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236話 結婚願望はあるようで

「むぅ、なんか恥ずかしい」

「ユキくん、素敵」

「冗談抜きに、ちょっとヤバいわね。可愛いのとエロいのが合わさって、ウチもくらっと来たわ」


 アリサの手によってウェディングドレス一式を着たけど、評判はなかなかですね。

 純白で宝石は控えめだけど、スカートは半透明の物が何段にもなっていてちょっとすごい。

 そしてこのドレスも当然のごとく魔道具化されており、丈や胸囲、腹囲なんかもわたしにぴったりサイズ。ほんとこの技術は便利ですね。


「ほんとお嬢様は素敵です! あら、もう撮影残量が無いですね。交換しないと」

「残量無しって、何万枚撮ってるのよ……」


 アリサの激写はいつもの事だけど、今日はさらに速いペースだわね。


「なぁ少し気になるんだが、尻尾ってどうなってるんだ?」

「スカートが捲れてるってわけじゃないのに、5本見えてるよな」

「あぁ、それは尻尾を通す穴が後ろにあるからだよ。スカートの下に隠すのもあるけど、これは外に出す形状ね。だからこんなこともふつーにできます」


 クルッとその場で回って見せる。

 回ろうとしたときスカートが捲れるのを危惧してか、ミツキとマナミが止めようとしたけど大丈夫、捲れてません!

 これがスカートの下に尻尾を隠した場合、尻尾がスカートを持ち上げて捲るってことも十分あり得るけど、外に出しておけば尻尾がスカートを抑える状態にできるので安心なのです。


「ね? この通り捲れないでしょ?」

「安心だが、その、惜しいな! 見えそうで見えなかったぜ!」

「ほんとトースケはドストレートだなぁ……」


 気持ちは分かるけど、それを言っちゃうところがほんとらしいわ。





 少しの間完全にお人形さん状態で見られてるけど、う~ん、ミツキの様子がちょっと変なような。

 なんていうか少し思い詰めてるというか、深く考えすぎてるというか。


「ねぇミツキ、さっきから少し変だけど、どうしたの?」

「え、えっと、その、笑わない?」

「どんな理由でも笑ったりしないよー。だから遠慮なく言ってみて」

「その、やっぱダメなのかな、って」

「ダメって?」


 今度は思い詰めてるでなく、なぜかミツキが少し恥ずかしがりだしたんだけど、なんなんだろ?


「えっと……結婚」

「あぁ、そういう事か。ん~、さすがに結婚はちょっと難しいかなぁ」

「だよ、ね」


 お試しとはいえ、わたしがウェディングドレス着ちゃったから、そういった感情が膨れ上がったわけですね。

 ただ、わたしは成年期どころか青年期前なので、結婚はおろか婚約すらできない年代。それはミツキも分かってるけど、実際に見たらどうにも抑えが、ってとこですね。


 課題というか壁を再認識しちゃたからか、ミツキがちょっとしょげちゃったわ。

 しょうがないなぁ、ここはギューッとしておきましょう。この格好でするのはちょっと恥ずかしいけど。





「ところでマナミ様、どうしてミツキ様はお嬢様との婚姻を急がれてるのですか?」

「あぁ、アリサはウチらの事よく知らないんだったわね。ウチらって日本に居たときは既に成人、こっちで言うと成年期だったわけ。そのせいか、同級生の何人かは結婚し、子供まで作ったのも居たわ」

「なるほど……その事が影響している、と」

「だいぶね。知っての通り、ミツキはユキ、前世だとカズヤだけど、こっちが呆れるくらい慕ってたの。それこそ居なくなっても想い続ける状態でね。だからか、周囲が結婚してるのを見ると、色々と考えちゃってねぇ」


 アリサとマナミが少し小声で話してるけど、うん、わたしはバッチリ聞こえてます!

 そして、ミツキが結婚に拘るというか、少し焦ってるのもひじょーに納得だわ。


 嫌な事とか目を背けたい事が起きると、次もまた起きるんじゃないかって考える人は結構いる。ミツキもそう考えちゃうわけですね。

 だからか、日本に居たときとは同じ状態にならないよう、少し焦るというか、ちょっと先に進もうとしちゃうと。


「しかもユキってアレでしょ? 言寄られることも多いだろうから、不安になってるわけよ」

「確かに、お嬢様への求婚は日に日に増える一方ですからね。私も時々不安になりますし」

「見ず知らずの男とかに行くってのは無いと分かっていても、悪い方に考えちゃうものだしね。しかもミツキの場合、空白期間があるからなおさらね」


 二人が頷きあってるけど、それもちょっと納得しちゃうわ。

 わたしだってアリサ達が言寄られるのは嫌だし、ちょっとだけ不安にもなっちゃうもん。


 あとはマナミが言うように、空白期間のせいだろうねぇ。

 前世のわたしとは性別だけでなく性格も結構変わってるし、好きな子だっている。ミツキとの関係も前世のまま、もしくは延長とは言い切れないしね。

 そんな状況じゃ更に不安になるのも無理ないわ。結婚云々も、そういった不安からだね、





 しっかしこのままはちょっとまずいね。

 今は少し不安で済んでる感じだけど、ミツキの性格を考えると変に自分を追い込みそうだし、最悪ちょっと強引な手段に出てくるかもしれない。強引な方法は、まぁわたしが良くても世間体とか、立場的なものとかがあるので避けないとダメ。

