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206話 デーモンも厄介

 お見合いモドキの翌日、冒険者ギルドから正式な依頼が来たので、お仕事を開始する。


 とはいえ、今回の依頼はちょっと厄介。

 目的の相手がいる場所は神聖王国の北部。とゆーことは入国審査をしないとダメなんだよねぇ。

 だけど入国審査を受けた場合、おそらくわたしは入国不可の判定になる。神聖王国からすると完全な敵だからしょうがないね。


 なので、ここはあえて不法入国を選ぶ。

 もちろんバレないように、細心の注意をしながら行動しないとダメ。バレたらえらいことになっちゃうし。


 しかも相手が悪魔関連というのもね。

 ベアトリーネくらいの奴が大量に居るかもって考えると、倒すのも捕獲するのも一苦労なはず。

 さらに侵食されないように注意もしないとダメだしねぇ。





 そんなこんなで、目的地である神聖王国北部の鉱山に向け、わたしとエレン、レイジの三人はそこそこの速さで飛んでいる。

 アリサとノエルだけでなく、ミツキたちも心配だからか、ついて来ようとしたけど断った。

 神聖王国側にバレないように入国するのもそうだけど、対悪魔戦を考えると、わたしたち三人以外はどうしても危険が大きい。ほんと悪魔ってヤバすぎるからなぁ。


 そもそも悪魔関係って、レグラスなら親衛隊だけでなく、お父様とお母様も本気で参戦するような相手だし。

 まぁ今回はセイリアスと神聖王国間の問題だから、レグラス最強戦力であるお母様は動けないんだけど。


「あと1時間くらいかなぁ、結構かかるわ」

「ですわねぇ。わたくしたち、相当速く飛んでますのに」

「さっきも飛空艦を追い抜いたしね。ただ、二人は全力じゃないんですよね?」

「まぁね~」


 先頭を飛んでいるレイジが言うように、わたしとエレンは全力での飛行じゃない。

 全力の場合、わたしは風の精霊神の力を全開にする必要があるし、エレンは天竜装を顕現させて翼を展開する必要がある。

 そこまですると強大すぎるので、力を隠すことができなくなっちゃう。強くても弊害はあるのです。


「ですけどレイジ、この速さについてこられるというのは、あなたも強くなった証拠ですわ」

「そう言ってもらえると有り難いですよ」


 エレンが褒めたことで少し照れてますね。やはり主人に褒められるのは、従者にとって誉という事ですね。

 でも実際、レイジはほんと強くなったというか、なりすぎてる。

 今では冗談抜きに、わたしとエレンと完全に互角なんだもん。ほんと勇者族ってすごいって感じ。


 ちょっとおもしろいのは、わたしたち三人は強みがばらけていて、互いを補えるような状態になってることだね。


 攻撃力が一番高いのはエレン。

 防御力が一番高いのはレイジ。

 そしてわたしは、技術とか速さとか、そういうのが一番高い。


 アリサとノエルはまだまだ成長中だけど、それでもわたしたちの補助ができるくらいには成長している。

 こうしてみると、ほんとバランスがすごくいいパーティですねぇ。このままいけば冒険者パーティの最高峰を目指せそうだわ。





「それにしても悪魔が絡むという事は、魔物も大勢いそうですわね」

「だねぇ。デーモン系だろうから、正直相手したくないんだけど」


 悪魔が使役するために生み出した魔物がデーモンだとは言われているけど、正確なところは分からない。

 まぁ似た力を持っているから、何らかの関係はありそうだけど。


 そして、デーモンは悪魔と違って数は少ないものの、ダンジョンで遭遇することがちょくちょくある。遭遇しても嬉しくないけど。


 種類もちょっと変わってるというか、意味不明。

 どういうわけか、前世の漫画やゲームに出てきた架空の悪魔が、なぜかこの世界のデーモンという魔物として存在してるんだもん。見た目もどっかで見たような感じで、ほんと謎。


