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205話 ギャップ萌えならぬギャップ真面目

 アリサに対する謝罪から一転、友人を助けてくれって、一体どういう事なんだろ。


「お嬢様に依頼したいとのことですが、なぜ自国の者を使わないのですか?」


 だよね。一国の王子なんだから、それこそ親衛隊とかを動かせばいいはずだからねぇ。


「もっともな指摘だ。理由だが、君は悪魔化した者と戦った経験があるだろ?」

「あるねぇ……って、もしかして?」

「そう急かないでくれ、順を追って説明していく。そもそもだが、悪魔化する原因を知っているか?」

「えーっと、大まかに――」


 悪魔、もしくは悪魔化した者の生まれは二つ。


 一つは生まれながら悪魔になっている者。

 これは親が悪魔の関係者とか、悪魔が細胞分裂したとか、そういう方法で生まれた存在。

 生まれながらだけあって、悪魔の力を自由自在に使えるという、ひっじょーに危険な存在でもあるんだよね。


 もう一つは悪魔の力を浴びて、悪魔に変化した者。

 普通の力ではない、悪魔化させるための専用の力があるようで、それを浴び続けると悪魔化する。糞女……じゃなくってベアトリーネなんかもこっちだね。

 後天的な力のせいか、力の制御がイマイチで、さらに情緒不安定だったりする危険な存在。


「知られているのはその二つだが、第三の方法が最近見つかったのは知っているか?」

「第三の方法? 初耳かも」


 正直、悪魔に関しては敵対したときの対処方法ばかりで、生まれについてはそこまで調べていない。

 悪魔化させる前に原因となる悪魔を倒す、そういう考えしかないからだけど。





「第三の方法だが、悪魔の因子という物を直接埋め込む方法だ。とはいえ、その因子自体は不明なんだが」

「因子ねぇ……」


 う~ん、なんか心当たりがあるような。


 因子なんだから、おそらく力の塊のようなもの。肉片とか、悪魔の一部を埋め込むのはまずない。

 そもそも悪魔の一部を取り込んでも悪魔化はしない。キメラって言ったかな? 他の生物同士をかけ合わせた魔物になるだけなんだよね。


 なので力の塊だとは思うけど、う~ん……。

 力の塊……継承……顕現……あぁ


「術装か。そういえばベアトリーネも妙な鎌を持ってたわ」

「術装の継承か、なるほどな。同じ武器を使う悪魔が存在するのは、術装として継承しているからか」

「推論だけどね」


 ベアトリーネを詳しく調べればわかりそうだけど、そこまでするかって言うと、う~ん……。

 あいつとは関わりたくないって気持ちが強いからなぁ。

 まぁ気が向いたらにしよう、急いで結論を出すことじゃないし。





「で、第三の方法うんたらってことは、その友人も?」

「その通りだ。勇者なんだが、色々と失敗をして神聖王国の人形となったみたいでな」

「あー、この先のこと、なんか予想できた」


 失敗した勇者をどうするかって言うと、おそらく他の勇者の経験値にでもするため、敵に仕立てたんでしょう。

 で、その方法が悪魔化ってわけか。


「分かってそうだが一応言うと、神聖王国の者の手によって悪魔化され、討伐対象になっている」

「うへぇ、もうそれ神聖王国じゃなく、悪魔王国じゃん」

「そう思うのも無理はない。ちなみに神聖王国側の発表では、悪魔化した他国の勇者が国民に災厄をもたらす可能性があるので、正義のもとに断罪するって感じだ」

「国内の点数稼ぎも入ってるわけか。ほんと腐ってるなぁ」


 ミツキたちの件もあって、色々と焦ってるんだろうね。

 勇者を大量召喚したのに国に仕えず、さらに召喚に失敗した勇者が魔物を率いて暴れたという消したい事実もあるし。

 しかも無茶な復興をしてるらしいから、国民の不満感は相当高そうだわ。


 とゆーか


「そうなると、神聖王国は悪魔とも繋がっているってことじゃん。そうじゃなきゃ悪魔化させるなんて無理だろうし」

「国全体かは分からないが、それは確かだ」


 確かにね、悪魔という明確な敵がいれば、それを倒すって感じに一致団結できるよ。

 そして悪魔の方も同胞とでもいうか、そういう存在を増やせるだろうから、相互の利害が一致してるんだろうね。





「事情は大体わかりました。ですが悪魔関係であれば、お嬢様でなくてもよいのでは? それこそ優秀な冒険者……あっ」

「理解したようだな。そう、悪魔と対決した経験があり、なおかつ実力は金級冒険者以上、それが君だ!」


