表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/363

155話 生き残るために

今回はミツキの視点です

それと少し長いです

『んじゃミツキ、またね!』


 またね、なんだね。ばいばい、じゃないんだね。

 もしかしたらまた会えるのかな?


 そう考えていたら、目の前が今までとは異なり、元の、ううん、異世界に戻った。


『どうでしたか?』

「あ、この声は、神様? それとも、光の精霊神様と呼んだ方が、良いの?」

『どちらでも良いですよ。その様子、少し吹っ切れたようですね』


 吹っ切れた、のかな?

 でも、なんていうか、また会えそうな気がする。カズくん、死んじゃったかと思ったけど、違うみたい、だから。

 本当は日本で一緒に過ごしたかったけど、それは言えなかったな……。


『どうやら引いてしまったのですね。さてと、本来であればここでお終いなのですが』

「やり直し、ダメでしたから、しょうがないです」

『いえ、それは違いますよ。あなたはやり直しではなく、今を選択したのです。そして、それは私にとっても非常に好ましいことです』


 好ましいこと? でも、神様が少しうれしそうな声をしている、みたい?


「だけど、このままじゃ……」

『ですね、このままでは皆さん死んでしまいます』

「助けては、くれないの、ですか?」

『残念ですが、今の私は顕現していません。顕現していないので、直接手を貸すことができません。ですので、あなたにこれを授けましょう』


 神様がそう言うと、私の目の前に白くてきれいな杖が現れました。

 それに、なんだか優しい光も。


『その杖は〝術装、雪姫〟といいます。あのお方がご自身の精霊石を使い、新たに生み出した術装です』

「そ、それって、すごい物なのでは? 私が貰っていいの、ですか?」

『かまいません。むしろ、あなたが所持者となれば、あの方も喜ぶと思いますので。そして、その杖があれば精霊を使役し、精霊術を行使することが可能です』

「精霊術? それって魔法です、か?」

『いえ、魔法とは比べ物にならないほど強力な術です。ですので、制御は慎重にしなければなりません。ですが難しいことはありません、その杖を手にすれば、ある程度は感覚でわかると思います』

「感覚で、ですか」


 とりあえず杖を握って……え? な、なにこれ? 魔法、ううん、精霊術かな、いろいろ分かってくる。それだけじゃない、杖の使い方、そして、この杖をどういう理由で作ったのかも。

 それとぼんやりだった神様の姿が、しっかり見える。





『ではその杖を使い、皆さんを守ってください』


 そう神様がにこやかに話してくれます。

 でも、守る、わたしが?


