15話 捕まった先に待つものは・・・1
注意:今回の話には少し残酷な表現が含まれてます。
う~ん、頭がガンガンする。えっと何があったんだっけ。あーそっか、あの男に薬盛られて意識失っていたのか。まいったなぁ。
まずは自分の状態を確認。うん、外傷とか無いね。服は脱がそうと引っ張られてたのかな、皺だらけだわ。まぁ服にはポーチ同様に使用者登録かけてあるから、見ず知らずの人が無理やり脱がすとか不可能だけどね!
それにお母様のお守りネックレスがあるからさらに安心。意識失うと体の表面には防御結界が自動発動する機能が付いているので傷とは無縁、完璧だね。
って、連れ去らわれてる時点で全然完璧じゃないじゃない、わたしのバカ。
自分のポカはいったん忘れて周囲を確認。
んー、ここはどこかの地下牢なのかな? 前面は鉄格子で周囲は魔力を封じる煉瓦を使ってるみたい。おそらく魔法使いを弱体化させるためなんだろうけど、わたしの魔力量なら関係ないわ。
こんな牢屋にいつまでも居てもしょうがないし、アリサを探してさくっと脱出しましょう。待っていればおそらくお父様かお母様が転移して迎えに来てくれるけど、それは恥ずかしい。自力で解決できてこそあの二人の娘ってものです。
まずは周囲の情報収集をしておきますか。
それじゃ偵察に優れた魔物を大量召喚し……って、あぁぁぁぁぁぁぁ、やってしまった。ポーチはアリサに渡したままじゃん、召喚するための術札が無いじゃん。結構マズイ。
むぅ、服の裏にいつも忍ばせている非常時の術札を集めたけど、10枚だけ……これは厳しいわ。
わたしって才能がないのか、尻尾の毛を使っても陣の強化がぜんぜんできないからなぁ。そのせいで術札がないとほとんどの術が使えない困った体質だし。
かといって体術に長けた種族でもないから、どうしても術メインで戦うことになるわけだし。ほんとわたしって術札が無いと一気に戦力ダウン、泣けてくるわ。
もしもこんな状態で強敵との戦闘があったらほんとやばい。強い敵がいませんようにってとりあえず祈っておこう。
しかも術札の枚数を考えると、偵察のためだけに召喚術を使うのは無理だね。術札が大量にあれば偵察用の魔物を大量召還し、そこからローラー作戦しちゃえばアリサの発見も脱出もすぐなんだけどなぁ。
しょうがない、今の状態でこの牢屋からどうやって脱出するかを考えよう。
んー、いつもなら術式使って鉄格子を壊して脱出するけど、今は術札の枚数が少ないからダメ。術式を使わなくても魔力を込めて思いっきり殴れば壊せそうだけど、なにが起こるか分からないからこれもダメ。
術が使えない今、騒ぎになって敵が物量で攻めてくる状況に陥ったら結構危ない。そういった危険を避けるとなると、敵に発見されずに静かに行動する方法が必要となる。
となると鍵を使うのが一番かな。鍵を持ってそうな兵士をおびき出し、倒してその鍵を奪い取る。そして鍵を使い脱出、うん、それで行こう。
あとはどんな敵が居るかわからないから、やっぱり防具が必要ね。ここは術札を1枚使って魔衣を顕現させますか。
それじゃ術式展開っと。術が発動すると足元には魔法陣が形成され、体は光の玉に包まれていく。やがて光は収束し、巫女装束へと変化する。これはもう完全に変身魔法少女だね! 巫女だけど。
ほんと便利だよねぇ魔衣って。鎧とか買わなくても術で防具を作ることができ、おまけに魔力が高ければとんでもない防御力になる。逆に魔力が低ければヨワヨワになる欠点もあるけど。
そういえば衣服の状態なのが魔衣、鎧の状態になるのが魔鎧、盾だけなのが魔盾って言ったっけ。防御だけ見れば魔衣よりも他の方が固いけど、可愛くないんだよね。だったら可愛さの方をとるわ!
それにこのミニタイプの袴とニーハイが作り出す絶対領域という最強の武器が!
