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150話 神聖王国はやっぱり酷い

今回はミツキの視点です

それと少し長いです

「難しい、なぁ……」

「あれ? ミツキ、こんなところでなにやってんの?」

「あ、マナミちゃん。今、宰相さんに言われた〝錬成〟をしているの」

「あぁ、ウチら全員に出した課題かぁ。ウチはすぐできたけど、ミツキは苦戦してるわね」

「うん……、うまくいかない」


 異世界に来て2週間くらいかな、あっという間、だね。

 日本に帰りたいけど、神様が私たちは帰れないって言っていたから、どうにもできない。


 なので、神様に言われた通り世界を見ているつもりだけど、特別何かを感じたりしない。こんなので、何か変わるの?


「どうしたのさ、考えこんじゃって」

「その、えっと」

「あぁ前に言ってた神様の言葉ね。あまり気にしない方が良いんじゃない? 神様じゃない、悪い悪魔かもしれないよ?」

「やめてよマナミちゃん、そんな怖いこと」

「ごめんごめん」


 笑いながら私の頭をポンポンするけど、ちょっと恥ずかしいからやめてもらいたいな。


 あの日のことはみんなにも話したけど、意見が割れたよね。

 マナミちゃんは『嘘半分で適当に流せばいい』って言ってくれた。コータくんは『信用しない方がいい』って言って、すごく心配してきた。トースケくんは羨ましがってたかな。





「そんなことよりミツキ、早くしないと馬車に乗り遅れるよ」

「今日もいかないとダメ、なのかな」

「ダメだろうねぇ。ウチらはこの城に厄介になってるから、何かをして返さないとダメだろうし。たとえそれが魔物を倒すことであってもね」

「だよ、ね……」


 私たち、ほぼ毎日魔物と戦っている。

 怖くて逃げたいけど、それは許してもらえない。どうしてこんな目に合わないといけないの?


「まぁミツキ、くよくよしてるだけじゃ何も変わらないよ」

「分かっている、けど……」

「なかなか重傷だねぇ。あれ? ミツキ、そのネックレスって何?」


 話を切り替えるように、マナミちゃんは私がつけているネックレスに目をやりながら聞いてきた。

 そういえば、マナミちゃんが見るのは初めてだった、かな?


「これはね、昔貰ったものを、少し綺麗にしたの」

「ずいぶん大切にしてるのね。もしかしてコータに貰ったの?」

「ちがうよ」

「ならって、あぁそういうことね。だとしたらそれ、コータには見せないようにしておきなさいよ。また嫉妬するから」


 マナミちゃんは少し呆れ顔だけど、察してくれたみたい。

 でも嫉妬、するんだ……。


「そう、だね」

「それかコータがくれた物をつけたら良いんじゃない? 今のミツキにはそっちの方が似合うと思うよ」

「考えておく、ね」


 別にコータくんが嫌いなわけじゃない。

 だけど、コータくんはあくまで幼馴染、それ以上にはならない、なりたくない。

 なのに、どうして皆わかってくれないのかな……。





 いつも通り馬車の乗車口まで来たけど、どういうこと、なの?


「おい爺さん、どういうことだよ! なんで急に他国に行かなくちゃいけねーんだよ!」

「トースケが言うように、ボクも納得できない。宰相さん、理由を話してもらえませんか?」


 二人以外にも宰相さんに詰め寄っている。

 でも、そうだよね、突然すぎるよね。いつもみたいに、街の周辺の魔物を倒すだけじゃないとか……。


「簡単なことです。皆様には次の段階へ進んでいただくだけです。安心してください、他国と言っても我々と交友のある国です、危険はありません。実戦で活躍している勇者も同行します。ですが」

「ですが、何? 何か隠してるならさっさと言いなさいよ!」

「ちょっとマナミちゃん、そんなに詰め寄ったら……」

「なに、この周辺と違い『魔物を使役する者』が居るかもしれないので、注意してもらえればと」

「使役って、それってまさか!?」

「えぇ〝人間〟ですよ」


 そんな、それじゃ私たち、人殺しをしないとダメ、なの?

