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245話 転移できても制限付き?

 客室で紅茶とお菓子でのんびり待つこと数分、アリサに案内されてサレストがやってきた。

 だけど、あれ?


「なんでベアトリーネも居るの?」

「居たら悪いのかしら?」

「いや、悪いっていうか、ふつーに疑問なだけなんだけど……」


 ベアトリーネはサレストに会いたいとかなんとかそんな感じだったけど、ここに連れてくるとはねぇ……。

 確かにまぁ予想はしてたけど、その、う~ん。


「腕を組んでいるという事は、お二人はそういう関係ですの?」

「まぁ、その、なんていうかだな」


 サレストが少しモゴモゴしてますよ。そしてベアトリーネの方はそっぽ向いてるけど……赤くなってるね。

 これは、はは~ん?


「付き合いだしたってとこかな?」

「笑ってくれても良いが、その、最初はセイリアスで保護する対象程度の考えだったんだが、話し出したら意気投合してな」

「保護対象でなく、お相手として見るようになった、という事?」

「そういう事だ。だからというわけじゃないが、彼女が再び悪魔の力を欲しないよう、僕だけでなく、セイリアスとして対応していくつもりだ」

「信じてもらうのは難しいとは思うけど、ワタクシもそのつもりよ」


 さっきとは少し違い、真面目な顔でわたしの目をしっかりと見た状態で言ってきたね。

 半端な気持ちで言ってるわけじゃなさそうだし、これなら大丈夫かな。


 正直、ベアトリーネがまた敵になると脅威になる可能性もあるからねぇ。

 ベアトリーネって進化してないから、何かを期に進化をし、その状態で悪魔化したらどうなるか、ほんと未知数すぎるわけで。そういう危険は出来るだけ回避したいです。


「まぁ悪魔関連については分かったわ。とりあえず入口に立ったままでなく、そっちに座ってちょうだい。ノエル、二人にも飲み物を」

「了解ですよー」


 わたし達の座ってるソファの対面に座るように促したけど、うん、二人並んで座るのね。

 これは思った以上に進展してるのかしら? お幸せに~って感じですね。





 紅茶を飲んで気持ちを切り替えたところで、次の話題に入りましょうか。


「んで、今日来た理由は何? ベアトリーネの事を任せてくれって宣言だけじゃないよね?」

「彼女の事も伝えたかったのは事実だけどな。まぁ本題だが、昨日の事は僕も聞いたんだが、魔王を倒す気なのか?」

「成り行きでって感じだけどね。ミツキが関係する事じゃなければ流してたけど」

「なるほど。となると、今は魔王を倒しに行くにも手段が無くて困ってる、といった状態かな?」

「その様子、お見通しみたいね。その通りで、正直お手上げなのよ。転移門以外の移動手段が全滅とか、ほんと参ったわ」


 自分が飛んで行くのもダメ、飛空艦や船のような乗り物も無いとか、今までなかった状態だよ。


「転移門以外の移動では、なぜか都市どころか陸地にすらたどり着けないようだからなぁ」

「そして肝心の転移門の使用許可は、今申請しても相当先というのがね」

「それなんだが、実は方法が無いわけじゃない。ただ、少し面倒な方法になる」

「面倒かぁ……。ちなみにどんな方法なの?」

「面倒と言っても、君ならなんとか思うかな。とりあえずこれを見てくれ」


 そう言ってサレストが魔道具を起動し、見たことが無い地図を表示した。いったいどこの地図なんだろ?


「これは昨日出席した勇者達の居る世界の地図だ」

「これがそうなの? よく入手できたわね」

「そこはセイリアスだからな。新たな販路の開拓には、レグラスやアルネイア以上に力を入れている」


 少し誇らしげに言ってるけど、たしかに商売とかはセイリアスって三国で一番だからなぁ。

 良し悪しは置いといて、うちの国は絶対取引しない神聖王国や、傭兵帝国なんかとも商売しちゃってるし。


「それでだ、昨日参加した勇者達が使う転移門があるのは、この地図でいうと東側にある大陸、魔王という存在もこの大陸にいるらしい。だが申し訳ないが、そこへの転移門の使用許可はセイリアスも持っていない」

「あらま。さすがのセイリアスでも無理だったの?」

「それが、どうやらこちら側で使っている転移門とは仕組みが違うらしく、正確な回数は分からないが使用限界がすぐにくるらしい。つまり、一定人数が使用したらその転移門は廃棄、新しい物を作る必要があるそうだ」

