174話 幼馴染だからそうなりますよね
さてと、出発前にお母様たちにメールしておきますか。
本当はお話ししたいところだけど、夜中だからね。だからといって何もせずに神聖王国に殴りこむのはダメ。ちゃんと報告しておかないと怒られちゃう。
サクッと内容を送信っと。
って、返事が来た!? あ、シズクさんか。ちゃんと寝てるのか心配になっちゃうけど、ふむふむ、特に問題はないみたいね。
だけど守らなければいけないことができちゃった。
暴走して神聖王国を壊滅させちゃいけないのと、犯人は掃除しても良いけど主犯だけは絶対に生かすことの二つ、これができないと最悪な状態になっちゃうのか。気をつけよーっと。
それじゃそろそろ向かい
「ねぇユキ、お願いがあるんだけど」
「な~に?」
飛ぼうとした瞬間、マナミたちが少し真剣な顔で話しかけてきた。
これはアレかなぁ、連れて行ってくれとかかなぁ。
「迷惑なのはわかってるけど、ウチらも連れて行って!」
やっぱりそう来ましたかぁ。まぁ気持ちはわかるけど。
幼馴染だから何もせずに見届ける気にはならないのと、自分たちのミスでこうなったことへの強い負い目だね。
「んー、連れて行ったら、間違いなく戦いになるよ?」
「分かってるわ」
「ほんとーに? 戦いって、魔物相手じゃないよ? 人相手になるんだよ? しかもお遊びじゃない、命を奪い奪われる戦いだよ?」
「それも、わかってる」
「人殺しに抵抗が無いわけじゃないが、それ以上にボクたちもミツキを助けたいんだ」
「汚名返上って言ったら安っぽいが、そう言うことだ」
あら、三人とも予想以上に真剣な目つきですね、覚悟はしているって感じかな?
「本当は反対したいんだけど、絶対に諦めないって感じだね」
「まぁね。それにユキだって覚えてるでしょ? ウチら全員、友達のために無茶をする馬鹿だって言うの」
マナミが苦笑いしながらそんなこと言うけど、そういえばそうだったね。
そして、その中にはわたしも含まれているわけで。
前世もそうだったけど、今世でも同じ。むしろ前世よりも気持ちが強いかな?
となると、これはわたしが折れるしかないか。
だけど連れて行って無駄死にさせるのは嫌だし、ちょっとは対策しておきますか。
ならばサクッと物質創造で小屋を作る。
突然のことで三人とも驚いてるけど、そこは気にしないでもらおうか。
「はい、三人ともこの小屋の中に入ってきて」
手招きをしながら小屋に入る。
何か警戒してるようだけど、普通の小屋だよ? ただ周りに見せたくないから、遮るための空間が欲しかっただけだから。
「さてと、それじゃ悪いけど、三人とも裸になってちょうだい」
「「「はい?」」」
「うん、意味不明なのはわかってる」
「ならユキ、説明!」
「えっとね、このまま行っても三人ともあっけなく死んじゃうの。なので、ちょっと強引だけど、三人を一気に魔人に進化させます」
只人のままだと、どうしても弱いからね。
だったら進化させて、それなりの装備を持たせれば何とかなると思うのだ!
「進化って、そんなに簡単にできる物なの?」
「普通は無理だよ。ただ、三人の魔力とか精霊力を細かく調べて、同じ性質の力を外部から思いっきり付与すれば、魔石が一気に生成されるの」
敵の攻撃を吸収して、一気にパワーアップがこの現象なんだよねぇ。
まぁ進化するほどの攻撃をくらうとか、なかなかヤバい状況な気がするけど。
「つまり、ユキがオレ達に力を流し込んで、進化を促すってことなのか?」
「そゆこと。だけどこの方法、制御を間違えば耐えきれずに体が崩壊しちゃうの。その代わり、成功すれば今の何十倍も強くなれるよ」
「危険を伴う方法ってことね」
「うん。あとはそうね、この方法はわたしも試したこと無いんだ。だから成功の保証はないんだけど、それでもやる?」
わたしとしてもこの方法は使いたくない。そもそも進化は自然に委ねたいって気持ちが強いし。
だけど現状の最善策はこれしかない。ついてこないって言う選択肢を選んでくれたらよかったけど、無理そうだしね。
そんな危険を三人は……選ぶのね。真剣な眼差しをしていて、覚悟も決めているって感じかな。
「ただ、裸になるのはどうしてなの?」
「んっと、その方が魔力とかを把握しやすく、流しやすいの。あとは防具を作成するんだけど、下着部分から作りたいかなって」
「下着からって、それにどんな効果があるんだ?」
「それはね、下着部分を身体強化の魔道具にしちゃうの。アクセサリーでの強化と違い、肌に密着する物の方が効果も高いの」
戦力に不安がある三人だと、これくらいはしておいても損はない。
それに急所をより強固な状態にすることもできる、一石二鳥の装備なのだ!
