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241話 もめてるよーで

少し長いです

 貴族さんの相手もある程度終わったし、そろそろミツキを……。

 むぅ、人が多い。会場を見渡したけど、勧誘目当てがさっきよりも増えたのか、ほんと人だらけ。人混みが苦手なわたしにはちょっときついです。


「遠くから来てる人も多いし、そこまでして勧誘したいのかなぁ」

「ですわねぇ。ひょっとしたら、力でなく知識が目的かもしれませんわ」

「知識っていうと異世界の?」

「ですわ。確かミツキさん達が居た世界は〝科学と化学〟がある程度進んでいますのよね?」

「だね。あの世界には魔法や術式ってたーしか無かったから、他の技術で補う形だったよ。普段使う物もそうだけど、医療なんかもだね。治癒魔法とかは当然無かったから、機械と薬、それとお医者さんの技術でがんばってたよ」


 今から思うと、ほんと地球の人ってがんばってたなぁ。

 こっちにも医学自体はあるけど、治癒魔法やポーションを活用するのが主になってる。

 それが当たり前って考えちゃってるからか、治癒魔法もポーションない環境でよく治してたなって思っちゃう。


「それに勧誘されているの、大国以外の方ですわよね。きっと大国に頼らない、もしくは上回る技術を欲しているのだと思いますわ」

「確かにそうかも。ダメだなぁ、わたしって何でもありなレグラス生まれだからか、どうもズレがあるわ」

「ユキさんの場合、ご家族だけでなく、ユキさん自身の技術も高いですものね。ズレてしまうのはしょうがないですわ」

「そのせいで割と世間知らずになったりするけどね……」


 環境が特殊、というか恵まれすぎてるとダメだねぇ。

 他者を見下すとかはないけど、何でもかんでも求める水準が高くなっちゃう。

 まぁ幸いなことに、わたしにはズレを埋めてくれる人が周りに居るから大丈夫! 人に丸投げなのはちょっと恥ずかしいけど、こういうのは染みついた考えなのでどうにもならないのだ! ……ただの開き直りだけど。





 そのまま会場を見渡して……あぁ、やっと見つけた。


「う~む、ミツキを見つけたのは良いけど、なんかもめてるっぽいね」

「ですわね。マナミさんとコータさんが間に入り、他のお友達との仲裁をしている、そんな感じですわね」


 エレンが言うように、クラスメイト同士の言い争いをマナミとコータが鎮めてる感じだわ。

 だけど何で言い争いになってるんだろ? 全員じゃないっぽいけど、状況がよくわかんないわ。


 とりあえずミツキがオロオロしつつ、わたしと目が合ったので手招き。

 うん、少し速足でこっちに来たね。


「ユキくん、助けて!」

「ふぁい?」


 合流するなりいきなり助けてって、ナカナカとんでもない状態ってこと?


「えっと、どういう状況なの?」

「それがね、襲ってきた子が信用できない、というのが切っ掛けだったんだけど……」

「あぁ、それは確かに危惧していたことだね。しかも命に係わる事だから、許せないって人も居るだろうねぇ」

「でも、そっちは大丈夫、なの」

「ひょっとして、マナミさん達がおさめたんですの? 確か〝委員長さん〟でしたっけ?」

「うん。だけど、その、私達が……」

「特別扱いされてズルい、とか?」

「そう、なの……」


 ミツキがしょぼんとした感じで言ってるけど、なるほどねぇ。

 マナミとコータは真面目というか頭良いから、論理的な感じに説得したんだとは思う。そのため納得する人が多いとは思うけど、捻くれた奴は『世界屈指の権力者がお友達に居ると、言うことも高潔だね』とか言ったんだろうなぁ。そういう妬みというか僻みをいう奴、心当たりあるもん。


「もしかして、矛先がミツキさんになったんですの?」

「うん。マナミちゃん達と違って、その、私は」

「わたしが完全に特別扱いしてるからねぇ。だけど、日本に居た頃を考えれば、納得する人が多いんじゃないの?」

「それが、納得して味方に付いてくれた子と、納得いかない子と、どうでもいい子が言い争いだしちゃって」

「あらまぁ、すごい泥沼になってそうですわ」

「しかも醜そうなね」


 わたし達は少し呆れ気味になったけど、当事者たちはガチに言い争ってるだろうから、ただ見てるだけってのもダメそうかなぁ。

 とりあえずそうね、しょぼんとしたままは気になっちゃうので、気分転換がてらミツキには尻尾をモフモフしてもらいましょう。アニマルセラピー的な感じかな?





