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242話 勧誘は断固お断りなのです!

少し長いです

 10人かな? 一直線にこっちに来るねぇ。

 構成から、おそらく2パーティっぽいのと、他の連中よりかは強そうな感じだね。

 嫌な感じはしないけど、ミツキを狙ってきた時点でわたしの敵ですね!


 そして案の定、こっちに来たらミツキの方を向いて手を差し出し


「「うちのパーティに入ってくれないか!」」


 うん、見事にハモったねぇ。さすがに予想外だったのか、二人が少しギョッとした感じに見合ったわ。お友達でもないみたいね。


 来た奴の片方はいかにもって感じの、おそらくイケメン枠に入るであろう金髪の男。しかも細マッチョっぽい感じ。

 パーティの構成は、こいつ含めた男2に女4みたいね。職業は分からないけど、男が前衛で女は後衛って感じがするわ。仲間であるもう一人の男が筋肉ダルマだし、さすがにこれが回復後衛は無いでしょう……無いよね?


 もう片方はこれまたテンプレ的な、美女枠に入るであろう黒髪の女。体型は少しスレンダー寄りだね。

 こっちのパーティは女3に男1だね。男は斥候かな? ガタイが良く身長がでかい女が盾役で、小柄な女が中衛兼回復役ってとこかしら。


 しっかし見たところ、両陣営ともにミツキを入れる意味ないんじゃないの?

 男パーティの方は『僧侶です!』って感じの女が居るし、女の方も小柄の奴が『回復も余裕な賢者です!』って感じだし。

 現状が手詰まりでうまくいかないパーティならわかるけど、どうもそういう感じはしない。ギスギスもしてないし、増員の意味がほんとない感。

 なのにミツキを勧誘とか、一体どういう事なんですかね? わたしに対する嫌がらせですか?





 さてと、二人いっぺんだったせいかミツキが少し怯えちゃってるし、どうしてくれようか。

 自分で対処するってがんばろうとしても、さすがにこれじゃ無理だよね。だからか、わたしに思いっきり抱きついてきちゃったわけで。

 ん~、やはりアリサとノエルに対処してもらっちゃおうかなぁ。


 なんて考えてたら、勧誘してきた二人もミツキの感情を察したのか、『ごほん』ってわざとらしく咳をしてから、ミツキを再度見てきた。これは交渉の開始かな?


「まぁ先に自己紹介を済ませようか。俺の名は」

「あ、あの、お断り、します、ね?」

「なっ!?」


 おっとミツキさん、男の方が自己紹介しようとしたところに割り込んで、しかも即お断りしちゃったよ。この対応は予想できなかったようで、男がすごい間抜けな顔になったわ。

 ただまぁ勇気を振り絞るためか、わたしに抱きつく力もちょっと強くなったけど。


「ま、待ってくれ、もう少し話を」

「嫌、です」

「じゃぁ私の方が」

「あなたも、です」

「ちょっと!?」


 あらまぁ、女の方も間抜けな顔になったわ。でも、自己紹介すら拒否するってなったらそうもなるよね。

 対するミツキは相当がんばったようで、ちょっとわたしにもたれ気味になってるわ。少し弱気な性格だし、こうなるのはしょうがないね。


 さてと、ミツキが速攻断ったけど、それで引いてくれるわけないか。

 間抜けな顔をしていたのも束の間、気持ちを切り替えたようで、また何か言ってくる気配。

 とはいえミツキはもう限界だし、ここからは~


「アリサ、対応お願い」

「お任せください」

「私はいいんですかー?」

「今の状態でノエルまで対応しちゃうと、過剰戦力になるでしょ?」

「そんなことないですよー。ちょーっと援護射撃をするくらいですしー」

「その援護射撃をいつもやり過ぎてるのは誰よ……」

「いやぁ、それほどでもないですよー」

「褒めてないからね?」


 前向きなのはいいんだけど、前向きすぎもどうなのかな?

