181話 まずは伝統衣装!
お母様に3日くらい甘えてたからか、すっかり元気になりました!
髪の毛も尻尾も元通りで、ほんとよかったわ。
元気になった後、みんなとのんびり1日過ごしたけど、うん、みんな心配しすぎだったね。
お姉様だけでなく、アリサにエレン、ミツキまで参戦して、ほんといろいろ大変でした。
そんな怒涛の数日はさておき、今日から修学旅行もとい、観光の始まりです! いや、修学旅行が主役か? まぁいっか!
初日の今日はお姉様の案内による観光です。
お母様とシズクさんはミツキたちとの話し合い、とゆーか今後についての相談があるそうで参加できなかった。ちょっと残念です。
なので、お姉様と一緒できたのはわたしとアリサ、エレンとレイジにノエルだけです。いつも通りといえばいつも通りかな?
「ねーねーお姉様、今日はどこに行くんですか?」
「そうだねぇ。セイリアスならではって考えちゃうと、やっぱり闘技場かな?」
「闘技場、ですか?」
手を繋いでいるお姉様に予定を聞いたけど、想定外な答えだったよ。
てっきり図書館とか教会とか、そういう方面だと思ってたわ。
「セイリアスの闘技場はね、規模が大きいのと、少し変わっているの」
「変わってる? どんなふうにですか~?」
「それはナイショ。着いてからのお楽しみだよ~」
そう言ってお姉様がぎゅーっとしてくる。
う~ん、これは3日隔離状態だった影響だね。心配しすぎたからか、普段以上にお姉様がぎゅーっとしてくるわ。まぁうれしいのでバッチコイですけど!
ただ、うん、ちょっと目立つね。街中で狐族とエルフ族がイチャイチャしてたらしょうがない気もするけど。
あとはアレだね、周囲にレグラスの親衛隊が控えちゃってるからだね。
お兄様が仕事で来られないからしょうがないけど、普段と違って少し厳重だもん。ネズミ一匹近寄らせませんって感じだし。
歩くこと数分、目当ての闘技場に来たけど
「これが闘技場、ですの?」
「なんていうか、百貨店みたいですねー」
みんなでポカーンとしちゃうのもしょうがない。
見た目は『これぞ闘技場!』って感じの、石を積み重ねた円状のコロシアムみたいな形。
なのに、闘技場の外壁には『新入荷!』とか『春のお勧め商品販売中!』といった、広告みたいなのがいっぱい貼ってあるんだもん。
ポカーンとしてたら、お姉様が少し苦笑い気味に説明してくれる。
「セイリアスはね、良くも悪くも周りの意見をどんどん取り入れちゃう国なの。この闘技場も、建てられた当初は貴族専用の娯楽施設だったんだよ」
「娯楽ってことは、奴隷を使って魔物と対決させるアレですか?」
「そうだよ~。だけど奴隷に対する扱いが不当ってうちの国とかが抗議したら、今度は冒険者同士の戦いになったの」
たしかに、うちの国から正式に抗議されたら従うしかないだろうねぇ。
うちの国って冗談抜きに技術や資源、さらに軍事力が半端ないから、余計なことして険悪な関係になったらいろいろとマズいだろうし。
しかも奴隷に対する扱いってことは、相当強く言われてそうだわ。
「だけど、どうして百貨店みたいになったんですか?」
「それはね、戦いだけじゃやっていけなくなったからなの」
あー、察し。
馬鹿みたいに戦闘関係しかやらなかったんだろうね。それじゃ合わない人も大勢だし、飽きる人だっているわ。
「そこで転生者の意見を聞いて、闘技場内でお店を開こうって流れになったの」
「ほえ~、なんていうか、極端ですね」
「だね~」
お姉様も少し呆れ気味だけど、普通なら戦闘以外の催しを開催するよね。それこそアイドルのコンサートなり、スポーツ関係の行事とか。
なのに店をやるって、どんな思考よ……。しかも売店レベルじゃないってことなんでしょ? それ、闘技場を使う意味ないですよねってツッコミたいわ。
少し呆れ気味で中に入ったけど、うん、完全に百貨店だわ。
どうやら観客席の部分を改装したようで、お店がいくつも入ってる。高低差を利用して、地上5階はあるのかな?
