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153話 想定外ってほんと多すぎ

今回も過去のターン

 ミツキと授業をサボって保健室で雑談してるけど、なんだろ、違和感がある。

 なんていうか、不自然なくらい昔話をしている。

 わたしにとってはすっごい昔であり、前世のことだから懐かしいけど、ミツキにとってはそこまでじゃない。

 なのに昔話が多めって、どうなってるの? まるでミツキも久々に会うみたいな感じなんだけど。


「――でね、あっ、授業終わったみたい、だよ?」

「おっと、もうそんな時間か。本当に午後まるまるサボっちゃったね」

「だね」


 さすがに罪悪感から、互いに苦笑い。

 でもまぁこれで何とかつじつまが合ったはず、あとはあの駄菓子屋に行けばよし。


「それじゃ先生にばれないよう帰ろうか」

「でも、鞄は?」

「あーそっか、じゃぁ教室にいったん戻ろうか」

「そうだね、行こ?」


 そう言って自然と手を繋ぎ教室に戻る。

 って、まてい! 学校内でも手を繋いでいたか? からかわれるのが多くて、学校内じゃ控えてた気がするんだけど。


 なんかいろいろとおかしい。本当にミツキ……なのは間違いないか。どうしてそう思うのかはわからないけど。


 ただ、どうにも違和感。

 わたしの記憶が間違ってるわけじゃないし、ミツキの性格や仕草なんかも不自然じゃない。

 でも〝ぼく〟に対するスキンシップとでもいうか、それが強めな気がする。奥手なはずなのに、どうなってるの?





 疑問は持ちつつも教室に戻ったら、あちゃー、まだ居たわ。


「お、夫婦揃ってサボりか? 爆発しろよ」

「うっさいわ。というかなんでコータとトースケが残ってるんだ?」

「あーそれはコータのやつが」

「ちょ、黙れよトースケ、それ以上言うんじゃない」


 教室には二人が居て、何やらもめだした。

 てか、こんなことあったっけ? わたしの記憶だとここに居たのは……


「ようやくお帰り? ミツキを心配するのはわかるけど、あんたがずっと付き添うことは無かったでしょうに」

「あー、いや、その、なんて言いますか」

「あ、マナミちゃんも今から帰る、の?」

「そうよ。ただ、なんで馬鹿二人も居るの? ウチは委員会に出てたからたまたまだけど」


 そう、マナミが委員会から帰ってきて、偶然遭遇するんだったね。

 で、せっかくなので三人で帰るって流れだったはずなんだけど、なんでこの二人が居るの?

 確か二人は『新作ゲームの発売らしく、ダッシュで帰ったわよ』ってマナミから聞いた記憶なんだけど。


「そもそもあんたら、ゲームがどうこう言ってなかった?」

「まぁそうなんだが、ミツキが心配でな」

「コータの気持ちもわかってやれよ、な?」


 そういうことかぁぁぁぁぁぁ!!!

