表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/363

189話 嫌な定番は続くのかな

 嫌な感じがしつつも、まずはネネからお姉さんについての情報を聞く。特に身体的特徴や今日の服装を細かく聞く。

 さすがのわたしでも、見ず知らずの人を探すのは無理だからね。どうしても情報が要るのだ。


「まとめると、名前はナナでネネと同じ熊族、身長はマナミと同じくらい、体型は少し痩せ気味、髪はネネと同じ色でセミロング、服装は皮の胸当てと、大きな傷跡がある肩当てをしてる、だね?」

「そうですっ!」

「そして街の外には出ていない、と。ならいけるかな?」


 ポーチからサクッとヒトガタを取り出し、一気に展開する。

 セイリアスはそこそこ広いし、30体くらい動員した方が良いかな。


 突然目の前にヒトガタ、ネネからすれば紙人形か、それが大量に現れ、しかも空中で待機したからネネがすっごい驚いた。

 とゆーかネネだけでなく、ミツキたちもポカーンとしてるね。

 見慣れてないからか、どうしても超常現象っぽく見えちゃうんだろうねぇ。まぁそのうち慣れてね!


 ではではさっそく


「ネネのお姉さんを探してくるんだよ!」


 わたしの声に反応し、ヒトガタ30体が四方八方に飛んでいく。よっし、あとはのんびり待つだけだね。


「ねぇユキくん、もしかして今ので?」

「うん。わたしのヒトガタが街中くまなく飛び回り、ネネのお姉さんを探し回ってるの」

「ほんと器用なことするわね」

「まぁね~。興味があるなら教えるけど?」

「それは少し考えさせてちょうだい」


 あら、即答じゃないのね。

 もしかして、わたしにおんぶにだっこになるかもしれないの、気にしてるのかな?

 気持ちはわかるけど、こういう事は『強くなるため』って、割り切った方が良いと思うんだけどね。

 それに悪い人が対価を求めて教えるじゃない、お友達としてわたしが教えるだけだからねぇ。





 そのまましばらくネネから今までの経緯なんかを聞いてたけど、う~ん……。


「つまり、ネネもオレ達と同じで神聖王国に居たのか?」

「ですっ!」

「だけど8年前に争いがあって、その際に両親と死別。ネネとお姉さんは運よくセイリアス行きの馬車に乗り込めたので生き延びることができた、か」

「ネネとお姉ちゃんは運が良かったんです。だって、他の人たちは……」

「ネネも大変だったのね」


 当時を思い出したのか、ネネが少し泣きそうになったので、マナミが慌ててあやしだした。

 ほんとマナミってこういうところ、頼りになりますね。


 しかし、トースケとコータが確認した『神聖王国であった8年前の争い』って、たぶん、わたしの暴走だよねぇ……。

 とゆーことは、わたしのせいでネネのお父さんとお母さん、死んじゃったのかな? わたしのせいで、ネネとネネのお姉さんが苦しんでるのかな?


 8年前の暴走による虐殺はきっちり反省し、乗り超えたつもりだった。

 だけど、目の前にその被害者が出てくると、ちょっと、うん、ダメかも……。後悔とか贖罪とか、そういう感情が溢れてくる。


「ユキくん、大丈夫?」

「あ、うん、だいじょうぶだよー」

「でも……う~ん、えいっ!」

「わっぷ」


 どうやら表情に出てたようで、ミツキにすっごい心配されちゃった。

 だからか、ミツキが正面からぎゅーっと抱きしめてきた。ちょっと大胆ですね。


 でも、うん、落ち着くわ。

 やっぱね、好きな人にぎゅーっとしてもらうと、いろいろと吹っ切れる。というか、完全に甘えたくなっちゃう。

 さすがに街中なので抑えるけど、これが家だったらちょっとヤバかったね。甘えすぎると、わたしって精神年齢がすっごい低い感じになっちゃうからねぇ。

 威厳とかプライドなんて元から無いけど、羞恥心はあるのです。





 ミツキのおかげで落ち着いたけど、これ以上抱きついてたらマナミに怒られそうなので、しぶしぶ離れる。ほんとしぶしぶ!