 そんなノエルはエレンに仕えているとはいえ、うちのメイドさんなのは変わりない。

 そういうのもあって、わたし関係の対応をアリサと一緒にやることも多いんだよね。まぁわたし関連ってエレンも飛び火してる事が多いから、一緒に処理した方が効率的ってのもあるけど。


 だけど、そこはいつもどこか抜けてる感じのノエルさん、対応がちょっとやり過ぎなことが多いんだよねぇ。

 アリサも結構きつめな対応するけど、ノエルは心を圧し折るって感じだからなぁ。本人は圧し折る気は無いんだろうけど、割とズカズカッと言っちゃう。悪気はなくとも加減ができていない感じかな? 完璧なメイドになるにはまだまだ遠いね。





「それで、お二方はミツキ様を勧誘されたいのですか?」

「そうだが、君は何だ?」

「私はこちらに居られるお嬢様、ユキ様の専属メイドです。そしてミツキ様は御覧の通り、お嬢様と親密な間柄です」

「つまり、聖女様が疲れてるようだから、そこのお嬢さんが代わりに対応、そしてその代理があなたってわけね」

「その通りです」


 二人に対し、アリサが淡々と対応してるねぇ。すごい事務的になってるあたり、アリサはこの二人の事が嫌いみたい。二人はその事に気付いてないようだけど。

 こういう所、ほんとアリサらしいわ。アリサの好き嫌いの大前提って、わたしの利になるかどうかを第一に考えてるからねぇ。

 わたしの敵になったり、わたしが不利益になったりする存在は嫌悪。逆にわたしが好いてたり、利益になったりする人に対しては愛好って感じ。


「最初にお伺いしたいのですが、ミツキ様を求める理由は何なのですか? 聖女が必要でしたら、他の方でも良いと思うのですが」

「もっともな意見だ。まぁその答えは簡単で、お告げがあったんだ」

「私もだね。お告げで『黒き瞳を持ち、精霊に愛されし異世界の聖女を見つけ、共に歩みたまえ』というのがあってね」

「俺のも同じだ」


 二人が真面目な顔でそんなことを言ってるけど、お告げねぇ。


「お告げとは誰からですか?」

「もちろん〝神〟だ」

「はぁ、神様、ですか」

「その反応、信じていないのか? この国では知らないかもしれないが、神は実在する。そして神の声を聞くことができる存在、それが勇者と聖女だ」


 神の声が聞こえる存在?

 神っていうと転生うんぬんで能力与えるとかのアレだろうけど、特別な人しか聞こえないなんてあったかな? 精霊神みたいに特定の人の前にしか現れないとか、声をかける相手を絞ってるならわかるんだけど。


 とゆーか精霊に愛されしって、つまりこの人たちは顕現していない精霊が見える、もしくは調べる方法があるってことか。そうでなければ、他の聖女になったクラスメイトにも声をかけるはずだし。

 他の聖女も何らかの能力はあると思うけど、精霊が好いてる聖女ってミツキだけだからなぁ。


「ですが、なぜ聖女を求めているのですか? お告げがあったと仰られましたが、そもそもなぜお告げがあったのですか?」

「それは簡単よ。私達は〝魔王〟を倒すため、聖女の力がどうしても必要なの」

「勇者というのは、聖女が居ることでその力を何十倍にも高めることができる。そして神に告げられし聖女であれば何百倍と、他の聖女とは比べ物にならないほどの力を得ることができる、そう伝わっているんだ」


 はいぃ~?

 なんていうか『魔王って何よ!』ってのと、『聖女が居るだけで強くなるって何よ!』の二段構えだわ。

 どっちも聞いたことないんだけど、どうなってるの?


 なんとなくレイジの方を見たけど、レイジも首を振って『そんなの知らないですよ』って小声で言ってきた。

 魔王はともかく、聖女が居れば強くなるってのが本当にあるのなら、勇者族であるレイジも強くなるはず。

 だけど強くなった様子はないって事ね。ひょっとしたら、ミツキと知り合って日が浅いってのも関係あるかもしれないけど。


 それにしても〝魔王〟ねぇ……。


「ちょっと聞きたいんだけど、魔王ってどういう存在なの? とゆーか、ほんとにそんな奴いるの?」

「魔王を知らないとか、こっちの人たちはずいぶん平和ボケしてるのね。まぁせっかくだから教えてあげるわ、狐のお嬢ちゃん」

「なんかすごい上から目線で言われた!」


 アリサに任せてたけど、つい気になって尋ねたらこの対応ですよ、完全に下に見られてますよ。

 まぁわたしの外見って強そうでないから納得する部分ではあるけど、ちょっとムカッとしましたよ。


「魔王ってのはその名の如く、魔物を統べる王。そして統べるだけでなく、魔物を生み出す存在でもあるのよ」

「へ? 魔物を生み出すのが魔王になってるの?」

「ちょっとお嬢ちゃん、そんなことも知らないの? 平和ボケどころか、基礎知識すらないの?」


 むっかー!

