表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/363

209話 興味が無いので覚えてません!

 敵をじっくり見てみると、う~む、ローブを着た奴は少しヤバいかも。

 呪文の詠唱をしていたのはこいつみたいだけど、なんていうか、仮面の奴と同等か、それ以上の悪魔力みたいなのを感じる。


「例の狐と竜、それに勇者か。厄介な奴らに目をつけられたものだな」

「あら、わたしたちのこと知っているみたいね」


 ローブの奴が、なんとなく苦々しいって感じにそんなことを言ってきた。

 声からして男、それもジジイだね。全身鎧の奴らが身を挺して守ってるあたり、悪魔側の神官長みたいな偉い存在のようね。


 しかもわたしだけでなく、エレンとレイジのことも知っているとはねぇ。

 あの時の仮面から情報を得たのではない、別の奴が連携したのかしら? 仮面の時にはエレンたち居なかったもんね。

 それと、どんな情報が伝わっているのかも気になるなぁ。術装の性能なんかも伝わってたら厄介ね。


「まぁなんで知っているかは後で聞くとして、とりあえず無駄な抵抗せずに、サクッと倒されてくれると嬉しいんだけど」

「ぬかせ! 貴様らの様な童子に、我が三騎士を倒せるなどと思うな!」

「すごい自信ですわね。それにしても……」

「どうしたのエレン、何か気になってるようだけど」


 ローブのジジイではなく、その前に居る三人をすごく睨んでるんだよね。

 しかも嫌悪感というか殺意というか、結構強い感情だし。


「ユキさん、気が付きませんこと?」

「なにに?」

「あーエレン様、きっとユキ様は気付けないのではなく〝忘れている〟だと思うよ」

「ふぇ? レイジも何かに気づいたの? なんかわたしだけ置いてけぼり感」


 わたしが忘れている……う~ん、どういう事だろ?





 わからないまま、エレンが三騎士、とくに真ん中の奴かな? それを睨みながら


「糞トカゲがまだ生きていたとは、正直驚きですわ。消えてくれた方が良かったですのに」


 おっとー、糞トカゲとか、すごいことを言ってるよ。アリサの駄犬駄狐に並ぶ、かなーり強い言葉ですね。

 まぁ糞がついてるけど、この騎士はトカゲ族の人ってことか。


「おいおい、ひさびさに再会した兄に向かってその言葉は何だ?」


 エレンの言葉にムッとしたようだけど、三人は兜のフェイスガード部分を変形させ、素顔を見せてきた。

 う~ん、やっぱり見覚えないわ。わたしの知らない人なんじゃないかなぁ。


「ユキ様、忘れてるのかもしれないけど、向かって左はエレン様の元従者のジョイス、中央は上の兄のゼーロン、右は下の弟のボーネンですよ」

「うそ、エレンってお兄さんが居たの!?」

「アリサたちが言ってたけど、本当にユキ様って、興味のない対象は完全に忘れるんだね……」


 あら、レイジが何となく呆れてるけど、そんなにかな? まぁ覚えないのは自覚してるけど。

 こいつらのことも、ほんと―に見覚えないからねぇ。記憶の片隅にすらいないとか、相当です。


 まぁいいや、この三人のうちの誰かがサレストの言っていたお友達ってことね。

 悪魔化しているけど、たぶん何とかなる。無力化のため、ぼっこぼこにするよー。


「それじゃ一人一体で」

「やはり限界ですわ! 糞トカゲは我が一族にとっての汚点。なので、潔くこの世から消し飛ぶといいですわ!」

「ちょっ、エレン!?」


 気楽に考えていたわたしと違い、エレンが殺意マシマシな感じに、兄と呼ばれた男二人に向けて魔力の塊を放ったわ。

 崩落しないように抑えてはいるっぽいけど、結構な強さ。これは完全にキレてる?


