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16話 捕まった先に待つものは・・・2

少し長いです


注意:今回の話にも少し残酷な表現が含まれてます。

 ここって結構広いなぁ。どこかの貴族の屋敷か何かなのかな?


 しっかし同じような牢屋が大量にあるとか、気味が悪いったりゃありゃしない。中をしっかり見たわけじゃないけど、なんとなく使った形跡まであるし。


 それにここの大気中の魔素、すごく気持ち悪い。この魔素を使っての魔力回復とかしたくない、体内に入れるのも嫌なくらい。アリサを連れて早く帰りたいな……。





 通路を少し進んでも人の気配が全然ないし、少し考察しておこうかな。


 えっと、アリサとのデート中にあの変な薬で眠らされ、わたしたちはどこか運ばれた。


 敵はわたしたちをどこに運んだのか。


 目的はどうあれ、足が付きやすい国内に拠点を設け、そこに運ぶとは思えない。なにより大気中の魔素が違うのと神聖王国の騎士っぽいのも居たことから、これは神聖王国へ運んだとみるべきね。


 次にどうやって運んだのか。


 転移魔法は国全体に張ってある防御結界で弾かれるため無理。結界を破るか転移可能となる許可札があれば別だけど、どっちもありえない。結界が破れるならわたしの防御結界も破壊されてるはずだし、許可札の方はうちの国でも王族や親衛隊といった一部の限られた人しか持ってない。他国の、しかも同盟国ですらない神聖王国の奴が入手するのは無理。


 定番は飛空艦を使っての空経由だけど、これは目立ちすぎるからまずありえない。なにより発着場の警備は厳重だから、拉致した状態でのこのこ現れたらその場で捕まるわ。


 なら陸路だけど、もっとありえない。一番早い馬車を使っても神聖王国までは10日以上かかる。もしもたった1日で移動できるのなら、それは世界初の技術を使ったことになるけど。


 そうなると転移門を使ってわたしたちは運ばれた可能性が高い。国内にある転移門はこういう拉致には使えないので、おそらく持ち込んだ携帯用の転移門を利用したってことか。


 ただ、携帯用であっても国外から転移門を持ち込める人物は限られているし、そもそも使用許可が下りなければ起動すらできない。ということは持ち込んだ転移門の使用許可が出た人物を調べていけば、簡単に親玉も見つけることができそうだね。


 よっし、もしもここに親玉が居なかったら、帰ったらすぐに調べてわたしが親玉捕まえてやる! そして泣くまで反省させてあげるわ!


 それにしてもアリサが全然見つからない。こんなことになるなら、嫌われてもいいからリボンに探知の術仕掛けるんだったわ。ストーカーになる気がして組み込まなかったけど。

 ほんとどこにいるんだろ、大丈夫かなぁ……。





 しばらく進んできたけど、なんだろ、人の声がかすかに聞こえてきた。よく聞き取れないのでもう少し近くに行ってみましょー。


『お姉ちゃんを放せ! だってお姉ちゃんは、』

『うるせーんだよこのガキ、お前は寝ていろ! 俺はこの嬢ちゃんが気に入ったんだからな』


 うわぁ、ハッキリ聞こえたと思ったら、いかにもって感じの内容で嫌すぎる。ほんと神聖王国なんて滅べばいいのに。

 てかお姉ちゃんってアリサのこと? 声の感じから抗ってるのは若い男の子っぽい。これは捕まった子が他にも居るってことか……ほんと最低だな神聖王国。


 とりあえず詳しい状況を確認するため、光学迷彩を維持したまま目視できるところまで行ってみよう。その前に、念のため尻尾は隠しておきましょう。もしも迷彩解除することになった場合、このままだと他国の人に尻尾が3本あることがバレちゃうもんね。


