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202話 最初からピリピリ!

 お母様とお姉様に連れられて、やってきましたセイリアスの王城。

 大きさはレグラスの王城と同じくらいかな? レンガ作りでなかなか重厚感があるね。


 ただ、伝統衣装となっているチャイナドレスとの紐付けが全くありません!

 ちゃんと統一感もっときなさいよ、建国した大昔の転生者。ちぐはぐすぎて、ツッコミ全開だよ。





 しっかし、返事をした翌日に会合することになるとは、予想外だわ。どこまで積極的なんですかねぇ。


「大丈夫? 不安とかない?」

「大丈夫ですお母様。ただ、この格好じゃなきゃダメなんですか?」

「今回はレグラス王家経由の依頼だからね~。巫女服でなくてドレスなのはそのためだよ~」

「むぅ。いまだにドレス状態、ちょっと慣れてないのに」


 お姉様が言ったことは理解しているつもりだけど、それでもドレスは着たくないって気持ちが大きい。

 まぁドレスを着ちゃうと、自分がレグラスのお姫様的存在だっての、再認識しちゃうからだけど。

 お嬢様扱いは流石に慣れてるけど、お姫様扱いはまだまだ恥ずかしいのです。





 入口のところで待つこと数分、奥からようやく迎えの人が来た。呼びつけたくせに待たせすぎだし、なんか偉そうなオッサンなのがちょっと嫌。

 どうせ迎えに来るなら、かわいい女の子にしてもらいたいです!


「ようこそおいでくださいました。それでは、我が王の元へご案内します」

「頼むわ」


 あー、お母様はこの人の事、すっごい嫌いなんだね。

 かなーり冷たい感じで一言返事しただけだもん。ここまで嫌われる人、なかなかいませんよ?


 だけど当のオッサンは気付いてないのか、いやらしい笑みを浮かべてる。

 営業スマイルって奴じゃなく、ニヤァっ感じなのがほんと嫌ですね。セイリアスの偉い人ってこんなのばっかなのかな?





 オッサンの案内で、豪華な部屋の前まで来た。

 とゆーか成金って感じ? 扉の装飾だけでなく、持ち手部分まで金ぴかだよ。


 そして通された部屋で待っていたのは


「よく来てくれたな!」


 これまた派手な装飾が付いた服にマント、さらに王冠と、テンプレ過ぎる王様って感じのオッサンが居た。

 このオッサンがセイリアスの国王であるセイランドか。外見は60代の只人族、強さはそこそこっぽいかな?

 人相は悪くないけど、やっぱりこいつも嫌な感じがする。お母様に対する下心が透けて見えるかな?


「ほう、その娘か」

「えぇそうよ。さぁユキちゃん、嫌だろうけど挨拶してくれる?」

「は~い。えっと、初めまして、ユキです」


 スカート摘まんでペコッとお辞儀。うん、この仕草もなかなか慣れたものです。


「なるほど、貴女と瓜二つ……いや、似すぎてるな」

「あら? 私の可愛い娘に対して良からぬことでも考えたのかしら? くだらない事に巻き込もうとするなら、殺すわよ?」

「フッ、下心が無いと言えば嘘になるが、表立って貴女と敵対する気は無い。だが、どうにも腑に落ちないだけだ」


 う~ん、なんかわたしのことで、お母様とセイランド王がバチバチしてるんだけど。

 お姉様の方を見ると、やっぱこうなったかぁって感じの少し呆れた表情。もしかして前回もこんな感じだったのかな?


