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237話 順番ってけっこう大事です

少し長いです

 ルアスでの観光案内兼ミツキたちの初めての依頼が完了した翌日、わたしとアリサはセイリアスの王城に来た。

 ベアトリーネとの橋渡しという依頼があるからだけど、サレストとの面会がすぐに通るとは思わなかったわ。

 一国の王子なんだからもっと手順がいるとか順番待ちとか、そういうの予想してたのにちょっと意外だわ。


「やっぱうちの権力とかが関係してるのかねぇ」

「だと思いますよ。特にお嬢様はレグラスにとって重要、というよりも一番大事にされているお方ですから」


 メイドさんに案内された部屋でアリサと話しながら待ってたけど、やっぱそういう事かぁ。

 この部屋だって上流貴族のために用意したっぽい豪華な装飾類に、ちょっと高そうな紅茶とお菓子だもんねぇ。


 それと、本来であればアリサの様なメイドは同席しない、もしくは椅子に座らないってことが多いけど、今回はアリサにも椅子が用意され紅茶とお菓子も出されている。

 これはもう明らかに、セイリアスに対する印象を少しでも良くしておこうって感じですね。気を遣いすぎだなぁって感じはするけど、向こうが勝手にやってる事だからいっか。





「そう言えばアリサ、ちょっと気になったんだけど」

「気になったこと、ですか?」

「うん。昨日ミツキが金級目指す云々あったでしょ? それってアリサはどうなのかなぁって」

「あぁ、その事ですか」


 なるほどって感じだけど、わたしは結構気になったんだよね。


 金級になっての特別扱いは、当然アリサにも当てはまる。

 ということは、青年期前であるわたしとの婚姻とかもやろうと思えばできるわけで。

 しかも青年期前のわたしから複数人に対して婚姻を結ぶってのは無理だけど、その逆は可能なんだよね。複数人から申し込まれる、というのは許可されてるので、全員金級になって申し込んでくれば問題ないんだよねぇ。


「理由ですが、簡単ですよ。私はお嬢様よりも先に金級にならない、と決めているからです」

「主従的な関係もあるから?」

「ですね。あとはメイ様へのご配慮でしょうか」

「メイに対しての? それってどゆこと?」

「こちらも簡単なことですが、お嬢様のお相手には婚約が成立した順に位が決まります。あくまで書類上の順位ですので気にしなくても良いかもしれませんが、念には念ですね」

「貴族でよくある奴だねぇ」


 書類上の事とはいえ、複数人と婚姻を結ぶなら順位は決めないとダメ。同率一位ってのは出来ないんだよね。

 これが正妻、もしくは正夫を決めておき、他の人は妾扱いにするなら細かい順位は要らないけど、わたしはそういうの嫌だからねぇ。


「ちなみに同時に申し込んだ場合ですが、第一夫人:メイ様、第二夫人:エレン様、第三夫人:ミツキ様、最後に私、という順位になります。これは立場順ですね」

「アリサが最後なの?」

「私はお嬢様の専属メイドという役職を頂いてますからね。ちなみにメイ様は他国の王族なので一位、次いでアルネイアの貴族であるエレン様が二位、ミツキ様は異世界からの勇者という事で三位となっています」

「ちゃんと理由があるんだねぇ。つまりあれね、メイよりも先に婚姻しちゃったら」

「少しややこしくなっちゃいますね。時期がずれていれば良いのですが、そうでない場合はメイ様の国を下に見ていると考える方も居ますから」


 たしかになぁ、意図的に順位を下げたって思う人も居るだろうし、この辺りは少し慎重にって感じだね。

 まぁアリサ達の場合、順位云々より、先にやったらメイが怒って手に負えないって方を危惧してそうだけど……。





「だけど、それだとミツキが金級になったらまずくない?」

「そこは先にお嬢様が金級に上がっていただければ、全て解決しますよ」

「そうなの?」

「そうなのです。お嬢様が金級に上がった後、私たちも金級に上がります。そしてミツキ様が金級に上がったのち婚約となりますが、そこでお嬢さまはメイ様との婚約を結んでいただきます」

「あぁ、わたしの特権をメイに対して使うのね」

「です。もっともメイ様の場合、他国の王族という事で特権が要らない可能性もありますが」


 確かにメイの場合は他国、というか同じ惑星だけど別世界みたいなところに住んでるからね。青年期での区切りだって無いかもしれない。

 とゆーか、たぶん年齢制限とかないんだろうなぁ。婚姻じゃなくて結婚の方をすぐにでもって感じでメイは迫ってきてるし。


「それに、もしも制限があったとしてもメイ様の事です、強引にでもこちらに来て、急いで金級に上がられそうですよ」

「やりそうだわ……。何年か前に一度こっちに来たきりだけど、来る方法があるのは事実だもんねぇ」


 あの時以来メイがこっちの世界に来たことはないんだけど、行き来できるように転移門を改造してるのはよく聞いてる。

 今でも来ようと思えば来られるっぽいけど、滞在時間が短いとか、最悪帰れなくなるなどの欠陥ありだから控えてるとかなんとか。

 でもしょうがないよね、どうせなら時間に縛られず、そして安全にって状況の方が良いもの。


「だけど順番かぁ。う~ん……」

「何か問題がありましたか?」

「んっと」


 ひょいっと椅子から降り、そのまま隣に座っているアリサの傍に行き、後ろから抱っこされる形になるようアリサの膝の上に座る。

 突然のことでアリサが少し驚いたけど、そのまま抱っこしてくれたわ。うん、小さいとこういう事が楽にできて便利ですね!