 魔物と戦うのも怖いのに、人も殺さなくちゃいけないなんて、酷すぎるよ……。


「それでは皆様、時間が惜しいのですぐに出発してください」

「ま、まて! 話は終わって、な、なんなんだこいつら、放しやがれ!」

「トースケ、落ち着け! 彼らは城の騎士たちだ、歯向かったら問題になる。ここは大人しく馬車に乗り込もう」


 宰相さんが去る直前、騎士の人たちが私たちを威圧するように押してきたから、トースケ君を含めた数人が少し暴れちゃった。

 そのせいかな、さらに騎士さんたちはきつくあたるようになって……、もう嫌だよ、帰りたいよ。


「ミツキ、安心しな、ウチが付いている。だからまずはその涙を拭いて、馬車に乗り込もうね」

「ありがとう、マナミちゃん」


 マナミちゃんのおかげで少し落ち着けた。

 そのまま私はマナミちゃんに手を引かれながら馬車に乗り込んだけれど、結構狭い。それに座り心地も悪い。


 そういえば、さっき宰相さんが、途中で転移というものをするとか言っていた、ね。なにをするんだろう? だけど、ほぼ2日は馬車に乗ったままになるとも言われた。

 私たち、本当に歓迎されているの、かな? そうは思えなくなってきた……。





 馬車に揺られてどのくらい経ったのかな、お尻が痛いし、気持ち悪い。

 だけどもう少しで到着……


「敵襲、敵襲ー! 各自、戦闘準備ー!」


 誰かがが急に大きな声を出したので、みんなびっくりした。

 でも敵って、魔物なの? 戦わないといけないの?


「何が起こったんだ? 騎士さん、ボクたちに説明してくれないか?」

「あ、あぁ勇者様、驚かせてすみません。今しがた斥候が戻ってきたのですが、どうやら前方1キロくらいのところに魔物の群れがあるようです」

「魔物の群れ? だけれど今敵襲って」

「えぇ、群れですが指揮官が居ます。そして我々を徐々に包囲しているのと、想定外の魔物までいます……」


 コータくんの問いかけに、騎士さんがだんだん青くなっている。

 想定外のこと、だよね? 敵が多くて危ないんだよね? なのに、なんで逃げないの? どうして戦おうとするの?


「ミツキ、落ち着いて。騎士さん、何で留まっているのか説明して! ウチ等にもわかりやすく、専門用語も無し、憶測も無しで!」

「は、はい!」


 マナミちゃんの一言がよほどだったのか、騎士さんがビシッとした。マナミちゃんは強いな、私には無理……。


「確実なのは、魔物使いが10人以上います。そしてエンシェント級と言われる魔物の頂点に君臨する化け物が1万体以上、こちらは推測ですが確認されました」

「なぁ、そのエンシェント級ってのは、オレ達が倒していた魔物とどのくらい差があるんだ?」

「申し上げにくいのですが、皆様の戦っていた魔物は最下級、エンシェント級はその数億倍の力を持ってます……」

「ま、マジよ……」


 騎士さんの言葉で、私だけじゃなく皆青くなりだした。

 だって無理でしょ、そんな化け物、相手できないでしょ。


「なら、何で逃げないんだ? まさか……ボクたちに戦えというのか!?」

「申し上げにくいのですが、その通りです。すでに包囲されつつあるため、逃げるのは困難。となれば、勇者様たちにも戦っていただくしか……」

「くそっ、あの宰相さん、これを見越していたのか」


 コータくんと騎士さんのやり取りで、私たちは絶望するしかなかった。

 だって街周辺の魔物ですら厳しい時があるんだよ? なのに、それよりも強い魔物なんて。





 神様に世界を見なさいって言われたのに、もう見られないのかな……。

 それに、帰りたい、やり直したいって気持ちが強いのに、もうチャンスが無いのかな……。





『そんなことはありませんよ』

「え!?」

「どうしたのミツキ、急に慌てて」

「え? マナミちゃん、今声が」

「大丈夫だって、コータたちが守ってくれるから」

「ちがうの! 神様の声が」

「はいはい、だから安心しなさいって。神様にすがりたいのはわかるけど、神様が助けてくれるわけないからね? 幻聴だよ幻聴」


 そうマナミちゃんが苦笑いするけれど、そう、なのかな?