「実子とはいえ、貴女と娘の容姿が似すぎているのがな。何らかの術を使たのではあるまいな?」

「まさか。確かにユキちゃんは転生者だけど、それだけよ。そっくりではあるけれど、生まれる前に何かしら手を加えたとかは一切ない、私とタツミさんの可愛い愛娘よ」


 そう言い放った後、お母様がわたしの後ろに来て、ぎゅーっとしてくれた。はふぅ、一気にふにゃけちゃうそう。


 まぁ、セイランド王が疑問に思うのも分かるよ。わたしとお母様ってホントそっくりだからねぇ。

 外見はもちろんのこと、半精霊の身、同系統の術装、敵に対する心の持ちようなど、揃いすぎてるから、意図的に作りだした存在じゃないかって疑うのも分かるわ。


 とはいえ、わたし自身はそんなことはないって最初から分かってた。

 だってお母様だけでなくみんなの愛情がね、嘘偽りなくすごいからね。意図的に作り出せるなら、もうちょっと別の感情を受けてるはずだもん。





「それじゃユキちゃんの紹介も済んだし、帰っても良いかしら?」

「そうピリピリするな。おい、息子はまだ来ないのか」

「た、ただいま確認してまいりますっ!」


 ふ~む、セイランド王に話しかえられた兵士の反応を見ると、王に対する畏怖みたいなものが相当あるみたいね。

 これはうちの国と違い、力で民を支配してるって感じなのかな? 国が違えば統治の仕方も違うわけだねぇ。


「すまんな、息子は優秀なのだが、どうにも外見に拘りがあるようでな」

「拘りねぇ……あんなのに拘りねぇ」

「ほう、我が息子を愚弄する気か?」

「あら、そう取るという事は、あなたも自覚があるんじゃないの?」


 おーっと、お母様と王が一段上のピリピリ状態になったよ。

 これはアレだね、犬猿の仲とか、水と油とか、そんな感じのやつ。お母様、この王のことが相当嫌いなんだねぇ。


「貴女も先日気が付いただろ、我が息子は勇者の中の勇者である事が」

「どうかしら? 勇者なのは分かったけど、勇者の中の勇者という表現には語弊がある気がするわ」

「何を言うか! 我が息子より優れた勇者など、居るわけがないだろ!」


 冷静に煽るお母様と違い、王の威厳はどこに行ったって感じで反論してきたわ。

 この程度で感情があらわになるとか、王としてはまだまだですねぇ。


 それにしても、息子は勇者なのか。

 王子であり勇者であり、そして見てくれを気にすると……。う~ん、どんな奴なんだろ。


 お母様は王と口論中なので、お姉様に小声で尋ねてみよう


「ねーねーお姉様。お姉様はその王子に会ったことがあるんですか?」

「無いよ~。昨日、私とアリサちゃんが謁見の間に戻った時には、既に退室していたの。この中で王子を見たのは、サユリ様とシズクさんだけだよ」

「へぇ。ねーね―シズクさん、どんな感じだったんですか?」

「そうですね……。一言でまとめると」

「まとめると?」

「お嬢様の嫌いな方ですね」

「マジ?」


 シズクさんがズバッと言うとか、なかなかですよ。

 まぁ勇者ってだけで、かなーり嫌いな感じはするけど!





 お母様たちの口論が始まって数分後、いきなり扉がバーンッ! って感じに開かれた。

 どうやら王子が来たみたいね。


「お待たせした。セイリアスが第一王子、サレストだ。よろしく!」


 そう言って、前髪をファサァって感じにやって、なんとなくカッコつけてる。

 うん、第一印象からして勘弁してくださいって気分。


 レイジと同じくらいの体型、歳もかな?

 金色のボタンがいっぱい付いた白いスーツみたいなのを着ていて、いかにもお金持ちの王子ですって感じ。

 しかもいちいちポーズを決めているので、ちょっと、というかだいぶ苦手。


 にしても、なーんか既視感あるなぁ。

 どこかで似たようなやつ見た……って


「どうしたのアリサ、すっごい驚いてるけど」

「お嬢様、お忘れですか? 彼は勇者サレスト、私が神聖王国の奴隷だった時の主人です」

「えっ!?」


 アリサの元主人って確か……あーっ!


「ロリコン勇者か!」

「ち、違う! 僕はロリコンではない!」


 わたしの一言で、お母様たちだけでなく、周りに居た兵士まで〝うわぁ〟って感じの目線をロリコン勇者に注いだ。

 慌てて訂正してるけど、それが逆効果になってる気がしないでもない。これってちょっとした扇動になっちゃったかな?

補足:

 サレストがアリサの元主人なのは、サユリとシズクは知っています

 ただ、ユキとの面識があったのは知らなかった状態となります

 そのあたりの補足というか辻褄合わせは次回

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