 この女、というか男の方もだけど、完全にわたしをバカにしてますね?


「お嬢様、怒っても手を出したらダメですからね?」

「分かってる、分かってるけどー」

「この状況でユキさんが手を出してしまうと、レグラス王国からの宣戦布告になりますものね」

「今日はレグラスの代表で来てますからねー」

「ですので、わたくしが代わりに」

「エレン様がやってもダメでしょうが……。僕も抑えてるんで、ここは堪えてくださいよ」


 むぅ、わたしとエレンをみんなが止める感じになっちゃったわ。

 こういうとこ、ほんとダメだなぁ。大人の様に冷静な対応を維持できないとか、自分がお子様だっての自覚しちゃうわ。





「まとめますと、お二方は勇者で、そして魔王を倒すために聖女であるミツキ様の力を借りたい、そういう事ですね?」

「その通り。魔王は罪無き者を容赦なく、魔物を使役し一方的に蹂躙する。それこそ小さな子供に対してもだ。俺はそれが許せないし阻止したい」

「私もよ。なにより、魔王が生きている限り平和は訪れない。ならば平和のため私たち勇者が戦う、それは当たり前の事」

「だが、今の俺達では魔王を倒すのは確実でないし、救えない者も居ると思う。故に、聖女の力が必要なんだ!」


 ビシィッ! って感じに二人が言いきったけど、なんだかなぁ。

 素晴らしいお考えでって感じもあるにはあるけど、うさんくさい。こういう『いかにも正義の味方』って感じの奴、信用できないわ。

 顔も名前も知らない者の為とか、世界平和の為とか、ないわーって考えちゃう。こう考えちゃうあたり、わたしってひねくれ者なのかしら?


 にしてもこいつら、ミツキを諦めるって気は無い感じ。

 しかもどんだけ必要かを熱心に語りだして、ミツキがだいぶ参ってきてる。

 同時に、やっぱりわたしもイライラ。


 これ以上聞いてるとキレちゃいそうだし、もういっそ


「分かった。それじゃその魔王、わたしが倒すわ」

「「えっ!?」」

「お嬢様!?」

「だってアリサ、よく考えてみて。断ってもミツキを諦めてくれない感じでしょ?」

「確かにそうですけど……」


 こいつらは『魔王を倒す』って使命に燃えすぎてるからか、ミツキを絶対に仲間にするって感じなんだよね。

 だったら仲間にしたい理由を無くしちゃえばいいのだ。


「魔王ってのが居なければ、ミツキを諦めるんでしょ?」

「それはそうだが、子供の遊びじゃないんだぞ?」

「魔王ってのはすっごい怖い存在なのよ? お嬢ちゃん分かってるの?」


 う~ん、完全に子供扱いされてる……子供だけど!

 かといって実力を示すなんてこと、ここじゃ無理だし。むぅ、どうしたらいいんだろ。


「それなら、合同で倒しに行くでどうかな? 二人は聖女であるミツキさんと行動を共にできるので当初の目的を満たせるし、ユキ様に丸投げという未知の手段を取らなくて済む。ユキ様の方もミツキさんを渡す必要が無いから、二人にミツキさんを奪われる心配がなくなる。これなら双方にとって良いんじゃないかな?」

「そう言われるとそうかも? レイジもなかなか考えるね」

「妥協案だけどね。本当は妥協する必要はないかもだけど、ずっと平行線だしさ……」


 レイジが苦笑いしてるけど、たしかにそうね。

 本来であればわたしに味方するで決定なんだけど、この二人がどうにも下がらないからねぇ。

 力ずくで解決はできるけど、レグラス代表的なのもあって穏便に済ませないとダメだったし、これが一番の方法かも。


「当初の目的とは少しずれたが、まぁしょうがないか」

「私もそれでいいわ。まぁ足を引っ張られたら困るのに変わりないんだけど」

「分かりました。では連絡方法ですが――」


 うん、後はアリサに任せておきましょう。わたしが何か言いだすと、なんか余計な問題が起きる可能性もありそうだし。

 しかし魔王、ねぇ……。違和感がすごいし、裏事情がありそうだなぁ。

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