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21話 友達なので半分こに

少し長いです

 ふぅ、このゴミには永遠の苦しみを与えれたわ。

 痛覚感度めっちゃ高くして、肌に風が当たるだけでもすさまじい痛みが出るように。さらに常に幻覚が見え、幻聴まで聞こえるように。そして脳内の処理速度をめっちゃ上げたので、1分が1億年くらいに感じるんじゃないかな。


 ほんとはこのまま殺してもいいけど、余罪ありそうだからこれでいいでしょう。おそらく他にも魔石とられた人が大勢居そうだし……。





「大丈夫? 今おろすね」


 丁寧に鎖とかを外して、これ以上アリサが傷付かないように慎重にっと。


「ありがとうございます。でも、ユキ様もこんなに傷だらけに」

「あーこれ? 自己治癒ですぐ治るのと、さっきウジウジして棒立ちしてた時のだから自業自得だよー」


 冷静に行ってれば無傷でさっくり終わったんだろうなぁ。色々反省するけど、でもアリサが無事だったからいっか。


「んじゃまずその傷治すねー、月華、鳳凰!」

「わぁ、さっきのと違い、優しい光になるのですね」

「朱雀は攻撃用で鳳凰は回復用だから、その違いだね。んじゃ月華、神癒開放! あ、炎纏うけど安全だから心配しないでね」


 いわゆる再生の炎というやつですね。燃えているのは傷などの悪い物というちょっと幻想的な光景。でも万能ではなく、これを使っても治せない物はいっぱいあるけど。


「なんというか、ほんと凄いですね、傷がどんどん消えていきます」

「水の精霊神の再生術の付与もしてたから、その効果も少なからずあるからね。それに鎖を外してる時には意識もしっかりしてたでしょ?」

「そういえば。でもなんででしょう、一気に意識がはっきりしたような」


 んー、ということはもしかして、アリサってわたしの魔力か精霊力に感応、もしくは適応しやすい体質なのかな?

 アリサに付与した再生術の効果が上がったのは、おそらく周囲に漏れ出ているわたしの魔力か精霊力を取り込んだ結果みたいだし。


 再生術は本人の魔力だけでなく、周囲の魔素や霊素、他者から溢れ出た魔力や精霊力を効率よく吸収して自動治癒する高度な術。相性が良い魔力や精霊力があれば効率が上がるものでもある。


 発見当初のアリサは虚ろな状態だったのに、だんだん意識がはっきりし、戦いが終わったころには普段通りだもの。この短時間でそこまで回復するとか、わたしの魔力か精霊力との相性が良いとしか思えないわ。


 ということは、わたしの魔力か精霊力をアリサに渡すことも簡単にできそうだね。そうなると、うん、あれができるかもしれない!





「よっし、綺麗になった綺麗になった。髪もさらさらだし肌もぷにぷにだね!」

「あ、あの、ユキ様、その、あまり直接肌を触られますと、その、私も」


 しょうがないのよ、ちょっとセクハラしろって前世のわたしが言ってきた気がするから。


 それにしても最近はご飯を一緒にとったり、遊びだけでなく運動なんかも一緒にやったりすることが多いからか、体つきも健康的になったねぇ。というか歳の割にちょっと大きいような……、成長期なのかな?