「廃棄って、転移門を使い捨て感覚で使用しているの!? そんな無茶苦茶な……」


 ちゃんとした転移門が作れない、もしくは未完成品を使って転移を無理やり行ってるんだとは思うけど、ほんと無理ありすぎるわ。

 おそらく安全性は最小限、同時転移者数も少ないんだろうなぁ。転移できれば良いって考えで作ってそうな気もしてきた。


「だからか、セイリアスも許可が下りるのは当分先の状態なんだ」

「そっかぁ。でもでも、方法があるって事は?」

「うむ。地図の中央に位置する大陸、ここの転移門の使用許可は取ることができる」

「なるほど、つまりそこへ転移した後、飛んで行くなり飛空艦を使うなりして、魔王って奴が居る大陸に移ればいいわけか」


 直接は無理でも、向こうの世界に行っちゃえば何とかなるって事だね。

 あれ? だけどオカシイナ。


「それだけなら面倒でもない気がするんだけど?」

「実は向こうもこっちと同じで、国ごとに入国審査がある。飛んで行ったら不法入国にもなる」

「てことは、向こうに付いてもすぐに魔王って奴が居る大陸に飛べないってこと?」

「そうなる。そして問題なのは、向こうではこちらの権力などが一切通用しないどころか、そもそも権利が無い。ということは」

「あぁ、そういうことか。それはちょっと困ったわ」


 権利が無いって事は、転移した先の大陸以外、というか他国への移動が制限される可能性が高いって事ね。あくまで転移した国への入国許可が下りるだけで他国はありませんよ、って状態かぁ。

 サレストも少し苦々しい表情してるから、おそらくセイリアスも苦労してるみたいね。向こうへの足掛かり的なのは出来たけど、その先がまだまだって感じかな。





「う~む、面倒というか、詰まった感じがするんだけど」

「そう思うのもしょうがないか。だが、面倒といったには訳があって、実は他国へ合法的に移動する方法がある」

「あるなら先に言いなさいよ!」

「すまない。その方法だが、転移先の国で10日後、戦技大会、まぁ武道大会といった方が良いか、それが開催される。そして大会の上位者は魔王討伐隊の一員に入ることになるらしく、魔王が居る大陸へ移動する権利を獲得できるそうだ」

「うへぇ、どっかでありそうな典型的な流れだなぁ。でもまぁその大会にわたし達が出て、誰かがサクッと優勝すれば良いってことね」


 よくある流れだけど分かりやすいわ。

 それにまぁ、わたし達の実力なら大会の上位を占拠できるだろうから、既に移動する権利を得たと言っても過言では無いね!


 なのに、あれ? サレストが申し訳ないって感じの顔してるんだけど、どういう事かな?


「申し訳ないんだが、実は参加できるのは一人だけ、というより用意できる転移門の使用許可は一人だけなんだ」

「うそん!? でもでも、普通はこういうのって国単位での申請だから何人も」

「あぁ、たしかに許可は複数入手したんだが、その、既に使用先が決まっていてな……」


 ガーン。

 タイミングが悪いというか運が無いというか、ちょっと残念過ぎるんですけど。


「もともとこの大会にはセイリアスの冒険者が参加する予定で、既に何人かは向こうへ転移している。現在は残り一枠をどうするかって状態なんだ」

「まじかぁ。転移してなければ強奪できたのに……」

「お嬢様、そういう悪い事は考えたらダメですよ?」

「分かってる、分かってるんだけどー」


 だって一人だけしか行けないってのはちょっと嫌すぎ。

 今回は宣言したのもあって、わたしが行くのは確定だけど、アリサもエレンも居ないってのはなぁ……。


「ちなみにミツキさんは大会が行われる当日、昨日の勇者達が護衛しながら転移する事になると思う。だが残念なことに、事前の使用許可が無くとも転移できるのは勇者と聖女の特権らしく、他の者が便乗するというのは出来ないようだ」

「むぅ、勇者を脅して強引にってのも無理とは」


 転移の許可証を奪うとかも一瞬考えたけど、またアリサに注意されそうなので言わないでおこう。まぁ口に出さなくても察していたようで、ジッと見られちゃったけど。





「それとだが」

「まだあるの!?」


 思わず身を乗り出しちゃったけど、ほんとどんだけ制限あるんですか?


「実は大会への参加資格は向こうの冒険者、それも上位の者しか無理なようで」

「てことは、向こうに付いたら冒険者登録して、さらに10日以内に級を上げないとダメってこと?」

「そうなる。だから少し面倒と言ったんだ……」

「なっとくだよ……」


 転移するだけでも条件があるのに、さらに目的地に付くまでも手順が必要とか、結構大変。

 なにより


「ん~、行くってなるとわたし一人なのかぁ……」

「少し不安ですわね」

「やっぱり?」

「だってユキさんですわよ? わたくし達の知らないところで言寄られたり求愛されたり、絶対にありそうですもの。不安が一杯ですわ!」

「そっちの不安かいな……」


 いやまぁ冒険者で失敗するとか、大会ですぐに敗退とか、そういうのは無いと思うけどさぁ……。

 そもそもわたしの容姿、向こうで通用するのかしら? ちょっと試してみたく


「お嬢様、まさか良からぬ事を試そうとしてませんか?」

「そ、そんな事ないよ!?」


 いかん、アリサだけでなくエレンやノエル、それにレイジまで疑った眼差しをしている。そんなに考えてること、顔に出てたのかなぁ?

 だけど、わたしも研究者の端くれ。狐族の魅了効果が別世界でも通用するのか、どうしても気にな


「お嬢様?」

「あ、はい、ごめんなさい。実験しないでおきます」


 ほんとバレすぎだよもう……。

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