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211話 トカゲ退治ですわ!

今回はエレンの視点です

それと今回も閑話に近いです

「まったく、どうして存在するのか、意味が分かりませんわ」

「エレン、兄に向ってその言い方は何だ!」

「あら、わたくしに兄などいませんわよ?」


 わたくしの攻撃に何とか耐えている糞トカゲですけど、兄妹の情でも誘う気なのでしょうか? 急に変なことを言ってきましたわ。


 確かにこの2匹は認めたくないですけど、父親などとふざけたことを言っていたあの屑トカゲの血を受け継いでます。

 なので、血縁上は確かに兄と妹という関係ですわ。もっとも、兄などとはすでに思っていませんけど。


「存在して居るだけでも嫌ですのに、あなたたち、またしましたわね?」

「何をだ!? ともかく、この攻撃を止めろ!」

「自覚が無いとか、本当に吐き気がしますわ。しょうがないので教えますと、あなたたち、またユキさんに対し良からぬ思いをはせ、いやらしい視線を送りましたわね?」


 幼少時のお披露目の時もそうでしたわ。

 この二人はサユリ様とシエラ様だけでなく、ユキさんに対しても邪でいやらしい視線を送ってましたもの。


 確かに見惚れるのは分かりますわ。

 今もですけど、お三方は見た目だけでなく雰囲気や仕草など、惹かれる要素が非常に多いですもの。

 特に、可愛さの面でユキさんは相当ですわね。反則級という言葉がピッタリなくらい可愛いので、見ているだけでも幸せになれますわ。


 ですが欲深く、ゲスな感情で相手を見るのは、本人だけでなく周囲も不快でしかないですわ。

 度を越えたものですと、吐き気がするくらい気持ち悪くなりますわね。


 そんな嫌悪感が漂う行動を頻繁にする存在が、あろうことか自分と同じ血を持つ者など、本当に嫌です。

 可能であれば、この世から完全に消し去りたいくらい、認めたくない存在ですわ。


「幼少期、わたくしに対しても似たような視線を送ってきていましたわね。でもまぁ、それはまだ我慢できました」

「なっ!? さ、さらに攻撃が、強く」

「ですけど、ユキさんたちに向けるのは許しませんわ! ユキさんたちはあなた達のような糞トカゲが汚していい存在ではないですのよ!」


 殺さない程度に、さらに魔力を強くします。

 本当は消滅させたいところですけど、殺さないように加減するとユキさんに約束しましたものね。わたくし、約束もしっかり守りますわ!





「に、兄さん、このままじゃ」

「分かってる! だがボーネン、オレ達にはアレがある!」

「そ、そうか!」


 あら? なぜか急に勢いづいた感じですわね。

 何か秘策があるのか知りませんけど、わたくしの敵にはなりませんわ。


 悪魔化の影響か、天魔に近い力は得たようですけど、その程度ですもの。

 わたくしたちにとって、普通の天魔など敵ではないですわ。それこそ天魔に進化していないアリサさんでも、窮地に陥ることなく余裕で勝てるくらいですわ。


「エレンよ、ここで攻撃を止め、この兄たちに従うのならば許してやる」

「なにバカなことを。そもそもわたくしの攻撃に押されたままですのに、どうしてそのようなことを言うのか、ものすごく不思議ですわ」

「くっくっく、オレ達の力、この程度だと思ったか! やはりエレン、お前はバカな妹だな!」

「まったくだ。所詮は只人の生んだ娘、竜族としても半端者ゆえに、想像力も乏しいってことだな!」


 はぁ、訳がわからないことを言ってきましたわ。ひょっとして、劣等感でも抱かせる作戦ですの?

 確かにわたくしのお母さまは只人族、その血を濃く受け継いだわたくしも普段は只人族の姿をしていますわ。


 ですけど、それの何が問題ですの?

 むしろ、この2匹とは違い、わたくしは生まれながら天魔であり、竜槍の所持者にもなっています。

 これはご自身の命を懸け、わたくしを生んでくださったお母さまのおかげ、恥ずべきことは何もないですわ!