「さすがにこのままだといろいろとまずそうなので、物質創造で服作っちゃうねー」

「お、お願いします」

「アリサに預けていたポーチからお札を出して術式展開っと、はいどーぞ。ちゃんと下着もあります! あと魔力思いっきり込めたのでそこそこな防御力あるよ!」

「防御もですか、ほんといつもとんでもないことしますね。でも、ありがとうございます。あ、メイド服なんですね」


 そう、アリサに作ったのはうちのメイド服そっくりのやつ。結局わたしが作りやすいのって普段見慣れてるやつだからねぇ。


「そそ。う~ん、やっぱ似合うなぁメイド服。どうしよっかなぁ」

「どうかしました? すごい、サイズぴったりですね。それに靴までありがとうございます」


 メイドなアリサを見てちょっとね、本気で考えだした。わがままでもいいよね。


「決めた! アリサ、あの勇者の奴隷やめなさい。そしてうちのメイドに転職よ!」

「と、唐突ですね。でも、その、難しいのではないのでしょうか、私は神聖王国の者ですし……」


 ちょっとうつむいちゃった。でも反対の意見はないね、ならよし。


「ふっふっふ。アリサさんや、この国でわたしの存在がどのようなものか、ちゃんと知っているかな~?」

「すごい意味深な言い方ですね。えっと、ユキ様のご家庭はレグラス王国の爵位で言うならば公爵家に当たると記憶してますので、王家に次ぐ権力を持っている一族のお姫様、でしょうか?」

「公での権力なら大体そんな感じだね。ただね~うちって国王様と王妃様、というか王家と身内同様なの。そしてうちの家族も王家もみんなしてわたしに超甘い、あとはわかるね?」


 不敵な笑みをついしたくなるね、にやにや。アリサもまさか!? っていう顔してるわ。


「その顔の予想通り、わたしがお願いすれば外交問題になろうが何とかしてくれます。悪い事とかは当然無理だけど、それ以外なら大体叶えてくれます。ぶっちゃけこの国で一番発言力あるのはわたしです! この手はあまり使いたくないけど、こういう時は別です! なのでアリサは今日からうちのメイドね、けってーい」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「え、なにアリサ? わたしのこと嫌いなの? うちにきたくないの?」


 ちょっとその反応は心配しちゃうんですけど、そんな驚くってことは嫌いなの? ねぇねぇねぇねぇ。


「あ、あの、そんなことはないですから。だからその、ちょっと、あの、涙目でこちらを見られるとほんと、その、理性がですね」

「だってー」

「今日からというのに驚いただけです(こんな可愛くて優しい人を嫌いになれるわけないじゃないですか)」

「ん? 後ろの方、ボソッとしててよく聞こえなかったんだけど」

「なんでもないですよ。それでユキ様、これからどうしましょうか」


 何かはぐらされたわ。まぁいっか、じゃぁ次の仕上げと行きましょうか。


「しばらくすればお父様かお母様、それかシズクさんが転移して来るからそれ待ち。ゴミ掃除していたノーライフキングとかはさっき完了報告飛んできたから送還済み。なので」

「なので?」

「アリサ、わたしのこと嫌い? 怖くない?」


 そう、どうしてもこれは聞いておきたい。色々と、あるから。


「また唐突ですねぇ。何か不安そうなのではっきり言いますと、嫌いにもなりませんし怖いとも一度も思っていませんよ」

「そっかー、よかったよかったー」


 ぎゅーっとね。こんなわたしでもアリサは友達のままでいてくれるようで、ちょっとうれしい。


 よし、抱き着いで気分も収まった。アリサは逆に真っ赤になったけど、可愛い奴め。





「よっし、それじゃぁはじめようか」

「はじめるって何を?」

「アリサにわたしの魔石をあげます!」

「え? それって、いったいどういう?」


 やっぱりね、魔石無しってのはちょっとね、わたしが許せない。わたしのせいで無くなったようなものだから、わたしが治してあげるべき。


 お母様に聞いておいてよかったわ、魔石を盗られた人に魔石を戻すやり方。盗られた魔石が生きていれば体内に戻すだけ、しかし魔石が死んだ場合は戻せない。戻せないということは、その人は魔石を永遠に失ったということになる。


 でもたった一つ、元に戻す方法が存在する。

 それは魔石を失った者が他者から生きた魔石を譲ってもらうという方法。譲ってもらった魔石は体内で新たな魔石へと変化する。元に戻すというより新たな魔石を手に入れるという解釈の方が近い、ちょっと裏技的な手段。


 だけど他者の魔石の場合は相性がある。相性が悪ければ魔石は定着しない。定着しなかった場合、同じ魔石の再譲渡は不可になる。


 そんな相性だけど、全然心配していない。再生術のこともあるけど、わたしとアリサなら大丈夫。成功する気が、いや、必ず成功させるって決めてるのもあるからね!