『違いますよ。私の声はあなたにしか届けていないだけです』


 また声が! でもどうやってお話しすればいいの、かな。みんなは神様を信用していない、から。


『大丈夫です、頭に思い浮かべるだけで会話は可能です』


 そ、そうなんですか?


『そういう力がある、と思ってください。では最初に、突然のことで申し訳ございません。本当は期限となる日まで見守る予定でしたが、このような事態になるとは。それに、危険と判断したので急ぎましたが、少し遅かったようです』


 遅かった、ですか? えっと?


『出発前にお話しできればよかったのですが、命が危険な状況で決断を迫るのは酷ですし』


 神様の声が少し暗いの、かな?

 それに、命が危険な状態……もしかして、私たち、ここで死んじゃうんですか?


『残念ながらそうです。私が直接手を貸せば生き残れますが、申し訳ないことにその義務はないのです』


 少し、冷たいんですね。神様なら助けてくれるかな、と、少し期待したのに。


『そう思われても仕方がありません。我らはあくまで特定の方のみお守りする存在、この世のすべての人とはいかないのです。ですが、あなたは選ばれた存在、とでも言いましょうか、少し事情が異なるのです』


 私だけ、ですか? じゃ、じゃぁ、私が助けてってお願いすれば


『それは無理です。確かにあなたは選ばれましたが、守る存在なのかは別になります。ですが、ただ命を落とさせることもしません。なので、まずは答えを聞く前に、あなたの選ぶ道について少しお話ししましょう』


 わかり、ました。

 あれ? でも、どうしてこんなに会話ができるの、ですか? 時間が無さそうだったのに。


『それは今、周りの時間を制御しているからです。あなたとの会話は、外の時間では0.01秒もかかっていません』


 す、すごい、です。

 神様は時間も操ることができる、ですか?


『そうです。そして、あなたに与える試練にも関係しています。この試練は希望でもありますが、同時に破滅かもしれません。もしも希望だった場合、あなただけでなく、ここに居る者の多くが救われます』


 みんなが助かる……。

 なら、うん、その試練、受けます!


『あら、また即断ですか。でもその気持ち、好きですよ。では説明する順番が逆になりましたが、あなたには〝過去〟へ行ってもらいます』


 過去、ですか? そこでやり直せばいいだけ?


『それはわかりません。過去を変えた場合、それが未来に繋がるかもしれません。変えずとも、別の道が見つかるかもしれません。過去が良ければ、あなたは過去の住民となるかもしれません。ですが、過去を変えることに失敗、もしくは絶望した場合、ここへ戻ってくるかもしれません』


 も、もしも過去の住民になったら、みんなはどうなるの、ですか?


『それもわかりません。もしかすれば、彼らは召喚されなかったことになるかもしれません。召喚されたままかもしれません。簡単に言えば、これから起こることは全て未確定というわけです』


 でも、助かるかもしれない、なら、私は……やります!


『わかりました。それでは……我、光の精霊神の力により、汝ミツキを過去へとばす。汝、過去にて希望を掴み取りなさい!』


 そう神様、いえ、光の精霊神様が叫び、うっすらそのお姿が見えたかと思ったら、私の意識はもうろうとしてきて……。

ベタな展開ですけど、過去に飛びます


それと、ミツキは今のところ普通の気弱な女学生枠

今のところは、ですけど

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