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212話 奪い合い合戦?

 開始する前に、まずはヒトガタを展開してっと。20体で十分かな?

 悪魔関係の敵を相手にするなら精霊刀である月華より、魔力主体にできるヒトガタの方が便利だからね。

 それに防御面も貢献できる、一石二鳥です。


 準備はできた、それじゃ始めますかね。

 厄介な力を持っているから、安全第一でいっくよー。


「余裕な顔をしているが、なめるなよ狐」


 そう言ってジジイは詠唱を開始し、自身の周囲にデーモンを召喚しだした。

 さっきまで聞こえていた詠唱はデーモン召喚だったのかな? 召喚までの時間がすごく短かったから、再詠唱というよりは継続したって感じだし。


 ふーむ、近接装備をしたデーモン、それも4級が6体かな? 思ってたより多いわ。

 これはきっと、わたしが突進してきたところを叩く、って考えなんだろうねぇ。


 だけど


「行きなさい!」


 わたしは動かず、ヒトガタを突撃させる。敵の思惑通りに接近するのは危ないし論外だもの。

 やはり思惑が外れたからか、ジジイが『チッ』って舌打ちしたわ。デーモン以外にも何か仕掛けてたんだろうねぇ。


 ヒトガタを操作し、邪魔なデーモンに接敵させ、至近距離から魔力弾を撃つ。崩落しないように貫通性は抑え、当たったら縮退する特殊魔力弾よ~。

 そんな魔力弾を受けたデーモンは、防御魔法を展開したようだけど無駄、あっけなく消滅していく。うん、4級でもわたしからするとザコだね。





「我がデーモンを1撃だと!?」

「実力の差って奴ね。それじゃサクッとおわらせるよー」


 デーモンの排除が終わったヒトガタを、そのままジジイに接近させ捕縛用の術式を……あれ?


「制御が奪われた?」

「良い気になるな狐。作戦とは違うが、貴様のゴーレムは我が手中に落ちたわ!」


 なんかドヤリ気味に叫んでるけど、なんていうか小物感漂う煽りだなぁ。


 ヒトガタを見たことが無いのか、ゴーレムと勘違いしているのはいったん置いておこう。

 制御を奪われたけど、これはおそらく洗脳や隷属といった特殊な力のせいだね。おそらく接近したら発動する罠でもあったんでしょう。


 んで、たーぶんわたしを支配しようと企んでたんだろうね。ヒトガタの制御を奪うとか生半可な力じゃできないから、相当強い隷属効果のある魔法を開発したってことね。

 しかもわたしですら無効化できない感じで、なかなか怖い魔法です。


 そんな魔法を直に受け、もしもわたしが支配されてたら……想像したくないくらい嫌な未来しかないね。

 世界の敵になり、エレンたちだけでなく、お母様たちとも戦ってた可能性もあるからねぇ。コワイコワイ。





「さぁゴーレムよ、あの狐を倒せ!」

「あー、そういう命令するんだ」


 制御を奪ったヒトガタに対し攻撃命令を出したけど、なんていうかお約束って感じ?


 だけど、そこはゴーレムではなくてヒトガタ、それもわたしが使役した物だからね。

 制御を奪われようとも問題は無い。


 だって


「なぜだ、なぜ動かん!?」

「そりゃゴーレムじゃないから、普通の制御方法で動くわけないじゃん」


 ゴーレムのように、ただ命令すれば動くって物じゃない。自律行動ができてもヒトガタはヒトガタ、ゴーレムとは別物です。

 ヒトガタは術者と魔力や精霊力で常に繋がっている。この繋がりを断てば制御を奪えるけど、そうなるとヒトガタはただの紙人形。自律行動だってできない状態になる。


「ヒトガタのこと、知らなすぎのようね」

「くっ、面妖なゴーレムを使いおって」

「まーだゴーレム扱いですか……」


 ヒトガタの存在自体知らないのかな?