「どうしますか? 私がおさめてきましょうか?」

「ん~、アリサが行けば確かにおさまるとは思うけど、それだと鎮火はしないだろうしなぁ」

「確かにそうですね。私もマナミ様たちのように、論理的(力ずく)な説得をするので、納得しない方も居そうですね」

「ん? オカシイナ、今すっごい物騒な事を聞いた気がするんだけど?」

「気のせいですよ」


 いつもの表情でアリサがそう言うけど、たしかに今〝力ずく〟って聞こえたよーな……。


 でも気持ちは分かるかな。

 正直言って『どうでもいい』って感情が強いから、強硬策に出ちゃいたくなるもん。


 わたしの中で、日本でのクラスメイトは友達ではない、ただの顔見知り程度。なので特別な感情はほとんどない。

 だけどミツキ達は別。そしてミツキが困ってるなら強引な方法でも終わらせたい、そう考えちゃうからなぁ。わたしもなかなか物騒な思考持ちです。


「自然鎮火するまで放置しかないんじゃないですかねー。ただの言いがかりっぽい感じですしー」

「きっと慣れないこの世界の環境のストレスが積もり積もって、それが爆発しただけだと思うかな。僕も少し身に覚えがあるし」

「なるほどねぇ。んじゃほーちというわけで!」


 これが殴り合いの泥沼になったら止めるけど、それまではマナミとコータに任せちゃいましょー。

 というかトースケよ、お前は参加しなくて良いのかいな。のんきに肉ばっか食べて……あ、のどに詰まらせたのか慌てだした。ひょっとして罰が当たったのかな? まぁすぐに持ち直してまた食べだしたけど……。





「ところで、ミツキも勧誘されたの? って、もしもーし?」

「!? え、えと、うん」

「すっごい慌てて……わたしの尻尾にハマり過ぎ」

「だって、すごいフカフカで、柔らかくて」

「わかりますわ! なによりユキさんの尻尾、中毒性が強すぎますわ!」

「お、おぅ、エレンまでそんな力説って、うん、アリサ達も頷くとか、そういうわけですね……」


 確かに自画自賛できる尻尾だけど、中毒性アリとは思わなかったわ。今のミツキだけでなく、アリサ達も一心不乱中にモフモフすることがあるから、相当な破壊力を備えてるのは自覚してたけど。

 これは知らない人に対しては気をつけないとダメだね……触らせること自体しないけど!


「えと、勇者パーティになるのかな? 何度も誘われた、よ?」

「勇者パーティって、こないだのレグラスに居た冒険者みたいな?」

「うん。あの時と、同じで、私だけ誘われた、の」

「聖女狙いって事かぁ。だけど、う~ん、イマイチ目的が分かんない」


 只人族の聖女って、ぶっちゃけそんな大したものじゃないんだよなぁ。

 同じ進化度合いの場合、魔力は賢者とか魔法士の方が高いし、治癒とかは聖女の上位って言われてる神官や、治癒に特化した僧侶の方が良いわけだし。

 召喚に精霊うんぬんも本来の聖女じゃそこまででもない。まぁミツキはわたしの精霊力が付与されてるから、精霊関係がすごくなってるけど。


「だけど、どうしてミツキさんだけですの? 確かミツキさんのお友達の中にも、聖女となった方が数人いましたわよね?」

「うん。だけど、その子たちでなく、私だけ」

「ミツキだけねぇ……。まぁミツキを選びたい気持ちは分かるんだけど」


 ミツキの容姿を再度確認するけど、うん、控えめに言って美少女。

 性格はおとなしめで身長も少し低いから、守ってあげたくなるって人は多いと思う。ただ、わたしにべったりなので、他の人との可能性は皆無ですけど!


