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240話 料理を食べつつお相手ですよ

少し長いです

 会場の準備ができ、そろそろ会を始めるとの連絡が来たので移動する。

 ただなぁ、今度はメイドさんが案内してくれるようだけど、まーた緊張してるんだもん。わたしってそんなに恐れられてるの? ちょっとショックだわぁ。


「立場の問題だけなのかなぁ」

「何がですの?」

「いやね、こないだもそうだったんだけど、さっきの人とかこのメイドさんとか、すっごい緊張してるから」

「あぁ、そういう事ですの。そういえばユキさんはこういう案内の経験、あまり無いのでしたっけ?」

「だね。たいていは顔見知りか偉い人が直接、あとは家族とかかな」


 全く知らない人に案内されるのってほとんどないからなぁ。

 だからか、こういう対応は珍しくて新鮮味はあるんだけど、この反応はなかなかくるわぁ。


「わたくしはこういう対応はしょっちゅうなので、だいぶ慣れてますわ」

「とゆーことは、こういうのが普通なわけ?」

「ですわね。それにですけど、ユキさんの機嫌を損ねた場合、レグラスの王家から苦情がくるはずですわ」

「わたしが報告しなくても? って、あーそっか。うちの国の諜報員も当然この国に居るかぁ」


 同盟国ではあるけど、マブダチみたいな関係じゃないからね。

 当然セイリアス側もレグラスの王城で勤務している諜報員もいるわけで。うちの国が諜報員を送ってないのってアルネイアだけかな? アルネイアは王家や宰相さんと言った国の上層部がうちの国とズブズブだからだけど。


「特にセイリアスはレグラスとの関係が悪化すると、生活困難になる部分がまだまだ多いですもの」

「そういえば魔道具頼みの産業や医療があるんだっけ。そりゃ仲良くするためには色々と気を遣うのも無理ないか」

「ですわね。むしろ、一国ですべて賄えるレグラスが少し異常な気がしますわぁ」

「そうともいう」


 他国に頼らない完全な自給自足ができちゃうからなぁ。しかも今の生活から劣化することなく、すべて継続可能だもん。

 それだけ大昔から色々とがんばってきたって証拠なんだけど、さすがに国自体がチートすぎます。世界のバランスとか無視してる感じがするしホント……素晴らしいですね!





 そんなことを話してたら会場に到着。

 うん、最後の最後までメイドさん、緊張しっぱなしだったわ。そこまで怖がらなくても良いのになぁ……。


 さてと、まずは会場をちらっと一望して……多いな!

 ミツキたち異世界から人集団がだいたい30名くらいに対し、貴族とその関係者が60人くらい? もっとかなぁ。

 それだけ勧誘したい人と、セイリアスと仲良くしたいって人が多いってことなんだろうけど、多すぎだよ。


「とりあえず、あちらの席に行きましょうか。このままですと、お嬢様が囲まれてしまいそうですし」

「既にユキ様とエレン様に気付いて、こっちに向かって来る人も居るね。見たところレグラスとアルネイア関連の人じゃなさそうだし、急いで移動したほうが良さそうだよ」

「ですねー。ほんとお嬢様とエレン様って人気ですねー」

「こういう人気、あまりうれしくないわ……」

「わたくしもですわぁ……」


 十中八九、わたし達の権力とか家族への橋渡しとか、そういう欲の詰まった感じの人気ばかりなんだもん。

 別に女の子にモテモテになりたいってわけじゃないけど、こういう人気はほんと嫌だなぁ。


 まぁさっさと移動しましょう。

 どーせ面倒な対応はしばらく続くんだし、せめて囲まれない場所に移動しておきたいわ。





 人が少ない場所に移動し、適当に飲み物をとって一呼吸、ふぃ~。


「セイリアス伝統の料理が多い感じですわね」

「だね。ただなぁ、この料理ってあまり好きじゃないんだよなぁ……」

「そうなんですの? ユキさんってあまり好き嫌いない方ですのに、珍しいですわ」

「んっと、食べれないってわけじゃないんだけど、例えばこのドラゴンの香草焼きとか、ちょっと苦手なの」


 傍の机にあったお肉を指さしたけど、うん、エレンはどういう事なんだろ? って顔してるね。

 ドラゴンのお肉を香草入りの調味液にじっくり浸ける。味が浸み込んだら少し匂いが強い葉っぱに香草と一緒に包み、低温でじっくり焼く。それがこの料理だけど……。


「わたし、辛いの好きじゃないから」

「そういえばこれに使う香草、辛み成分が多い物ですわね。だからか、出来上がりも少し赤くなってますもの」

「唐辛子の親戚みたいな香草だからねぇ。辛すぎない程度なら良いんだけど、これって見るからに辛い感じだもん」


 普通の香草焼きなら少し赤くなる程度だけど、これは真っ赤っか。唐辛子パウダーでも振りかけたの? ってくらい真っ赤。

 セイリアスって辛い料理が多く、コレもその典型なんだよね。辛い物はとんでもなく辛い方がおいしいって考えもあるっぽいし。


「お嬢様は、どちらかというと甘い物の方が好きですからね。私もそのあたりは気をつけていますし」

「カレーも甘口の方が好きですもんねー。まぁ私もそうですけどー」

「わたくしとレイジはどちらでもって感じですわね」

「ですね。だけど僕からしても、この香草焼きはちょっと引くかな……」

「確かに、やり過ぎな感じがしますわ」

「だよねだよね! こんなの、おいしそうに食べる人なんて……いたわ」


 みんなして『これは無いわー』ってなってたのに、少し会場を見渡したら、トースケが思いっきり食べているのを発見したわけで。

 そう言えばあいつ、辛いの大好き野郎だったわ。


 とりあえず他人のふりをしておこう。

 さすがにこの辛さは他の人もドン引きだったようで、みんな避けてる状態。なのにトースケだけがつがつ食べてるんだもん。

 せめてお行儀よく食べればいいのに、結構ガッツリいってるから、うん、見てるこっちが恥ずかしいわ!


