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161話 犯人を捜してみましょー

 ドラゴンのお肉を使ったバーベキューは想像以上だった。

 不安とか完全に吹き飛ぶくらい、みんな一心不乱に食べるんだもん。やはりおいしいものは心を救うのだ!

 まぁ食べ過ぎて動けない人が多数だけど。


 さてと、それじゃ


「なに、するの?」

「んとね、温泉作ろうかなって」

「は? ちょっとユキ、まさかここに作るの? というか、温泉って作れるの?」

「作れるよー。自前のテントを出そうかなと思ったけど、4日くらい使うなら作った方が良いだろうし。なにより、わたしがお風呂に入りたい!」


 そう言ったら、あれまぁすごい反応。

 女性陣が一気に歓声を上げたんだけど、これってもしかして……


「ねぇミツキ、神聖王国だとお風呂、どうだったの?」

「お風呂、無かったよ?」

「へ? お風呂が、無い?」

「あ、日本みたいなお風呂、ね」

「そうなのよ。サウナ風呂って言うのかしら、蒸気を浴びるのはあったけど、湯船に浸かるのが無かったのよ」


 なーるほど、だから歓声を上げたわけね。

 温泉、すなわち湯船に浸かる形状のお風呂だから、みんな期待しちゃうわけか。

 だとすれば、簡易でなくしっかりした物を作った方が良さそうかな?


 それじゃまずは術式を使ってババーッと整地、そして排水管なども土を硬化させて作成。簡単ですね!


 次にヒトガタを操作し、トレント系の魔物を倒し木材を手に入れる。そしてその木材をこれまた術式でババーッと加工し、浴槽を作る。

 合わせて洗い場もドガーッと作る。蛇口などは手持ちの魔道具を活用、さすがに作る時間は無いからね。


 次に雨よけ用に天幕をババーンと張る。しかし壁は作らない露天風呂状態、もちろん外から見えないよう認識阻害の魔道具も配置。


 最後に温泉の素となる魔道具をそれぞれの配管を繋いで完成。ここまで3分少々、さすがわたし!


 っと、いけないいけない、トイレも作らないと。

 さすがに露天状態はあれなので、木材をドカドカーッと加工して小屋を作る。

 トイレ自体は手持ちの魔道具を使い、衛生面もバッチリにしておく。不衛生とか、わたしが許しません!





「っと、こんなとこかなぁ。それじゃ使い方を説明するからって、どうしたの? なんかみんな、狐につままれたって感じだよ? 確かにわたし、狐族だけど!」

「ちょ、ちょっとユキ、あんた、一体何なの!?」

「何って、見ての通りかわいい狐さんです!」

「いやいやそうじゃない、なんで数分でこんなもの作ってるのよ!」


 なーるほど、そういう反応なわけですね。

 はて、昔も同じようなことがあったよーな? まぁいっか、わたしが規格外なのは今に始まったことじゃないし!


 なのでほら、呆けてないで説明してくよー。遅れたら教えてあげないよー。





 その後、説明が終わったところでそれぞれお風呂に入ったけど、感謝されまくりだった。日本人ってこうなんですかねぇ、お風呂ひとつで偉い崇められようだわ。

 まぁ男性陣からは『露天状態なのに覗けないのか!?』という、魂の叫びに似た物があったけど気にしない。もちろん混浴も許可しません!


 さてと、みんながお風呂に入ってる間に、わたしは少し調べ物をしますか。

 さくっと飛行の術式を使い、ヒトガタが確保した捕虜の元に飛ぶ。奥の方にはまだまだ居るっぽいから、たぶん斥候なんだとは思うけど。





 えーっと、たしかこの辺りに……あーあの男か。

 ヒトガタが捕縛の術式を全力で発動してるから身動きできない状態。だけど睨んできてますね。ではではっと。


「えーっと、最初に聞くけど、あなた誰?」

「ハナスト、オモウノカ?」


 ん? なんか言葉が変だわ。

 どうやらこいつ、翻訳用の魔道具を持ってないみたいね。だから発音とかがおかしい。


 となると、この世界の人じゃないってことかな? しょうがない、翻訳用の魔道具をわたしの方が起動するか。

 それにしてもなんだろ、よーく見たら、なんとなく見覚えが……。


「あーっ! 妄想マンじゃん!」


 カズヤ時代のクラスメイトで、自分は選ばれし者とか、秘められし力がとか、真顔で言っていた妄想マンだよ、名前は忘れたけど。

 今でも中二全開みたいで、右腕は包帯グルグル、黒くてボロボロなコートをまとい、左目にはダサい眼帯をしている。


「は? オレはそのような者ではない、勇者ジークリンドだ!」

「ぶはっ、じ、じーくりんど、って、いやいや、日本人なのにじーくりんどって」


 だめ、あまりにもバカすぎてちょっと笑いそうになっちゃう。

 しかもジークリンドって感じの見た目じゃないし。むしろ漆黒の何たらとか、堕天した何たらって痛い感じの名前の方だよ。


 それにしても、なんでこんなところに居るんだろ? もしかして召喚に失敗したハグレとかかな?