……まぁ子供なので色気も何も無いのはわかってるけど。いろいろと足りないですね、いろいろと。
さて、変身じゃなくって防具を用意したところで次は光学迷彩の術式を展開っと。ここで術札2枚目使うのはしょうがない。誰もいないと思わせて部屋に誘い込む、そして入ってきた兵士に悟られずにさくっと倒して鍵を奪う。奪ったらそのまま隠れた状態で先に進むためだし。
だけどこの術、あくまで見た目しかごまかせないから注意しないと。魔力探知や嗅覚が優れたや奴には効果ないもんね。
よっし準備はできた。あとは兵士が早く来てくれればいいけど、来なければ騒ごうかな。でも騒ぐってどういうのかな? ギャーギャーワーワーっていったいどう言う……。
う~ん、騒ぐってほんとどうやればいいのかな。
おや? 何か足音が聞こえてくるような。ってことは兵士が見回りに来たってことかな? 騒ぎ方が思いつかず頭を抱えてたから、向こうから来てくれるなら大歓迎。
さぁさぁ中に誰もいないよ、早く確認のため入ってきなさい。
「しかしボスのやつ、あんなに捕まえても俺たちに一匹もくれないとか冷てーなぁ。貴族様に売りつけるって言ってもよー、ちょっとくらい味見をしてもいいじゃないか」
「味見ってお前、あんなガキがいいのかよ。そりゃ今回のは見てくれはいい奴ばかりだが、まだガキだろ」
「ばっかお前、ガキなのが良いんだろ」
うわぁ、案の定ゲスイこと言ってるよ。
見たところ神聖王国の騎士っぽいけど、何? 神聖王国ってロリコンばかりなの? 引くわぁ。
ただ、これで分かったわ、こいつらはわたしの敵で間違いない。殺しちゃってもいいよね。
「はいはい、そうですかって、おい、あの狐のガキが牢屋に居ねーぞ! まさか逃げたしたんじゃないのか!?」
「な、そんな馬鹿な!? 確かに中に入れて鍵をかけたぞ! 脱がそうとした俺が言うんだから間違いない!」
なんで脱がそうとしたことをアピールしてるんですか……。神聖王国の騎士ってバカなの? アホなの? はぁ、こんな奴らに捕まったとかほんと情けないわ。
「とりあえず中を確認するぞ。お前は念のため入口を塞いでおけ、俺だけが入る」
「おう! へっへっへ、出てきたら今度こそ脱がしてやるぜ!」
だからさぁ……。もういいや、つっこまないでおこう。
んー、鍵を開けるガチャガチャ音が思ったより響くなぁ。対策考えた方がいいかも。ガコンって音がしたから、開いたのかな? うわ、ギギギって開ける音もかなり響くわ。
「おかしいな、どこにも居ないぞ。ベッドがまだ暖かいから少し前まで居たのは確かだが」
まずはこいつから仕留めましょう。本当は術で一発ドカンしたいけど、今は術札に余裕がないから我慢我慢。狙うは心臓の位置、魔力を込めて思いっきり~掌打!
「ぐはっ、何、が、おこ……」
うん、一発だね。
これは掌打に合わせて魔力を相手に思いっきりぶつけるという単純な技。打った瞬間にグシュっていう肉がつぶれた音がしたけど気にしない。体貫通するように魔力を込めたから、間違いなく心臓はつぶれたね。
「な、何が起こったんだよ!? おい! 何か言えよ!」
もう一匹は入り口で慌ててるか。そりゃ部屋に入った男がグシュって音がした後にうつぶせに倒れ、そのまま動かなくなれば慌てるよね。その分隙だらけで狙いやすいけど。
それじゃ魔力を込めてー、せーの、ていっ!
「な、お、がはっ」
はい、こっちも処理完了。でもちょっと失敗しちゃった。心臓の中心からちょっとズレたし、これは要練習ね。
さてさて鍵はどこかな~。腰のあたりに、あったあった。ジャラジャラっといっぱいあるなぁ、まぁ全部持っていくか。
しっかし、う~ん、やっぱりこいつら殺しても何も感じないわ。ほんと敵に対しては無関心になるなぁわたしって。思い出す限り前世でもここまでじゃなかったと思うけど、う~ん。
そういえばお母様もこんな感じだっけ。
わたしたちにはすごく優しいけど、敵とか他国の人には冷たかったり無関心になる。わたしたちには絶対しない態度だから、その差がよりはっきりしちゃうんだよね。
両極端なのは昔に何かあったのが原因って聞いたけど、いったい何があったんだろ。いつか教えてくれるって言ってたけど、いつなのかな? まぁいいや。
でもそっか、お母様がアリサに対し初対面から優しかったってことは、絶対に敵にはならないってことだね。
お母様って将来敵になりそうな人とか、利用するだけしたら去っていくような人まで見抜いちゃうからなぁ。よく当たる勘っていうけど、ほとんど未来予知だよねっていうレベルだし。わたしもそのレベルになれるかな?
なんかいろいろ余計なこと考えてたけど、頭を切り替えてアリサを探しましょー。無事だといいんだけど……
少しシリアスっぽい話が続きます。
完全にシリアスにはしないので、あくまで『っぽい』です。
それと今更ですが、特に記載が無ければ改稿内容は誤字修正だけです。
話の流れを変えたり、やり取りを増減した場合は次話の頭に一言書きますので、無ければ気にしないでいただければと。