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228話 登録までが遠いなぁ

 フローラさんの列に並んでまだ20分だけど、ほんと多いなぁ。


「さっきので何人目?」

「5人目ですね」

「はぁ……いくらなんでも多すぎじゃないかな?」


 予想通りというかなんというか、ナンパ目的に近い感じで話しかけてくるのが多い。

 さっきのも多少はイケメン風のパーティが近寄ってきて、下心をすっごく感じる雰囲気でパーティ編入を提案してきたし。

 しかもわたしだけでなく、アリサとミツキ、それにマナミに対しても、しかも一括でなくパーティメンバーが分担して提案してくるんだもん。ほんと参るわ。


「やっぱ知らない人が多いとこうなるのかねぇ」

「かもしれませんね。特にお嬢様は飛びぬけてますし」

「そうかなぁ?」


 そう言って狐耳をピコピコ、尻尾をフリフリ。

 うん、なんとなくでもやっちゃいけないね。アリサたちだけでなく、周囲の人も結構悶えたわ。

 念のため尻尾は1本以外隠してはいるけど、それでもすさまじいとは。5本状態だともっとかな? 興味はあるけど、場所はマジで考えよう。





「少し気になったんだけど、狐族は全員魅力が高いの? ユキの家族以外の狐族ってウチら会ったことが無いけど」

「ん~、たしかに高いといえば高いけど、わたしとお母様はちょっと異常かな? あらゆる面が化け物になっていて、魅力も当然ヤバいの」

「それじゃ普通の狐族に会ったとしても、ユキみたいにはならないわけね。よかったわ」


 そう言ってマナミが少し安堵したようだけど、どういう事かな?


