175話 サクッと先回り!
10分くらいかな? マナミたちが強制進化の反作用でのたうち回ってたのは。
幸いなことに三人とも意識を保てたので、無事に進化したみたいね。
それじゃサクッと作った装備類もつけてもらいましょー!
っと、その前に洗浄の術式で三人とも綺麗にしておきますか。結構ヤバい状態だしねぇ。
「おー三人とも似合ってるって、どうしたの、顔が真っ赤だよ?」
「それは、その、泣き叫んでたからな……」
「オレ達、中身は20代だからな。大人なのに泣け叫ぶってどうなんだって、ちょっとな……」
なるほどねぇ。確かに注射を怖がって泣き叫ぶ子供みたいな感じではあったけど、これはしょうがないと思うなぁ。
強制進化の反作用は、体が引き裂かれたり、中から焼かれたり、圧殺されるような痛みらしいからね。むしろ泣き叫ぶ程度で済んでよかったんじゃないかな?
「まぁ気にしない方が良いよ。それで着心地とかは大丈夫?」
「問題ないわね。というか、よく下着のサイズまでわかったわね、ぴったりよ」
「そこはわたしが作っているので! ある程度は体に合わせて自動調整する機能も付けたから、超おでぶーとか、超がりがりーとかにならなければ長い間使えるよ」
「しっかり測ったわけじゃないのね?」
「さすがにそれは許可を貰わない限りしないよー」
身長体重、胸囲や腹囲など、個人情報になる部分は流石にね。
許可なくとも調べられるけど、それは絶対にしないのがマナーってものです。
「見た目はボクが騎士、トースケが戦士、マナミが魔法使いって感じか」
「三人の性格と、あとは戦闘時のバランスを考慮した結果だからね。んでこっちが武器ね」
そう言って三人に手渡すけど、おや? なんか変な反応ですね。なんだコレって顔してますよ?
「なぁユキ、この柄みたいなの、なんなんだ? 馬鹿なオレでも分かるように説明してくれないか?」
「こういった魔道具、神聖王国じゃ使わせてもらわなかったのか。それじゃえっと、その柄をしっかり握りながら魔力を流し込み、『起動』って叫んでみて」
三人が教えた通りに魔力を流し込み、それぞれの魔道具を起動する。
うん、さすがわたしですね。変形時間も短く、武器の大きさも三人の体型にあっている。完璧です!
「へぇ、こうなるのね。ウチが杖でコータが剣と盾、トースケが大剣ね」
「定番だけどね。生き残れるってのを優先したから、別形態への変形も省いてるよ」
槍に変化したり銃に変化したり、やろうと思えばいろいろとできた。だけどそれを活かせるかって言うとまだ無理。
むしろ余計な機能があると、戦闘時に間違って切り替えて最悪なこともあり得るからね。オマケ機能は基礎ができてからじゃないと危ないのだ。
少し三人に使い方を説明したけど、たぶん大丈夫かな?
ではでは
「んじゃミツキを助けに行きます! なので、三人はこれに乗ってください!」
サクッと物質創造で木の小舟を作る。
うん、なんで小舟って顔してるね? そこはほら、すぐにわかるから、早く乗って!
「の、乗ったが、その、まさか」
「おや? コータは予想できたみたいね、たぶんあってるよー。それではっと」
魔力で小舟を浮かす。三人ともびくっとしたけど、大丈夫、次も相当だから。
んでは
「ていっ!」
思いっきり小舟を投げ飛ばす!
うん、なかなかの速度ですね。まぁ三人の悲鳴がこだまのように聞こえてきたけど……。
ではでは、小舟を追いかけるように、飛行の術式を起動して一気に飛ぶ!
投げた小舟に追いついたら、そのまま押すような形でさらに加速!
うん、この調子で飛べば先回りできそうね。敵が拠点に戻る前に捕獲できそうで何よりです。
「はい、とーちゃーっく! て、三人とも大丈夫? 顔が真っ青なんだけど」
「ユ、ユキ、その、もうちょっと、別の方法は無かったの?」
「ん~、紐で結んで引っ張るって方法ならあったけど、それの方が良かった?」
「いや、そうじゃなくて」
「飛行機とかなかったのか?」
「あーそゆこと。簡単に言っちゃうと、そこいらの乗り物よりわたし単独の方が速いので、こうなりました!」
わたしより速いのって、レグラスで使っている飛空艦くらいなんだよねぇ。
しかも今は精霊神衣顕現状態なので、その飛空艦ですら追いつけないくらい速くなるわけで。ほんと化け物ですね!
「とりあえず三人は少し休憩してて。そろそろアリサが……あ、きたわ」
アリサが飛行術で飛んでくるのが見えた。
さすがアリサですね、敵に発見されるギリギリまでは試作型の飛空艦で飛んできて、その先は飛空艦無しで飛んできたわ。
確かにこれなら試作型がバレる可能性は限りなく低くなるね。ほんと出来たメイドです!
うん、アリサもわたしに気が付いたようで、一気に加速して降りてきたわ。なので、抱きつき!
「お嬢様ったら、いきなりこれですか?」
「だって2日? 3日かな? 離れてたからね~」
小さい頃からずっと一緒なので、居ないことが逆におかしいくらいだもん。
だからかな、やっぱりアリサが居ないと寂しかったわけで。なので抱きつくのです! はふぅ、やっぱり癒されるわぁ。
「えっと、ユキ、なんかいちゃついてるようだけど、説明!」
「あーごめんごめん。この子はアリサって言って、わたしの専属メイドで、わたしの大好きな子です!」
「アリサです。お嬢様から皆様のことは説明頂いてますので、ご安心ください」
そう言ってアリサがお辞儀する。
う~ん、さすがうちのメイドです。動きが洗練されていて、ほんと完璧。まぁわたしが抱きついたままですけどね!
「専属って、えらい若いわね」
「そうかな? この世界だと幼少期から仕えるってことは結構あるんだよ。ちなみにアリサは今年15歳です!」
「「「マジ?」」」
あらまぁ、三人がすっごい驚いてるわ。
確かに日本感覚だと、中学生か高校生の少女がメイドとして働いてるってことだからねぇ。
「ちなみにアリサはわたしのなので、メイド大好きトースケ君がどんなにがんばっても彼女にできないません! 潔く諦めたまえ」
「なっ!? お前、そんなことも覚えてたのかよ……」
なんだかんだで幼馴染連中のこと、思い出してきちゃったからね。
だけどあくまで前世の記憶って感じだから、わたしの中で線引きとでもいうか、アリサたちとの差は結構あるんだけど。
「それでお嬢様、これからどうします?」
「ん~、安直だけど待ち伏せがいいかな。ちょうどこの辺りって戦いやすい感じだから、ここまで来てもらうのが良さそう」
「ですね。それに、月夜のため明るいのも幸いですね」
「だねぇ。光源用の術式使うと目立っちゃうから、使わなくても視認できるほどの明るさなのは良かったわ」
昼間ほどじゃないけど、かなーり明るい。
しかも近くに街もあるようで、そこからの光も合わさっているから照明要らず。
だけど木々に隠れたら見えなくなっちゃうくらいの明るさ。ほんと待ち伏せにもってこいです!
ではでは、敵の逃走を阻止する結界の発動準備をしておきながら、じっくり待ちましょー。
わたしのものを奪うのがどんだけ愚かな事か、思い知らしてやるわ!




