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248話 最初からトラブルかぁ

少し長いです

 無事依頼を請けることができたので、さっそくやってみましょー。

 内容は定番である薬草採取。科学優先って感じの国でも、薬草って必要なんだねぇ。

 とはいえ、採取可能な場所までは距離があるらしく、移動には馬車ではなく自動車を使うそうで。ファンタジーじゃないですね!


 ただ……


「ったく、なんでオレ様がこんなガキと一緒に移動しないといけないんだか」

「愚痴らないでくれよ先輩。それに自慢じゃないが、オレはソードとランス、それにライフルのライセンスを持ってるからさ」

「あぁ、それならモンスターが来ても対応できるか」


 車は5人乗りの地球に有ったSUVだっけ? ちょっと大きい感じのアレによく似た物。

 そして運転席には冒険者、じゃなくってハンターの、少し感じが悪くてオッサンな虎族の男先輩と、助手席には8級で狼族の少年ハンター君が座ってる。どっちも獣寄りの獣人だね。


 んで、後部席にはわたしと


「えっと、揺る…揺れ……あぁ、揺れるか。つまり組み合わせると『ちゃんと座ってないと揺れたときに危ない』ね」


 そう言うと、隣に座っていた仮面の子がコクコクと頷く。どうやらこの子も8級らしい。

 ベテラン1名に若手2名がサポートにつくって感じかしら。


 しっかしなぁ、規則で7級まではソロは許可されず絶対にパーティを組まないとダメとか、しかも10級の場合は先輩が必ず付くってのはねぇ。

 わたし一人ならこんな乗り物使わなくても、飛んで行けばすぐに着いてすぐに採取できるのに、ほんと厄介です。


 とはいえ規則は規則、ちゃんと従います。

 それに、仮面の子が文字を教えてくれるので、これはこれでよかったのかもしれない。文字の習得は早い方が良いし。


 ただなぁ、こっちの文字、ほんと意味が分かりません!

 普通は単語や動詞、接続詞などを組み合わせる形なのに、こっちは違いすぎる。そもそも単語が単語じゃないし……。

 〝私〟という単語の場合、〝わ〟と〝たし〟で別れていて、しかも象形文字と表音文字が組み合わさった様な、よくわかんない文字になってる。

 ここまで複雑かつ独特で奇抜な文字だと、翻訳の魔道具や術式使ってもわたし達の文字に訳すなんて無理だわ。


 それでも、だんだんと理解できてきたのは幸いかな。さすがわたし、自画自賛しちゃう頭の良さ!

 とはいえ先は長い。現に仮面の子の名前、訳せて無いんだもん……。





 揺られること1時間、ようやく目的地に到着。

 やれやれ、硬い座席にずっと座ってたせいで、お尻がちょっと痛いです。長時間の移動なんだから、もっと快適な座席を提供しなさいよ! ってマジに思うわ。


「もう疲れたのか? ったく、ガキはひ弱すぎてやってらんねーぜ」

「年齢にひ弱とか関係ないと思うんだけど……」

「だが、オマエ以外は疲れてねーぞ?」


 むぅ、たしかにそうだけど、なんかムカッとします!

 というかこのオッサン、初対面の時からわたしに突っかかってくるんだよなぁ。わたしが人寄りの獣人だから、変な敵対心でも持ってるのかしら?


「まぁまぁ。それでキミ、どの薬草を採取するんだい?」

「んっと……この薬草です」

「ふむ、この薬草ならこの辺りに沢山生えてるから、きっとすぐに終わるかな。というかそのポーチ、見た目の割に大きなものも入るんだな」


 ポーチからギルドで借りた辞典を取り出したけど、なんか珍しいみたいね。

 こっちにはこういう道具箱って無いのかな? まさか全住民アイテムボックス持ち……なわけないか。


 まぁいいや、ちゃちゃっと採取して依頼達成しちゃいましょう。

 とはいえ、こんな依頼ばかりだと大会に参加可能な級まで昇格するのは困難だから、何か方法を考えないとダメだけど。









 採取を初めて30分くらい、依頼分は採れたかしら。

 本数でなく重さだから結構採らなくちゃいけなかったけど、何とかなるものね。


「ったく、ようやく終わったのか。遅すぎて三度寝するところだったぞ」

「そう言われましても?」

「そうですよ先輩。一人で採取するんだから、それなりに時間がかかって当然、というかだいぶ早いですよ」

「はぁ? たかが薬草採取だぞ? おまけにモンスターも来ない状況だぞ? だったらもっと早く済むだろうが」


 うへぇ、ほんとこのオッサン、わたしに対して難癖付けるばっかだわ。

 まぁわたしもオッサンの前で力を見せたくないから、術式もヒトガタも使わずに採取してたけど。とはいえ、それでも早い方だと思うんだけどなぁ。


「まぁいい、終わったんならさっさと車に乗せろ。こんな所にいつまでも……」

「どうしたんですか先輩? 険しい顔になってるけど」

「いいかオマエ達、その場を一歩も動くな……奴に気付かれる」


 はて? オッサンがすごいピリついてるんだけど、どうしたのかな?

 気付かれるって事は何かを警戒してなんだろうけど、う~ん……。


「ひょっとして、こっちを見ているあの魔物かな? ゆっくり近寄ってきてるから、既に気付いてるみたいだけど」

「は? おいガキ! どうしてモンスターの場所が分かるんだ!」

「え? だって魔物の探知を常時しておくとか、そんなの当り前じゃ?」

「だとしても、なんでオマエが分かるんだよ! くそっ、身なりからしてどっかの金持ちだと思ってたが、オレ様の持っているモンスターサーチよりも上等なのを持ってやがるのかよ」


 モンスターサーチ? オッサンが腕時計みたいな機械を操作してるけど、それのことかな?

