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215話 勧誘とかヤダー

「大儀である!」


 そう勢いよく叫ぶのはセイリアスの国王その人……どうしてこうなった。


 完了報告のため、わたしたちはサレストの友達である元従者(名前覚えてない)と、捕虜3名を連れてセイリアスの王城に来た。

 これは冒険者ギルドではなく、王城に直で引き渡す依頼だったからしょうがない。でなければ他国の王城にわざわざ寄り付きません。


 それに、引き渡すといってもサレストが対応するだけだと思ってたのに、あれよあれよと謁見の間に連れてこられ、そして国王から労いを受けるとか、意味が分かりません。

 そう言えば引き渡しの時、サレストが『申し訳ない……』って言ってきたけど、それは手間をとらせたって意味ではなく、この事を予期してか。


 しかし面倒だなぁ、どうしたらいいのやら。


 国王がしばら話したら、その次は宰相っぽい人が今回の功績について長々と語りだけしたけど、やけに盛ってませんか?

 国家の危機を未然に防いだとか、伝説級の魔物を倒しただとか、事実からだいぶ逸脱してます。


 詳細は帰り途中に資料化して、それをサレストに渡した。

 それを大臣や宰相、国王が見たとは思うけど、行動が早いし盛り過ぎだし、どうなってるんですかね。


 まぁ国家の危機というのは、おそらく悪魔関係の事でしょう。放置すればたしかにヤバいし、国家転覆になった可能性もあるにはある。

 伝説の魔物はアビスドラゴンの事ね。だけど倒してないし、むしろ逆に使役してジジイを倒したんだけど……。

 この食い違い、何か企んでるのかなぁ。





「――という、素晴らしい功績をあげたのです」

「流石レグラス、そしてアルネイアの者だな! 皆もそう思うであろう!」


 国王がなんか威厳たっぷりに、謁見の間に居る他の大臣と貴族に対しドヤってるけど、な~んかヤバい気がしてきた。


「ねぇユキさん、少しおかしくありません?」

「エレンもそう思う? なんかヨイショしまくりな感じだよね」

「もしかしたら、セイリアスに組み込もうと考えてるんじゃないですか? 僕たちは今回、冒険者として依頼を受けています。となれば国に仕えてるのではない、フリーな戦力ってことですし」

「あー、そういう考えもあるか」


 他の人には聞こえない声で三人ぼそぼそと状況を確認してたけど、そういう事か。


 セイリアスはレグラスには遠く及ばないし、アルネイアにも一歩か二歩遅れた戦力しかない。

 経済力は三国で一番高いのに戦力は三番手っての、この国王や大臣、貴族は認めたくないんでしょう。向上心というより、一番になりたいっていう欲望な感じだけど。


 そんなセイリアスにとって、わたしたち三人は喉から手が出るほど欲しい戦力。

 王城勤めの兵士ですら、わたしたち以上ってそこまでいない……とゆーか皆無っぽいね。これがたまたまなのか、それとも現状がこうなのかは分からないけど、わたしたちより弱い人が多いのは事実だし。