 ビシッ! って感じに指さされちゃったよ。

 う~ん、わたしの評判ってセイリアスにまで広まってるのかぁ。

 しかもセイリアスって、もう一個の偽ギルドが主なのに。なんかすごいね。


「君たちも知っての通り、セイリアスにも冒険者ギルドはある。だが恥ずかしいことだが、実力はレグラスの冒険者には遠く及ばない者ばかりだ」

「まぁそこはレグラスが異常なだけって気がするけどね」


 思わず苦笑いしてそんなことを言ってしまう。

 ほんとレグラスの冒険者や騎士って、冗談抜きに戦闘力がとび抜けてるからね。

 アルネイアやセイリアスの上位の人たちは確かに強いけど、レグラスは末端まで強いという、ちょっと反則的な国だし。


「あー、ひょっとしてわたしに会いたかった理由って、依頼のため?」

「そうだ。アリサへの謝罪と、まぁ下心は確かにあるが、それ以上に友人を助けてもらいたくてな……」


 真剣な眼差しをしてそんなことを言うとか、嘘じゃないっぽいね。

 うーむ、ただのロリコンカッコつけ勇者だと思ってたのに、えらい真面目ですね。

 ひょっとしてこっちが素で、カッコつけ状態はキャラ作りかな? 国王はカッコつけが素っぽいけど。


「請けてくれるのであれば、ギルド経由で正式な依頼を出す。もちろん報酬はそれなりの額を予定している」

「ほほー。ちなみに、わたしが断ったらどうする気?」

「そうだな……他の冒険者に依頼するとは思うが、条件に合う者がいるかどうか……」


 難しそうな顔をしてるけど、たしかにそうね。

 強さだけなら何とでもなるけど、悪魔化した者と戦った経験は、ほとんどの人が無い。わたしだってこないだが初めてだったしねぇ。

 となると、成功率の方もガクッと下がるどころか、依頼した冒険者まで悪魔化する可能性があるわけで。


「んー、アリサはどう思う? 吹っ切れてるとは思うけど、前の主人のために働くことになるんだけど」

「お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。私はお嬢様の専属メイドです。前の主人がどうこうより、お嬢様が請けたほうが良いとお考えでしたら、それを後押ししたいのです」

「そっかぁ」


 どうやら考えてた以上に、アリサは過去のことは吹っ切れてるみたいね。

 それを聞いたロリコン勇者、いい加減サレストって言った方が良いか、まぁ奴も何となく安心したって顔をしてるわ。アリサへの過去の仕打ち、相当悔いてるみたいね。





 とりあえず自分の考えをまとめるため、紅茶を一口。あら、美味しい。

 セイリアスってお金持ちだけあって、なかなか高級な茶葉を使ってますね。淹れてくれたメイドさんの腕も高いってことは、教育も熱心ってことか。


 んっと〝冒険者のユキ〟に対する依頼ってことなら、助けることに問題は無い。

 これが〝レグラスのユキ〟に対する依頼だったら、国家間の問題で色々と面倒になる。

 うん、受けること自体は大丈夫だね。一応お母様とお姉様にも報告はするけど、冒険者として動くなら大丈夫のはずだし。


 次にアリサの想いとかを気にしたけど、こっちも大丈夫。

 『前の主人の為なんて絶対に嫌です!』とかなら断るけど、そういうのも無いしね。


 最後に悪魔化した奴と戦うことだけど、こっちはむしろどんとこーい! かな?

 あの時の仮面とはいずれ戦うことになる。ならば対悪魔戦の経験値を上げておきたい、そう考えるのだ。

 まぁ今回は倒すでなく、何とかして元に戻す、もしくは力を奪って捕獲するってことになるけど。


 それになぁ、ちょっとした下心もあるにはある。

 ここで恩を売っておけば、おそらくセイリアス側はレグラスに対して融通を利かせるというか、ちょっといい感じになると思う。

 そうなればセイリアスと貿易関係で交渉をしているお姉様だけでなく、パパ様やママ様の為にもなる。

 そして為になるという事はきっと褒めてもらえる、それが狙いです!


 うん、まとまったね。


「よっし、その依頼受けるわ」

「手間を掛けさせてしまい、申し訳ない。そして感謝する」


 そう言って、サレストが深々と頭を下げてきた。

 なんていうか、ロリコンカッコつけ勇者のイメージとは真逆な態度のせいで、すごいまともな奴に見えてきちゃったわ。まぁ恋愛感情は皆無だけど!

良い奴っぽくなっても恋愛フラグは絶対に立ちません

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