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229話 何となくとばっちり?

 ミツキたちが登録用紙に記入している間、ちょっと周りを確認したけど、ふ~む。


「ねーねーフローラさん、あの二人って今日は居ないの?」

「あぁ、新人登録と言ったらタイタさんとニックさんですからね。そういえば居ませんね……少し聞いてきましょう」


 そう言ってフローラさんが他の職員さんに聞きに行ってくれたけど、そこまでしなくてもーって今更言えないね。


「お約束も起こるかなぁ~って考えただけだから、ちょっと悪いことしたかも」

「お約束、ですか。でも、エレン様とレイジの時には居ませんでしたよね?」

「そこはほら、レイジは所属変更みたいなものだったから、新人注意の出番じゃないだろうって判断したんだよ」


 アリサとエレンは完全新規だったけど、レイジは違ったからねぇ。

 基礎ができていない冒険者相手なら、二人のような注意喚起をする者が居た方が良いけど、レイジはその辺大丈夫だったからね。

 それなのに出張ってきたら、ただの嫌味な先輩冒険者と思われる可能性があるわけで。そういう所、結構気にしちゃうものだからねぇ。


「それに、あの二人も忙しいだろうしねぇ」

「そういえば金級に上がられたのでしたか」

「みたい。とゆーか、アリサ達も金級になっていいんだよ? たしか進級試験受けませんかの連絡、きてるんでしょ?」

「きてますね。ですが、それを受ける予定は今のところありません」


 あら、絶対に譲らないって感じに断言されちゃった。

 ん~、なーんとなくその理由ってわかるんだけど……。


「ひょっとして、わたし?」

「です。お嬢様より上の級になるなど、言語道断です!」

「お、おぅ、これまたズバッと言い切ったわね。でもでも、エレン達だって」

「もちろん全員一致の判断です!」

「やっぱりかぁ……」


 まぁね、予想はしてたんだよ。いっつもわたし中心に動いてるから、今回もそんな気はしてたんだよ。

 わたしが上がればみんなも上がる、みたいな感じだから、フローラさんが虎視眈々とわたしの級を上げようとしてるんだよねぇ……。まだ青年期前で金級になるとか、流石に勘弁してください。

 もしも金級になったら、今ですら結構目立ってるのにさらに目立っちゃうわ。





 しばらくして、他の職員さんに聞いていたフローラさんが戻ってきた。

 ふーむ、いつも通りの表情だし、トラブルとかは無いみたいね。


「確認してきました。二人は朝早くに依頼で遺跡のダンジョンに潜ったそうなので、いつ戻るかは分からないそうですよ」

「依頼かぁ。戻る時間が不明ってことは、発掘補助か護衛かな?」

「護衛任務ですね。詳細については守秘義務があるので、たとえユキさんでもお答えできないのですけど」

「気にしなくていいよー。それに、あの二人なら大丈夫でしょ」


 外見は結構ヤバめなんだけど、中身はすっごいまとも、力も申し分ない二人だからねぇ。金級に上がったのも当然だし。


「まぁ、ちょっと残念だけどね」

「ふふっ、たしかに少し残念ですね。アリサさんの時とは違い、何もなく登録完了になりそうですし」

「だよね~。やっぱり初対面であの二人を見たときの反応、気になっちゃうよね~」


 あの二人を初めて見た人の反応は、ある意味冒険者ギルドの名物って感じなんだもん。しかも賭けの対象にまでなってるからねぇ。

 主に反応が〝流す〟〝怯える〟〝歯向かう〟〝同調する〟のどれなのかを予測だけど、冒険者だけでなくフローラさんたちも賭けちゃう。それくらい定番ネタではあるけど。





 そんなことを話してたら、フローラさんがふっと何かを思い出した顔になった。あ、なんとなくこれも予想できるわ。


「そういえばユキさん、そろそろ金級、どうですか?」

「まーたその話? 何度も言っているけど、まだなりませーん」

「ですけど、ユキさん上がってくれたら金級の方が一気に増えるので、こちらも非常に助かるのです」

「一気に? アリサたちだけじゃないの?」

「えぇ、他にも大勢居るんですよ」


 ほへー、何とも初耳なことで、ちょっとだけ驚いた。

 わたしとしては、金級に上がるのを止めているのは、アリサ、エレン、レイジ、ノエル、この4人だけだと思ってたわ。とゆーか、わたしたち以外で渋る人なんて居ないし?


「意味が分からないって顔をしてますね。ではお答えしましょう!」

「おー」

「ふふっ、ほんとユキさんはいつも可愛らしいですね」

「です! お嬢様はいつも可愛くて魅力的で――」


 おっと、いつものノリで手を挙げて返事しちゃったら、なんとも微笑ましい物を見るような反応されちゃったわ。

 しかもアリサがちょっと暴走気味に褒めてるんだけど。さすがにちょっと恥ずかしいので、勘弁してもらいたいです……。





「えっとですね、実は、ユキさん達に憧れる冒険者の方が大勢いるのです」

「そうなの? わたし達って、他の冒険者と組むことは稀なんだけど」

「ですね。ただ、ユキさん達の活躍というのは広まっているわけです。例えば――」


 フローラさんがわたしたちの活躍っぽいことを教えてくれたけど、う~ん、何ともこそばゆい。

 依頼で盗賊捕まえるときに、ついうっかり敵のアジト丸ごと潰すとか、ダンジョンで魔石を調達するはずが、深層部に行って希少鉱物を手に入れてくるとか、色々としでかしたことを事細かに話してくるんだもん。

 どれも成果としては褒められるものなんだけど、わたし達からするとシデカシタ結果だからね。なので褒められると、ちょっと何とも言えないのです。


「――というわけで、その成果を称賛する人が多いわけです。しかもユキさん達は幼少期からですしね。しかも」

「うげー、まだあるの?」

「もちろんです。一番の理由は、やはりユキさんご自身の存在ですね」

「あー、それもやっぱりあるのかぁ。まぁレグラスだと当然か」


 レグラスだと知らない人が居ないどころか、生きる伝説と化しているのが、わたしのお父様とお母様だからなぁ。

 そして、その二人の娘となれば、妬むのではなく崇拝に近い感じにもなるわけで。


「もしもユキさんが悪い子でしたら、憧れたり目標にしたりする人はいません。ですけど、私達が知っているユキさんは、そういう子じゃないですからね」

「むぅ、そういう事を直に言われると、ちょっと照れるし、悪い事できなくなっちゃう」

「ふふっ、でもユキさん、悪い事はしないでしょ?」

「それはそうなんだけどー」

「あらあら、照れちゃって、可愛いですね~」

「ぐぬぅ、ひょっとしてフローラさん、わたしが金級に上がらないの、根に持ってない?」

「うふっ、それはどうでしょう?」


 口に指をあててそんなことを言ってくるとか、これは完全にからかってるなぁ。

 しかもなーんとなく、フローラさんのペースにハマってきてるような……。このままだと金級に上げられちゃいそうな予感がヒシヒシ。これはマズいです、超マズいです!


 まぁ、うん、この世の終わりってことじゃないから、わたしが承諾すればいいだけなのは分かってる。

 だけど、う~ん……。青年期前に銀級になったという前例だけでなく、金級になる前例までわたしになるとか、ちょっとヤダなぁ。

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