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252話 ただの報告なのに大ごとです?

 車に揺られること1時間くらい? ようやく戻ってきました! 車内でオッサンがぶつぶつ何か言ってたのはキモかったけど……。

 さーてと、それじゃ宿に戻ってお風呂に


「おいおい、どこに行く気だ?」


 あら? ディラックに呼び止められちゃったよ? しかもおかしなこと言ってくるなぁ。


「どこって、宿に戻ろうとしてただけなんだけど?」

「いやいや、ハンターオフィスへの報告があるだろ」

「それは明日にしようと思ってたんだけど」


 ニワトリの事は迎えに来たオッサン達が報告するだろうから、わたしとしては薬草の納品だけでいいハズ。念のため車内で象族のオッサンにも軽く説明し、向こうも納得したし。

 なによりニワトリが他にも大量にいるとか、スタンピードが起こるような緊急事態ならヤバいけど、そうじゃないしね。


「確かに先輩達の報告で済むといえば済むが、丸投げして良いのか?」

「どういうこと?」

「それはだな」


 ディラックが少し屈んで、オッサン達に聞こえないように小さな声で


「恐らくだが、キミの手柄を先輩達は横取りする」

「うそん? でもでも、ニワトリさんの頭はわたしが持ってるよ?」

「そうなんだが、もしも先輩達が『キミは荷物運びとして使っている、コカトリスの討伐証明も預けてある』って報告したらどうなる?」

「どうって、いやいやそんな報告、信じないでしょ?」

「そうでもないんだ。それだけ人獣、つまりキミの様な獣人の立場は弱いんだ。キミが正しい事を言っても、先輩の様な獣人が嘘の報告をすればそれがまかり通る、そんな国なんだよ」


 うへぇ、この国もけっこう腐ってるってことかいな。

 そりゃわたし達の方でも、神聖王国とか傭兵帝国みたいな腐った国はある。奴隷の扱いもそうだし、種族や容姿による差別が未だに残ってるようだし。

 それと同じ感じなのがこの国、それも統一国家という巨大な国で行われてるとか、ほんとヤバいね。


「どうも先輩はキミの事をひどく嫌っているようだから、手柄を奪うだけでなく、ある事ないこと言うかもしれないんだ」

「あー、それって今後の冒険者、こっちだとハンターだっけ? その活動に支障が出るような事をって感じかしら?」

「そういう事だ。オレも信じたくはないんだが、今の先輩の様子を見ると、どうもな……」


 そんなアホなこと起こるわけない! って言いきれない感じみたいね。

 ん~、正直手柄は後からでもなんとかなるけど、評価が落ちすぎて目的に支障が出るのはマズいなぁ。

 しょうがない、面倒だけど報告しに行きますか。……すぐにでもお風呂に入りたい気分だけど、もうちょっとだけ我慢する。





 そんなこんなで報告しに来たわけだけど、時間が時間だからか人が少ないね。これならすんなり報告して帰れそう。

 それじゃオッサンが何かをする前に、サクッと報告しましょう。


「あの、依頼の報告したいんですけど」

「報告ですね。それでは依頼番号と、納品物の提示をお願いいたします」


 そう言って、受付のおねーさんが対応してくれる。

 なるほど、塩対応になるのは獣寄りの獣人だけみたいね。このおねーさんは只人族だからか、特に下に見てくることもないね。

 となると、街中でも獣寄りの獣人には近寄らない方が良さそうだね。余計なトラブルとかごめんなさいだし。


 っと、いけないいけない、肝心の忘れてた。


「あのあの、薬草採取中に魔物に襲われたんですけど、そっちの提出もしても大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。討伐証明があればそちらの提出と、詳しい状況のご説明お願いします」

「ほーい。えっと、倒したのはこのニワトリで~、状況は」

「……はい? あ、あのっ、待ってください! こ、これってコカトリス、それもメガ級とか、どうなっているんですか!? 10級の方が討伐してくるようなモンスターじゃないですよ!?」


 おっと、氷漬けにしたニワトリの頭を提出したら、おねーさんが少し冷静さを欠いた感じになりましたよ。

 どうやらこのニワトリ、本当に強い魔物だったみたいね。しかもこの反応だし、思惑通り一気に昇級もありえるかな?