 とゆーことは、術や魔法でなく機械で探知してるってわけね。そしてその範囲は、わたしの術式よりも狭いと。


 しっかしこの反応、てっきり新人に緊張感を与えるため、探知したけどあえて放置しておき、帰る頃に襲ってくるという物語を描いてると思ってたんだけど、そうじゃないのね。

 しかもこの様子、オッサン達だと倒せない強さって事かしら?





 なんてことを考えてたら、やって来ましって、え?


「こ、コイツは!?」

「先輩、ヤバいですよ!」


 二人は恐怖し、仮面の子も少し震えてるけど、う~ん?


「大きなニワトリさん?」

「馬鹿野郎! こいつはコカトリス、しかもメガ級だ!」

「へ? これがコカトリス?」


 どう見ても大きくて程よく脂肪がのったニワトリなんですけど? 赤いトサカもあるよ?

 なのにコカトリスって、どういう事よ……。


「クソッ! ノーマルならオレ様1人でも何とかなるが、メガじゃ無理だ! 倒すなら最低でも、オレ様クラスが10人必要じゃねーか!」

「そんなにですか!? ど、どうするんです先輩!?」

「仕方がない、オレ様が救援を呼んでくる。オマエ達はその間、コイツの攻撃に耐えろ!」

「耐えるって、そんな無茶な!?」

「なに、オレ様単独では耐えるのもギリだが、幸運なことにオマエ達は3人だ! つまり、3人が協力すれば耐えきることができる!」


 いやいやマテマテ。オッサンと少年が話してるけど、ツッコミありすぎるんですが。

 確かに人数は上かもしれないけど、オッサン以下(という設定)なわたし達3人が集まっても、実際はオッサン1人未満じゃないの? なのに耐えきることができるって、意味が分かりません!


 というか


「それならオッサン……じゃなかった、先輩さんが残って耐えた方が良いんじゃないですか?」

「馬鹿かオマエ! 車の運転ができるのはオレ様だけだ! 運転ができないオマエ達じゃどうしようもないだろ!」

「運転もそんなに複雑そうじゃなかったんだけど……。とゆーか、それなら全員乗って逃げれば?」

「それじゃ追い付かれるだろ!」


 あー、うん、これ以上は聞かなくてもわかったわ。

 要はオッサン、自分が助かりたいが為に、わたし達を生贄にって事なんだね。ほんと腐ってるなぁ。





 その後もオッサンが少し叫んでたけど、うん、ニワトリがずいぶんと近くまで来たね。


「クソッ、もう時間がない! オマエ達、覚悟は決めたな? ならば……行くぞ!」

「ま、まってくれ先輩!?」


 少年の叫びは通じず、オッサンが懐からボールみたいなのを取り出し、ニワトリに投げつけた。

 ボールはニワトリに当たったとたん、勢いよく煙を吐き出したわ。どうやら煙幕みたいね。


「それじゃオマエ達、任せたぞ!」

「ちょっと待ちなさいよオッサン! って、あーあ、行っちゃった」


 そそくさと車に乗り込んで、猛スピードで去っていったわ。まぁわたしも本気で止める気はなかったけど。

 だってこれはチャンスだからね。オッサンが無茶苦茶な理由付けて逃げ出すくらいの獲物って事は、サクッと倒したら実力も認められ級も上がるはず! そう、わたしには時間が無いのだ!


「おいおい、どうするんだよ……。一か八か、オレ達も逃げるか?」

「んっと、たぶん追い付かれると思いますよ。しかもこのニワトリさん、どうやら挑発してるようで、今のボールも避けずにわざと受けた感じだし」

「挑発って……オレ達程度はいつでも殺れるって事かよ!?」

「そう考えてるんじゃないかな? それに、獲物に対しては恐怖と絶望を与えたいとか、そんなヤバイ思考もあるんでしょ。逃げきれそうで逃げきれない、倒せそうなのに倒せない、みたいな」


 魔物は弱肉強食がすごいからか、強者は弱者を徹底的に追い込むって思考を持つ個体が多いんだよね。

 世界が変われど、こういう所は共通っぽいのは良い情報です。見たことが無くとも、所詮はただの魔物って事も分かったしね。


 っと、いかんいかん、研究者魂に火が付きそうになっちゃったわ。

 本当なら細かい思考なんかも調べたいとこだけど、そういう空気じゃないからね。





 さてと、それじゃサクッと倒し


「こうなりゃヤケだ、やってやる!」

「えっ!?」


 少年だけでなく、仮面の子までわたしの前に出ちゃったんですけど!?


「あの、ひょっとして戦う気?」

「勝ち目は無さそうだが、〝もしかしたら〟があるからな!」


 少年の言葉に仮面の子も同調したのか、頷いてる。

 そして少年は機械が組み込まれた剣を構え、仮面の子はなんだろ、よくわかんない赤い剣を手に持ってる。何でできてるんだろ?

 そんな二人だけど、覚悟を決めてる感じだね。まぁわたしの実力知らないだろうから、二人が死を覚悟するのも当然なのかも。このニワトリ、エンシェントほどじゃないけどそこそこ強そうだし。


 ん~、せっかくだし、こっちの冒険者の実力をちょっとだけ見てみようかな。こっちについて、あまりにも情報不足だからねぇ。

 ではでは、危なくなったらすぐ入れるように準備だけはしておいて、さーて情報収取のお時間ですよ!

ニワトリも進化すればコカトリスになり……ません

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