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219話 ちょっとした認識違い

 翌日、ミツキたちを連れてレグラスへ帰ることになったので、大使館にある転移門の設定をアリサと一緒に変更する。

 レグラス国内に転移するだけなら特別な設定は要らないけど、うちに直接転移したいからね。

 なにより転移門の設置場所って人が多いからねぇ。わたしが転移すると目立つから、できるだけ避けておきたいのだ。


「とゆーか、うちの地下で取り調べしてるんだね」

「タツミ様が対悪魔用の新型結界の開発を並行して行うためだそうですよ」

「今の結界でも強力なのに、その上のを作るの?」


 今ある対悪魔結界でも、悪魔に汚染されないよう完全遮断できるし、攻撃だってちゃんと防げる。

 欠点は魔力消費が少し高いのと、制御が少し難しいから術者を限定するってところね。


「詳細は私も分からないのですが、効率を良くして魔道具に組み込めるようにすると聞いてますよ」

「あの結界を魔道具化って、お父様もすごい事を考えてるなぁ」

「実現したら、悪魔が脅威ではなくなりますね」

「だねぇ。きっとお守り感覚で持ち歩けるようにするのを考えてそうだから、いずれ汚染される可能性が皆無、もしくは軽減できそうね」


 悪魔がヤバいのはその汚染力が主。汚染されなければ、ちょっと身体機能と魔力が強い程度の存在だからね。

 今までは汚染の脅威もあって討伐する人が限られてたけど、今後はちょっと強い魔物扱いで処理されそうだわ。





 10分くらいかな、アリサが手伝ってくれたので設定も完了。あとはミツキたちを待つだけね。


「だけどうまくいかないね。転移門の人数制限のせいで、エレンたちが一緒に行けないんだもん」

「ですね。ただエレン様は本日、ユリアン様のご学友との親睦も兼ねて、セイリアスを見てまわる予定があったようですし」

「そういえばそうだね。まぁ『ほんと面倒ですわぁ』ってエレンがすっごい愚痴ってたけど」


 朝食後、出かける前にエレンがわたしに抱きつきながら、すっごい愚痴ってたからね。弟君の学友と言っても、友達っていうよりは貴族仲間程度の相手が多いらしいし。

 そんなエレンの面倒そうな顔と、貴族の付き合いから生じる面倒さをわたしとアリサは思い浮かべちゃったからか、一緒に苦笑いしちゃったよ。


「きっとお疲れになるでしょうから、ご帰宅後はいつも以上にお嬢様を求めてきそうですね」

「絶対なるわ。手加減もしないだろうなぁ……」


 求められるのは嫌じゃないけど、激しいのは恥ずかしいのです。尻尾モフモフをいっぱいされると意識が飛ぶからねぇ……。ほんと困ったものです、嫌じゃないけど!





 しばらくアリサとイチャイチャしてたら、ミツキたちがやってき……え?


「ちょ、なにその恰好」

「変、かな?」

「用意してもらった物なんだけどね」


 ミツキとマナミが見やすいように少し動いてくれたけど、うん、どういう事よ。


「似合ってはいるんだけど、どうして『社交界に出るようなドレスにスーツ』を着ているの?」

「え? もしかして、普通の格好でよかったの?」

「当たり前よ……。一体どうしてそんな……あーもしかして、ノエルの説明で勘違いした?」


 みんなドレスにスーツ姿だから、王城に出向いて謁見するみたいな感じなんだよね。

 たしかに謁見するなら問題は無いけど、今日はわたしの実家に行って、その後冒険者ギルドに行くだけなんだよね。


 そのあたりは説明してあったけど、ノエルが『お嬢様のご実家はすごいんですよ! 他の貴族邸なんて相手にならない、王城と同じかそれ以上に格式が高いですから!』って言っちゃったんだよねぇ。

 確かに間違ってはいないけど、比較対象が王城なのがまずかったね。ただですらミツキたちの思い描いた家って、ファンタジー世界によくある貴族様の屋敷だったはずだから、少し間違った方に想像が膨れ上がったっぽいわ。


「だって貴族のお屋敷で、しかもメイドさんや執事さんも大勢居るんでしょ? そんなところにウチらが行ったら」

「気にしなくて大丈夫だよ~。とゆーか言わなかったっけ? うちって和風のお屋敷だよ?」

「「「「えっ!?」」」」


 あら、4人とも『マジ?』って表情しちゃった。そういえば一度も明言していなかったような?

 わたしとお母様が巫女服をよく着てるから予想できてると思ってたけど、そうでもなかったわけだねぇ。


 なるほど、説明しないとこういう相違が出るわけですね、理解した!


「まぁとりあえず、みんな着替えてきて。その恰好でルアスの街歩いたら、わたしの方が恥ずかしいから……」

「分かったけど、本当に普段着で良いのね?」

「問題ないよー。とゆーか友達と遊びに行く感覚で良いんだよ?」

「本当ね? もしも違ったら……ミツキに怒ってもらうから!」

「私が?」

「そうよ! その方がコイツには効果的だからね」


 急に振られて戸惑うミツキに対し、なんか小悪魔的な笑顔をするマナミ。的確にわたしの弱点を突くことができる作戦をとっさに立てるとは、侮れないわ! まぁ今回はそんなこと皆無なんですけどね。





 その後、ミツキたちが着替えてきたので、ようやくレグラスに向かう。やれやれ、微妙に時間がかかったわ。

 さてさて、転移門を起動してっと……うん、すぐに安定したね。


「はい、それじゃ行きまって、どうしたの?」

「なぁ、そこに飛び込むのか? その、なんていうか」

「怖くね? ブォンブォンって重低音もしてるしよ」


 あら、不安そうな顔をしながらコータとトースケがそんなことを言ってきたけど、そんな風に感じるのね。

 確かに低い動作音がしてるのと、門の中央には白い渦状の物体が現れてる。日本には無い未知の現象だから不気味って感じるのかね?


「門っていうから、てっきり」

「どこでも行ける〝例のドア〟みたいのをウチらは想像してたのよ」

「あーそゆことね。さすがにアレと同じのはこの世界でも無理じゃないかなぁ」


 転送でなく、完全に地続きだからなぁ、あのドア。

 空間を切り取るのは魔法や術でできるけど、空間の影響を受けずに繋いで、さらに移動するとか無理。

 再現方法も無いし、あのロボットが居る世界に似た世界が存在するなら、是非ともこの世界に来ていただきたいです。そしていつかは再現してみたい!





 転移門について軽く説明したところで、みんなもある程度納得したみたい。

 この世界の人が日常的に使ってるくらい安全な物だけど、やっぱ未知のものに触れるのは怖いからしょうがないよね。

 まぁ説明してもダメで『転移門使いたくない!』って状況にはならなかったから良し。多少の手間で先に進めるのなら問題ないです!


「さてと、それじゃ今度こそ行くよー」

「分かったけど、やっぱり旗、持つのね」

「定番です!」


 案内といったらこれがないとね! 手に持った小さな旗をフリフリ、完璧です!

 とりあえずマナミさんや、その呆れたような眼差しは止めよーか。少しだけ傷ついちゃうよ?

転移門はどこでも行けるドアの劣化版みたいなものです

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