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204話 謝罪から始まる依頼?

 お仕事なので渋々、とゆーか嫌々だけど、ロリコン勇者と一緒に移動する。

 あーほんと嫌だなぁ。催眠系の術式使って、話したってことにしてバックレちゃおうかなぁ。


「ダメですよ、ズルをしては」

「もしかしてバレた?」

「バレバレです」


 隣を歩いていたアリサが『しょうがない子だなぁ』って感じの顔をしながら、わたしの計画をズバッと阻止してきたわ。

 むぅ、ほんと隠し事ができないです。


「だって面倒だしー」

「お気持ちは分かりますが、お仕事ですよ? でしたらがんばらないと」

「そう言われると反論できない」


 わたしもね、お仕事だからがんばろうとは思ったんだよ……1分前までは。

 だけどやっぱダメなんだよね。コイツは大っ嫌いな勇者で、アリサをいじめてた悪い奴って感情が強いから、不快感ばかり出てくる。


「大丈夫ですよ。私は平気ですし、お嬢様のお傍にずっと居ますから」

「んー、それじゃこうしよう!」

「もう、お嬢様ったら、またですか?」


 アリサが呆れつつもにやけたね。

 それもそのはず、アリサの腕に思いっきり抱きついたからね。嫌な気持ちを完全に吹き飛ばす、それがわたしのアリサなのです!

 ほんとは正面からがばっと行きたい気もあったりするけど、歩けないのでそれは我慢。

 と言っても、現状ですら傍から見たらバカップル爆発しろって感じかな? まぁ気にしないけど!





 少し歩いたところで、お茶会をするような部屋、サロンって言うべきかな? そこに通された。

 部屋の中央には円状の白いテーブルと、豪華な椅子が4脚ある。う~ん、他にも人が来る可能性があるってことかな?


 お見合い的なことをする場合、普通は人数に合わせた椅子を用意する。複数人が合同でお見合いするって場合以外は、普通は2脚だけなんだよね。

 これは3脚以上だと浮気とか、本命は別とか、そういう悪い印象を与えるから。前世には無かった気がするから、これはこの世界特有の考えだね。


 それなのに、ここには4脚ある。

 つまり、わたし以外にも二人お相手が居るって受け止められてもおかしくないわけで。

 もともと断る予定だけど、最初からこれとはねぇ。まぁ『本命は別に居るんでしょ!』的なことを言って、断りやすくなったともいえるけど。


 それにしても、この部屋もやっぱり金ぴかだったり装飾いっぱいだったり、いかにもお金持ちの部屋って感じだねぇ。

 ここまでくると、お金が相当あるっていうアピールの意味もありそうだわ。


「まずはそちらの席へ掛けてくれ。なに、アリサも一緒で構わんよ」

「それじゃお言葉に甘えてっと」


 椅子を移動させ、アリサと並ぶような形で座る。

 ふーむ、椅子が4脚あったのはアリサのためかな? いや、ただの偶然というか、椅子の数は特に考えて無かったと考えるべきか。


 まぁいいや、さっさと終わらせましょう。


「それじゃ最初に、ごめんなさ」

「すまなかった!」

「「え!?」」


 席につくなりサクッとお断りを言おうとしたら、急に立ち上がって頭を深々と下げ、思いっきり謝ってきたんだけど。

 ちょっとこれは予想外過ぎるわ。





「えっと、説明を求めます!」

「ですね、とりあえず頭を上げてください」


 アリサがそう言うと、何とも申し訳ない感じに頭を上げた。

 いやほんと、マジでどういう事なのよ?


「突然ですまない。だが、どうしても謝りたくてな」

「それってアリサに対して?」

「そうだ。言い訳になるかもしれないが、アリサを奴隷待遇で扱うのは、僕の本心ではなかったんだ」


 苦々しい顔をしながらそんなことを言い出したけど、ほんとかなぁ?

 良い印象を与えようとしてるだけなんじゃないかなぁって、ちょっと疑っちゃう。


「信じてないって顔をしてるが、これは嘘偽りない、事実だ」

「それが本当だとして、じゃぁなんで酷いことしてたの? 奴隷のままでも、もっと違う接し方あったよね?」

「その通りだが、当時の僕にはそれができなかった。理由は、コレだ」


 懐から瓶を取り出して机の上に置いたけど、なんだろ?

