171話 もう終わりですよね?
糞女は拘束したし魔力も抑え込んだから、そろそろ結界を解除しますか。
というか、コータたちも話したいことがあるのか、出たがっている感じだし。
それじゃサクッと解除っと。
解除したとたん、流れ込むようにみんなが押し寄せてきた。そんなに慌てて、気になることがいっぱいあるんですかね?
「ちょっとユキ、あんたマジで何なのよ」
「ふぁい?」
「どこからともなく日本刀を取り出したと思ったら、そのまま急に斬りあうし、しかも速すぎてまったく見えないし、どうなってるのよ」
「マナミの言う通り、なにがなんだかさっぱりだったな」
全員を代表してなのか、マナミとコータがそんなことを言い出したけど、そんなに異常かな?
これはきっと、日本での生活感がいまだに基準になってるってことか。
武器の召喚とか高速戦闘はこの世界だとよくあるから、この世界の人ならそこまで驚かない。だけど日本の感性だと異常って感じるわけだね。
「この世界での戦いは、強い力で一気に潰すか、速さを活かしたこういう戦いになるってだけだよ。作戦も重要だけど、それよりも個の力が明暗を分けるのが多いからってのもあるけど」
「そう聞くと、なんていうか、今までの訓練じゃどうにもならない感じだな……」
「マジで世界が違うって感じだよなぁ……」
あらまぁ、コータとトースケが少し神妙な感じになっちゃった。二人だけじゃない、他のみんなもか。
確かに今のままの訓練じゃ弱い魔物相手が精一杯、ちょっと強い魔物とか、こういった強敵相手じゃ完全に無力。
しかも逃げることすらできないような、情けないって感じの弱さなんだよねぇ。それだけこの世界は危険だってことでもあるけど。
ただ、少し焦り過ぎな気もするわ。
危機感を感じているのはわかるけど、この世界で生き抜くのに必要な基礎ができていない状態なんだよね。それじゃいろいろとダメなのも当たり前なわけで。なにごとも基礎は大事なのです!
まぁこれから強くなればいいだけなんだから、焦らずじっくりと鍛えていってもらいたいわ。
そう考えると、基礎から鍛えることができる国を紹介した方が良いかもね。わたしが全員の面倒を見続ける気は無いけど、最低限の誘導はするのです。
そんなみんなとは少し違い、ミツキは何か気になることがあるって顔してるね。何かあったのかな?
「ねぇユキくん、ちょっと、いい?」
「いいよ~」
「あ、ウチも行くわ」
ミツキに手を引かれ、マナミと一緒にみんなから少し離れたところに来た。
ふ~む、みんなには聞かれたくないことなのかな?
「えっとね、気になったことがある、の」
「どんなこと?」
「その」
「簡単よ。そのスカートというか、ミニ袴、どうなってるのよ?」
そう言ってマナミがわたしの袴をめくって……って、え!?
「な、な、なー!?」
「あれ? 普通に捲れた、ね?」
「おかしいわね、鉄壁ガードって感じだったのに」
真面目な顔して二人とも、なんつーことをしてくれたんですかね? わたし、怒っていいよね?
興味が湧くのはわかるけど、そんなむやみに捲ったりしたらいけないはずですけど! 女の子同士でもダメです!
「まったく、そんなことを気にするとか」
「いや気になるでしょ! あんなに飛び回っていたのに、ちらっとも見えなかったのよ? こんなミニスカートみたいな物なのに」
「可愛いけれど、ちょっと危ない、よ?」
なるほど、そう言うことですか。
たしかに丈が短いからねぇ。だけどこのソックスとスカートが醸し出す絶対領域が! って、いかんいかん、ちゃんと答えないとマナミに怒られちゃうわ。
「えっと、わたしの場合、昔っからこういう格好で戦ってるの。だから、どう動いたら捲れるとかも分かってるし、それに訓練の賜物とでもいうか、見られないように動くのは訓練でバッチリです!」
「訓練でどうにかなるとか、ほんと化け物ね」
あらまぁ、今度はすっごい呆れちゃって、そんなにかな?
とりあえず、袴を捲ったまま、まじまじと見ないでください。さすがに恥ずかしくなるわ。
え? 歳の割にちょっとエロい下着履いてるのも気になるって? そこはほら、あのお母様の娘ですので!
二人が何とか納得したようで、再びみんなの元に戻ってきた。
うん、遠目でもわかったようで、なんでスカート捲りみたいなことしてたんだ? という質問が来たけど、そこはマナミが軽く説明してくれた。
そしてみんなも呆れちゃったわ。訓練で何とかなるっての、ぜんぜん信じてもらえなくて悲しいです。
「しっかしほんと、漫画やアニメみたいな戦闘だったよな」
「だなぁ。残像っぽいのもできてたし、凄いの一言だな」
「それにキラキラしてたわね」
「すごく、綺麗だった、よ?」
何やらみんなにヨイショされだしたんだけど、そんなに目立ったかな?
悪い気はしないけど、ちょっとだけ恥ずかしいです。
「ところでユキ、この女どうするの? それに裸のままなのも問題だし」
「んー、この手の敵には徹底した対応をとった方が良いんだけどなぁ」
「でも、さすがに男どもの目が、ほら、ね?」
マナミが周りを見ろって感じに視線を送ってきたけど、そういうことですか。
糞女をいやらしい目で見てるのが結構いるから、さすがに問題だろってことですね。
わたしはこの糞女に対してそういう感情一切沸かないんだけど、みんなは違うってことですかねぇ。
本当は危険だから何も身につけさせたくないんだけど、しょうがない、術札を取り出してサクッと物質創造し、簡易的なワンピースを作る。
念のため封印などの術式も仕込んでおきますか。やりすぎってことはないしね!
作ったワンピースはマナミに託し、わたしはミツキに抱きつく! はふぅ、アリサやエレンとは違うこの感じ、良いですね。
まぁ突然のことだから、ミツキが少し驚いちゃったけど。
「あ、あの、ユキくん? その、どうした、の?」
「なんとなく疲れたので、癒しが欲しいのです!」
「そう、なんだ。でも、抱きつくだけで、いいの?」
「なでなでもしてくれると嬉しい!」
「こう、かな?」
そう言ってミツキがなでなでもしてくれる。ふにゃぁ、これもたまりませんな。
やっぱね、好きな子になでなでされるってのは最高なのです。それこそ、ずっとなでなでしてもらいたいくらいなのです!
とはいえ、ミツキとイチャイチャしてるだけだと、まーたマナミに怒られそうなので、糞女を含めた捕虜を格納しておく小屋をサクッと作る。
テントだと逃げやすいかもしれないけど、ちょっと丈夫な小屋ならそうはいかない。出入り口だけでなく壁や地面など、すべてに逃走防止の術式を張り巡らせる。
さらに出入り口にはゴーレムを配置しておけば、もしも逃げ出してもすぐに探知できる。ここまでしておけば大丈夫でしょう。
その後は捕虜を詰め込んだり、ご飯を食べたり、みんなが訓練したり、ミツキとただイチャイチャしてたりなど、特に問題らしい問題はなかった。
問題はないけど、今日もわたしは一人のお風呂です。ちょっと残念だけどしょうがないかぁ。
なにはともあれ、あとはアリサたちが迎えに来るのをのんびり待つだけかな? ようやく終わりが見えてきたってとこだわ。
正直、好かない奴の面倒まで見ているから、けっこう疲れちゃう。好き嫌いが激しいと、こういうときも厄介だねぇ。
とはいえ、どうもならないけど! 好き嫌いが激しいのは末期なので治りません!