「単純なことだよ~。今からわたしの魔石を取り出します。そして魔石を半分にして片方をアリサに譲ります。ね、単純で簡単なことでしょ?」

「簡単って、あの、そのようなことをしてユキ様は大丈夫なのでしょうか?」


 ほんとこの子、自分のことよりわたしのこと気にするんだよね。わたしとしてはもっと自分を大事にしてもらいたいんだけどなー。


「大丈夫だよー。危険もないし、半分になった魔石も時間がたてば元の大きさに戻るからね。ずっと半分のままじゃないから安心してね~」


 実は失敗するとわたしの魔石も消滅しちゃうけどね。そうなったら魔石無しの狐生がんばるぞー。


「んじゃ始めるねー。術札を何枚か用意してっと、アリサがポーチちゃんと持っててほんとよかったわ」

「私は何かすることはありますか?」

「リラックスしてていいよー、なのでそんな覚悟を決めたような顔しないで大丈夫」


 リラックスリラックス、アリサのほっぺむにむに、癒される~。あ、急にむにむにしたの謝るから、そんな尻尾、もふって、あぅ。





「はぁはぁ、じゃ、じゃぁはじめるね!」

「はい、お願いします」


 アリサからのモフモフはほんとやばいわ、回数を重ねるごとに強化されている。これはどうにかし……なくてもまぁいいか。せいぜい人様の前では控えてもらうくらいかな。


 さてと、気を取り直して


「術式展開、我が身に宿りし魔石よ、その姿を現わせ!」


 金色の光を放つ魔法陣から、1個の透明な魔石が姿を現わす。これがわたしの、そして天魔の魔石。


「せっかくだから教えるね。普通の人とかの魔石は黒い状態であまり透明じゃないの。魔人とかに進化するとそれが透き通って、色も黒から青に変化するの」

「進化で色が違うのですね。ということは」

「そ、天魔になるとさらに透き通ったものになります。ちなみにわたしのような化け物になると、この様に完全な透明になるわけ。んでこの半分をアリサに譲渡するけど、残念ながら譲渡した魔石は天魔じゃなく只人用の黒い魔石になります。なのでまた進化目指して頑張りましょー」


 たぶんアリサならすぐ魔人になれそうなんだよねぇ。だってすごい頑張ってるもん、魔石が応えないわけないわ。


「さてと、まずは術式展開して魔石を2個にわけてっと」


 魔石に魔法陣が当たり、像がぶれて2個に分かれようとしてるけど、やばい、結構痛い。魔石分割ってこんなに痛いのね、ちょっと泣きそう。

 と、ともかく我慢しながら作業を続けよう。決して顔には出しません。





 よ、よし、何とかできた。もとの半分の大きさの魔石が2個になって目の前に浮いている、色は透明のままだね。これで第一段階は完了っと。ふぅ、痛みで泣かなかったわたし偉い。


「それじゃ渡すねー。術式展開! 我ユキは汝アリサに我が半身である天魔の魔石を与える。我が半身よ、汝アリサのもとで再び輝きたまえ!」

「きゃっ、光が凄く、あっ、魔石が体に吸い込まれていく」


 魔石の片方がアリサの胸に吸い込まれていくね、なかなか幻想的。うん、光も収まってきた。


「これで、大丈夫、のはず。痛いとかない?」


 わたしはすごい痛くてちょっとフラフラだけど。


「えっと、大丈夫です。ただなんでしょう、魔力が強いのかな? 胸のあたりが温かいような気がします」

「なら大丈夫かな。拒否反応があると吐き気や頭痛、それに酷い不快感が取り込んだ直後から表れるみたいだから」


 拒否反応なく無事に終わってほんと良かった良かった。それに魔石の顕現に分割、譲渡の術式は今回が初めてだったから、ちょっとした達成感もあるわー。


「さて、と、それじゃ、あとは、おねがい、ね」

「ちょ、ユキ様!? 危ない!」


 もう限界です。魔石が半分になってすっごく痛いのと、予想以上に魔力も減っていてふらふら。でもよかった、これで、アリサは元通りに……

次回、視点が変わります。

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