闘技場の中心は食べ物系のお店がいっぱいあるね。ほとんどが露店形式で、中央に飲食用の机や椅子が置いてあるわ。
とゆーか、そこまでするなら闘技場自体やめれば良いのに……。このくらいの建造物なら1ヵ月もあれば建て直せるだろうに、意味が分かりません。
何はともあれ、お姉様の案内で少し派手なお店に入る。
そこには
「服がいっぱい!」
「やっぱりセイリアスの民族衣装を着ておかないとね~」
なるほどなっとく。他国に来たら伝統の衣装を着ないとってことですね。
うちの国だと民族衣装は地方の物って感じだけど、セイリアスは地方ではなく国の衣装って感じみたい。
だけど、これは……
「まさかのチャイナドレスとか、異世界どことか文化も違う国で見ることになるとは……」
「しかも民族衣装って言うか、コスプレって感じ」
レイジ同様、わたしもちょっと呆れてる。
確かに地球からの転生者は多いけれど、チャイナドレスを民族衣装になるくらい根付かせてるとは思いもしなかった。
ただなぁ、これってアレだよね、日本人が漫画やアニメで考える形のチャイナドレスなんだよね。過去の転生者、なんつーもんを広めたのよ……。
「それじゃみんなでお着替えしてみましょうか」
「このドレスにですか?」
「そうだよ~。さぁさぁ」
お姉様に引っ張られ、あれよあれよと着替えることに。
しかも試着室が広いからか、わたしだけでなくレイジを除いた全員で入ったわけで。これはきっと、わたしが着せ替え人形になっちゃうなぁ。いつものことではあるけど!
何着も着替えた結果、ようやくわたしのドレスが決定。
とゆーか、みんなはサクッと終わったのに、わたしだけあーでもない、こーでもない状態だったし。しかもほとんどファッションショー的な感じだったわ。
とはいえ、さんざん着替えた甲斐があって、このドレスはかなり似合ってる。
少しスリット部分が深いかなぁって気はするけど、白いドレスにピンクの花模様が可愛いです。
「うふふ、ほんと私の妹はかわいいなぁ。アリサちゃん、しっかり撮れている?」
「もちろんです! 今までの衣装もすべて……あら、もう保存限界に。新しいのにしないと」
チャイナドレスを着たわたしを見て、お姉様はうっとり、アリサはすごい勢いで魔道カメラを使い撮影している。しかし保存限界って、何万枚撮ったのよ……。
「ですけど、これは少し恥ずかしいですわね」
「ですねー。体の凹凸がここまでハッキリでちゃうと、着る人を選びそうですー」
確かに、これは少しエロい気がするわ。露出が多いってわけじゃないのに、なぜかそう感じちゃう。これがチャイナドレスの魅力ってやつですか?
ただ、わたしたちが着るとコスプレ感が半端ないのがね。似合ってるけどなんか違うって感じだわ。まぁ本場の人、見たことないけど!
「あー、だからレイジ、さっきから明後日の方向いてるんだね」
「レイジ君て妙なとこがうぶですからねー」
「い、いや、うぶとか関係なく、みんなは自分たちの破壊力を再認識した方が良いと思うよ……」
そうレイジがこっちを向かずに答えるけど、言われたら確かに納得。
しかも今日は最強格の美人であるお姉様までいるから、どうしても鼻の下が伸びそうになるわけだね。
そしてそんな様子をノエルには見られたくないと、なるほどね!
「ところでお姉様、もしかして今日はこの格好で回るんですか?」
「そうだよー。この国の伝統衣装を着て観光するとか、素敵じゃない?」
そう言ってお姉様がぎゅーってしてくる。その様子をアリサが激写って、ほんと何枚撮るのよ……。今日一日の総撮影枚数がとんでもないことになりそうで、ちょっと怖いわ。




