびる程って事は眷属化しちゃうと力の譲渡を止める手段が無いって事だよね。となるとダメダメな能力って感じだねぇ。

 わたしと精霊の関係みたいに、必要な時は互いに力を譲渡しあう関係なら良いけど、一方的かつ永久に力を吸われ続ける関係とか無理あり過ぎだわ。





「んで、それが何か関係してるの?」

『えっと、その、大変言い難いのですけど』

「気にしないからちゃっちゃと言う!」

『は、はいっ!』

「……これ、命令になってるのかしら」


 ビシッて感じになるとか、これは嫌な予感が増してきましたよ。まぁ嫌な予感だけど、悪い感じがしない変な状態だけど。


『私とユキ様の間で、その、眷属化が発生してしまいまして』

「発生してしまったって、ほんと意図せずとも発生するのね。んで、眷属化って言うと」

『はい、本来であれば親は私になります。ただ、どうやらユキ様も同様の力を持っており、さらに私よりも強かったため』

「力を反射でもしたのか、逆にわたしが眷属化しちゃったってことか。てか同様の力って……あぁ、狐族のアレか」


 好ましい相手を魅了する力の事だろうね。と言ってもわたしの場合、そんな強いものじゃなくて好感が持たれやすいだけなんだけど。

 とはいえこの力のせいか、それともお母様のくれた魔道具のおかげか、ルミィからの眷属化を防ぐのではなく反射したわけですね。

 あぁ、それでちょっと命令っぽい事を言うと、ルミィが強制っぽい反応をしちゃうわけか。


『正直、私の力は結構強いのですが、こうなるとは思ってもいなかったです』

「だろうねぇ。ん~、でも確かに眷属化の効果か、なんとなくルミィの力が把握できるよーな」

『それは眷属化の能力の一つで、配下の力の制御と調整ですね』

「制御と調整とか、まーた物騒な感じだなぁ……」


 内容はともかく、その力のおかげでルミィの能力を知る事ができるんだけど。

 ただ、う~ん……これがマジなら、きっとお母様のくれた魔道具のおかげだなぁ。


 ルミィはわたしの方が強いって言ってたけど、どうもそうじゃない。

 そりゃ精霊力は段違いだけど、力や魔力はわたしの方が劣ってる。特に魔力はエレン以上という、ちょっとした化け物ですね。

 となると、やっぱりお母様のおかげだねぇ。状態異常とかをことごとく無効化してくれる、わたし専用の超特別製魔道具だし。なにより愛情たっぷり!


「ちなみに、眷属化って解除は?」

『えっと、眷属にした者が亡くならない限りは半永久的です。特別な方法でも解除できるそうですが、すみません、その方法は知らないのです』

「マジか……。となると解除できる可能性はわたしが死ぬしか無さげだけど、わたしって不老不死だからなぁ。老化による寿命で死ぬことが無いから、マジで半永久的って事になるのかも」

『不老不死って、えぇぇぇぇぇぇ!?!?』


 うん、すっごい驚いてる。

 こりゃぁあれだね、眷属化もそうだけど、互いに色々と話し合った方が良いですね。


 しっかし参ったなぁ。ぜーったいにメイから『浮気?』ってまーたジト目しながら言われちゃうよ。

 ミツキが来てからそんなに経ってない状況でだから、さらに言われそうだなぁ……。

母の愛は強し

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