220話 みんなでお出迎え!
みんなを連れて転移門をくぐる。
少しおっかなびっくりって感じだけど、安全なので心配しないでください!
くぐった先はいつもの通りうちの中庭。
綺麗なお花が年中咲き誇り、青々とした芝生に大きな木がいくつもあって、ほんと癒しの空間です。
「たっだいまー」
『お帰りなさいませ、お嬢様』
そして当然のごとく、わたしを出迎えるために屋敷に居るほとんどのメイドさんと執事さんがお出迎えしてくれる。たまにお仕事中の人まで来ちゃうけど、今日は大丈夫みたいね。
「メイドさんと執事さんが大勢で、凄い!」
「ほんと、こういう光景を見ると、あんたがお嬢様だっての再認識させられるわ」
ミツキは純粋にすごいって感じだけど、マナミは少し呆れ気味、コータとトースケは恐縮って感じね。
まぁそのうち慣れますよ? だって毎回こうなんだもん。
アルネイアに留学前はここまでじゃなかったけど、留学してからはいつもこんな感じだからねぇ。
みんな過保護というかなんというか、ちょっとこういうのはくすぐったいのです。
みんなが挨拶してくれた後、先頭に居たシズクさんが一歩前に出てきた。
うん、普通の動作なのにやっぱり洗練されてるね。さすがメイド長、カッコいいです!
「お元気そうで何よりです、お嬢様」
「たった数日しか経ってないけどねー。んで、早速だけどシズクさん、ベアトリーネは?」
「ベアトリーネ嬢は現在、封印塔の方に居られます」
「あれ? 地下室じゃないんだ?」
捕虜だからてっきり地下のお仕置き部屋を使うと思ったけど、違うのね。
封印塔は封印術や魔法に関する研究をする施設の事。
国家機密の塊である結界塔ほどじゃないけど、それでも入出者の管理をしっかりしている施設なんだよね。
「捕虜という形ではありますが、敵意も無く協力的でしたので、調査がしやすい塔の方に移したそうです」
「え? あいつ、協力的なの? ちょっと意外だわ」
協力的なのは何か理由があるのかな?
前世のことも考えると、あいつが人の言う事を聞き従うなんて到底考えられないんだけど。あいつは本当に糞女だった印象しかないからねぇ。
「まぁ会ってみればわかるか。それでお母様とお父様は?」
「サユリ様は昼食のご準備をしていますよ。ですのでお嬢様、本日の昼食は」
「外じゃなくて家でってことだね。りょうかーい」
はりきって作ってそうだなぁ。
大使館では立場の関係で、お母様が厨房で料理するのは許可されなかったからねぇ。お母様、わたしにご飯作りたがってたのに。
まぁ大使館のご飯もおいしいから良いんだけど、ちょっと残念だったのは事実なので楽しみです!
「それとタツミ様ですが……ちょうどですね」
「ちょうど?」
そう言ったシズクさんの視線の先を見ると
「あっ! おとうさま~」
「お帰りなさいユキさん。おっと、相変わらずですね」
お父様が来てくれたので、手を振ってからそのままピョンと飛んでいつものように抱きつき!
お父様もいつものようにひょいっと受け止めてから、そのままなでなでしてくれる。むふー、お父様のなでなでもやっぱ良いですね。
突然の行動だからか、みんなは少し驚いてるね。
アリサにシズクさん、それにメイドさん執事さんは見慣れてるからか、微笑ましいって顔になったけど。
「ちょっとユキ、このイケメンダンディなおじさまって」
「わたしのお父様です!」
「初めまして、私は父親のタツミと申します」
そう言ってお父様、わたしを抱きながら軽くお辞儀。
うん、この状態でもビシッとしていてカッコいいからか、少しみんなが緊張したわ。さすがお父様です!