 まぁ知っていたら制御を乗っ取るため、接続を断ったヒトガタに対し魔力や精霊力を流し込んで、強制接続しようとしているか。





 ヒトガタが制御できないのに最初は慌ててたけど、すぐにジジイが落ち着きを取り戻した。


「まぁいい、そもそも期待はしていなかったからな」

「それって言い訳かな? ちょっとダサいです!」

「なんとでも言うがいい。だが一つ教えてやろう」

「あー別にそういうのは要らないので」


 ふんぞり返った状態の上から目線で教えるって、どうせろくでもない事か、変な自慢でしょ? なら聞く意味ないわ。

 なので、制御を奪われていないヒトガタを操作し、遠距離から攻撃を


「恐れるがいい、我らの切り札を! 冥府よりいでよ、アビスドラゴン!!」

「へ? アビスドラゴン?」


 ジジイの予想外の発言で、攻撃に移るのをやめちゃったわ。

 それがホラやハッタリならよかったけど、どうも違う。

 ジジイの手前には巨大な魔方陣が形成され、中央には黒くて巨大な球体が顕現した。

 そして瞬く間に、球体にはひびが入り、まるで卵が孵化する様に割れ、中からは黒くて禍々しいドラゴンがその姿を現した。間違いない、正真正銘のアビスドラゴンだわ。


「くっくっく、あまりの強さに言葉が出まい。このアビスドラゴンはな、彼のエンシェントドラゴンをも上回る、最強最悪のドラゴンだ!」

「あ、さっきまでの詠唱は」

「気が付くのが遅かったな! デーモンはフェイク、アビスドラゴンを召喚するための時間稼ぎだ!」


 ジジイがドヤってるけど、まさかまさかだよこれは。

 アビスドラゴンの召喚は、ちょっとやそっとの術者じゃできない代物。

 それをやり遂げるとは、なかなかですね。





「さぁアビスドラゴンよ、この狐をひねりつぶせ!」


 そうジジイが命令すると、アビスドラゴンはすっごい雄たけびを上げて、こっちに向かってきた。

 だけど、ふーむ


「どうやら召喚に関しても知識が甘いようね」

「何をほざく。もしや権限を奪おうとでも思っているのか? それは不可能だ!」

「不可能、ねぇ。そもそもアビスドラゴンのような強い魔物って少し特殊なんだけど、知ってる?」

「与太話に付き合う気は無い! そのまま恐れおののくがいいわ!」

「与太話ときたかぁ、まぁいいけど」


 ジジイは殺意たっぷりで睨みながら、何も聞きませんって感じだわ。

 だけど、知っておいた方が良いと思うんだけどねぇ。


 まぁいいや。

 向かってくるアビスドラゴンに対し、右手を突き出す。魔力なども込めない、ただ出すだけ。


「覚悟を決めたようだな! さぁアビスドラゴンよ、そのまま噛みつけ!」

「いやぁ覚悟とかじゃないんだけどね。というか、この子はわたしを噛んだりしないよ?」

「この子、だと? ふざけ、なにぃ!?」


 ジジイがすっごい驚いたけど、まぁそうもなるか。

 アビスドラゴンはわたしに噛みつくのではなく、かがんで頭をわたしに撫でてもらおうとしてくる。ほんと可愛い子ですねぇ、思い切り撫でちゃいます!


「さっきの続きだけど、強力な魔物は個体数自体少ないの。大量召喚した場合、個体数を溢れた分は召喚できないか、弱化した分体が顕現するの」

「な、何を言いたい!?」

「分かんない? 結論を先に言っちゃうと、この子とわたし、友達なの」


 アビスドラゴンも個体数が少ない。ノーライフキングの様な10体も居ないような魔物ほどじゃないけど、それでも系列に居るエンシェントドラゴンよりも圧倒的に少ない。

 そんな数の少ないアビスドラゴンだけど、そのすべてとわたしは友達になっているわけで。この子とも当然お友達!


「そして強力な魔物って、召喚者の命令を無視して行動することもあるの。それがこの子の様にわたしを倒す命令を無視して、じゃれるという真逆な行動をするみたいにね」

「馬鹿な! 召喚魔法には隷属効果もあるのだぞ!」


 よっぽど召喚に自信があったようで、わたしの言ったことをキレ気味に叫びながら全否定してるわ。

 だけど事実、アビスドラゴンはジジイの命令を無視しているわけで。


 確かに隷属効果を乗せた召喚は存在するけど、隷属を自身の力で破れるような強い魔物には効果が薄い。

 異世界からの召喚者に後からかける隷属魔法ならまだしも、普通の召喚に付与する隷属魔法じゃ限度があるわ。


 まぁいいや。せっかくだし、この子を使って倒しちゃいましょー。

敵が呼んだのが友達だったので、何もしなくても味方になってくれた、大体そんな感じです

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