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169話 戦闘回避とか無理です

 花吹雪とともに現れた露出狂だけど、う~ん、なんか見覚えがあるなぁ。

 ツリ目に泣きボクロ、ケバイ感じの化粧に、スタイルはそこまで良くないのに露出が高い衣装を好む変態。


 あーこいつって


「糞女じゃん!」

「ちょ、ユキ!? 急に糞女って……あぁ、言われてみれば確かに」

「でも髪、違う、よ?」


 ミツキが指摘したように髪が金髪、しかもドリルなんだよね。絶望的に似合ってないけど!


「たーぶん姫プレイのために染めたんじゃないかな? 汚い金髪だし!」

「確かに、ユキと比べると差が凄いわね」

「ユキくんの髪、すごく綺麗」


 そう言って二人がわたしの髪を触りだした。

 そりゃね、お母様譲りの自慢できる金髪だから、軽く染めた程度の金髪には負けませんから!


 おっと、二人の言葉を聞いちゃったのか、糞女がすっごい怒ってますね。

 自分が一番じゃないと気に食わないって感じかしら?


 それにしても、わたしが日本に居たときに一番嫌いだったコイツまで召喚されてたとはなぁ。


 糞女はやたら上から目線の女王様気質。気に食わない相手は徹底的にいじめるどころか、恐喝していたこともある。

 しかも最悪なのが、被害者が全員泣き寝入りになったこと。お偉いさんが親族にいるらしく、全部もみ消していた最悪な奴です。


 そんな人物だからか、ミツキとの仲は最悪だった。

 ミツキをクラス全員の敵にしようとしたり、ガラの悪い連中に襲わせようとしたり、ほとんど犯罪だろって感じのことを何度もしてきた。逆立ちしてもミツキには容姿も中身も敵わないからって、そういう手段に出るとかマジで糞です。

 まぁどれも未遂だったからよかったものの、もしも実際に起きていたら、わたしだけでなくマナミにコータ、トースケがちょっと犯罪気味なお返しをしてた気がするくらい、この糞女は敵なのです。


 そして現在、その糞女が目の前にいるわけで。しかも姫と呼ばれているとか、派閥というかグループというか、そういうものを形成してそうだわ。

 しっかし急に現れたから、転移系の能力をもっているわね。あとは魔物の使役と魅了あたりかな? どれも厄介な感じだわ。





「もしかして、君は」

「ワタクシはベアトリーネよ! 覚えておきなさい、コータ!」


 勢いよくビシッとコータを指さし、そのまま自己紹介してるけど


「ぶっ、べ、べあとりーねって、日本人なのにべあとりーねって」

「変、だね」

「ちょ、二人とも!? それは思ってても言っちゃダメでしょ。ウチだって『似合ってないわ』って思ってるけど、我慢してるんだから」


 そんなあからさまな対応をとっちゃったからか、糞女がプルプル震えだした。またまたお怒りのようですね。


「良い度胸ね、ミツキにマナミ。それに部外者の獣まで、どういう身分かしら」

「あ、わたしのことは気にしないでください! ただの敵なので!」


 コイツとは絶対に仲良くなれないかららね。

 とゆーわけで


「サクッと倒しちゃいますか」

「倒す、の?」

「うん。あ、そんな心配そうな顔してないで。殺したりはしない、ただ捕まえるだけだから」


 前世絡みもあるけれど、今のわたしもこの糞女が大っ嫌い。見るだけでも嫌悪感が出てくるとか、相当だよ。

 しかも転移系の能力を持っているのが非常に厄介だからね。


 転移を妨害する場合、転移能力を封印するか、妨害専用の結界を張るしか現状は手段がない。

 だけど封印は時間がかるので、意識を失わせた状態で捕獲しないと難しい。

 となると、妨害専用の結界を使うしかない。


 なのに、わたしは妨害用の結界がまだ使えない。練習はしているけど、本当に難しくて挫折中。

 というか、使えるのはお父様だけなんだよね。お兄様ですらまだ使えない、すっごい難しい結界だもん。


 なので、転移で逃げられたりする前に捕まえて、意識を奪い転移能力を封印、それしかないのだ!





 ではでは


「いっきにいくよー!」


 周囲に待機させておいたヒトガタを10体使い、攻撃に移る。

 突然のことでみんなが驚き、糞女も驚愕って感じの表情をした。まぁ警告無しの先制攻撃だからね、驚くのもしょうがない。


「不意打ちとは、卑怯よ!」

「戦場に卑怯も糞もありません!」

「このっ、獣ごときがぁぁぁぁぁ!」


 ヒトガタで周囲包囲し、魔力弾を用いた一斉攻撃を仕掛ける。念のためヒトガタでの近接戦闘も避けちゃいます。


 瞬く間に、糞女は魔力弾の嵐を受けることになった。

 いくら転移能力があってもここまで短時間なら、転移するまでにそこそこダメージを与えられるはず!


