251話 迎えが来てももめちゃう?
唐揚げやトリカツ、つくねや串焼き、ステーキに水炊きなどを二人にも振舞い、しばしニワトリ堪能会に。
うん、予想はしてたけどこのニワトリ、かなーり美味しい。ひょっとしたらわたしの知ってる高級ニワトリに匹敵するかな? この感じだと卵も美味しいんだろうなぁ。
ん~、サクッとヒトガタで探して、何匹か持って帰ろうかしら。
「それにしても、料理はもちろんだが、凄い道具を持っているよなぁ」
「あむっ? ん……っと、こっちだとこういう魔道具って珍しいの?」
のんきに串焼きを頬張っていたら、そんな事を言われるとはね。
一応料理に使う魔道具が存在するか、使うと罰則があるのかどうか色々と聞きながら、念のため万能型ではなく機能が限定された魔道具を使って料理したけど、それでも珍しかったのか。
「買うことは出来るんだが、凄く高いんだ。例えば火を使って料理をする場合、普通はガスコンロを使う。それに小型コンロの場合、携帯もできるしガスボンベ自体も安くて便利なんだ」
「へぇ……。ひょっとして、家でもガスコンロなの?」
「だな。電磁調理器っていう機械式のもあるが、そっちだと電気代がすごい事になってな」
なんていうか、思いっきり地球的な感じだわ……。確か前世のわたしの家もガスコンロだったし。
ひょっとしたらこっちの国というか世界というかは、地球の延長みたいな感じなのかしら? 車の燃料も化石燃料使ってるっぽいし。これだと異世界期待して転生した人は残念ってなるかもね。
せっかくなのでどんどん聞いちゃおー。
「そういえば、ライセンスって何?」
「ライセンスって言うのは、武器を扱う時のスキルって言えばいいか、ちょっとした技が使えるようになる証なんだ」
「それって、例えば剣から斬撃を飛ばすとか?」
「その認識であってる。ライセンスが無ければ、ただ振り下ろすしかできないんだ。ちなみにライセンスは教官ハンターの講座を受けたのち、試験に合格すれば得ることができる」
う~む、すごくゲーム的な感じですね。
おそらく教官が能力を付与しないと技が使えないって事なんだろうけど、そんな仕組みってありえるのかな?
普通は技なんて修行すれば勝手に身に付くのに、こっちだと修行しても覚えられない、もしくは修行しないで覚えるのが当たり前って事だよね。なんとも変な感じですねぇ。
「もしかして、魔法も同じ感じ?」
「魔法、まぁこっちだとスペルとかマジックなんて呼び方をする人が多いが、魔法は先天性のもので後からは覚えられないんだ。しかも勇者や賢者、聖女といった希少な職業に就くことができた者だけなんだ」
「……という事は、もしもわたしが魔法とかを使ったら」
「注目されるし、素性を調べられる。だがまぁそれだけと言えばそれだけだ。使ったら犯罪者になるってことは無いさ」
なるほどねぇ。それと何となく分かった。
聖女であるミツキの勧誘に躍起なのは、定番だけど聖女は治癒とか補助、祝福なんかが得意って考えてるんでしょう。そのため、パーティに是非とも迎えたいって事になるわけですね。そしてなにより、すっごく可愛いからね!
「しかし、そんな事を聞くってことは……使えるのか?」
「もっち。というか、わたし達の方だと努力すれば誰でも使えるよ。体内に魔力が無い人でも、魔力を疑似的に生み出して魔法を再現するす魔道具があるからね」
「それは羨ましいな。オレも金を貯め他国に行けるようになるか、勇者パーティに誘われて自由に行き来できるようになりたいわ」
ディラックはそんなことを言ってるけど、はて? ルミィは興味ないのかしら? 特に反応してないね。
ひょっとしたら魔法が使える……なわけないか。もしも使えるなら、さっきのニワトリ戦で使ったはずだしね。まぁ、あの仮面で力を封じ込めてる可能性も無くな無いけど……。
「しかしコカトリスは瞬殺、おまけに魔法も使えるとか、ひょっとして期待の新人ハンターってキミの事か?」
「へ? 期待の新人って、何それ?」
真面目な顔してそんなことを言ってきたけど、知りませんよ?