「で、なんで襲ってきたのよ?」

「どこの誰だか知らねーが、オレは崇高な使命のもと、悪しき勇者を打倒しようとしているのだ! なのに、貴様のような出来損ないの獣風情が!」

「あ? おいゴミ、今なんて言った?」

「なっ、ぎ、ぎざま、な、なにを」


 思いっきり苦しんでるわね。

 それもそのはず、抑えていた魔力を開放してこいつにぶつけ、さらにヒトガタの捕縛をさらに強化したからね。

 このままやったら死ぬかな? それとも肉体じゃなく、精神を破壊した方が良いかな?


 って、いっかーん! 最近はだいぶ感情を制御できてたのに、一気にキレちゃった。

 だめだなぁ、獣人、それも狐族であることを誇りに思ってるからか、獣人差別である出来損ないの獣風情って言われると、どうしても我慢できなくなっちゃう。

 ほんと、今の自分が好きすぎるのも問題ですねぇ。





 このままだと死ぬ気がするので、魔力を抑えてなおかつ捕縛も少し緩める。

 だいぶきつかったようで、すっごい息を切らしてる。それでもわたしを睨んでくるとか、大した根性だよ。


「で、襲ってきた理由は何?」

「だ、だれがしゃべ」

「言わないならそれでもいいよ。ただ、後遺症とか生易しいものじゃない、本当の地獄を見せて自白させるだけなんだけど?」


 そう言って闇の、しかもかなりヤバい感じの魔力の塊を4個作りだし、お手玉する。

 さすがに状況を察したのか、思いっきり震えだしたね。

 この魔力の塊を受けたら肉体破壊どころか精神も破壊し、そして魂も侵食してただの傀儡になる。闇の力というより、呪いの力って感じか。実際これ、呪術に片足つっこんでるし。


 まぁ効果は抜群だったようで、観念してようやく口を開いたわ。


「……復讐だ」

「復讐? それって神聖王国に?」

「そうだ。あいつらはオレ達を召喚しだが、選ばれた者は王国に、それ以外は次元の狭間や見知らぬ森の中に召喚されることになった」


 それはちょっと気になる。

 つまり神聖王国は何らかの方法で、召喚中に召喚対象を選別できるってこと。それが良いことかは置いといて、そういう技術があるってことだね。

 そして選別できるってことは、より強い勇者を召喚できるってこと。厄介だねぇ。


「でもさぁ、それって神聖王国に対しての恨みでしょ? あそこにいるクラスメイトには関係ないんじゃないの?」

「関係あるにきまってるだろ! オレ達が死に物狂いで生きている中、王国でのほほんとしてやがったんだぞ! そんなの許せねーだろ!」


 相当根に持ってるようで、さっきよりもひどい剣幕で睨んできたわ。

 まぁなんとなくその気持ちはわかるけど、実際はなぁ。


 ミツキたちに聞いたけど、神聖王国側も酷かったようだし。

 駒としか見て無いからか、必要最低限の物資しか渡されず、娯楽も一切ない。

 挙句に朝から晩まで訓練、魔物討伐への強制参加、無償での復旧作業など、待遇の悪い奴隷みたいな扱いだったとか。事実隷属魔法がかかっていたから、奴隷というのもあながち間違っていないか。


「てことは、ここに来ている他の人もクラスメイトなのかな?」

「くそっ、勘が良いようだがその通りだ。オレ達は運が良かったが、もしも一人孤立していたらと思うと、復讐したくなる気持ちもわかるだろ!」


 確かになぁ、力が無いのに一人で魔物の群れの傍に召喚されてたら、あっけなく死んじゃうだろうね。

 しかも待遇が違うと思えば、こうもなるか。


 あれ? でもどうしてミツキたちがここに来るのが分かったんだろ?

 もしかして


「神聖王国に教えてもらった?」

「馬鹿を言え! オレ達をこんな目に合わせた奴らと手を組むわけねーだろ!」

「つまり、情報収集に長けた仲間が居るってことか」


 この包囲網といい、魔物の数といい、ミツキたちの戦力を細かく把握してるのがよくわかる。

 それに、おそらくすぐに殲滅しないで、じわじわなぶる感じに攻めてきたっぽいし。

 まぁミツキが雪姫と精霊という想定外の力を持っちゃったのと、わたしが着た結果、想定外すぎたようだけど。


 う~ん、厄介そうだし、できれば見つけたいんだけどそれっぽいのが居ない感じ。

 もう逃げた、もしくは作戦開始前から居なかったってとこかな? なかなか判断能力も長けてるようで。これはもう、面倒な敵が増えたって感じだなぁ。





「よっし、あとはお姉様たちに任せて、もーどろっと」

「ま、待ちやがれ! 貴様、何者なんだ! なぜオレ達の邪魔をする!」


 むぅ、面倒になりそうなのでサクッと切り上げようとしたのに。

 まぁしょうがない


「わたしは転生したけど、お前たちの元クラスメイトだよ。そして今は、神聖帝国から恨まれている敵、ってとこかな。邪魔をするのは友達のため、単純でしょ?」

「な、なんなんだよ、それは」

「まぁ気が向いたら話すわ。とりあえずお前はここで捕獲しておく。安心なさい、死なないようにはするから」


 そう告げたら、さくっと飛行の術式を起動してみんなの元に戻る。

 飛ぶ瞬間、何か叫んでたけどどうでもいいわ。


 それにしても元クラスメイト同士の戦い、かぁ。

 う~ん、みんなへの説明、どうしましょうかね……。

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