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221話 正論を言われると反論できません

 封印塔にはうちの人だけでなく、レグラスやアルネイアの研究機関に勤めている人、それも俗にいう研究バカって感じの人が働いてる。

 研究バカとはいえ悪いことは一切していない、純粋なオタクって感じなので安心安全。しかもここで働いてる人、みんな優しいし。

 だからかな、わたしも遊びがてら中に入ることがしょっちゅうある。


 とはいえ、わたしが中に入っちゃうと


「ユキ様、こちらの新作チョコもどうぞ」

「ありがとー、あむあむ」

「「「あぁ~、いつ見ても可愛い」」」


 お仕事そっちのけで会いに来て、お菓子とかをいっぱいくれるのだ。

 今だって3人の研究者さんが新作チョコを作ったらしく、それを持ってきてくれたもん。

 まぁ、わたしはお菓子貰えてうれしいし、そして食べるわたしを見て研究者さんもほっこりという、互いに利のある関係なので問題なし!


「ほんとユキって人気者なんですね。ウチらとしては前世の印象もあって少し戸惑いますけど」

「そうですね。ユキさんは私とサユリさんの娘であり、珍しい狐族という強みはあります。ですが、周りの者がユキさんに対しては特別優しくなり可愛がってしまうのは、本人の心というか、性格が影響してますね」

「そうなんですか? 確かに同性のウチから見ても、可愛い子だとは思うけど」

「だめだよマナミちゃん。ユキくんは、あげない、よ?」

「奪うとかそういう気は一切ないから!」


 やはりこの状況、みんなは少し異常に見えたのね。マナミが代表してお父様に訊ねてたけど、本人が居るのにそういう話されるのは、ちょっとむず痒い感じがします。

 とゆーかマナミがお父様相手に敬語みたいな感じになるとか、違和感ありすぎ! 見た目委員長なのに口調きつめ、敬語なんてしりませーんって感じなのがマナミなのに!


「なんか今、ウチのこと貶さなかった?」

「キノセイダヨー」

「いやもうそれ、答えになってるから。ほんとあんたって子供よねぇ……」


 むぅ、少し呆れられてしまった。

 だけどしょうがないんです、わたしはこういう奴なので!





 その後もお菓子を貰ったり、ぬいぐるみを貰ったり、試作の魔道具なんかも貰いながら進む。ほんといっぱい貰っちゃった。


「ねーねーお父様、またいつものようにお願いできますか?」

「構いませんよ。彼らも喜ぶと思いますしね」


 そう言ってお父様がなでなでしてくれる。はふぅ、やっぱ良いなぁ。


「ねぇユキくん、いつものように、って?」

「んとね、お父様はこの封印塔の所長みたいな役職なんだけど、わたしやお母様って出資者みたいなものなの。つまり、ここで働いてる人のお給料、わたしも出してるんだ。なので、貰った分のお返しとして臨時報酬をってね」


 もちろん各国が予算を決めて、その中から研究費と基本給が支払われている。しかも小銭程度ではなく、かなりの額が充てられている。

 それだけでも十分ではあるけど、出資者が居ればもっと余裕ができるので、世界中のお金持ちがこぞって出資できる仕組みも設けられた。


 その結果、高い基本給は研究者の私生活を優雅で快適なものにし、豊富な研究費は仕事の効率を上げ、素晴らしい成果に繋がるようになってる。

 出資者は見返りに、研究で生まれた最新の魔道具や、希望する魔道具を安価に手に入れることができる。互いが損をしない、素晴らしい仕組みにいなっているのです。


 もっとも、これは研究者が優秀なのと、資金が豊富だからできる力技。

 どちらか一方がダメダメとか、悪い人が参加したらとたんに破滅する、ちょっと危うい仕組みではあるんだよね。

 とはいえ研究者と出資者は厳選してるので、そんな危うい仕組みであっても、もう何千年も正常に機能しているわけで。これはこれでちょっとすごいわ。


 そんな説明をサクッとしたら、コータが感心した顔で


「なんか凄いな。日本に居た頃のボクなんて、社会人になっても投資とは無縁、避けてたよ」

「あーそれはオレもだわ。なんていうか、リスクを気にしすぎてダメだわ」


 ほほう、コータとトースケは慎重派なのね。

 というかミツキとマナミもそうみたいね。同じ考えらしく頷いてたわ。


「まぁこれは元本保証の利益が絶対に出る超安全な投資だけどね。わたし、勝てない博打はしないので!」

「子供なのに博打をするのか……」

「まぁこの世界、カジノに年齢制限無い所がほとんどだからね。そして色々と化け物なわたしなので、負けることは一切ありません!」


 ドヤァ!