 ちらっと王の隣に控えてるサレストを見たけど、あーこれは無関係っぽい。

 王や大臣とかは意気揚々って感じだけど、サレストは申し訳ないって感じだね。こうなること、予想できなかったんだろうねぇ。





 しばらく国王たちの熱弁というか暴走というか、それが続いてる。

 むぅ、いい加減開放していただきたい。そろそろ帰ってお風呂に入りたいんだけどなぁ。


「どうしたものかねぇ」

「黙って帰るのは国際問題になりそうですものね。となると、しばらく堪えるしかなさそうですわ」

「それにしてもこの状況、アリサが居なくて良かったですね」

「どういうこと?」

「よく考えてください。この状況、視点を変えればユキ様とエレン様は、セイリアスへ嫁ぐことになりますよ?」

「「あー……」」


 名目は国への勧誘ではあるけど、セイリアスの住民になるってことは、セイリアス内で家庭を作れってことに直結する。

 そんな状況をアリサが聞いたら、まず間違いなくブチギレるわ。あの子ってわたしに言寄ってくる男とかに対して、超が何個も付くくらい辛辣だからねぇ。


「ですけど、帰りが遅いとアリサさんだけでなく、サユリ様たちも心配しそうですわね」

「かも。特にお母様ってあのセイリアスの国王と仲悪いからなぁ。遅いのを口実に、殴り込みに来たりして」

「流石に国際問題になるから、それはしないんじゃ?」

「かなぁ。とゆーかこれってフラグな気がしするんだよなぁ」


 世の中、なぜかフラグを建築すると、フラグ通りに事が進むことが多い。これって、フラグの神様でも居て、みんなのフラグをご丁寧にすべて叶えてたりするんじゃ……。


 なんて馬鹿なことを考えてたら、ちょっとと奥でざわめきが起こった。

 こりゃぁ建ったね、間違いなく。





『お、お待ちください! 王は現在謁見中で』

『構わないわ』

『で、ですから!?』


 遠くで思いっきり叫んでる兵士の声と、遠くても分かるお母様の綺麗な声が聞こえてきた。

 どうやら一人で来たのかな? それと声はするけどお母さまの力みたいなのは感じないから、力を思いっきり抑えてる状態みたい。

 だけど存在みたいなのはハッキリわかるわ。こういうの、親子の絆みたいなものが関係してるんだろうねぇ。


 にしても一人ってことは、シズクさんにも黙って来たってことだよね。

 とゆーことは……キレてるね。

 お母様の勘ってすごいから、わたしたちが勧誘されて項垂れてるの、察したんじゃないかな。





 声が聞こえてから数秒後、お母様が謁見の間にやってきた。

 止めようとした兵士たちもゾロゾロとだけど、うん、威圧された様だね。少し顔が青くなって汗びっしょりだよ。全力の威圧じゃなかったようだけど、なかなかの威力だったみたい。


 それはともかく


「おかあさま~」

「はい、ユキちゃんのお母さんですよ。うん、怪我とか無くて安心したわ。エレンちゃんとレイジ君もお疲れ様」


 サクッと立ち上がり、そのままお母樣に抱きついちゃった。

 お母様も優しく受け止めて、そのまま抱っこしながらなでなでしてくれる。はふぅ、疲れが一気に吹っ飛びますね。


 わたしの後、エレンとレイジも立ち上がり、お母様の傍にやってきた。

 はい、わたしたちはもう帰る気満々です!


「なっ、サユリ殿、急にどうしたのだ」

「どうしたもこうしたも、娘たちを迎えに来ただけよ?」

「いやいや待ってくれ。まだこちらの話は終わってないのだ」


 お母様が少し睨んでセイリアスの国王と話してるけど、うーむ、向こうも必死ですね。わたしたちの勧誘をどうしても達成させたいってことかねぇ。

 普通の人なら、お母様に睨まれた時点でもっと怯えるというか、引きさがるはずだもん。


「そうかしら? 依頼は完了したのよね?」

「「「してまーす」」」」

「なら問題ないわよね?」

「だ、だが!」


 むぅ、ほんとしつこい。

 そもそも何で国王たちが出しゃばってくるんだ? 依頼したのはサレストであってセイリアスじゃないよね?

 だったら


「ねーねーお母様、今回の依頼はセイリアスからでなく、サレスト個人からの依頼ですよ」

「そういえばそうね。それじゃサレスト君、依頼は完了で良いかしら?」


 そう言ってお母様が、睨んだりせずサレストに質問した。

 それを受けたサレストはちょっと緊張した様子。国王たちが睨まれてたからかな? まさかお母様に見惚れてたから?

 まぁ見惚れても良いけどあげませんよ! お母様はずーっとわたしのお母様だし、お父様ともずーっとラブラブなんだから!


「あ、えっと、完了で間違いないです。報酬についても振り込み済みですし、私としてもこのようなことになるとは思ってなく、大変申し訳なく……」

「あら、結構しっかりした息子じゃない。母親に似たのかしら?」

「なっ!? サレストよ、どうしてそのようなことを! 今がチャンスなのだぞ!」

「ですが王、いえ父上、我が友人を助けていただいた恩人に対し、このような対応はいかがかと。勧誘したいのであれば日を改め、正式な書状を送るべきです」


 あらまぁ、息子に諭される父親の図になっちゃったよ。

 父親である国王に対しても臆することなく正論を言うとか、なかなかできた奴ですね。


「サレスト君の言う通りよ。まぁ貴族だけでなく他の面子もあるのでしょうから、正式な招待状を用意しなさい。義理で一応受けてあげるから、それで良しとしなさい」

「くっ、良いだろう、今回はそうしてやる」

「なんであなたが上から目線なのかしら?」


 お母様が怒るどころかすっごい呆れだしたよ。

 セイリアスの国王って尊敬する王様っていうより、小物の王様って感じだねぇ。劣等感もすごそうだし、お母様が嫌いなタイプなのがすっごいわかるわ。





「さてと、それじゃ」

「サユリ様、一つお願い、いえ、依頼をしてもよろしいでしょうか」

「何かしら?」


 帰ろうとしたとき、サレストが何かを決心したのか、シャキッとした感じに声を掛けてきた。

 国王さんたちは『何事!?』って感じの表情なので、これはサレストの独断か。


「今回捕らえていただいた悪魔関連の者たちを、サユリ様たちの方で調べ、解呪してはいただけませんでしょうか」 

ちなみにフラグの神様は存在しないです……たぶん

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