「とりあえず、辛くなさそうなものをお取りしますね」

「甘い物だけでも良いよ!」

「それだと栄養が偏っちゃいますよ? しっかりと他の物も食べましょうね」

「むぅ、たまにアリサがお母さんっぽくなる。嫌じゃないけど」


 仕草といい優しい感じの目といい、なんとなくそう思ってしまう。

 まぁ専属メイドって保護者みたいなものだから、ある意味間違ってないんだけど。ただ、自分が子供なのを再認識するからか、ちょっとだけ恥ずかしい気持ちがあるのです。





 適当に料理を食べていると、予想通りレグラスの貴族さんが挨拶しに来た。

 とはいえレグラスの貴族さんはほとんどが顔見知りなので、特に面倒という事もない。


「お久ぶりっす、ユキ様」

「こんにちはー。今日はやっぱり?」

「そうっすね、うちの商会はセイリアスと直取引してますんで、少しでも関係を良くするために、といったところっすよ」


 今話してる輸入業をやってる貴族のおっちゃんも、毎年、というか事あるごとにうちの神社に参拝しに来る常連さん。

 なので特に気を遣う必要もなくふつーのお喋り。貴族相手でもふつーに行くのがわたしです!


 それに、レグラスの貴族さんはちゃんと手順をわかってるので楽ちん。


 最初は必ずアリサに話しかけ、間を取り持ってくれるように依頼する。

 アリサはわたしの様子を見て、他の人と話してたり、物を食べてたりしたら、相手に少し待ってもらう。

 わたしが対応できるようになったら間を取り持ち、会話に入る。この流れが決まってるのでほんとやりやすいわ。

 ひっきりなしに相手をするって事も無く、合間合間に休憩をはさむので気も楽。こういうのはホント大事なのです。


「そういえばユキ様、あちらの方々をご存じっすか?」

「ん~?」


 おっちゃんが指さした先を見たけど、知らない感じの若者が数名いるわ。

 ちょっとした礼服を着てるけど貴族じゃない感じだし、冒険者かな? その礼服も見たことが無いデザインだけど。


「最近、レグラスに連合の者が見えてるの、そっちはご存じっすか?」

「うん。冒険者ギルドで、ミツキに絡んできたわ」

「でしたら話が早い、彼らもその連合から来たそうっすよ」

「へぇ……。ねぇ、その連合ってやばくないの?」


 おっちゃんはただの情報共有で話してくれた程度だけど、わたしとしては少し気がかりがある。


 あの時、ミツキを勧誘してきたことにムカッとしたのはあるけど、なーんか好きになれない感じがする。

 だからか、どうもあの連中に対し、レグラスへようこそ! みたいな歓迎ってできないんだよね。


 会場に居る奴らも見た目は普通だけど、なんか嫌い。

 これが悪魔化してるとかならもっと嫌な感じだけど、そういうのはない。だけど嫌いな感じがする。


「危険かと問われっすと、正直なところお答えできないっす」

「そうなの?」

「レグラスで問題は起こしていないっすが、レグラスに居る者も彼らも、今回転移門を設置した連合とは別の連合の者なんす。そのため、うちの商会でも情報は無いっす。王家、もしくはサユリ様達でしたら何かご存じかもしれないっすが」

「なるほどねぇ。そういえばそのあたり、お母様に聞くの忘れてたわ」

「とはいえ問題は起こしていないので、大丈夫だと思うっすよ」

「確かに、ヤバい奴らだったらお母様か連絡してくるもんね」


 過保護な部分もあってか、わたしの行く先々で要注意人物とかが居る場合、かならず注意するようにって連絡が来る。

 なので、今回はそういう連絡がないから危険じゃないとは思うけど。

 でもなーんか嫌いって感じなんだよなぁ。う~ん、よくわかんないや。


「んで、あそこの奴らが何かあるの?」

「えぇ、なんでも彼らは〝聖女〟を探しているそうなんす」

「はい~?」

「お嬢様、そんな嫌そうな顔をしてはダメですよ」

「だってー」


 相当嫌そうな顔をしたのか、アリサに注意されちゃったわ。

 だけど、あいつらもミツキ狙いって事だし、そんなの嫌に決まってるじゃん。この反応も当然です。


「何か問題があるようっすね? まぁ彼らっすが、何か目的がるらしく、そのためには聖女が必要だそうっすよ」

「目的ねぇ。それって聞けたの?」

「それが全然、口も堅くて無理でしたわ。悪い目的じゃなさそうっすけど」

「謎って事かぁ。う~ん、あいつら自身はどうでも良いんだけど、ミツキが絡んでるからちょっと心配になるなぁ」


 世界の命運の為とか、そういう壮大な事情が無い事をほんと祈るわ。

 まぁろくでもない理由は、それはそれで嫌だけど……。


 でもそうだなぁ、心配は心配だし、ミツキ達と合流しておこうかなぁ、勧誘がてらミツキに接近とか嫌だしね! 悪い虫は寄せ付けませんよー。

自分の好きな人や物は譲りたくない主義

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