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224話 依頼の報酬って難しいね

 糞女、もといベアトリーネのらしくない状態にちょっと驚いてるけど、先に進みましょう。


「依頼の理由は分かったけど、依頼ってことは報酬が必要なの、分かってるよね?」

「分かってるわ。報酬は……ワタクシを好きにしても良い、辺りでどうかしら」

「お断りです!」

「あら、振られたわね。まぁその気は無いのだけれど、即断されると少し悲しいわね」

「なーにが少し悲しいだ、眉一つ動かさなかったくせに」


 断られるのを予想してたんでしょう、何事もなくって感じだもん。

 これがベアトリーネじゃなくてかわいい子なら……やっぱり即断ってるなぁ。

 わたしって確かに今は女の子の方が好きだけど、それは誰でもいいって方の好きじゃないからねぇ。アリサたちのような特定の子に対してだけなのです!


「なら、報酬はアンタが決めなさいよ」

「そうだなぁ……ん~」


 髪を人差し指でくるくるさせながらちょっと考える。これはなかなか難しい問題だからねぇ。

 お父様に相談も考えたけど、これは一応わたし達の問題だからね。なんでもかんでも頼るのはダメなのです。


 んー、金銭での支払いは、現状のベアトリーネには支払い能力が皆無だから無理ね。

 何年もかけてって方法もあるにはあるけど、冒険者としてやっていけるかどうか不明だから微妙。

 しかも悪魔化の解除で超弱体の可能性だけでなく、再度悪魔化させないために戦闘能力をすべて封印する可能性もあるしねぇ。


 悪魔に関する情報提供も考えには考えたけど、無いね。

 そもそも悪魔関連については報酬うんぬんでなく、ちゃんと話してもらう必要があるわけで。

 恩赦としてって形ならあるにはあるけど、今回は依頼だからねぇ。ちょっと当てはまらないのです。


 となれば肉体労働、つまりわたしのお世話だけど、これは論外ね。

 やってほしくないのもあるけど、一番はアリサがブチギレルからね。『専属メイドである私の代わりお嬢様をお世話するなど、言語道断です!』ってなるわ。


「ほんとどうしよっかなぁ」

「つーかアンタ、本当にあのカズヤなの? 外見や口調だけでなく仕草まで完全に女子とか、もともとそういう体質だったわけ?」

「ん? なんか勘違いしてるようだけど、〝ユキ(わたし)〟は〝ユキ(わたし)〟なだけだよ。〝カズヤ(ぼく)〟と〝ユキ(わたし)〟は魂という部分では同じだけど、肉体だけでなく性格や思考など、ほとんどの部分は別人みたいなものだから」


 そう言えばマナミたちも同じような反応してたなぁ。やっぱり前世とのギャップ、あるのね。


 そもそもだけど、わたしは生まれ変わりの方で、異世界召喚時に性別が変わったわけじゃないからねぇ。

 まぁ心と体の性別が合ってないって感じは転生直後にあるにはあったけど、ほんと最初だけなんだよね。今じゃ完全に一致、自分が女の子という事実が定着してるし。





 そんな話をしつつ1分くらい考えた結果、ようやく思いついた。

 1分だけと見るか、1分もと考えるべきか、まぁいいや。


「決めた! 報酬だけど、ミツキに心から謝ってちょうだい。過去のことを考えて、それこそ土下座レベルのだよ」

「は? 謝るのが報酬とか、馬鹿にしてる?」

「しっけーな! 大真面目にちゃーんと考えた内容です! なので、ちゃーんと謝ってね!」

「ちょ、待ちなさいよ!」


 納得してないようだけど無視!

 サクッとミツキたちを呼び、場の取り纏めはお父様にお願いして、わたしは待機していたアリサの元に行く。


「お疲れさまでした」

「ホント疲れたよー。冷静になろうとしても色々な感情が湧いてきちゃうから、精神面がうがーって感じだったもん」


 そう言いながら、アリサに抱きつき! はふぅ、やっぱ癒されるわぁ。


「それにしても、謝罪を報酬にですか」

「やっぱり甘いかなぁ?」


 上目遣い気味にアリサを見上げると、ニコニコしながら頭を撫でてくれる。むふぅ、なでなではホント至高です!


「そうですね、甘いと考える方も多いと思います。ですけど、私はお嬢様らしい考えで好きですし、なによりなかなか厳しい報酬になるかと」

「そうなの?」


 ベアトリーネ事をミツキは気にしないって言ってたけど、わたしが気にしちゃってるからね。

 今だって完全に許せるかって言うと、そうでもない。殺意だってまだある。


 だけど、わたしがベアトリーネに対して報復みたいなことをしても、誰も喜ばないし、何も解決しないのも分かってる。

 分かってはいるけど、納得できない自分もいるので、ホントうがーって感じ。


 ミツキに対して謝ってもらうのは、そんな状態から出てきた、一つの落としどころみたいなもの。

 今までの罪を自ら悔いて、そして懺悔しなさいって感情に近いかなぁ。罪を軽くしようとか、許そうって気持ちからじゃ無い……ハズ。





「厳しいというのは、謝罪という事は当然ミツキ様が受け取って成立することですよね」

「だねぇ。そんな謝罪なんて要らない! って言われたら……あっ!」

「そうです。受け手側が納得する内容でなければ成立しない、難易度が高い事なのです。それに、今回はお嬢様が間に入っています。となると、ミツキ様も通常の謝罪では受け取らない、そういう考えになっているはずです」

「あー、普通の謝罪を受けたらわたしの面子に関わる、みたいな感じだね」


 受ける側だけでなく、仲介者も納得する謝罪をしないとダメだからね。

 仲介者が居なければなぁなぁで済んだかもしれないけど、今回はなぁなぁじゃ済まない、誠心誠意の謝罪が必須になるわけで。


「それと、厳しいといますか、少し大変な理由もあります」

「マジ? ぱっと思い浮かばないんだけど」

「それはですね、すっきりしない感じになるからです。そもそもですが、金品などの報酬でしたら渡せばそこで完了、依頼した者もすぐに忘れることができます。ですが謝罪の様に、金品ではなく心や態度を求められた場合、明確な終わりが曖昧になります」

「あいまい……」

「謝罪を受け入れてもらったが本当にこれで済んだのか、後から不十分だと言われ他の要求が発生しないか、など、ちょっとした疑心暗鬼になるわけです」

「そうなんだ。正直、そこまで深く考えてなかったよ」

「それが正しいです。謝罪を言ったのか言わなかったのか、誠意が足りたのか足りてないのか、そんな感じの醜い争いが発生する可能性がありますから」


 なるほどね、そういう事態は全然予想してなかったわ。こういう所、ほんとダメだなぁ。

 気をつけようと思ってもなかなかうまくいかないし、やっぱりわたしにはフォローしてくれるアリサが必須ですね! 居ないと何もできないって感じにどんどんなりそうだけど、それはそれなのです!


「あら、どうしました? 先ほどよりもぎゅっと来てますけど」

「ん~、内緒!」

「それは少し残念ですねぇ」


 まぁぎゅーっとするのには特に理由は無いんだけどねぇ。なんとなくしたくなる、それだけなのです。

非情になるようでなりきれない、そんな主人公

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