「聖女狙いなのか、それともミツキ狙いなのか、どっちなんだろね」

「それもですけど、勇者パーティというの、少し嫌な感じですわね」

「そう、なの?」

「えっとね、この世界だと勇者がそもそも大勢いる、つまり特別感が無いんだ。それなのに勇者を売りにするとか、無知な異世界人か三下のやることなんだよ」

「ほんとうに弱い方ばかりですのよ。なのに自覚ない方が多くて、ほんとウザーって感じなのですわ」


 エレンがすっごい嫌そうに言ってるけど、これもしょうが無いかな。

 エレンは竜の巫女っていう立場もあってか、名を上げたいなんちゃって勇者君たちは仲間に引き入れて、パーティの強化と認知度を上げたがってる。そのため、冒険者ギルドだけでなく、学園でもエレンを勧誘するバカが多い。

 だからか、エレンも結構勇者を嫌いになってるんだよねぇ。とゆーか、レイジ以外は勇者じゃないって考えか。


 わたしにも一時勧誘は来たけど、参観日にお父様とお母様だけでなく、パパ様にママ様、お姉様も来るからか、『触れてはいけません!』って感じになっちゃってるからなぁ。

 噂だけでなく実際にわたしの背景を知ったら、流石にビビっちゃうよね。





 モフモフされながらマナミたちの様子をぽけーっと見てると、こっちに何人か向かってきたね。

 見たところ例の連合の人っぽいし、ミツキ狙いかしら?


「さてさてミツキさん、ここであなたには選択する権利があります!」

「な、なに?」

「いやそんな重要な試練を受けるようにガシッと身構えなくても……」


 気合を入れる(でも、わたしの尻尾をもふったまま)ほどじゃないんだけど、突然すぎたかしら。


「んと、ひとつは逃げる方法で、ミツキの代わりにわたし達が全力で来る敵……じゃなかった、勧誘を追っ払うって方法」

「全力、で?」

「うん。と言っても殴るけるとかでなく、ちょーっとばかり権力を使った圧を掛けるだけだよ」


 正直、レグラスの権力とかがどこまで通用するか分からないけど、何もしないよりかはいいんじゃないかな。

 普段は権力とか使いたくないけど、こういう時は別です。自分の大切な者を守るためだったら、なんでもかんでも使っちゃうのです!


「もうひとつは、逃げずにミツキが直接話すって方法」

「勧誘を、私が断る、の?」

「かな。わたし達も傍に居るけど、対応するのはミツキ自身になるよ」

「私自身……」


 ちょっと不安そうな感じだね。

 まぁミツキって面と向かって嫌と言えない性格だからねぇ。


「わたしとしてはどっちでも良いけど、ミツキはどうしたい?」

「私は……自分でがんばって、みたい」

「そう言うと思ったわ」


 ちょっと弱気な部分があるけど、ミツキって筋は通すというか、ちゃんとしてる。

 なので、わたしにおんぶにだっこの守られるだけの存在でなく、あくまで対等の存在でありたい、そんな考えを持ってるわけで。


 今回もそうだね。

 確かにわたしに任せちゃえば楽だけど、それはただ守られるだけの存在。

 できる事は自分でがんばる、できないことは助け合う、それが対等ってものです。

 まぁ、わたしは立場もあってか、アリサに何でもやってもらう生活をずっとしているので、大きな声で否定も肯定もできないんだけど……。


「それじゃ来るまで待ってよーか」

「うん。だけど、その……」

「だいじょーぶ。危なくなったらわたし、というかアリサとノエルが排除しにかかるから安心してねー」

「私達にお任せください!」

「半殺しくらいにはしておきますよー」

「ノエル、それはやっちゃだめだから……」


 うん、逆に心配になったよ。

 ほんとノエルさんや、勢い余ってやり過ぎるなんてこと、しないでよね?

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