 う~ん、こうなればアレを使うかぁ。


「ねぇミツキ、実は条件次第で年齢とか関係なく結婚できるって言ったら、どうする?」

「あるの? どうやるの?」

「おっと、すごい食いついてきますね」

「だって、その」


 あらまぁモジモジしちゃって、かわいいですね!

 とゆーか、わたしが思ってる以上にミツキって、わたしに対する好感度高いなぁ。前世のわたしが居なくなった後の影響か、それとも別の理由か、まぁどうでもいっか。


「んとね、その方法は単純で、金級以上の冒険者になることなの」

「金級以上、の?」

「うん。銀級までは結構多いんだけど、金級になるのは大変なの。それこそ英雄って呼ばれるような限られた人ね」

「英雄? でも私、戦うのは……」


 あらま、またミツキがしょげちゃった。

 希望があったのに、それを掴むためには苦手な部分を頑張らないといけない、そんな感じに受け取ったからかしら?


「えとね、別に強くなくても金級に上がることは出来るの。とゆーか強ければなれるって仕組みなら、この世界は金級冒険者だらけになるよ」

「そう、なの?」

「そだよー。だけど金級が少ないのは理由があって、普段の行いや消化した依頼内容など、戦闘力だけでなく全部見ているからなの」

「悪い人はなれない、とか?」

「そそ。んで、実は戦闘力よりも、そういった面を冒険者ギルドは重視してるの。その理由も単純で、戦闘力だけは化け物級って冒険者が腐るほどいるからなんだ。ただ戦うだけの依頼ならどんな人でもできる、そんな考えもあるしね」


 脳筋とか戦闘バカってほんと多いからなぁ。まぁ、そういう人でも大金を稼ぐことができるのが冒険者なんだけど。


「なので、戦闘面が苦手なミツキでも金級に上がることはできるの。事実、回復や補助に特化した人が、人命救助とか医療関係の依頼を大量に消化した結果、金級に上がったって事例もあるの」

「戦わなくても、いい、の?」

「まったくできないってのは流石にダメだけどね。ただ、最低限の自衛ができれば大丈夫だよ」


 ゴブリンやスライムすら倒せません! ってのは流石に無理。

 だけど、たまーにいるらしいのがなんともかんとも。そういえばフローラさんもちょくちょく愚痴ってたなぁ。先月だったかな、その時も『アレが姫寄生というやつです』って、可愛い子ぶってる女冒険者とその仲間たちを酷評してたわ。


「でも、どうして金級なら良い、の?」

「んとね、簡単に言っちゃうと、金級冒険者の特権なの。金級以上の依頼は銀級違い、本当に危険な依頼が多く、国家の危機に関係する依頼を指名されることもあるの。そんな状況だと、分かるでしょ?」

「死んじゃう可能性が高い、とか?」

「そゆこと。なので、もしも意中の相手とかが居たら例外的に認めましょうってなってるの。〝もしも〟があっても、できるだけ思い残すことが無いようにって感じね。というか、そのくらいしかやってあげられないって方なんだけど」


 結婚してもすぐに未亡人って事もあるからねぇ。それでも結婚できずに相手を失うって事よりかはずっといい気がするけど。





「分かった。私、頑張って金級に、なる!」

「それが今のミツキの目標、って感じだね」

「うん!」


 よしよし、しょげた感じでなく、だいぶ前向きになってくれたね。

 金級になることは結構難しいけど、まぁミツキの事だ、たぶんやってのけちゃうんだろうなぁ。がんばり屋さんではあるし。


「なぁユキ、今の聞いてて思ったんだが、お前が金級になればすべて解決じゃないのか?」

「おっとトースケ君、よくそこに気がついたね」

「お前、オレをなんだと思ってるんだよ……」

「そりゃぁいつも抜けてって、まぁいいや。んと、残念ながらわたしが金級になってもそれは適応されないの。こっちの理由も単純で、青年期前の者が金級になっても、許可されるのは婚約、それも一人だけなの」

「何人も、は無理ってことか。なるほど、それじゃ難しいよなぁ」

「そゆこと」


 わたしが一人だけを選ぶとか、正直言って無理です。

 確かにアリサは一番の特別だけど、それとこれはちょっと結び付けちゃいけないのです。婚約とかはみんな平等にしないとダメダメです。


 まぁミツキもそのへんも納得したようだし、大丈夫だね。

 もしも自分を選べとか言ってくる子だったら……いや、そもそもそういう子、わたしが好きになるわけないですね。

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