218話 変わった依頼の発生かな?
第7章の開始です
お母様たちがレグラスに帰ってから3日、そろそろ勉強をがんばりますかね。
帰っちゃったからか、この3日ほなーんにもやる気が出なかったけど、さすがにこのままはダメダメだし。
それに完全に観光気分だったけど、これって一応修学旅行、勉強の旅なんだよね。すっかり忘れてたけど。
セイリアス滞在もそろそろ終わるし、少し真面目にいかないと。
だけどなぁ、精霊科も冒険科も、セイリアスから学ぶところってあまりなさそうなんだよねぇ。
学ぶところが無いなら無いで、その根拠をまとめたレポートみたいなのを出さなきゃいけない。なかなか厄介です。
「ねぇアリサ~」
「だめですよ、ズルしたら」
「なんでわかった!?」
いつものように、わたしの身支度をしているアリサに声を掛けたけど、やっぱりお見通しだったようで、あっさり止められちゃったわ。
むぅ、そんなに考えてることが顔に出るのかなぁ……ふにふに。
「お嬢様、それは流石に……」
「ふに?」
「ダメです、可愛すぎるんです!」
両手で頬をふにふにしたら、アリサが悶えだしたわ。
アリサがここまで悶えるってことは、他の人だと相当な破壊力になりそう。日に日に自分の攻撃力(主に魅力的な)が強くなってるなぁ。
お母様からの遺伝だとは思うけど、ちょっと異常かも。戦闘力の代わりにこっち方面が強化されてるんじゃ? って最近思いだしたわ。
「ところでお嬢様」
「な~に?」
「ベアトリーネ嬢がお嬢様との謁見を希望されてます」
「あの糞女が?」
「お嬢様?」
「あ、はい。ベアトリーネね」
いかんいかん、糞女って言った瞬間、アリサが注意する感じに声を掛けてきたよ。
きっとお母様たちに託されたんだろうなぁ。これじゃ悪いこともますますできないわ、しないけど。
「んで、どうしてベアトリーネが? とゆーか、お母様たちがレグラスに連れて行ったはずだよね?」
「どうやら尋問の際に条件をつけてきたようで」
「ますます訳が分かららない。あいつとわたし、仲良いどころか最悪なんだけどなぁ」
前世も含めて、あの女と仲良くした記憶は一切ない。特に今世なんて完全に敵対したからね。
なので、会ってお話しなんて気には絶対にならないはずなんだけど。
「お嬢様の可愛さに今頃気付いてお話ししたくなった、なら良かったのですけど、どうも別の理由だそうです」
「いやいや、かわいさに気付こうが気付くまいがと、話したいって思うこと自体無いと思うよ?」
「そうでしょうか? 私としては、お嬢様の可愛さであれば敵すら虜にする程なので、十分あり得ると思いますが」
すごいことを言ってるけど、それってどうなの? しかもお世辞や冗談でなく、マジにそう思ってるみたいね。
かわいさについては割かし自己評価も高めだけど、それ以上なのかな? ちょっと気になっちゃうわ。
「まぁわたしがかわいいのは置いといて、それじゃどういう理由なの?」
「どうやら橋渡しをお願いしたいようです」
「橋渡し? お舟を漕いで川をどんぶらこ~の橋渡しじゃないよね?」
「どんぶらこって、ほんとお嬢様は可愛すぎます!」
「ちょ、アリサ!?」
支度途中なのに、アリサがぎゅーってしてきたよ。突然だなぁ、嫌じゃないけど!