というか
「わたし、結構扱い酷かったんだけど?」
「そう言えばそう言ってたな……。となると別かぁ。噂じゃ強いだけでなく、マジックとサモンができる凄い新人らしいんだ。一体どんな奴なんだろうなぁ」
サモン、たしか召喚の事だっけ。
魔法同様、召喚もこっちだと珍しいだろうから、周囲の期待度が高いのも分かるわ。オマケに強いとか、こっちの人からするとちょっとしたチートっぽい感じですね。
でもまぁ強さもだけど、こっちの魔法や召喚がどんなのか気になるし、ちょっと会ってみたいかも。
のんびりニワトリを食べつつ、質問したり文字を教えてもらったりしていたら、かすかに車がこっちに来る音が聞こえてきた。
「あのオッサンが戻ってきたみたいね」
「オッサンって先輩か? 一体どういう……あっ、オレにも聞こえてきた」
ディラックだけでなくルミィも気付いたようで、コクコクと頷いてる。
距離としてはまだ数キロ離れてる感じだけど、技術がイマイチなのか、それとも別の理由があるのか、結構うるさいエンジン音だから、もう聞こえてきたよ。
「ん~、音からして3台かな? たぶんニワトリを倒すための部隊を率いてきたんだとは思うけど」
「先輩1人じゃ倒せないから当然だな。まぁ、それをキミはあっさり倒したわけだが……」
そう、あのオッサンじゃ敵わないニワトリを、わたしはあっさりと倒してるんだよね。
とゆーことは、おそらく級も上がってくれるはず! できれば大会への出場ができるくらいの級に上がってもらいたいけど、そこは交渉次第かしら?
10分くらいかな? 大きなエンジン音と大量の砂埃を立てながら、3台の大型車やってきて、目の前に停まった。
見たところ装甲車って感じかな? 分厚そうな鉄板だけでなく、屋根やドアには銃っぽい兵器がくっついてる。ほんとファンタジー色皆無ですね!
そんな装甲車から、オッサンと迷彩柄の服にゴテゴテした鎧を付けたオッサンが降りてきた。
こっちのオッサンは部隊長か何かなのかな? すごくデカイ獣寄りの象族だから、力は結構ありそうだね。
「オマエ達! コカトリスはどうしたんだ!?」
「着ての第一声がそれ? ふつーは怪我の心配とかじゃないの?」
「馬鹿野郎! コカトリス、しかもメガ級だぞ! 放置したら近くの街がどうなるか、オマエだって分かるだろうが!」
オッサンがすごい剣幕でそんな事を叫んでるけど、なんていうか、ほんとわたしの知っている冒険者とはえらい違いだわ。
そりゃ魔物の行方は気にかけるけど、その前に被害状況の確認が先でしょ? もしかしたら魔物が強力な毒や呪いを持っている可能性もあるんだから、情報収集も兼ねて確認するのが普通なのに。
まぁ付き合っていてもしょうがないし、かるーく説明して引き上げましょう。
さっきの砂埃のせいでなんとなく汚れた感じがするから、早くお風呂に入って綺麗になりたいのだ!
「んと、ニワトリさんなら……ほいっ」
「「なっ、なぁ!?」」
ポーチに入れておいたニワトリの頭(凍結済み)を取り出して掲げたら、オッサン二人がすごい変な顔しながら尻もちついたわ。そんなに衝撃的なのかな?
「ちなみに胴体の方は、わたし達が美味しくいただきました!」
「ば、馬鹿な! コカトリス、しかもメガ級だぞ!? それをオマエ達3人が倒したのかよ!?」
「あー、先輩、実はちょっと違うんだ」
「そ、そうだよな? オマエ達が倒せるなんて……」
「オレとコイツは手も足も出なかったが、この子は別、一人であっさりと倒したんだ」
「はぁ!? こんなガキの人獣がか!? そんなの、ありえるわけねーだろ!」
「気持ちは分かるが、事実さ。少なくとも、子供の人獣だから弱いってことは無かった」
ディラックが説明しても、オッサンは『嘘だ!』って感じの顔をしてるけど、本当の事だからねぇ。
まぁ見下していた相手が、自分でも敵わない魔物を倒したって言われても信じない、というより信じたくないか。
「とりあえず、詳しい話は帰りの道中にしてくれませんか? わたし、お風呂に入りたいので!」
「この雰囲気で風呂とは、本当にキミはマイペースって感じだな。だがオレも早く帰りたいのは同感なので、先輩方、呆けてないで行きませんか?」
「ありえねぇ……オレ様よりも強いとか、ありえねぇ……」
「このオッサン、重症っぽいね」
よっぽど認めたくないのか、ぶつぶつと何か言ってるわ。なんていうか、ほんと小物って感じだねぇ。
こういう小物って後で何をするか分からないから、少し警戒をしておこうかしら? わたしを倒すのは無理だろうけど、嫌がらせされたら困るからねぇ。
……まぁ。小物過ぎて明日には忘れてそうだけど。
オッサンは超小物