 思わず項垂れそうになったけど、つまり『ミツキがぼくを連れて』じゃなく、『わたしがミツキを連れて保健室に行った』だから、少し歴史が変わっちゃったのか。

 これ、大丈夫かな? ちゃんと帰れるよね? 嫌だよ、わたしがわたしじゃなくなるのって。


 っと、いかんいかん、考えすぎて暗くなったら表情に出ちゃう。

 あくまで冷静に、そしてできるだけ同じ歴史をたどるようにしないと。もう手遅れな気もちょっとするけど……。





「まぁせっかくだし、このまま五人で遊びに行かね?」

「うぉい!?」

「ん? どーしたんだよカズヤ、そんな急に慌てて」

「あ、いや、ちょっと……そう! 今月お金が厳しいから遠慮したいかなって」

「なるほどな。ならオレが貸してやるよ。前借りた分も返してないしな!」

「……お前、もしかして借りパクする気だった? って、なんで急にそんなことを言うんだよ!」

「どうした? なんか変だぞ?」


 あ、いかん、予想外の事態を全力で回避しようとして焦りすぎたわ。

 ここで変に思われたらダメだし、どうしたものか。


 いや待てよ、たぶんミツキなら断るはず。

 〝ぼく〟とマナミと出かけるのには抵抗が無いけれど、この二人とはあまり出かけたくないって感じだった記憶。ならだいじょう


「カズ君、せっかくだから、行こ?」

「ま、マジですか?」


 裏切られたぁぁぁぁぁぁ!!! いやまぁ裏切るもなにも、相談してなかったからそれはおかしいんだけど。

 だけど、いったいどういうこと? わたしだけでなく、マナミも意外って顔をしてる。ミツキがこの二人の誘いを受けるなんて、めったにないのに。


「ミツキ、本気なの? ウチとカズヤだけじゃない、馬鹿二人も居るんだよ?」

「まてマナミ、それはどういうことだ? ボクとトースケが居ると何か問題なのか?」

「いやそういうわけじゃなくて、なんていうか、あーもうっ、カズヤ、何とか言いなさい!」

「へ? いや、そんな急に振られましても」

「旦那ならシャキッとしなさい!」

「マナミちゃん、その、恥ずかしいよ」


 そういえばマナミはこうだったわ……。

 真面目なくせに、面倒になったらすぐに〝ぼく〟に丸投げする。まぁ幼馴染だから遠慮が無いってのもありそうだけど。


 それと、やたらと夫婦認定してくるんだよね。

 とはいえこっちは予想がつく。おそらくミツキに相談されて、マナミなりに背中を押してるんでしょ。すこい強引だけど。





 逃げ道が完全にふさがれてしまったので、渋々五人で遊びに行くことに。

 だけど大丈夫、まだ時間はある。時間内に駄菓子屋に行けばたぶん戻れるはず。いろいろと変わってきててちょっと心配だけど、大きな違いは無いと思いたい。


 そしてやってきたのがゲームセンター、定番といえば定番ですね。

 ざっと見まわしたけど、懐かしいなぁ。この世界、というか日本ってこうだったよね。ゲーム筐体とかキャッチャーとか、メダル使うのとかいろいろ。

 レグラスにもゲームセンターはあるけれど、もっと進化しちゃってるからねぇ。仮想空間とかもお茶の子さいさいな世界だからだけど。


「ん? どうしたのミツキ? もしかして、あれが欲しいの?」

「あ、うん、でも私、苦手だから」


 ミツキがキャッチャーをじっと見てたけど、なるほどね。

 キャッチャーにはでっかいぬいぐるみが入ってるけど、あれって取りにくかった記憶。でもぬいぐるみが好きなミツキはちょっとほしい、というわけですね。

 で、それをマナミが見ちゃったってことは、たぶん次は……


「ふふーん、さぁカズヤ、ここは分かってるよね?」

「はいはい分かってましたよ、ミツキのためにちゃんととってきますよ」

「あ、私は、その」

「ここは旦那に花を持たせましょうね」


 ま、こうなるんだよね。この強引さがマナミらしいところ。

 ただ問題は二人も居るので


「いや待った、それなら勝負しようぜ!」

「はぁ、言うと思った。つまりあれか? ボクとトースケ、それとカズヤのうち、誰が先にとれるかってことか?」

「おうよ!」

「できたらぼくは集中して取りたいんだけど」

「それじゃつまらないだろ?」


 この馬鹿、キャッチャーというのはそんな簡単な物じゃないんだぞ。

 特にこの手のデカいぬいぐるみは、取るために微妙に動かしたり、思い切って押したりとか、いろいろと手順が必要。順番で適当にやったら取れなくなっちゃう。

 だけど引く気は無いし、ほんと厄介。





「まずはオレからな、行くぜ!」

「いい? 服を着たパンダの方よ、水着を着たクマの方じゃないから」

「私は、別にクマさんでも」

「クマの方はこないだカズヤに取ってもらったでしょ。だからパンダよ!」

「……なぁカズヤ、本当にこれ、取ったのか? ボクが見る限り、ちょっと取れるか怪しいサイズなんだけど」

「あ、あぁ、取ったよ。確かけっこう使ったような気がするけど」


 コータが無理そうに思うのもしょうがないよね。だってあのぬいぐるみ、全高が60センチくらいあるもんね。

 今思うと、よくとったな〝ぼく〟。半ば意地で取った気もするけど、まぁ忘れよう。


「だー、動かねー」

「動かない以前に、掴むどころか掠ってもいないわよ。次はコータの番よ」

「分かった。しかし1回200円か、ちょっと高いな」


 そう言って今度はコータが挑むけど、あちゃぁ……。


「掴んだのに倒れた……」

「あんた、アームの強度知ってる? 端っこ掴む程度じゃ持ち上がるわけないじゃない」


 ほんとそれ。こういうのはしっかり首に食い込ませるとか、タグに引っ掛けるなど、ちょっとうまくやる必要がある。端っこ掴んでも少し動く程度だし、それやっちゃうと何度も繰り返す羽目になるわけで。


「これ、無理じゃない、かな?」

「ミツキの言う通り、これじゃ数万円コースね。いっそ店員に直してもらう?」

「んー……ん? いや、ちょっとやってみる」


 マナミの言う通り、店員さんに再配置してもらうのも考えたけど、これはもしかして。

 ボタンを操作し、倒れたパンダの服の隙間にアームを刺し込む。すると


「あ、いけるわこれ」

「うそ!? なんで落ちないの?」

「すごい」


 なんとなくアームを服の隙間に突っ込めば、案外落ちないんじゃないかなって思ったら、見事に成功。

 いやぁさすがわたし、これも戦闘時に最善な行動がとれるよう、日々状況判断能力を鍛えてきた成果ですね! なんか違う気もするけど。


 そして見事に一回でパンダをゲット、当然ミツキにプレゼントします。

 うん、恐縮しながらもすっごい喜んでくれましたね、よしよし。


 しっかし過去とは全然違う流れになってるけど、大丈夫かなこれ。

 多少の変化は大丈夫だとは思うけど、このパンダは大きな変化な気がしてちょっと不安。だって存在が大きいもん!

ど王でもいい補足:

 キャッチャーは二本のアームで上から掴む定番タイプ


なお、過去のターンは次回で終了の予定です

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