だけど一体何がツボに……あぁ、そういうことか。
わたしって言動や仕草が時たま幼児化するから、今回もそのせいね。今年でもう12歳になるのに、どうしても出ちゃうんだよねぇ。大人の女性にはまだまだ遠いです。
「えと、橋渡しって誰の?」
「あ、すみません。橋渡し相手はセイリアス王子であるサレスト氏です」
「サレストと? 妙な組み合わせだねぇ」
元クラスメイト連中ならわかるけど、なんでサレストなんだろ。
それにどこで会ったのか、ちょっと謎が多いねぇ。
「理由は置いとくとして、それってつまり、詳細を聞くため一旦レグラスに帰る必要があるってこと?」
「です。既にサユリ様が転移門の使用許可を取ってあるそうで、お嬢様のご都合が良い時に帰れば大丈夫とのことです」
「ほーい。あーそれならミツキたちも連れて、後回しにしてた冒険者登録をするのもアリかな?」
セイリアスでも登録自体は出来るけど、わたしとしてはいつも通りフローラさんにお願いしたいのだ。
担当の人が違うと何かが違うって事は無いけど、これは気分の問題です。
「ミツキ様たちであれば大丈夫ですが、全員は難しいですよ?」
「それって、各々が所属する国が決まったから?」
「そうです。レグラスが受け入れたのは、お嬢様の前世の幼馴染である4名、その他の方々はアルネイアとセイリアスが半々となっていますし」
「たしかアルネイアとセイリアスのどっちが良いか、選択制にしたんだっけ」
強制的にどちらかの国に所属しろ、という事は無かったみたい。みんなの意思を尊重するとか、どこかの神様大好きな国とは大違いの対応ですね!
それに、選択制だったけどうまいこと半々になったのは良かったね。どちらか一方だけ多いだと、国同士の面子に関わりそうだったからねぇ。
「レグラスがミツキたちだけなのは、国同士の力関係でだっけ?」
「ですね。特にミツキ様に対し、お嬢様が術装を授けたのが大きいです」
「やっぱそうかぁ。ミツキという即戦力をレグラスは受け入れるんだから、他の人はアルネイアとセイリアスに回せ、みたいな感じね」
実はレグラスにとって、召喚された元クラスメイトに対する価値はあまりない。
これは召喚された者より圧倒的に強い兵士が多いのと、技術なども圧倒しちゃってるから。
だけど他国からすれば、そこそこ強くて異世界の知識があるというのは大いに魅力的。少しでも自国の強化に繋がればってことだね。
もっとも、レグラスとしても絶対に譲れない対象は存在する。今回であればミツキがそうだね。
術装を所持しているだけなら譲ったかもしれないけど、その術装はわたしが作った物だったのがねぇ。
ミツキの術装にはレグラスの機密どころか、うちと王家だけに許可されている特殊技術を使ってる。そんな術装を他国に流すなどありえないわけで。
だけど、それは建前なんだよなぁ。
本当の理由は、ミツキたちがわたしと仲良くなってるからなんだよねぇ。仲良くなっているという事は、引き離すとわたしが悲しむとかそんななので、ミツキたち幼馴染組を受け入れたって感じ。
なんていうか国単位でわたしに甘すぎですね。嬉しいから文句は言わないけど!
「それじゃミツキたちにどうするか、聞いてこようか」
「いつ向かうか、ですね。すぐにでも向かいたいと仰いそうですけど」
「冒険者に興味津々だったしね」
やはり異世界だからか、冒険者に憧れるんだろうねぇ。
あとは、ちらっと説明した稼ぎの方も影響してそうだわ。日本円換算で時給数十万も余裕で行けるって聞いたら、そりゃ興味津々になるわ。
そうだ、せっかくだし家によってミツキたちの装備も作ろうかな。防具はいずれ魔衣になるけど、武器と術技や魔法の補助装備は必須だからね。
レグラス所属なら自重無しの全力で行けるし、素材もわたしの倉庫の方がアルネイアの家よりも豊富だしね。レグラスから持ち出せない素材もあるからしょうがないんだけど。
よっし、それじゃミツキたちに聞きに行きましょー。
なのでアリサさん、そろそろ解放してくれませんかね? さっきからぎゅーっとし続けてるわけで。このままじゃ動けません!
でもでも、このままぎゅーっとしてて貰いたいという気持ちもあって、かなり困っちゃう。
やっぱね、好きな子といちゃつくのは癒されるし、大好きだからね!