『ですが、今のあなたではもって10分、生き残るには短すぎます。なので三つ、方法を授けます。一つ目は諦めること、すぐに楽になれますね』


 神様は笑顔でそう言うけれど、それは、嫌。

 確かに怖いけど、でも、ただ死ぬのは、もっと嫌だから。


『私としてもこれは選んでほしくありません。そこで二つ目、勇者たちを率いて一点突破をすること。多少の犠牲は出ますが、あなたの生存率は高いですよ』

「一点突破……、私はみんなを守れるように、サポートを精一杯する、ですか?」

『攻撃に加担しても良いと思いますが、そこは臨機応変に考えてください。運が良ければあなただけでなく、あと一人くらいは助かります』

「それは……」

『誰を助けて誰を犠牲にするか、取捨選択になりますね。ですがあなたの場合、それも納得しないでしょう。ですので……三つ目、ひたすら耐えなさい』


 さっきまでと違い、神様は笑わず、真っすぐ私を見て言ってきました。

 だけど、耐える? それって


「攻撃しないで、ひたすら守るの、ですか?」

『そうです。耐えることができれば、全員が助かります。そして、耐えられるかはあなたしだい。簡単に言ってしまえば、あなたが頑張れば奇跡が起きる、そう考えてください』

「私、しだい……」


 神様は私に奇跡をくれた、大好きな人に会わせてくれた。

 ならきっと、今度も同じ、がんばれば奇跡が起きる。

 正直怖いけど、神様は私を信じてくれてる、そんな気がする。


 それに、この杖を持つと、すごく安心する。

 怖さより、がんばらなきゃって、思えてくる。不思議、だね。


『その表情、大丈夫のようですね』

「はい。私、がんばって、みます!」

『では時間の流れを元に戻します。まずはそうですね、土の小精霊の力を借りて防壁を築きなさい。そして精霊力の消費量を把握しつつ、水の小精霊で味方の傷を癒し、火と風の小精霊で弾幕を張る。光と闇の小精霊にはあなた自身を守るように指示しなさい』

「わ、わかりました。あの、そこまで教えてくれていいの、ですか?」

『問題ありませんよ。我らは誰も彼も助けたりはしませんが、あの方が好む相手でしたら別です。あの方の幸せを優先しますので、細かい手順などは省かせていただきました』


 そう神様は笑顔で答えてくれました。

 神様の言う〝あの方〟は誰なんだろ? でもその人のおかげみたい、だね。会えたらお礼、したいな。


『それでは頑張りなさい』

「は、はい! あの、ありがとう、ございました!」

『気にしないでください。先ほども言ったように、我らはあの方の幸せのために、あなたを利用した、そう考えてください』


 そう神様が言うけれど、私はそうは思えない。

 だって神様、優しい目をしている、から。そんな目をする人が、ただ利用するとか、思えない。


『ふふっ、一つ教えておきましょう。我ら精霊は相手の心を読むことができます。なので、もしも隠したいことがあれば気をつけるのですよ』

「わ、わかり、ました!」

『では、いきますよ』


 神様が手をかざした瞬間、一瞬周りが光って……





「ミツキ、君のことはボクが……って、どうしたんだ?」

「え? あ、戻ったんだ」

「何を言って……ミツキ、その杖は一体?」


 コータくんの声で意識がはっきりしたけど、うん、説明は後、だね。

 神様の言ったように、まずは土の小精霊さんにお願い、しないと。


 杖に精霊力と言われるものを流し込むけど、これであって、わっ!?


「な、なにその小さい子!? ミツキ、あなた何をしたの?」

「え、えっと、土の小精霊さんを、呼んだ、みたい?」


 手の平に乗るくらいの小さな女の子が手を挙げてくれた。なんか、可愛い。


「あ、あの、お願いがあるの」


 そう言うと、土の小精霊さんは『わかってるよー』って言ってくれた。でも、私にしか聞こえなかった、みたい?

 土の小精霊さんが手を挙げると、私たちの周囲に大きな壁ができていく。まるで、おとぎ話の魔法使い、みたい。


「ちょ、ほんと何これ!?」

「な、なぁコータ、これってどう思う?」

「いや、ボクもさっぱり。だけどミツキがその小さい子を呼んで、何かをしたみたいだ」


 三人は驚いているけど、私も驚いている。

 それにこの土の小精霊さん、次に何をすればいいか、どう精霊力を使えばいいのか、教えてくれる。

 私はそれに従い、火水風光闇の小精霊さんを呼び、それぞれにお願いしていく。どうやらこの子たち、私のお願い、既に知っているみたい?


 これなら神様に言われた通り、なんとかなる、のかな?





「チャンスだ、この壁を使い、一気に攻めるぞ!」

「了解した。おいお前ら、オレ達の援護にまわれ!」

「では我等もお供しましょう!」

「王国の騎士が手伝ってくれるとか百人、いや、千人力だな!」


 付き添いで来ていた先輩の勇者さんが急に叫びだし、一緒にいた騎士さんまでそれに便乗している。

 なんで? どうして戦おうとするの?