「えと、わたしとしては書類上だけどはいえ、みんなに順番があるのはなんか嫌だなぁって思ったの」

「ふふっ、そういう考え、ほんとお嬢様らしいですね」

「なのかなぁ? よくわかんないや」


 ただの優柔不断な気もするけど、まぁいいや。

 しっかしわたしも、こんなことを考えるお年頃になっちゃったのかぁ、シミジミ。少し前まで婚約とか結婚とかまだまだ先って考えてたのにねぇ。





 そのままアリサといちゃついてたら、ノックの後にサレストが入ってきた。

 う~む、護衛も居ないとか、わたしに対して超特別待遇してますねぇ。


「遅くなってすまない、少し会議をしていてね」

「え? もしかして、会議すっぽかしたの?」

「あぁそこは安心してくれ。ある程度まとまり、後は大臣たちに任せても良いところで抜けてきたから」

「いやいや、抜け出してるのに変わりないじゃん」


 さすがに個人の要件で会議中の王子様を呼び出すとか、不敬なんじゃないですかね?

 そんなことを考えてたら、サレストが少し苦笑いしてるわ。なんだろ?


「まぁそうなんだが、父だけでなく大臣たちも、待たせて君の機嫌を損なわせるのは問題だろう、と考えていてね」

「ご機嫌取りみたいなこと?」

「そんなところだよ。恥ずかしいが、うちの国は経済大国ではあるのだが、戦力も技術力もレグラスには遠く及ばない。特に技術力の差は大きく、レグラス頼みの分野が数多くある。そのような状況で、レグラスの姫である君の心象が悪くなったらどうなるか」

「あぁ、レグラスとセイリアスの関係が悪化し、今まで通りにいかなくなるかもっていう危機感ね」

「そういうことだ。下心ありで恥ずかしい事なんだがな」


 なるほどねぇ。

 普通の貴族相手だったらそんなことはないって言いきれるけど、相手がわたしじゃねぇ。小さい頃からずっとだけど、レグラスで一番発言権あるような状態だもの。

 とはいえ、嫌だったから拒絶して! なんてお願いはしませんけどね。したとしても却下される……ハズ。歳を追うごとに甘くなってる感じがするから、ちょっと怪しいんだよねぇ……。





 サレストも席につき紅茶を一口。少しほっとした状態になりましたね。

 ピリピリ感もないし、交渉もすんなりいきそう。


「ところで、今日はどういった要件だい?」

「んと、実は一つ、お願いがあってきたの」

「僕が対応できる範囲ならば大丈夫だが、複雑なことなのか?」

「複雑と言えば複雑なんだけど。えっと。ベアトリーネって覚えてる?」

「ベアトリーネ……あぁ、悪魔化していた女性か。少し話したことはあるが、それが関係しているのかな?」

「思いっきりね。簡単に言うと、ベアトリーネが話したいそうなんで、会ってくれない?」

「なるほど、そういう事か……」


 腕を組んで少し考えだしたけど、問題があったのかな?

 ピリピリ感は無いままだから大丈夫だとは思うけど。


「何かあるの?」

「あぁすまない、今抱えてる問題にも少し関係していることで、ついな」

「抱えてる問題って、なに?」

「そうだな、君も無関係ではないからこの場で説明しておくか。とはいえ争いごとではない、問題になっているのは、受け入れる予定の異世界人に関してだよ」


 異世界人、つまり勇者召喚された前世のクラスメイトだね。

 アルネイアとセイリアスでほとんどの人を受け入れる事にはなったけど、一旦は全員セイリアスに所属し、そこから希望者をアルネイアへっていう流れになるんだったかな。

 ミツキたちは例外で、最初からレグラスで受け入れるってことになったから当てはまらないけど。


「異世界からの召喚から悪魔関連と色々あったことだ、彼らもそれなりに参っていると思う。この状態のまま各国への所属なのも少し無責任な気がするので、歓迎会に近い物を開こうと思っているんだ」

「歓迎会とか、良い案だと思うよ。だけど、それの何が問題なの?」

「簡単に言うとだ、我が国だけでなくアルネイア、できればレグラスの貴族にも参加してもらいたいんだ」

「あぁ、それってつまり、歓迎会も兼ねてアルネイアやセイリアスの貴族への紹介もしたいってことね。うまくいけばそこで雇ってもらえるかも、っていう」

「その通りだ。だがセイリアスとアルネイアの貴族が居るのにレグラスからの参加者が居ないとなると問題になる。そこでレグラスからの参加者をどうしたものか、と悩んでいるわけだ」


 なるほどなっとく。

 確かにこのままレグラス抜きで歓迎会をした場合、レグラスを除け者にしようとしてるって邪推する貴族も出てくる。それ以外にも出版社とか、情報発信をしている業種の人が出まかせ的な記事を書く可能性がある。


 これが噂程度で済めばいいけど、今回は少しマズい。

 同じ異世界人でもミツキ達を既にレグラスは受け入れてるので、ここで歓迎会に参加しないと悪い方に深読みする人が絶対に出てくるし。

 些細な事が国際問題になる可能性だってあるから、こういう事は慎重にです。





「というわけでだ、少し頼みたいのだが」

「わたしに参加してくれってことね。お母様たちに聞いてみないとダメだけど、許可が出たらいいよ。その代わり」

「あぁ、ベアトリーネに会うのは承知したよ」

「ならよし! んじゃちょっと聞いてみますか」


 魔道具を起動してっと。う~ん、この時間だとお母様忙しいかなぁ?

 それにしてもベアトリーネの依頼もすんなり片付きそうで、ほんと良かったわ。

 まぁ改めて自分の立場がヤバいっての再認識しちゃったけど……。他国の会議を中断させて王族を呼び出す狐娘とか、ほんとヤバいです!

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