「見せてやろう、真の竜族の力を!」

「所詮は只人族、その差を味わうといい!」


 そう言って何やら力を込めだしましたけど、どうでもいいですわね。

 おそらく悪魔の力で変化した竜装で顕現させる気でしょうけど、わたくしには無意味ですわ。


「そこまで真の竜族とかに拘るのなら、見せて差し上げますわ。竜魔錬成陣、展開! 竜の巫女が命ず、太古より受け継がれし竜の誇りよ、我が牙となれ! 降臨せよ、竜槍『ドラグーン』!」

「「な、なんだとぉ!?」」


 あら、ドラグーンを顕現させたら、妙に驚かれましたわ。

 確か2匹も知っていたはずですのに、いったい……あぁ、そういう事ですの。


「どういうことだ、竜槍は〝我ら兄弟の物になった〟はずなのに」

「そ、それに、エレンのとボクたちの、見た目も違うぞ!?」


 わたくしの持つドラグーンと違い、なんというか、いかにもまがい物という感じの槍を顕現させましたわね。

 竜の彫刻も無く、刀身もハルバード状ではなくランス型、色も普通の銀色と。なんというか、ただのランスにしか見えませんわ。

 それに、どうやら悪魔の力でできた武器の様で、術装と言ってよいのかすら疑問ですわ。


 ですが、力はそこそこありそうですわね。

 わたくしが放っていた魔力弾を撃ち消すことはできたようで、少しだけ驚きましたわ。この2匹には弾くほどの力は無かったはずですもの。





「まぁいい、どちらが真の竜装か、ハッキリさせるだけだ!」

「覚悟しろよエレン、ボクたちの本気、とくと味わえ!」


 むしろ覚悟を決めたのは2匹の方な気が。

 そんな2匹が力を込めて、そのまま突進してきましたわ。何の策も無い、ただ正面に構えて突撃とか、本当にバカですわね。


「はぁ……。あまりにもくだらなすぎて、正直戦意が失せてきましたわ。なので」


 ドラグーンに魔力を込め、そのまま


「吹っ飛べですわ!」


 術技などを使わず、ただ魔力を込めて薙ぎ払い。

 正直、わたくしたちなら避けるなり弾くなり、対処は容易ですけど、この2匹にはきついハズですわ。

 なにより力量を考えたら、術技を放ってしまうと殺してしまいますもの。さすがにそれはユキさんとの約束を破るのでダメですわ。


 案の定、避けずに正面からぶつかって


「な、なんて、力、だ」

「ま、まずいぞこれは!?」


 簡単に押されてますわね。

 ここまで脆いと、情けないとしか言いようがないですわ。


 ただ、術装の方はそこそこな物のようで。

 ぶつかった魔力との接点から悪魔の力の様なものが吹き出て、まるで術装を守るように膜が張られましたわね。その膜が黒い靄のような状態で、少し不気味ですわ。


 ですが、残念なことに使用者が弱すぎますわ。

 踏ん張ることができずにどんどん押されて行って、ほんと情けない。

 わたくし、相当力を抜いて放ちましたのよ? なのに、そんな攻撃すら受け止められないなど、ありえないですわ。

 これが天竜の状態ならまだしも、ただの黒竜の状態でこのありさま、どうしようもないですわね。





「さて、戦う前に何か言ってましたが、もう一度言ってくださいまし?」

「な、なめるなよ! この程度の攻撃……」

「そうですの、でしたら、追加ですわ!」


 もう一度魔力を込め、今度は縦に振り下ろします。ちょうど前の薙ぎ払いと重なり、十字になりますわね。

 ここまでするとあっけないもので


「な、なんだとぉぉぉぉぉぉ!?」

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!?」


 はぁ、なんというか、すごい茶番劇みたいな叫びをしながら吹っ飛びましたわね。

 もしかしてギャグというやつですの? あまりにもあっけなく、そしてダサいですわ!


 そもそも、わたくしの攻撃は最初も含め3回だけですわよ? それだけで片付くとか、逆にバカにされた気分ですわ。

 攻撃を避けたり、魔力弾を撃ち合ったり、竜装同士での鍔迫り合いくらいは予想してましたのに、なんだか残念な感情もありますわ。

 まぁこの残念さは、わたくしも竜族の端くれだからでしょうけど。


 とりあえず終わりましたし、ユキさんの手助けをしましょう。

 必要ないと思いますけど、それはそれですわ。

戦闘じゃない戦闘のオンパレード

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