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208話 進軍開始よー

 特に問題も無く、順調に進み続けること30分くらい、そろそろ最深部だね。

 ここまで1体もデーモン系の魔物が現れなかったけど、悪魔特有の嫌な力は強くなってる。これは待ち構えてるって見て間違いないか。


 それにしても


「微かにだけど、呪文の詠唱みたいなのが聞こえてきたわ」

「本当ですの? わたくしは聞こえないのですけど、レイジはどうです?」

「僕もですね。ユキ様の気のせい……ってことは無いか」

「たぶん、聴覚の差かな?」


 そう言って、狐耳をぴこぴこ。うん、我ながらあざといことをしますね。だけどついやってしまうのだ!


「あぁ~、そんな事をされたら、もうだめですわぁ」

「わっぷ」


 エレンがわたしに抱きついてきて、頬ずりしだしちゃったよ。嫌じゃないけど、ちょっと恥ずかしいです。

 しっかしこれは相当な破壊力だったわけですねぇ。さすがわたし、恐ろしい子!


「もう進むのをやめて、今日はこのままずっとこうしていたいですわぁ」

「ずっととか、エレンもなかなか大胆」

「かもしれませんわ。ですけど、お嫁さんであるユキさんに対し、少し大胆になっても問題ないと思うのですわ!」

「タシカニ」


 わたしとエレンはそういう関係なわけだから、たしかに問題は無い。これが友達相手にやったら色々問題あるけど。


「まぁわたしもそんな気持ちはあるにはあるけど、一応お仕事だから、先に進むよー」

「残念ですけど、しょうがないですわ。では、行きましょう」


 そう言って気持ちを切り替え……てない!?

 ちょっとエレンさん、ここからは抱きついたまま行く気ですか? さすがに歩き難いんだけど……。


 あ、どうやら気付いてくれたみたいね。

 抱きつきをやめて、うん、今度はわたしをお姫様抱っこするのね。確かにこれならちゃんと進めるって、ちょっとまてい!

 進めるには進めるけど、今度はいろいろと恥ずかしいんだけど!


 まぁ、うん、スイッチを入れるようなことをした、わたしの自業自得ですね。

 反省の意味も込めて、この状況は受け入れるしかないわ……。





 そのまま進むこと数分、どうやら二人にも聞こえだしたみたい。

 よかったぁ、幻聴とか変な罠じゃなくて。いつぞやのミスト君みたいに、わたしを誘い出すために設けられた罠とかは嫌だからねぇ。


「なんというか、気持ちが悪くなる詠唱ですわね」

「それに聞いたことが無い物だし、悪魔特有のなんですかね?」

「だと思うよ。この詠唱を聞いて、わたしたちが不気味とか気持ち悪いって感じるのは、悪魔への抵抗感があるって証拠なの。ヤバい魔物の召喚とかの場合、寒気の方が出てくるからね」


 悪魔とは絶対に相容れないから、心も体も拒否反応出しちゃう。それが不気味とか気持ち悪いという感情に変換される。

 もしもこれを心地いいって感じる者が居たら、そいつは悪魔化途中なり、悪魔になりやすい存在ってことになる。なかなかわかりやすい反応ですね。


「とりあえずヒトガタを使って偵察してみようか。このまま突っ込むのは危険な気がするし」

「お願いしますわ」

「んじゃサクッと」


 胸元からヒトガタを一枚取り出し……あ、やっちゃった。


「……見えた?」

「えぇ、しっかり見えちゃいましたわ。でも大丈夫ですわ、今は抑えてますし!」

「そ、そう……」


 そりゃお姫様抱っこされてて、顔が近い状態なのに胸元から取り出したら見えちゃいますよね。

 ある意味発情状態のエレンの前だったから、さすがにちょっとヤバいかなぁと思ったけど、何とか抑えてくれたみたいね。いや、抑えなきゃいけないって時点ですでにヤバい気もするけど……。


「まぁいいや、んじゃ行きなさい!」


 ヒトガタに魔力を込めて、偵察を開始させる。

 さてさて、何が分かるかなぁ。敵の数くらいは把握しておきたいとこだけど。





「うーむ、3、いや4人かな? それとデーモンっぽいのが30体くらい」

「待ち構えてる、という事ですわね」

「うん。デーモンは5級相当かな? 部屋がそこまで広くないから、ちょっと強めの範囲攻撃で一気に殲滅できそう」

「デーモン以外はどうですか?」

「んー、そっちはちょっと無理かも。ヒトガタ経由の情報だから正確じゃないけど、悪魔化しているとみて間違いない感じで、デーモンよりかは強そうなの」


 わたしたちほどじゃないとは思うけど、なめてたらやられちゃうくらいの強さはありそう。

 しかも部屋が狭いから、こいつらを先手で一気に倒すためには、おそらく殲滅系の術式が必要。

 だけど殲滅系の術式だと、おそらく鉱山ごと吹っ飛ばしちゃう。さすがにそれはダメだね。


「罠も無さそうだし、このままヒトガタを使ってデーモンを殲滅し、その間に突っ込んじゃおっか」

「ですわね。それではレイジ、攻撃が始まったら先行、任せましたわ」

「了解ですよ。ただ、その、二人はその状態で行くんですかい?」


 そう言われたからか、ふとエレンと見つめ合ってしまう。

 うん、わたしってエレンにお姫様抱っこされたままだね。さすがにこのまま突入は無理だね。


「はぁ、残念ですわぁ、このままで居たかったのに」

「まぁまぁ。終わったら好きにしていいから」

「好きに……ですわね?」


 あ、しくじった。エレンの目がキラン! って感じに、怪しく光ったよ。

 今日のエレン、ちょっと肉食系というか、積極的なのを考えて無かった。


「あ、えっと、その、お手柔らかに?」

「うふふ、大丈夫ですわ」

「あぅ、これ、絶対に大丈夫じゃないやつだよ……」


 帰った後がちょっと怖いです。





 エレンが渋々わたしを下ろしたので、突入しますか。ほんと渋々だったけど。

 部屋の構造や配置を二人に連携したので準備も万端。


「それじゃいっくよー」


 ヒトガタを操作し、サクッと範囲攻撃を仕掛ける。


「では、先行します!」

「分かりましたわ!」

「デーモンはこのまま殲滅できるはずだから、一気に突撃だよ!」


 レイジを先頭に、坑道を一気に駆ける。

 道中にはゴブリンとかが若干居るけれど、レイジが先頭で盾を構えながら突撃してるから問題なし。

 やっぱビームな盾ってやばいね。ぶつかった魔物を簡単に粉砕してるんだもん。防具でなく、立派な武器だわ。


 そのまま駆けること数秒、最深部である部屋に突入。

 さてと、周りの状況を把握……うん、生き残れたデーモンは1体も残っていないね。火炎系の術式を使ったからか、ちょっと焦げ臭いけど、デーモンの燃えカスしかないわ。


 デーモンはさておき、部屋の奥には黒いローブを着た奴と、そいつを守るように盾を構えてるのが3人いた。

 3人は騎士なのかな? 真っ黒で禍々しい全身鎧を着ているわ。鎧の感じから、これは悪魔化しているとみて間違いないね。


 そんな4人は、ヒトガタが放った術式を完全に防いだようね。

 焦げも無いことから結界、もしくはバリアの魔法を使ったか。ダメージを与えられたらよかったんだけど、ちょっと残念。


 まぁいいや、サクッと倒して、お仕事完了させちゃいましょー。

さっくりボス戦に突入

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