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191話 圧倒的なんですけどね

 ではでは、門から堂々と入りますか。

 扉がないってことは、おそらく一歩踏み込んだら警報とかが鳴って、どわーっと敵が出てくるかな。


「とりあえずわたしが先頭、二人は構えながらついてきて」

「敵はどうするんだ?」

「もち、殲滅です!」

「「お、おう」」


 あれ? なんか引いてない?

 あぁ、命のやり取りをするってのに、明るく答えるんじゃないってことね。


 ただなぁ、わたしからするとゴミはゴミなので、そこまで深く考えないんだよねぇ。

 まぁ敵をゴミ扱いするのは控えなきゃいけないんだけど、どうしてもそう考えちゃう。治さなきゃいけないのに、これもなかなか治んないなぁ。





 それじゃ初めのいーっぽ!

 うん、門をくぐった瞬間、警報用の魔道具がジリリーンって感じにすごい音を鳴らしだしたわ。


 そして瞬く間に屋敷から敵がぞろぞろと。

 数は……30かな? 戦士っぽいのだけでなく、術者モドキもいるわね。

 だけど強さはそこまでじゃないし、ここは二人の対人戦闘の経験にさせてもらおうか。まだまだ経験不足だしね。


「それじゃ二人とも、殲滅を始めてちょーだい」

「こっちから攻めるのか?」

「そうだよ。なんか『ここは何たら様の屋敷でうんたらかんたら』って叫んでるけど、無視してやっちゃいましょー」

「マジで容赦ねー性格になってんな……」


 あら、トースケが苦笑いでそんなこと言ってきましたよ。

 でもまぁ敵に容赦ないのは事実なので否定しません! そもそも敵の口上を聞く意味なんてないもんねぇ。





「それじゃ行くぞトースケ!」

「おう!」


 そう言って二人が敵の中に突っ込んでいく。

 コータは敵の隙をつき、一撃一撃を丁寧に当てていくね。敵の攻撃も盾を使って受け流してるし、なかなか良い感じです。

 それに、術者の射線に入らないように動いてるのも良いですよ。


 対するトースケは、防御とか関係ないって感じに大剣で薙ぎ払ってる。

 まとめて倒すのはもちろんだけど、ちゃんと攻撃しそうな敵から攻撃してるし、こっちも良い感じですね。


 動きに関しては、この世界に来て約1ヶ月の新米としては十分だね。

 まぁ案の定、対人戦闘には慣れてないようで、躊躇いみたいなのが見受けられるわ。それでもちゃんと倒してるから大丈夫かな?

 躊躇って攻撃できませんだったら怒るつもりだったけど、これなら一安心。





 二人の動きを観察してたら


「お嬢ちゃん、ガラ空きだげふっ!?」


 バカがわたしに斬りかかってきたけど、当たるわけないわ。近寄られる前にヒトガタの魔力弾をぶちかましてサクッと排除!


 そもそも、わたしの周囲にはヒトガタがずっと展開しているわけで、攻撃されたら当然自動反撃しちゃいます。

 しかも偵察に向かわせたのとは違う、わたしが戦闘で使う〝いつものヒトガタ〟なので戦闘力が段違い。敵を切り刻んだり融解したり、分子分解なんかも余裕でできます。


 とゆーか、もっと警戒してきなさいよ。

 なんでわたしだけ武器を持たず、周囲にヒトガタは浮いてるけど隙だらけの状態なのか、わかってないのかねぇ。

 少しでも修羅場を経験した奴なら気づくでしょうに。わたしが『全力じゃなくてもお前らを簡単に殲滅できる』っていう、挑発をしていることに。


「な、なんだあのガキは!? 近づいた兄弟の腹に一瞬でデカい穴を開けたぞ!」

「そんなのオレが知るかよ! だが所詮は紙人形だ、火炎魔法を一気にぶちかますぞ!」

「小娘ごと燃やし尽くす気だな。殺すには惜しいが、致し方無い」


 そう男が叫ぶなり術者三人が距離を保ちながら、三角形の形でわたしを囲んできた。

 そして、わたしとヒトガタを包むピラミッド型の火炎魔法を三人重ねで発動してきたけど、ほんとバカだね。

 確かにヒトガタは紙でできてるけど、普通の紙なわけないじゃん。そんな魔法で燃えるどころか、焦げることすらありえないわ。


「やったか?」

「オレ達の全力だ、ただでは済まないだろ」


 はい、定番の台詞を頂きました!