 おねーさんが慌てて奥に行ってから数分後、戻ってきたと思ったら申し訳ないって感じに、明日また来てくださいと言われてしまった。

 どうやら思ってた以上の事なようで、報酬と昇給の判断に時間がかかるとかなんとか。

 むぅ、初めての依頼だったからか、このお預けはちょっと残念です。


 まぁいいや、二人に挨拶したら宿に戻りましょう。相変わらずオッサンがぶつぶつ何か言ってて気持ち悪いから、あまり長いしたくないし。


「とゆーわけで、また明日、かな?」

「だな。オレ達も明日また来てくれって言われたしな」


 ディラックが頷きながら言い、ルミィもコクコクと頷いてる。

 たぶん、二人も昇級とか高額報酬とかが発生するんだろうね。本人が倒さなくとも、パーティで倒した扱いなら当然ですね。

 にしても、こっちだとエンシェント級に近い魔物は相当ヤバいって事なんだろうなぁ。わたし達の方だと、エンシェント級ぐらいじゃ翌日持越しなんてまずないよ。


「それじゃまたね~」


 手を振ってから、そそくさと宿に向かって移動する。

 うん、数人悶えてたので素早く立ち去りましょう! ほんと、お母様から受け継いだ容姿のせいか狐族のせいか、それとも幼い頃から可愛くなるよう色々と仕込まれてるからか、他国でもわたしの破壊力は強烈だね。まぁ無意識に可愛い仕草をやっちゃうせいもあるけど……。









「おぉ~、なかなか広くて良い感じのお風呂じゃない」


 宿に戻るなり受付の人にお風呂を相談したら、やはり扱いが特別になってるみたいね、豪華な浴場が貸し切りになったわ。

 部屋に備え付けのお風呂が無かったのでちょっと心配だったけど、貸し切りできるなら問題ないね。やっぱね、アリサ達が居ないのに他の人が居る所に入るの、ちょっと抵抗あるからねぇ。


 さてと、まずは尻尾の偽装を解除してっと。念のため尻尾を1本以外隠してたけど、その必要ってあまりなさそうだったなぁ。

 わたし達の方だと狐族ってだけでも珍しいのに、尻尾が複数あるとさらに希少になる。

 だけどこっちだと、わたしの様な人寄りの獣人に対しての扱いが酷いからか、狐族とか尻尾が複数とか興味ないって感じになりそうだし。ほんと世界が違う感じだなぁ。


 まぁいいや、ちゃちゃっと洗いましょー。ごしごし。

 そういえば自分一人で体とか洗うのってひさびさの様な気がうっすら。あーでも、こないだミツキ達救出大作戦の時一人だったか……メイと通話しながらだったけど。

 やっぱりあれだね、小さい頃から家だと誰かに洗ってもらうのが当たり前、外でもアリサが洗ってくれるのが定着し過ぎてるからだね。ほんとわたしってお嬢様だねぇ。

 だからか、ちょっと洗いにくい……。長い髪と大きな尻尾って、自分一人だと結構大変だわ。これはちょっと時間かかりそうだなぁ。





 よっし、時間かかったけどちゃんと洗えた。

 ではではお待ちかねの入浴ですよ! それじゃ思い切ってお風呂にダイブ! うん、アリサが居たら絶対に怒られるね。ばっしゃーんってすごいお湯もはねたし。

 ん~、ちょっと残念だけど温泉ではないっぽいなぁ。お風呂は好きだけど、できれば温泉の方が良かったなぁ。


 そのままぷか~と仰向けで浮きながらお風呂を堪能。うん、コレも怒られるね。

 お風呂でやる事じゃ無いのはわかってるけど、ちょっとだけやりたくなるのです! こういう所、自分が子供だなぁと再認識しちゃうわ。


 そんな事をしてたら


『えっ!?』


 うん、誰かの驚いた声がしたわ。そりゃお風呂に浸からないで浮かんでたら驚きますよね。

 にしても、店員さんが何か持ってきたのかしら? 特に頼んだ記憶はないんだけど。


 浮かぶのを止めて声のした方を見……


「……だれ?」


 そこにはタオルでギリギリ隠れてるけど、見たことが無い女の子がいたわけで。

 店員さんだったら服脱がないだろうし、ほんと誰?

突然の侵入者はある意味定番

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