「げふっ、お、お姉ちゃんを、はな、せ」

「もうやめて! 殴るなら私を殴って! これ以上この子を傷つけないで!」


 やっぱりアリサじゃなかった、残念。


 兵士に捕まっている女の子は猫族かな。殴られてる男の子は犬族っぽいけど、話の内容からして姉弟なのかな? うちみたいにお兄様は人族、わたしは狐族ってケースもあるし。


 ふむふむ、この牢屋は捕らえた人を集めておく場所みたいね、他にも人が大勢居るわ。

 見たところ下はわたしと同じくらい、上は20歳くらいかな。みんな傷が少なからずあるのと、衣服をつけておらず裸にされている状態。それと手足には鎖があるから、これは完全に脱走を防止するためだね。下心もありそうだけど……。


 でもどうしようか、捕まってるのがアリサだったらすぐに助けるけど、この人たちってわたしとは無関係なんだよなぁ。


 そもそもこの部屋にいる姉弟以外、みんな諦めた眼をしている。同情はするけど、諦めて現状をただ受け入れるような奴を助けるほどわたしはお人好しじゃない。


 だけどこの姉弟は違う。弟は何度も殴られぼこぼこになってるのに折れず、死んでも姉を助けるって感じ。姉の方も何が何でも弟を守るって感じだね。ベタだけどこういう子、わたしは大好きです。正義の味方みたいにみんな助けるとかする気はないけど、この姉弟は助けてもいいんじゃないかな。


「その手をいい加減離せこのガキ」

「いや、だ! お姉ちゃんは、僕が守るんだ!」


 おーよく言ったぞ少年。これもお約束だけど実際に見るとなかなかグッとくるね。


 それじゃ手助けしてあげましょう! 心臓の位置は捕まっているお姉さんのせいで狙えない、なら頭かな。ジャンピング回し蹴りで行きましょー!


 まずは魔力を足に込めて―


「このガキ、出来損ないの獣風情が、いい加減にしないと殺すぞ!」

「……お前が死ね」

「なっ」


 弟君を踏みつけようとした隙をついて、さくっと回し蹴りでどぱーん。あ、魔力調整に失敗しちゃって頭破裂したわ、きちゃない。


 それにカチーンとなって声出ちゃった。〝出来損ないの獣風情〟ってわたしたち獣人に対する差別用語だからねぇ、つい反応しちゃった。しっかしこれじゃダメだなぁ、隠密行動する者が簡単に感情に左右されて動くとか失敗失敗。


 まぁいいか、倒したらどのみち姿を現さないとダメだったと思うし。


「いったい何が? それに今の声は誰の、あっ! ミー君大丈夫!?」

「お姉ちゃん、僕はだい、じょうぶだけど」

「は~い、声の主はわたしです、さくっと殺っちゃいました!」


 迷彩解除っと。おっと案の定すごい驚かれてる。そりゃ急によくわからない女の子が出てくればしょうがないかー。


「いったい何処から? えっと、あなたが助けてくれたんですね、ありがとうございます。私はアンジーって言います。この子は弟のミスト」

「ミストです。あの、お姉ちゃんを助けてくれてありがとう」


 やっぱり姉弟なわけね。となるとうちみたいに両親の種族が異なるわけだね。


 この世界ってハーフで生まれることは少なく、片親の種族と同じ種族として生まれることが多いんだよね。そのせいで兄弟姉妹で力の差が出やすいところもあるらしいけど。


「わたしはユキって言います! ここにはちょっと友達を探しに来ました!」


 はい、いつものように元気よく手を挙げて答えます。あれ? なんか痛い子を見る目でほかの奴らに見られてる、なんでよ!?

 でもこの姉弟の目は違うなぁ、感謝のほうが強くでているのかな?


「あの、ユキさんも捕まったのでしょうか? ただ私たちと違って、その」

「なんで傷もなく衣服もちゃんとしてるかってとこかな? わたしも捕まってたけど、ボロボロになる前に脱出したってとこだよ」


 嘘は言っていませんよ、ボロボロになる可能性は皆無だけど。おや、弟君が尊敬の眼差しをしてきましたね。脱出しようとして失敗したのかな?