「今の娘とも仲良く接してくださり、ありがとうございます」
「今の娘って、あ、あの、私たちのこと、知っているんですか?」
「えぇ、ユキさん達から報告を受けていますからね。ユキさんの前世の幼馴染で、神聖王国によって召喚された被害者、という事実も知っていますよ。それに」
「それに?」
「あなたがミツキさんですね、一目でわかりました。確かにユキさんの言うとおりの女性ですね」
そう言ってお父様が頷くけど、うん、ミツキが戸惑ってますよ?
わたしがどういう報告したのか、気になっちゃうよね。
「変な報告はしてないから安心してねー」
「そう、なんだ」
「えぇ、そうですよ。ユキさんの作った術装を所持することができ、精霊との仲も申し分ない、といった内容です。あとはユキさんのお嫁さんの一人、ですか」
「お嫁さん……ふふっ」
おっとミツキさん、お父様公認みたいなものだからか、少し嬉しそうな感じですね。
そういえばお母様だけでなく、アリサたちも認めてたね。メイはちょっと渋々って感じがあったけど。
両親公認、他の嫁たちも公認という、弊害になるものが一切無いのがこれで確定したね。
弊害が無いという事は、ミツキの夢の一つが叶うわけで。
ミツキの夢、それは『お嫁さんになること』だからね。正確には『わたしのお嫁さん』だけど。
微笑ましいと同時に、ちょっとかわいい夢です!
「さて、ユキさんたちが帰ってきたという事は」
「はいっ、ベアトリーネの件です!」
ビシッと手を上げながら宣言しちゃう。ほんと抜けないなぁこの癖、治す気も無いんだけど。
「では、私が付き添いましょう。シズクさん、サユリさんにはそのように伝えてもらえますか?」
「畏まりました。それと、他の方々はどうなされますか?」
そう言ってシズクさんはミツキたちの方を見た。一緒にベアトリーネのところに行くか、それとも屋敷を見てまわるか、選択制ですね。
「ご覧になるようでしたら、私とアリサがご対応できますが」
「そうねぇ、このお屋敷も興味はあるけど、まずはあの女と話したいって方かな」
「ボクもそうだな。あまり話せてないから、真相というか、色々聞いてみたいし」
マナミとコータの発言に対しミツキとトースケも頷いてるから、どうやらみんなもベアトリーネに会いたいみたいね。
「分かりました。それではサユリ様には、そのあたりもご報告しておきますね」
「おねがいね~」
「それでは行きましょうか。ユキさん、このまま行きますか? それとも歩きますか?」
「もちろんこのままで!」
そう言うと、お父様はニコニコしながら撫でてくれる。はふぅ、ほんとダメになりそうです。
やっぱね、甘えることができるときは、全力で甘えちゃうのです!
それにわたしが甘えると、みんな喜んでくれるんだよね。それは頼られてる感じがするからか、それとも懐いてるのが分かるからか、まぁ理由はどうでもいっか。
お父様に連れられて、敷地内にある封印塔まで来た。
結界塔同様、見た目は日本にあったなんたらの塔みたいな感じだけど、それよりもすっごく大きい。
「なんていうか、ほんと和風なのね」
「まるで京都にある文化遺産みたいだよなぁ」
ほう、やっぱ似てるのね。マナミだけでなく、あのトースケが言うくらいだもん。
まぁそれもそのはず、屋敷や各塔の基本はお父様が考え、お母様が実現した物。
お父様も元日本人だからね、似た感じになるのはしょうがない。わたしだっていきなり作れって言われたら、たぶん前世の知識を基本にするもん。
「それでは中も案内しますね」
「お父様が案内してくれるとか、かなり貴重だからね! だからほら、呆けてないで行くよ~」
日本を思いだしたからか、それとも建物の大きさに圧倒されてたからか、ミツキたちが少し呆然となってたわ。
まぁ日本に対する未練はもう無いと思いたいけど。だって、どうやっても日本に帰ることは出来ないからねぇ……。