「でまぁ時間が無くて悪いけど、コータとトースケは一緒でお願い。さすがにマナミと一緒は問題あるから、そこは別だけど」
「分かったが、その、どうなんだろうな?」
「中身がカズヤなのはわかってるんだが、今って、その、なぁ」
「気持ちはわかるけど、時間が無いから、はい、それぞれ脱ぐ! 脱いだら設置したベッドにうつぶせの状態で寝てください!」
ベッドを3個設置した後、簡単な衝立で男女を分ける。
そりゃね、時間があればそれぞれ個室でじっくりと、それも脱がなくてもいい状態で作業できます。
だけど今は時間が惜しいの。だから恥ずかしがってないでさっさと脱ぐ!
ではでは、マナミは脱ぐのに時間がかかってるので、脱ぎ終わった男どもの方から開始しますか。
それじゃ背中をぺたぺた。
「おっふ!?」
「うひょぉ!?」
「お前ら、変な反応するんじゃないよ、マナミに誤解されるわ」
「「す、すまん」」
もしも誤解されてたら、こいつらにも弁明させよう。わたし、そういう気は一切ないわけだし!
さてと、気を取り直して……ふ~む、これならサクッとできそうかな?
「もう一度聞くけど、本当にいいんだね?」
「あぁ、問題ない」
「容赦なくやってくれ!」
「ほんと男らしいことで。んじゃいっくよー」
二人にそれぞれに合わせた魔力をドカッと流し込む。少し調整が難しかったけど、わたしなら余裕です!
まぁ流し込んだ時に、まーた変な声を上げられたのは気になったけど。マナミが誤解してないといいなぁ。
「よっし終わり。たぶん1.2分後に体が痛みだすけど、そこは何とか耐えてね。泣き叫んでも大丈夫だけど、決して気を失わないように」
「泣き叫ぶって、そんなになのか?」
「そんなに、だよ。本来の進化は時間をかけて魔力だけでなく、体も成長していくものなの。それを短時間で済ますから、それなりの反動は覚悟しておいてね」
「わ、わかった」
少し不安そうだけど、たぶん大丈夫でしょう。
だって施術したのがわたしだからね! こういうときの成功率は100パーセントなのです!
二人が終わったので、今度はマナミの方に向かう。
よしよし、ベッドにうつぶせになってますね。って、あれ? 変な顔してるんだけど。
「ねぇユキ、さっき、あの二人から変な声がしたんだけど」
「いやね、こう背中をペタペタ触ったら」
「きゃっ!?」
「……と、というような声が出ただけで。や、そんな顔真っ赤にしなくても」
マナミらしからぬ可愛い悲鳴をあげるとは、なかなか貴重ですよ!
できることならからかいたいけど、そんな時間はない。残念だけど、お仕事開始しますよー。
ではでは……なるほど、マナミは二人よりかは精霊力が高めだね。
でも、うん、この感じなら余裕です!
とゆーわけで
「マナミにも聞くけど、本当にやってもいいんだね?」
「えぇ、やってちょうだい!」
「二人と同じで、躊躇いが一切ないねぇ。それじゃいっくよー」
マナミに合わせた魔力をドカッと流し込む。2度目なので今度はさらに余裕です!
いつも思うけど、わたしってこういう変な技術への適応力、すごく早いねぇ。惜しいのは、そう何度も使わない技術ばかりってことだけど。
「はい終了。二人にも言ったことだけど、1.2分後に体が痛みだすから、何とか耐えてね」
「わ、わかったわ。それで、その間にあんたは何するの?」
「時間は有効活用しないとなので、装備をちゃちゃっと作るよー。本当は好みの武器を使わせたいところだけど、今回はわたしが思う最適な武器にします。あくまで効率優先ってとこね」
今回は三人の成長を促すのではなく、あくまでミツキの救出が目的だからね。
さてさて、それじゃ一気に作っちゃうよー!