 案の定、攻撃の途中に花吹雪が舞ったから、おそらく転移で緊急回避したんだろう。

 だけど!


「そっち!」

「なっ!? どうしてワタクシの場所が!?」


 転移先をすぐさま察知し、待機させておいたヒトガタをさらに10体差し向ける。

 糞女は転移先がすぐに察知されて驚いてるけど、このくらいはできて当然、気配なんて簡単に察知できる!


「ま、まだ、ワタクシはこんなことでは!」

「転移を繰り返しても無駄だよ!」


 右往左往と転移を繰り返して逃げようとしてるけど、全部察知できる。

 転移されてもすぐに察知し、一気にヒトガタを展開、そのまま間髪入れずに攻撃を仕掛ける。転移で逃げたら、転移先にヒトガタを追加で仕向けるという繰り返し。


 そんなことを繰り返しているからか、徐々にヒトガタだらけになってきた。

 これぞまさに、ヒトガタを使って転移先も封じちゃいましょーの、物量ごりおし大作戦です!





「こ、こんな状況、聞いてないわよ!」

「聞いてないも何も、戦場なんてこういうものです。さて、そろそろ諦めてくれるといいんだけど」


 だいぶ攻撃を喰らったようで、結構ボロボロになってる。露出の多いドレスが更にヤバいことになってますね。

 一部の男性陣は鼻の下を伸ばしてるけど、そんな感情よく沸くなってわたしは考えちゃう。

 だってあの糞女だよ? 他者を見下し、気に食わない相手に対しては法に触れるようなことまで行う、正真正銘の屑だよ? そんな相手に劣情を抱くとか、考えられないわ。


「まだ諦めてないようだし、このまま一気に……ん?」

「……ふっ、ふふ、あーっはっはっは」

「な、なんで急に笑い出したの? しかもその顔、すっごい気持ち悪いです!」


 悪魔のようないやらしい笑みとでもいうか、本当に気持ち悪い。

 そんな笑いをしながらゆっくり立ち上がるけど、何かする気かな?

 もちろんそんなことはさせません! ヒトガタの総攻撃で潰してあげる!


「そのまま潰れなさい!」

「無駄よ!」

「えっ!?」


 糞女が右手でパチンッ! と指を鳴らしたと思ったら、ヒトガタが一斉に停止し、ただの紙の状態に戻ったのかヒラヒラ地面に落ちていく。

 コイツ、わたしとヒトガタとの接続を完全に切ってきたわ。

 とはいえ、それだけなら自律行動でヒトガタは動く。でも紙の状態にまで戻るということは、魔力や精霊力の付与自体を無効化できる特殊能力を持っているってこと。

 なにより、わたしのヒトガタには付与を無効化させない機能を設けている。それを無効化されたということは……厄介すぎますね。


「あら、その表情、ようやく驚いてくれたわね」

「さすがにヒトガタを無効化してくるとは思わなかったからね」

「なのに絶望していないとか、ほんと壊し甲斐があるわ」

「うへー、相変わらずの糞女だわ」


 だけどちょっと困ったな。

 ヒトガタは攻撃だけでなく、ミツキたちへの防御にもまわしてるから、それが無効化されるってことなんだよね。

 もしも無効化されたら危険だし、月華を使っての行動に遷移すべきか。





「何か考えたようね。まぁワタクシも、こんなところでこの力を使いたくなかったのだけれど!」

「ちょ、なに!?」


 糞女が胸の前で柏手を打ったと思ったら、魔力が一気に膨れ上がった。しかもドス黒く、正直ちょっとヤバい感じの力で。

 まずいなこの魔力。わたしは耐えられるけど、みんなには〝毒〟だわ。

 本当は妨害したいけどやむを得ない、防御結界の展開を優先する!


「やはりそう来たわね。そのまま、ワタクシの変身を眺めなさい!」

「こんの糞女!」


 だけど糞女が言うように、眺めるしかない。

 ちょっとでも結界の維持を緩めたら、あっけなくみんなが毒に侵されちゃう、そんなヤバい状態。

 ここにアリサやエレンが居れば分担できたのに、クソッタレだわ!


 そんなわたしの感情を逆なでするように、糞女は笑いながら、さらに魔力を高めだした。

 すると頭にはヤギのような見た目をした黒い角が生え、背中にはコウモリかドラゴンのような、黒い羽根が現れた。さらに腰のあたりからは鱗が無いドラゴンに似た尻尾まで。

 これって、まさか!?


「いいわぁ、その絶望したような表情、ゾクゾクするわぁ。そうよ、これがワタクシの真の力よ!」


 そう叫ぶなり、漆黒の露出が多いドレスを着こなし、大きな漆黒の鎌を手に持った姿へと変身が完了した。

 ヤバいな、この姿と魔力からして


「悪魔化、しやがったわ……」

敵が悪魔化するとか、ちょっと定番ですね

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