「甘いなエレン! そのような攻撃、このオレに、な、ちょ、ま、まってくれ!?」

「待ちませんわ! 糞トカゲはこのまま潰れてしまいなさい!」


 受け止めたように見えたけど、さすがエレンですね、普通の塊じゃないわ。

 見た目は球状の塊だったけど敵に当たった瞬間、敵を包み込むような形に変化して、じわじわ周囲から押し潰すような攻撃になってる。

 これは殲滅系の術式を応用しているね。対象を隔離して殲滅するのがそっくりだよ。


 しっかしなんていうか、余裕かまして受け止めようとしたお兄さん、ちょっと情けないね。

 力量を完全に見誤ってるのもそうだし、馬鹿正直に攻撃を受けるのもあり得ないわ。

 そもそも相手の攻撃は躱す、弾く、対消滅させるが基本です。命のやり取りをする状況では、受け止めるなんて論外。

 もしも受け止めたらエレンの攻撃のように、追加効果があるかもしれないからね。





 エレンの攻撃はやはりすさまじい。受け止めた二人の鎧はどんどんボロボロになって、その姿を……うげぇ。


「なにあの筋肉ダルマとデブ」

「ユキ様、ドストレートにそれを言うのはどうかと思うよ」

「でもさぁ、一応あの二人ってエレンと同じ血を受け継いでるんでしょ? なのにあの見た目とか」

「受け継いでませんわ!」

「あ、はい」


 エレンが思いっきり否定してきたけど、でも兄妹なんだから受け継いでるよね……。

 認めたくないって気持ちは分かるけど、どうしようもないと思うわ。


 まぁ鎧が剥げてわかったけど、黒竜の力は持っているみたいね。角と羽、それに尻尾が生えてるわ。

 ただ悪魔化の影響からか、鱗が不気味な感じの黒さで刺々もしてるね。カッコいいというより、おぞましいって感じかしら。


 エレンが竜装を顕現させての竜人状態は、角や羽、尻尾は生物というより鎧の一部っぽい感じではあるけど、色が綺麗でキラキラしてて、かなりカッコいい。同じ竜族でもほんと違うねぇ。


「くそっ、どうなってるんだ! ボーネン、もっと力を込めろ!」

「や、やっている! だが、これはありえん!」


 おーおー、わたしたちが話してる間もどんどん押し潰してるようで、結構追い込んでるみたいね。

 必死にバリアの様な魔法を何度も発動しているけど、発動するたびにどんどん破壊されてる。圧倒的だねぇ。


「ねぇエレン、一応お仕事だから、殺さないようにしてもらいたいんだけど」

「大丈夫ですわ。ギリギリ虫の息になるよう調整してますもの」

「そ、そうなんだ……」


 うん、エレンの目が割とマジに殺る気の目だったから、本当にギリギリにするみたいね。

 ちょっとコワーって感じなので、これ以上は突っ込まないようにしておこう。





「さてと、それじゃ残りもサクッと倒そうか」

「ユキ様、ジョイスは僕に任せてくれないか?」

「あー、ひょっとして、元従者仲間だからとかそんな感情から?」

「まぁね。ジョイスの今の状態を見たら、少し負い目みたいなのを感じてね」

「もしかしたらレイジとジョイスって奴は、今の立ち位置が逆になってたかも、ってことかな?」

「そういうこと」


 なるほどねぇ、ほんとレイジらしい考えだわ。

 わたしからすると、レイジとジョイスって奴が逆の立ち位置になることは、絶対にありえないと断言できる。

 だってわたしが忘れてるってことは、このジョイスって奴は嫌いな相手ってことだもんね。


「それじゃわたしはローブの奴を、エレンはそのままあの二人ね」

「わかりましたわ。このまま地獄を見せて差し上げますわ!」

「やり過ぎないでね? んじゃいっくよー」


 エレンの攻撃で少し慌ててる感じだし、わたしもあのジジイをさっくりたおそーっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