 あれ? 尊敬じゃなく、ちょっと呆れ気味のよーな。おっかしいなぁ。


 そもそもカジノなんて、基本能力が高ければ余裕なのです。

 動体視力と反応速度、それに勘が優れていれば、スロットだろうがルーレットだろうが余裕なのです。

 ポーカーは駆け引きなのでちょっと苦手だけど、それでも何とかなっちゃうのがわたしだしね。





 塔での研究内容や説明をお父様がしながら歩くこと数分、少し大きめの部屋に来た。まぁわたしはお父様にだっこ状態のままだけど!


 ふーむ、見張りとかを立てていないってことは、マジでベアトリーネが大人しくしてるってことなの?

 しかも鍵は無いから逃げようと思えばいつでも逃げられるのに、ほんと信じられないなぁ。


「それでは行きましょうか」


 そう言ってお父様が扉を開けると、部屋には色々な魔道具や魔法陣、それと研究者の人が大勢いた。

 そんな中、窓近くにある休憩用のソファにベアトリーネが腰かけていた……足を組んで!


「なにアレ、色気のアピール? 下着が見えそうなチラリズムでも狙った?」

「違うと思いますよ。どうやらユキさんは、彼女のことが相当嫌いなのですね」

「だってお父様、あいつって今世だけでなく、前世でも嫌な奴だったんですよ? しかもミツキをいじめてたし」

「なるほど……一番の理由はそれですか」


 どうやらお父様も分かってくれたみたいね。納得って感じの顔をしたわ。

 それと、少しわたしの機嫌が悪くなったのを察したのか、お父様がなでなでして落ち着かせてくれる。むふぅ、癒されるわぁ。


「あの、ユキくん、私は気にしてない、よ?」

「でもでも、あいつってミツキに酷いことしてたじゃん」


 警察沙汰は無かったけど、他のクラスメイトに対してミツキを無視するように動いたり、班分けを小細工して孤立させようとしたり、トイレ掃除などの嫌がる仕事を強引に割り振ったりしてた。

 そんな状況でも、ミツキにはわたし達が居たから問題は無かったけど、それはそれなのです。


「ユキの気持ちはまぁわかるわ。ウチも思うところは全く無いとは言えないけど、それでもね」

「む? なんか複雑そうな顔してるけど、どういうこと?」

「まぁこの際だから教えた方が良いわね。ユキ、まぁ当時はカズヤね、カズヤが居なくなってミツキが死んだような状態になってたんだけど、あの女、いじめるのを止めるどころか、気持ちを切り替えるように発破をかけてきたのよ」

「え!? あの糞女が? うっそだぁ」


 マナミは真剣な顔してそんなこと言ってきたけど、ありえないです!

 って、あれ? コータとトースケも少し苦笑いしてるんだけど。


「あのね、マナミちゃんが言ったこと、本当だよ?」

「うそん!?」

「世界にはもっと良い人が居るとか、自分なんて寝取られって言うの? に遭ったとか、いろいろ話してくれたよ」

「マジかぁ……。あの糞女が自虐込みでの励ましとか、信じられない」

「私も、その、あまり好きじゃない人だけど、相手をよく知らないのに全部を否定するのは、よくない、よ?」

「むぅ、そう言われると反論できにゃい」


 ただですらミツキに言われるってこと自体弱いのに、それが正論だと何も言えないわ。


 たしかにね、わたしって〝キライ〟って思った相手に対してはトコトン冷たくなるから、その先を調べようとか、嫌いになる原因を探ったり取り除こうとしたりしないわけで。

 ベアトリーネに対してもそういう感情が支配してるので、正直、サレストとの橋渡しがどういう理由からなのか、そういう興味しかないわけで。それ以外は敵で、悪魔の情報を入手できる物体という印象しかないです。


「なるほど……タツミ様、これはお嬢様にとっては良い機会かもしれません」

「ちょ、アリサ!? 真面目な顔してなんつーこというのよ!?」

「だってこれは好機ですよ? 嫌いな相手でも大人な対応をできるようにする練習になりますから!」

「ぐっ、また反論できないことを……」


 確かにこの敵対ありきの性格は治すことは無理でも、もっと抑えないとダメっていつも言われてるからなぁ。

 だけど気乗りしないので、なるべく避けてきたんだけど……。


 はぁ、今回は逃げられないっぽいね。

 こりゃ糞女、もといベアトリーネとのお話、がっつりしないとダメになりそうだなぁ……。

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