「な、なぁ、ユキって言ったか、君強いんだろ? 俺達を助けてくれないか?」


 二人とちょっと情報共有してたら急に話しかけられた。誰だと思ったら部屋にいた只人の男、歳は18くらいかな、見上げるくらいにでかい。しかし助けろねぇ。


「えっと、お断りしますね」

「な、なんでだよ! そこまで強いなら助けてくれてもいいだろ!」


 はぁ、やっぱこうなるんだよね。この強ければ誰かが助けてくれるとかっていう考え、わたしは大っ嫌い。そんな奉仕活動は正義の味方かどこかに居る勇者にでも頼んでください。


 そもそもこいつら、全員でかかればさっきのおっさん(頭どぱーん)くらいどうにか出来たろうに。


「あなたたちを助ける義務もありませんので。でもアンジーさんとミスト君は助けますね。だけど脱出は後です。わたしの友達を見つけるのが最優先なので、それまでは付き合ってもらうよー」


 誰を助けるか、わがまま言ってもいいよね。何よりわたしはアリサを助けたいのであってこいつらを助けたいわけじゃないし。


「どうしてそいつらだけなんだよ! 力を持ってるなら俺達も助けろよ! ったく、これだから獣人は嫌いなんだよ。俺達のような弱者を助けず、一部の者にだけすり寄ってさ。どうせ最強の剣とか言ってるレグラスの所の狐族も、王族の力が欲しくて取り入ってるんだろ? 見た目だけはいいからどうせ色目とか使ってさ」

「……おい、お前、今なんて言った」

「何って当たり前の事だろ? いくら強かろうが普通は王族と親しくなんかなれるわけがない。だとしたら色仕掛けして弱みでも握ったにきまってるだろ。それに、」

「もういい、黙れ」

「な、が、くるし」


 魔力が物質化するまで凝縮、それを大きな手の形に変化させてゴミの首を掴み持ち上げる。

 ふむ、呻いたりしてるけどだいぶ静かになったわね。このまま続ければ呼吸困難で死ぬかな? むしろこのまま首をへし折るか、握りつぶして掃除した方がいいかな?


「な、金の尻尾が、さんぼ、まさかおま」

「ん? 今頃気が付いたの? あぁそうだよ、私はお前の言う色目使って王族に取り入ってる狐族の娘だよ。よかったね、そんな見た目だけはいい狐族に殺してもらえるんだから」


 魔力の制御が怪しくなったのか、尻尾の偽装が解けちゃったわ。念のため3本あることを隠してたのに。まぁいいや、問題になったらこいつら全員消すだけだし。


「あ、あの、ユキお姉さん、その人を殺したくなるのはわかります。僕たちも獣人なので色々と言われたり、事実無根のうわさで罵られたこともあります。でも、その、殺しちゃいけないと思います」

「……つまり何が言いたいの?」

「あの、えっと、そう、もしかしたら人手がいるかもしれません。なので殺すよりは使った方がいいと思います」

「……」


 正直人手なんてどうとでもなるけど、ふ~む、ちょっと冷静に冷静に。はぁ、ほんとダメだなぁ、わたしって感情的になりやすいわ。


 獣人に対する偏見とかですぐにカチーンとなるけど、それはまだ抑えれる。敵だったら抑えずにそのまま手を出しちゃうけど。


 だけど家族や身内に関することは無理。みんなのことが大好きだからか、目の前で根拠がない悪口を言われると抑えが利かなくなって暴走しちゃう。今もお母様のことを悪く言われただけで一気にキレちゃったよ。ほんと困った性格になっちゃったなぁ。


 そんな暴走状態のわたしを見てミスト君も焦ったのか、理由が若干微妙だけどなんとか止めようとして必死になったみたいね。そういう気持ち、嫌いじゃないです。


 それにそうね、コイツを今急いで処分する必要もないかな。なにより処分するとお片付けが面倒だし。あとはむやみやたらに殺すのはただの殺人鬼かもっていうのもあるかなぁ……今更かもだけど。


「ふぅ、ミスト君が言うならしょうがないね。ゴミ、ミスト君に感謝しなさい」


 魔力を解除してゴミを投げ捨てるように解放する。なにコイツ、解放された安心感からか急に失禁したわ。汚いし、これだったらミスト君の意見は無視して掃除した方がよかったかな。


 はぁ、こんなことで無駄な時間を使うとか、アリサ大丈夫かなぁ……

狐娘はキレると怖い。

シリアスっぽいのがもう少し続きます。

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