 ほんとに言う人居るんだねぇ、ちょっとびっくりだよ。


 まぁ案の定、ヒトガタは焦げすらないし、それにヒトガタ自身が張る防御結界にわたしは包まれているので、炎の発する熱すら届いてません。


 とゆーかこの程度の魔法、ヒトガタ1体で完封できるわ。

 まったく、殺す気なら殲滅魔法の一つや二つ撃ってきなさいよね!





 ふむふむ、二人も10人くらいかな? 倒したようなので、残りはさっくり片付けましょー。

 それじゃ


「行きなさい!」


 わたしの一言でヒトガタが魔力を開放し、わたしを覆っていた火炎魔法を吹き飛ばす。


「「「なっ!?」」」


 力を過信していたのか、吹き飛ばされたことにすごい衝撃を受けてるけど、終わりだね。

 吹き飛ばすと同時に、ヒトガタが三人の術者に対し突撃!

 叫び声を上げる前に三人は分子分解されました。さすがわたしのヒトガタ、ヤバいくらいに強力です!


 その光景を見た他の敵がざわめいてるけど、それもすぐに静まるかな? ヒトガタとの戦力差が圧倒的なので、すぐに終わっちゃいそう。

 偵察時にヒトガタを倒した奴がごろごろ居たら少し面倒だけど、そういうのは無いみたいね。





 うん、ヒトガタを動かした10秒後には殲滅が完了したわ。ヒトガタと触れた敵を、容赦なく次々と分子分解していったからねぇ。

 さてと、二人も大丈夫そうね。ただ……


「返り血を浴びすぎでしょ」


 コータとトースケが返り血で染まってるわけで。

 やはり慣れていないからか、斬る角度に動く方向など、いろいろ考えて無かったみたいね。


「そう言うユキはボクらと違い、返り血どころか砂埃すらついてないな」

「まぁヒトガタを展開してたから、一歩も動かずに殲滅できたのもあるけど」


 返り血だけでなく砂埃もつかないように、ヒトガタには反射結界を常時展開させて、わたしの体につく前に全部弾いてるからね。

 攻撃時に避けることもできるけど、ヒトガタを使った方が楽だし確実なのだ。


「こういうことに慣れて良いのかわかんねーけど、この差を見ると、オレ達も頑張らないとダメだな」

「そうだねぇ、対人戦闘だけでなく対魔物なんかでも有効なことでもあるから、基礎から教わった方が良いかもね」


 魔物によっては体液が毒だったり、呪いだったりするからね。くらわないに越したことないのだ。





「よっし、それじゃ屋敷にカチコミよー」

「なんていうか、気楽な感じだな」


 コータが少し呆れ気味だけどキニシナイ! だって余裕なんだもん。


「まぁ内部構造はすべて把握済みで、ナナの場所も掴んでいて命に問題はなさそうだからね」

「焦らなくても大丈夫ってことか?」

「そゆこと」


 ヒトガタに内部を偵察させているから、建物の構造だけでなく敵の配置まで把握済みなのだ。

 もしもナナの生命が危険とか、襲われそうになってるとかなら急いだけど、その様子は無いからね。

 であれば焦ることなく、そして程よい緊張を持っていつも通りに行くだけだもん。





 いつでも戦闘ができる状態を維持したまま、屋敷の玄関に到着。

 ふむふむ、そこそこ丈夫にできた扉ですね。魔力は感じないから、ただの合金か。


「それじゃいっくよー、ていっ!」


 屋敷の扉を蹴っ飛ばして破壊! やっぱカチコミだからね、破壊して勢いをつけないと。

 まぁ扉が轟音を立てて吹っ飛んだから、二人がちょっと唖然としてるね。

 だけど異世界ならこれくらい当然なのです! 日本での感覚はそろそろ忘れましょー。


「ではでは、お邪魔しまーっす」

「ほんと、ギャップが凄いな……」

「可愛い少女がとんでもなく強いとか、最高だがこえーな」

「こらトースケ、自画自賛だけど、こんなにかわいい狐さんに対し怖いとか失敬な! ともかく、どんどん行くよー」


 ふざけてないで、サクッと救助するよー。

 まぁ、ふざける原因がわたし自身な気もするけど、そこは気にしないでおこう!

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