 前世と違うのは、レッサーとかアークとか、そういう冠は付かないのと、侯爵やら子爵といった爵位もないってこと。

 ただ、冠や爵位の代わりに冒険者ギルドが決めた〝階級〟がついている。

 階級は8段階あり、レッサー枠のザコは8級デーモン。そこから強さに合わせて級が上がっていき、エンシェント枠が1級デーモンになる。その上もあるらしいけど。


 デーモンだけ階級を設けて細かくしているのには理由がある。

 デーモンは他の魔物と違い、ちょっと背伸びをして挑んだら最後、あっけなく狩られる側になるのが当たり前の敵なんだよねぇ。

 しかも悪魔の力を持っているのが大半だから、相手をするのはさらに危険。呪いや浸食を受けちゃうと、意図せず悪魔化しちゃうし。


 オマケに、デーモン系って倒しても実入りがほとんどないのがなぁ。

 マシな素材を持って出直して来いって考えちゃうくらい、面倒なだけでほんと要らない存在だよ。


「捕獲とか関係なければ、消滅させるのを前提に殲滅用の術式で周囲一帯ドカンしちゃえるんだけどねぇ」

「それに今回、神聖王国にバレずにですものね。力を抑えつつでないとダメなあたり、なかなか面倒ですわぁ」


 少し嫌そうな顔をしてエレンがそう嘆くように、力を抑えるってのが本当に厄介。

 抑えすぎると悪魔やデーモンにやられるし、かといって強いと神聖王国側にバレて国際問題になるし、面倒のてんこ盛りだよ。


「しかも今回は鉱山ですっけ? 事前情報だと狭い坑道のようだし、ユキ様とエレン様は戦いにくそうですね」

「わたくしのドラグーンは長物ですし、ユキさんは撹乱しつつ攻撃といった動きが多い戦法ですものねぇ」

「爆発系の術式や技も使えないしね。戦えないってことは無いけど、範囲攻撃で一気に殲滅ができないから、なかなか骨が折れそうだよ。まぁレイジを中心に、敵を固めてから倒せばいいだけなんだけど」


 レイジが先頭に立ち、盾をうまく使って敵を集める。

 程よく集まったらわたしとエレンが後方から攻撃、という作戦で行くのが無難そうだからねぇ。

 普段と違って地味というか、普通の冒険者っぽい感じにはなるけど、しょうがないね。





 そのまま飛び続けること1時間ほど、目当ての鉱山近くまで来た。


 ふ~む、近くには小さい村があるのか。

 遠くからだけど、住民が悪魔化してるという事は無いようね。畑と牧場が多く、ちょっと裕福っぽい感じだね。


「こっそりじゃなければ、ちょっと村に立ち寄ってお土産購入とかできるのになぁ」

「神聖王国ならではの、ですわね」

「そそ。あとは神聖王国の食事ってどんなのかなぁ、とか」


 知識だけだと分からない、体験したからこそ見えてくるものもあるかもしれない。

 まぁアリサだけでなく、ミツキたちも揃って『神聖王国のご飯は不味い!』って言ってたから相当な気もするけど、それはそれで興味が湧いちゃうのだ。


「しっかし鉱山から村までが近いなぁ。これは戦闘時もできるだけ力を抑えないと、ちょっと探知に優れた人が村に居たらバレちゃいそうだわ」

「抑えるの、わたくし苦手ですわぁ」

「わたしもちょっと苦手だわ。なのでレイジ、がんばってね!」

「了解ですよ。魔物特効もあるし、二人の負担はだいぶ減らせますし」


 ちょっとドヤリ気味にレイジがそう言ったけど、うん、マジでそうなるね。

 レイジの勇者装備はわたしたちの術装と違い、魔力や精霊力を使っていない特殊な装備。

 なので、全力で振るっても探知できる人自体ほとんどいない。術装だと、術装自身が魔力や精霊力を発しちゃうけど、レイジの装備にはそれが無いからねぇ。


 オマケに勇者能力の一つである魔物特効、それがこの世界でさらにパワーアップしちゃってるからね。

 しかも、あの世界の勇者みたいに只人以外の種族に対する特効は無い、純粋な魔物にだけ対応する特効になっている。ほんと便利だねぇ、わたしも欲しいなぁ。

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