 危険は無さそうなので、とりあえず持って中身を……うげ。


「キモい虫が入ってる……」

「死んでいるようですけど、ちょっと気持ち悪い見た目ですね……」


 大きさは5センチくらいで、表面が真っ赤なムカデみたいな虫の死骸が入ってるんだもん。

 調べたら情報は得られるのは分かってるけど、直視したり細部まで確認したりするのは無理。わたし、虫って結構苦手なんだもん……。 

 ちらっと見ただけでも、気持ち悪いというか怖いというか、そんな感情からゾゾゾってなったし。


「コレは神聖王国の勇者に対し、監視目的で寄生させる魔法生物だ」

「へぇ、これを使ってるのか」


 神聖王国では勇者の行動をすべて監視しているのは知っていたけど、詳細は知らなかった。

 まぁ興味が無くて詳しく調べなかったって方だけど、まさかこんなキモい虫を使っているとはねぇ……。


「行動は全て筒抜けで、他の勇者とは異なる行動や素振りを少しでもすると、さらに強力な隷属魔法や魔法生物を投入してくる」

「強力って、自我を奪い人形化するみたいな?」

「その通りだ。そこまでされたら僕の力じゃどうすることもできない。故に、アリサに対してきつくあたっていたんだ。僕の弱さのせいで、申し訳ない」

「あ、あの、そう何度も頭を下げないでください。私はもう気にしてませんので」


 アリサが慌てて止めようとするくらい、深々と頭を下げてきたよ。

 う~む、ロリコンではあるけれど、そこまで悪い奴じゃないのかしら? 一応民の事も考えてるっぽいし。


 とりあえずあれね、勇者大っ嫌いという固定概念をいったん封印して、コイツ自身はどうなのかっていう判定をした方が良いね。

 勇者だからって、むやみやたらと敵を作る意味はないし。





「とゆーか、一国の王子にこんな虫を寄生させるとかヤバいじゃん。国際問題になるどころか、国交断絶になるレベルよ」

「その通りだが、これは証拠にはならん」

「どういうことよ?」


 ここに寄生していた虫があるんだから、十分証拠になるはずなのに。

 ただ、苦々しい表情をしているから、なんか訳がありそう。


「この魔法生物だが、本来は神聖王国を離れる際に除去される。簡単に言ってしまえば、神聖王国に籍を置いている間だけの、勇者につける目印みたいな物だ」

「監視ではなく、あくまで目印って言われたらそれまでかな? まぁ度が過ぎてるとは思うけど、これが国の方針ですって言われたらどうしようもないか」

「その通りだ。寄生されるのが嫌ならば神聖王国に来るな、口出しは内政干渉だ、そんな感じになっている」


 もっともな言い分だなぁ。

 お世話になるのなら、その国の文化や規律に従いなさいってのは当たり前すぎるわ。


「コレも僕が神聖王国を離れる際に回収されるはずだったが、騒乱のため回収忘れとなり、偶然セイリアスに持ち帰れたんだ」

「騒乱?」

「あぁ、君が起こした東部の壊滅事件の影響だ」


 おっとー、そんなところにまでわたしの暴走は影響してたんですか。

 ほんといろんなところに飛び火してるねぇ。

 これはアレかなぁ、未来の歴史書に大々的に書かれちゃうかな? 狐の少女問題起こしすぎ! みたいな感じで。


「事件の後、僕も復興をしばらく手伝っていたが、尋常でない被害を知った父が神聖王国に対して危機感を持ってな、急遽帰国となったんだ」

「あー、初期のころは原因がわたしだとは周知されてなかったから、天災とか召喚術の暴走とか、そういうのを危惧したってわけね」

「うむ。急ぎだったので帰国前の手続きを色々と省略した結果、コレも持ち帰ることになったわけだ。だが手続きを省いたせいで、コレは証拠としての価値は無くなった」

「他所で寄生されたとか、自作自演だって言われるわけね」


 入国だけでなく、出国の際にも寄生生物などが無いか、確認する国がほとんど。

 まぁうちの国のように、魔道具でサクッと短時間で確認できる国が多いから、負担になるって程じゃないけど。


 なので、確認の手続きを省いたら、省いたせいだって言われる可能性がひっじょーに高いわけで。

 それだけ入国と出国の手続きは当たり前で、なおかつ重要視されてるってことだけど。


「さらに、これが神聖王国で錬成された魔法生物という証拠も無い。他国に流出といった万が一を想定していたんだろう」

「なるほどねぇ。で、そこまでいろいろと語るってことは、アリサに対する謝罪以外にも何かあるんでしょ?」


 そもそも、この虫のカプセルはどこかの研究機関で使ってそうな、かなーり丈夫な物。

 とゆーことは、セイリアス側で分析したりしてる大事な標本みたいな物ってこと。持ち出し厳禁の可能性もある。

 そんなものを謝罪の為だけに持ち出すとは、どうも考えにくい。


「単刀直入に言う、僕の友人を助けてもらいたい」

「友人を助ける?」


 なんか予想外の依頼になりそうだよ。

 しかもセイリアス内で解決できず、わざわざわたしに頼もうとするとか、なんとなく複雑そうだわ。

敵ではないけどロリコンではある、そんな勇者です

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