「もういい、の?」

「うん、ありがとー」

「よかった」


 ミツキも安堵したって感じだね。

 ただ、その、少し残念そうな顔をするのはどうかと思うよ? 気持ちはわかるけど。


「とりあえず、ネネ達には後で話すことができちゃったわ」

「そう、なの?」

「うん。それを聞いてもうちのメイドになるかは、正直わかんないけどね」


 だって考えようによっては、わたしって親の仇だからね。恨まれる可能性も非常に高いからね。

 そんな奴の下で働きたくないって言われたらそこまでだよ。


 ただまぁ断られても、セイリアスでもう少し過ごし易くなるように助言はするつもり。

 関わっちゃったからね、そこでお終いって感じにはなれないのだ。





 それから10分くらい経ったけど、まだネネのお姉さんが見つからない。

 むぅ、路地裏だけでなく地下水路とかも調べたのに、どうなってるんだろ。


「一般街だけでなく貴族街にも居ないとなると……まさか貧民街?」

「貧民街って言うとスラムの事よね? だけどこの世界のスラムって」

「マナミの知識通りだよ。普通の人は近づかないし、冒険者も近寄らない場所。そもそも住んでいるのは、貧しい人より犯罪者ばかりだからね」


 それこそ犯罪組織の一つや二つ、酷い国だと数十の組織が存在するくらい、国の汚点みたいな区域のことだし。

 レグラスには存在しないけど、あのアルネイアですら存在してるからね。とはいえ小規模らしいから、いずれ無くなると思うけど。


「いくら見つからないとはいえ、さすがに貧民街は無いと思うんだよなぁ」

「どう、して?」

「んとね、簡単に言っちゃうと冒険者よりも強い犯罪者が居る可能性が高いの。そんな危険な場所、指名依頼でもない限り誰も近づかないの」


 ちょっと力のある冒険者程度だと、入ったら最後、翌日には亡骸になるのが当たり前の区域。

 そもそも犯罪者の多くは冒険者ギルドから除名された者。汚職とか弱い者いじめをするバカが除名の主だったかな?

 そして組織とは、そんな奴らが集まってできた巨大な犯罪者パーティみたいなもの。ほんと厄介です。


「不用意に貧民街に向かうとか、バカな冒険者でもありえない事なんだけど、ここまで見つからないとなると」

「そのヤバイ区域に居るかもってことね」

「居ない方が良いんだけどね……」


 だって、わたしですら貧民街に行くのは怖いもん。

 わたしよりも強い奴が居る可能性は低いけれど、危険な武器とかヤバい罠が無いとは限らないからね。

 少しでも傷を負う可能性があるところには、不用意に近づかないのが鉄則です。





 不安を持ちつつも、ヒトガタを貧民街の方にも展開する。

 そしたら案の定


「あちゃぁ、見つかったわ」

「見つかったって、貧民街で?」

「うん。しかもちょっとヤバそうな屋敷だから、迷い込んだとかじゃないっぽい」

「それってめっちゃ危険じゃない!?」


 マナミだけでなく、みんなが少し慌てだした。

 特にネネの様子がちょっと酷いかな。まぁお姉さんが貧民街に居て、しかもヤバそうな屋敷に居るって聞いたら不安だらけになるか。


「しかも参ったな、わたしのヒトガタがバレて1体やられたわ」

「やられたって、あのとんでもないヒトガタをか? ボク達からすると想像できないんだが」

「わたしも驚いたよ。探知されたのもそうだけど、まさかやられるとはね。しかも一瞬の事だったから、どんな攻撃を受けたのか分からないし」


 ネネのお姉さんを見つけたって反応があった次の瞬間、ヒトガタが倒されちゃったからね。

 探知能力もヤバいけど、力もヤバそうだわ。


 やれやれ、なんてところに居るんですかね、ネネのお姉さんは。

 捜してる人がヤバい場所で見つかるという定番だし、ほんと勘弁してもらいたいわ。


 まぁ経緯はどうあれ、これは確保したらお説教だね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