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197話 勧誘のためにも説明です

 他の人が居るところで話すのもちょっとアレなので、ナナとネネの二人を連れて隣の個室に移る。

 おっと流石ですね。大使館勤めのメイドさんが先回りしたようで、お菓子と紅茶の準備をしてくれたわ。ほんと優秀だねぇ。


 わたしと二人が向き合う形でソファーに腰掛け、まずは紅茶とお菓子を勧める。

 とゆーか大使館だからしょうがないとは思うけど、用意してくれたのがちょっとお高いのだからねぇ。先に勧めておかないと、恐縮して手を付けないってこともあるし。


 それに、なんとなく緊張してるみたいだね。

 やっぱアレかな、わたしの立場とか知っちゃったせいかな?

 部屋を移るときも仰々しいというか、お姫様のおなーりーって感じに執事さんが先導してくれるし、廊下にいた職員の人たちは端に移動し、お辞儀しだしちゃったからね。





 軽い雑談と、おいしいお菓子と紅茶が効果を成したのか、二人の緊張が少し解けてきたね。

 それじゃ勧誘を開始しますか。


「それで、えっと、二人の今後についてなんだけど」

「ネネちゃんから聞いています~。ネネちゃんをメイドさんとして雇いたいんですよね~?」

「そそ。んで、よかったらナナもうちで働いてみない?」

「ナナもですか~?」


 なんで? って顔してるね。そうなるのも当然だけど。

 対するネネは突然の事ではあるけど、やはり姉と一緒に働けるのは嬉しいようで、驚きつつも笑顔になってきてる。


「もちろん同情とかじゃないよ。簡単に言っちゃうと、ナナもうちのメイドさんとして働ける素質がありそうだから勧誘してるの」

「そうなんですね~。てっきり~、ネネちゃんのためなのかと~」

「それも無いとは言えないけどね。まぁどちらかが拒否しても、同じ町で過ごせるようにするつもりだけど」


 姉妹が離れ離れとか嫌だもんね。

 わたしだってお仕事が無ければ、お兄様とお姉様とずっと一緒に居たいもん。

 だけどそれは無理なので、会えるときに思いっきり遊んでもらう事にしている。


 わがままを言えば、きっとお兄様もお姉様も仕事をほっぽり出すけど、それじゃダメだからね。

 なにより、わがまま言って迷惑はかけたくないのだ。


「ですけど~、ナナはこのような体ですし~」

「そのことなんだけど、うちのメイドさんになる過程で、レグラスの国民にもなってもらう予定なの。そうすればレグラス国民限定の治療もできるし、保険とか老後のうんたらも安心できると思うの」

「レグラスのですか~? でも~、ナナとネネはお金が無いですよ~?」

「それも大丈夫。勤める前の準備費用ってことで、治療費はうちが負担するよ。医療関係だけでなく、衣食住全てついてます!」


 うちの屋敷に住む場合はもちろんだけど、通う場合の補助も完璧だからね。


 さすがに至れり尽くせりすぎて、ナナが少し胡散臭いって顔してきたわ。

 確かにね、ここまで揃ってたら普通は詐欺だって思っちゃうよ。


「もちろんここまでするのには理由があって、うちのメイドさんって結構たいへんなの」

「それってどのくらいですか~?」

「そうだねぇ、炊事家事洗濯は人並み以上にできるようにならなきゃいけないし、この部屋に入った時のメイドさんみたいに、主人やお客に対して二手三手先の行動を常に心がけなきゃいけないし」

「ネネには難しそうですっ!」


 ナナだけでなく、ネネも少し嫌そうな顔をしちゃった。

 たぶん猛特訓とか、ぎっちぎちの勉強とか、いろいろ想像しちゃったんだろうね。


「誤解しないでもらいたいんだけど、全部できなくても問題は無いんだ。ただ、それができる人ばかりだから、その中でできない状態のままで居られるか? ってのもあってね」

「それは劣等感とかですか~?」

「かな? 迷惑かけてごめんなさいって気持ちが強くなるみたいだよ」


 できないから咎めるとか、お仕置きするとか、つまはじきにするなんてことは一切ない。むしろできるように応援し、親切丁寧に教えてくれる。

 でもその優しさが、できない方からすると逆に辛くなるみたいね。


「ただ、そういう境地になるのは、研修にくる他国の貴族に仕えているメイドさんと執事さんだけなの。うちが直接雇った子や、レグラスの王家が雇った子だと一切ないんだよー。みんな完璧なメイドさんや執事さんになってます!」