「あ、あの」


 怖いけど、でも、止めないと。

 神様はひたすら耐える事って、言ってたから、それ以外は、ダメ。


「お前か、この壁を作ったのは。上出来だ、そのまま援護を続けろ!」

「え、えっと、ダメ、なんです」

「は? 何が駄目って言うんだ?」


 睨まれて、すごく怖い。だけど、このままじゃ。


「ちょっと先輩、ウチの親友をなに脅してるのよ! そもそもウチらはあんたらの駒じゃない、戦うならあんたらだけでやれ!」

「マナミちゃん、それは、ちょっと」

「構わないわ。それにミツキは守りに徹する方が良いと思ってるんでしょ? ならウチはそれを信じる!」


 マナミちゃんは強い、な。私は怖くて何も言えなくなったのに。


「たく、臆病虫どもが。まぁいい、勇者の力がどういうのもか、見せてやる!」

「だな! お前らの中で力を誇示したい奴が居れば一緒に来い! ここで活躍すれば経験値が増え格も上がる、金や女も思い通りにもなるぞ!」


 そう先輩の人たちが叫んだけど、でも、何かおかしい。

 この人たち、戦うことに恐怖、ううん、ゲーム感覚になっているみたい。


 でもおかしいと思わない人もいて、クラスの数人は付いていく。


「あいつら、死ぬな」

「どういうことだコータ?」

「よくわからないが、勘って奴か? ここの魔物はボクたちじゃ傷ひとつ与えられないと思う」

「ウチも同感。だからミツキ、あなたが指揮して」

「わ、わたし、が?」

「そ。なんでこんな力があるとか、その杖は何とかいろいろ聞きたいけど、今は止める。ただ、ミツキはこの状況で生き残る術を知っている、そうでしょ?」

「う、うん」


 マナミちゃんは流石、だね。慌てないで、何が最善か、すぐに判断する。だから頼りになるし、助けてもらえる。

 だったら私も、がんばってみる。大丈夫、神様が私しだいで奇跡が起こせるって、言ってたから。


「そ、それじゃ、えっと、まずは――」


 小精霊さんたちの意見も聞いて、みんなに手伝ってもらう。

 絶対に、生き残る!








「はぁはぁ、マジできりがないな」

「だがよ、ミツキのおかげで、オレ達まだ生きてるぞ」


 あれから1時間近く経ったけど、みんなもきつい、みたい。

 私も精霊力というものが少なくて、回復もほとんどできない。


 それに


「あいつら、あっけなかったわね」

「だな。壁を乗り越えたらすぐに、だったか」


 そう、あの人たちはみんな死んじゃった、みたい。私がもっと強ければ、止められたの、かな?


「あぁ、ミツキのせいじゃないじゃないわ。あいつらがバカだった、それだけよ」

「そう、だね」

「だけどどうする、オレ達もヤバいぞ」

「くそっ、勇者って言われても、ボクには力が無いじゃないか」


 みんな焦ってきてる。私もどうしたらいいのか、わからない。

 このままで……あれ?


「ね、ねぇ、どうしたの、急に?」


 小精霊さんたちが、急にハイタッチしだした。どうしたの、かな?

 だけどすぐにわかった。だって


「な、なにあれ?」

「氷の、柱?」

「おい見ろ、魔物がどんどん氷漬けになっていくぞ!」


 いったい、なに? 何が起こったの?

 え? 小精霊さんたち、空に向かって手を振っている? 何か、いるの?


 目を凝らして、小精霊さんたちが手を振る先を見る。

 ……人?


「ね、ねぇマナミちゃん、あれ……」

「どうしたのミツキ、急に空を指さ……はぁ!?」

「どうしたんだ二人とも」

「コ、コータ、うえ、上見みなさい!」

「上? 空のことか? いったいな……な!?」

「おいおい、ありゃなんだよ……」


 私たちが空を見上げていると


「周囲の敵を一気に殲滅とか、さっすがわたし、自画自賛しちゃう!」


 巫女服のようなものを着た、可愛らしい狐の女の子が空から降ってきた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