196話 説明しないとだねー
馬車に揺られて1時間、ようやく大使館に到着。
快適ではあったけど、やっぱり恥ずかしさの方が強くてちょっと疲れた。前世の幼馴染に見られながらいちゃつくのは、どうしても抵抗あるわ。
馬車から降りると、予想通り大使館に勤めてる人たちがお出迎えしてきた。
こういう光景見ると、わたしってほんとお嬢様なんだなぁって再認識しちゃうわ。
さてと、捕まっていた人は大使館の職員さんに任せて、わたしは捕らえたゴミの引き渡しを済ませておきますか。
といってもゴミに対しどんな封印をしたか、親衛隊の人に連携するだけなんだけど。
「――という封印用の術式を使っているから」
「承知しました、お疲れのところありがとうございます。残りは我らにお任せください」
「ほーい、お願いね~」
引継ぎも無事に完了!
あとはうまいこと情報を引き出してくれるのを祈るだけだね。ろくな情報持ってない気もするけど。
あの仮面がどこに居るとか、どうやって連絡するとか、そのあたりが分かれば大収穫なんだけどねぇ。
まぁ尋問とかは全部任せておきましょう。
さてさて、わたしは面倒というか少し重い話を、ナナとネネにしましょうかねぇ。
引継ぎをしている間に、みんなは大使館付属の休憩部屋に案内されたとのことなので、メイドさんにナナとネネのもとに案内してもらう。
許可のない人を大使館内に入れることはできないからね。まぁ許可が下りるとしても、見学程度になっちゃうけど。
大使館を別荘みたいに使えるとか、うちと王族ってほんと特別扱いだなぁ。
歩くこと数分、二人いる部屋に到着。少し気が重いけど、中に入りますか。
中では、捕まっていた人たちに対し、大使館に勤めているお医者さんが健康診断をしているところだった。
身体だけでなく、精神面も見ているから安心ですね。しかも全員まとめてでなく、一人一人に担当となるお医者さんがついてるから、さらに安心です。
そんな部屋をざっと見まわして……あーいたいた。
窓側のソファーでお医者さんに話しを聞いてもらってるナナと、隣で一緒に話を聞いてるネネを発見したわ。
それじゃそっちに行きましょー。
あ、うん、皆さんはそのまま続けてください。
わたしが部屋に入ったらお医者さんが、仕事の手を止めて一斉にあいさつしてくるんだもん。
よくあることだけど、わたしに対する優先度みたいなの、高すぎじゃないかな?
そんな室内の状況はさておき、ナナとネネのところに。
とりあえず
「何か問題あった?」
「問題と言いますか、こちらの少女について少し」
ナナの担当医になった妖精族の、美人というよりは可愛い先生に様子を聞いたけど、何かあったみたいね。
「現状のままでも生きていくことに問題はありません。ですが腕と足には深刻なダメージがありますので、普通の治療では元に戻すことは不可能です」
「それって、ただ戦いで傷ついてってわけじゃないの?」
「どうやら神経を麻痺させる毒が付与されていたようです。本来は初期治療で毒を取り除く必要があるのですが、それを怠り、さらに傷に対する治療も雑な状態でして」
「治るものが治らなくなったってことかぁ」
この世界の医療はだいぶ進歩しているから、治せないものってあまりないんだよね。
それも医学と治療魔法、治癒術の融合をうまいこと成し遂げた先人のおかげなんだけど。
あら、治すことは不可能って聞いたのに、ナナはあまり悲観してないね。むしろネネの方が絶望というか、すごい落ち込んでる。
これはアレか、ナナの方は割り切った、もしくは諦めたか。
「なるほどねぇ。ちなみに、他に治せない人って居たの?」
「いえ、他の者は全て治療可能でしたので、本人の同意があればすぐにでも治療できます」
「んじゃその人たちは治療しちゃって。費用はわたし持ちで良いから」
「承知しました」
さすがにボロボロの人にお金を出せなんて言えないからね。
かといって無償でお医者さんを働かせるわけにはいかないので、わたしが出すのだ。
まぁわたしが出さなくても、国家予算から捻出されちゃうとは思う。だけど、連れてきたのはわたしだからねぇ。そのくらいは出して当然なのだ。
「ところでナナの治療だけど、普通のってことは」
「はい。レグラスの民としての治療でしたら、元に戻すことは可能です」
「なるほど、そういうことかぁ」
当然だけど、医療レベルは国によって違うし、国家機密に属するような方法もあったりする。
そういったものは自国民だけとか、位の高い人のみ提供するってのが当たり前。
そして、ナナもそれに当てはまるってことか。
レグラスの国民にできる医療であれば治せるけど、他国の人相手にできる範疇では無理ってわけね。
ん~、となると先にこっちを進めるか。
「んじゃ一応その治療ができるように進めておいてくれる? 無駄になった時の処分費用とかもわたし持ちで良いから」
「承知しました。では少し準備をしてきますね」
「おねがいねー」
そう言って美人というよりは可愛いお医者さんが部屋の外出て行った。
さーてと
「とりあえずネネ、あのことはナナに話した?」
「あ、はい、話しましたっ!」
「よろしい」
うん、ちゃんとメイドになるうんぬんは話したようね。
なら次の段階……の前に、少し状況が飲み込めてないナナに説明しますか。
「えっと、とりあえず初めまして? わたしはユキって言います」
「ナナはナナって言います~。あの、助けていただいて、ありがとうございます~」
ちょ、すっごいのほほん系かいな!
ネネはどっちかって言うと活発って感じだけど、その真逆とは。でも一人称が自分の名前なのは同じだね。
あー、でもこれ、コータ好みの性格だわ。
マナミの影響だとは思うけど、コータってどうも気が強い子には引き気味だからねぇ。マナミもなかなか罪作りな子ですね!
マナミの前でそんなこと言ったら怒られそうだけど……。
ではでは、順々に話していきましょうかね。