「それって、誰も逃げないってことですかっ?」

「そだよー。というかそういう強い子だけを、うちも王家も勧誘しているからね」


 技術なんてどうとでもなるけれど、心の持ちようはなかなか変わらないからねぇ。


 何かの拍子で心が折れるのは誰だってある、

 だけど、そこから立ち上がれるかどうか、そこが重要。

 すぐ立ち上がれなくても問題ない。諦めずに、立ち上がろうって意思があればなんとかなるのです。





 その後も仕事内容とかを説明したけど、うん、予想外って感じになってきたね。


 執事さんやメイドさんって聞くと、なんとなく四六時中お仕事してるって印象だったようで、うちの仕事状況聞いて驚いちゃったわ。

 うちの場合、働きたい時間に働くだけでいいって形態だから、実は休み取り放題。まぁ派遣担当になるとそうはいかないから、その分手当が出るけれど。


 アリサも休み取り放題だけど、あの子はわたしに仕えるのが生き甲斐になっちゃってるからねぇ。

 まぁアリサだけでなく、うちや王家に勤めてる人ほぼ全員が、わたしたちや王家に仕えるのが生き甲斐とか趣味って感じになってるけど……。


「ですけど~、お仕事の割には~お給料高すぎませんか~?」

「そこにも理由があるんだよ。簡単に言っちゃうと、他の家に仕えさせないためなの。だって、うちのメイドさんと執事さんってすっごい優秀だからね」


 技術もそうだし、人によっては戦力もすごい。

 それに、戦闘ができる人はみんな術装、もしくは量産型を所持してるからね。天魔に進化している人も多いしねぇ。


「優秀なので、他国の貴族さんが欲しがるくらいなんだけど、うちとしては家族の一員みたいなものだから、取られたくないってわけ」

「それはつまり~、雇いたければ~もっと高いお金を払わないとダメ~、ってことですね~」

「そゆこと。うちと同等以上の給料出せる家はそこまで無いから、いい抑止力になってるの」


 教育せず、出来上がった人材だけ貰おうとする貴族ってほんと多いからね。

 教育は時間も費用もかかるっての、知らないのかねぇ。いや、むしろ知っているからこそ、その費用をケチろうとしているのかな?





「なるほど~、いろいろ分かりました~」

「ネネもですっ!」

「ほーい。さてと、それじゃ本題にはいろうかな」

「「本題?」」


 ナナとネネが揃って頭の上にはてなマークがついてそうな感じになっちゃった。ほんと姉妹だねぇ。


「えっと、二人の両親は8年前に亡くなったんだよね?」

「そうです~。なにか関係があるのですか~?」

「うん。たぶん、二人の両親が死ぬことになった原因、わたしなんだ……」


 突然のことで二人が驚きつつ、少しぴりっとしたね。


「8年前、神聖王国で大きな争いがあったでしょ?」

「たしか~巨大な竜とアンデッドが暴れてるとか~」

「それを倒すために、兵士さんがいっぱい戦ったって聞きましたっ」

「なるほど。ちなみに両親も兵士さんだったの?」


 そう訊ねると、二人とも首を振った。

 どうやら兵士ではなく、戦いに偶然巻き込まれたか。


 いや、偶然じゃないか。

 あの時のわたしは神聖王国のすべてを滅ぼそうとしていたから、偶然巻き込んだじゃなく、わたしの命令を受けたあの子たちによって殺されたって方だね。


「お父さんとお母さんはネネとお姉ちゃんを守るため、兵士さんに殺されちゃったですっ」

「えっ!? そうなの?」

「です~」


 あっれ~?

 わたしの思ってた展開とちょっと違ってきたよ?

 あの子たちが直接殺したか、もしくは攻撃によって倒壊した建物に潰されたとか、そういうのを予想してたんだけど。

 これはいったいどういう事なんだろ?

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