「もしかしてマナミちゃん……」

「違うから! そもそもウチは同性に対してそういう感情はないし、沸かないはずなのよ。だけど、ユキを見てると揺らぎそうになって、ちょっと焦ってただけよ」


 ミツキが、ちょっとハイライトが消えたような目でマナミを見てたけど、そういうことね。

 同性でっての、日本人だとそこまで多くないからねぇ。ミツキはそういうの超越しちゃった感じだけど……。

 んで、マナミはたぶん、否定はしないけど自分がそうなるのは抵抗アリ……だったのに受け入れそうな気持ちに戸惑う、ってことですね。なっとくなっとく。


「あの、少し気になったのですが、ミツキ樣はどうしてマナミ様がお嬢様に恋慕を抱くのを拒否されるのですか?」

「えっと、その……」


 おっと、アリサに質問されてちょっとモジモジしましたよ。そういうのもなかなか可愛いって、そうじゃなーい。

 ただ、その反応で分かっちゃった。まぁそれをわたしの口から言うのは問題アリなので、ミツキが語るのを待つけど。


「話し難い事でした大丈夫ですよ。本当に少しだけ気になっただけですから」

「あ、ありがと。でも、えっと、笑わない?」

「どんな理由であっても、絶対に笑ったりしませんよ」


 アリサが真剣な感じにミツキを見てるけど、うん、その発言はわたしも保障できるわ。

 想いが込められた理由は、どんな些細な事でも、バカバカしい事でも笑っちゃいけない。だって、想いがあるという事は、その人にとっては真剣な理由だもんね。


「そ、それじゃ、その、ユキくんを盗られたく、無いから、なの」

「盗られる、ですか? ですが、お嬢様のお相手が増えるだけでしたら問題ないような……」

「うん、分かってはいるの。だけど、〝同じ日本人の子〟が増えると、私が要らなくなっちゃう気がして」

「そういう事ですか。確かにお嬢様のお相手、皆さん出身も種族も違いますね」


 アリサだけでなく、マナミたちも納得したようね。

 確かに出身がそれぞれ違うし、種族も違う。

 只人族という括りではアリサとミツキは同じだけど、厳密には別種族。

 アリサはこの世界の只人族だけど、ミツキは〝地球人から只人族になった〟だからねぇ。遺伝子レベルでも違ってそうだしね。


 それぞれが違うという事は、ミツキの中では種族代表とかそんな感じがある、というか、そう考えるようにしたってことだよね。

 一夫一妻が当たり前な世界から来れば、多夫多妻って何なのよ!? 浮気と同じじゃないの!? って感じるのもあるしねぇ。


 なにより、ミツキって結構独占欲あるからね。

 日本じゃライバル不在だったけどこっちだと違うから、その独占欲が結構刺激されてそうだし。

 これ以上ライバルを増やしたくないって気持ちも大きそうだわ。


「だからマナミちゃん、ダメだよ?」

「何度も言うけど、その気は無いから!」


 ダメ押しまでするとか、ほんと必死で可愛いですねぇ。





 面倒なナンパを排除すること2時間近く、ようやく番が回ってきた。とゆーか時間かかり過ぎ!

 まったく、いくらわたし達が可愛いからって、必死過ぎでしょ。これだから他国の奴って嫌いです!


「あら、今日は少し不機嫌ですね。大丈夫ですか?」

「あっ、こんにちわフローラさん。ちょっとナンパとかにウンザリしてただけだから、大丈夫だよー」

「たしかに今日は混んでいますからね。それだけ新しい転移門の効果が大きいという事ですが」

「新しい転移門?」


 予想外の答えで、ちょっとポカーンとしちゃった。

 そう言えばシズクさんから『連合から転移門の設置依頼があった』って聞いたけど、それの事かな?


「ユキさんもご存じかと思いますが、海を隔てた小国のいくつかは同盟ではなく、連合国として国を運営しています。その連合国の一つが、ルアスへの転移門を設置したのです」

「その連合との直通の奴だね。だけど、たしかその連合って冒険者はほとんどいなかったよーな」


 商業のための連合らしく、今回の転移門もレグラスと直取引するため、王都やルアスといった都市部に設置を依頼してきたんだったかな。

 なので、冒険者が来たとしても、そこまで多くないはずなんだけど。


「それが、転移門を設置できなかった他の連合の方も利用しているそうなのです」

「あーそゆことか。自分たち専用が無理なら、お隣さんの転移門を貸してもらおうってことね」

「そうです。しかも転移門の借用には当然金銭のやり取りも発生しているようで、ちょっとした事業になっているようですよ」

「ほへー、商売人根性って感じがするわ」


 確かに転移門の利用は有料な所が多いけど、事業になるほどじゃない。

 頻繁に利用する者は個人用の転移門を手に入れるか、格安の国営転移門の利用許可を貰う。だからか、固定客はそこまで多くないので、収益としてはあまり安定しない。

 なのに事業にするとは、ほんとすごいね。ひょっとしたら転移門の運営方法、レグラスとかとは違うのかな?





「それはさておき、本日はそちらの方々の冒険者登録でしょうか?」

「せいかーい。うちから連絡行ってると思うけど、わたしの前世の友達なの」

「もちろん伺っていますよ。でも、前世の友達だから仲が良い、というわけではなさそうですね」

「ふぇ?」


 フローラさんがニコニコしながらそんなことを言ってきたけど、分かるものなの?

 そりゃミツキがずっと手を握ってるけど、それだけでってことは無いよねぇ。これはやはり、ギルドの受付をしてるだけあって、人を見る目がすごいってことかな。


「まぁ、うん、仲いいよー」

「ふふっ、そのようですね。あの人見知りのユキさんが大勢のお友達と仲良くされてると、私も嬉しくなりますねぇ。ほんと、昔のユキさんは」

「わーわーわー! フローラさん、それよりも登録用紙、早く!」

「あらあら、それではすぐに用意しますね」


 フローラさんが微笑みながら奥の方に行ったけど、完全に個人情報暴露だよね! とゆーか、わたしが誰かを連れてくるたびにやってるよね!

 しかも暴露されたからか、案の定ミツキたちまで優しい眼差しをしてきたし。

 あうぅ、どんどん恥ずかしくなってきて、死んじゃいそうです。ほんと勘弁してください……。

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