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143話 両親の昔話、みたいな?

少し長いです

 お父様の新作ケーキを食べながらお勉強の続き。

 はふぅ、ほんとケーキが最高すぎます! わたしの採ってきた白銀の桜のサクランボを使ったミルクレープとか、もうね、たまりません!

 クリームの部分はサクランボペーストだし、クレープ生地にもサクランボが練りこまれてて、ほんと最高です!


「さてさて、それじゃ再開するわね。4つの世界の統合まではよかったけど、実は問題があったの」

「問題ですか? みんな仲が悪くて喧嘩しちゃうとか?」

「それもあるにはあるのだけど、簡単に言ってしまうと、気候も環境も全く違う異世界が一つの惑星上に存在しているような状態なの」

「ほえー。とゆーことは、その境目って変な状態になるんじゃ?」

「その通りです。なので、互いの世界を隔離する結界とはまた違う力が働いているのです」


 そう言って今度はお父様が亜空間を開き、別の地図を出す。ほんと便利そうでいいなぁ。


「さてユキさん、これが私たちのよく知っている世界地図です。見ての通り、本来の世界地図の4分の1しかありません」

「ほんとだぁ。あれ? それじゃぁこの端っこって、いったいどうなっているんですか?」


 世界地図の上下左右を見て思ったのが、4分の1なら他の世界の大陸とかが見えてるんじゃ、ってこと。

 だってこの星も球体だもん、平面だったら端からどこかに落ちるとかありそうだけど。


「面白いことに元の世界が続きます。例えば地図の右側を入り口、左側を出口と考えた場合、出口から他の世界に飛ぶのではなく、なぜか入り口に戻されるのです。風景だけでなく、水や空気、魔力なんかもですね」

「な、なんかそれ、すごすぎるというか、ちょっと怖いです。人ができる範疇を軽く超えてますし」

「その通りですね。ですがそれをやったのがあの方たちなのです。私たちとは次元の違う力を持っているので、神みたいな存在というわけですね」


 言われてすごくなっとく。

 何かを隔離したり、空間内を堂々巡りさせたりすることは、わたしでもできる。だけど隔離されていることが分からない、完全な隔離を構築するなんて……。ほんとすっごいなぁ。


「あれ? でもでも、メイとコレを使ってお話しとかしているんですけど、どうしてなんです?」


 そう言って魔道具を掲げる。お父様が言うには魔力とかも隔離なのに、なんで大丈夫なんだろ?


「それは精霊神の力を込めた精霊石を使っているからよ。精霊神も同じようなことができ、そして破ることもできるの。だから世界が隔離されていても使えちゃうの」

「とゆーことは、市販品とかじゃ無理なんですか?」

「その通りよ。それだけ精霊神はすごいよ~」


 そうお母様が言ったけど、うん、わたしは見た、半顕現状態の精霊神たちがドヤァってしているのを!

 でもほんと、あなたたちってすごいねぇ。綺麗で可愛くて優しくて強い、ほんと素晴らしいです!


「他にもいくつか方法があって、その一つが転移門なの。転移門は異なる異世界を繋げるから、隔離された世界同士も行き来ができるの」

「ただし現行の転移門では魔力の消費、空間の影響など、看過できない課題が多くあるので、頻繁に転移することはできないのです。維持できる時間も短いので、たまに相互のやり取り、まぁ文通みたいなことをしている程度ですね」

「あー、だからメイ、帰りたくない感じだったのかぁ」


 転移門があるなら許可さえもらえばいいじゃんって思ってたけど、そういうことね。


「それをエリュシオンでは国交樹立に向け、いつでも転移可能な転移門を開発しようとしているのです。転移門に関しては彼らの方が上ですしね」

「そのきっかけを作ったのがユキちゃんってことなの。ほんと私たちの娘は良い事を招いてくれる素晴らしい子だわぁ」


 そう言うなり、再度お母様がぎゅーっとする。あーもうだめ、お母様から離れたくないわ。今日はずっとくっついていよう。





「そういえば、メイのお父さんとお母さんって、お父様とお母様の知り合いなんですか? なんかもともと知っているような感じが」

「そうですね、同じ師から学んでいたこともあり、ベラルゴ君は私のライバルみたいな存在ですね」

「お父様のライバル?」


 おや? 珍しくお父様がちょっと恥ずかしがってる。何か言いにくいことでもあるのかな?


「ふふっ、実はタツミさんとベラルゴ君はね、私を賭けて戦ったことがあるんですよ」

「ふぇ? それってつまり、勝った方がお母様の旦那さんになる的な?」

「そうよ~。その結果、タツミさんが勝ったのだけどね。あの時のタツミさん、なかなかすごかったのよ~」

「サユリさん、あまり言わないでください。ほら、ユキさんも、ケーキ追加しますから」

「おぉー更に新作のケーキが!」


 あっ、いかん、ケーキに心を奪われて、お父様への追求がそれちゃった。


「もぐもぐ。ん? でもでも、それだとお母様って、お父様とメイのお父さん、どっちでもよかった……はなさそうですね」

「あら、どうしてそう思ったのかしら?」

「だってわたし、お父様とお母様の娘ですもん。お父様以外がお父様になるとか、絶対に嫌です!」

「それはそれで少し照れますね」

「でもユキちゃんらしくていいわね。それに当たっているわよ、お母さんもタツミさん以外を旦那さんにする気は無かったし、これからも無いからね」


 そう言って二人になでなでされる。ふにゃぁ、なでなでパラダイスだわぁ。

 まぁ予想はしてたけど、二人は結婚する前からラブラブみたいでちょっと嬉しいです!





「それに、ベラルゴ君が挑んだのは、タツミさんの背中を押すためだったのよ」

「あの頃の私は悩んでいましたからね」

「なににですか~?」

「情けないことですが、召喚されたよそ者がサユリさんと一緒に居て良いのか、ということです。当時は召喚者の扱いがかなり酷いのもありましたから」

「人として見ていない者が多かったわね。私たちはそう思わなくとも、世間はホント酷かったわ」


 そういうお母様から、ちょっとだけ冷たい気配がした。

 たぶん、お父様に対する世間の対応がすっごい嫌な感じだったんだろうね。いまだに根に持ってそうだもの。


「そんなある日、ベラルゴ君がタツミさんに挑んじゃったの。しびれを切らしたって感じかしら?」

「ですね。私が少しウジウジしていたのを見かねて、荒療治とでも言いましょうか、発破をかけられたのです」


 そう言ってお父様が苦笑いしているわ。

 とゆーかお父様がウジウジとか、ちょっと想像できないなぁ。今とは真逆って感じだし。


「ベラルゴ君は姉さん一筋だったから、冷静に考えれば真実でないのは分かったのだけどね」

「私も未熟だったというわけです。おかげで今はこうしているわけですが」

「お父様とお母様ってずっとラブラブですもんね!」


 うん、二人とも少し照れましたね。

 でも事実、お父様とお母様ってちょくちょく二人でデートしてるもんねぇ。何千年、何万かな? ずっと熱々なのは良いことです。


「ま、まぁ、そんな気遣いをするくらい、ベラルゴ君とは仲が良い関係なのです。ライバルであり友でもあるって感じですね」

「だからこうして遠くに住んでいても、定期的に連絡を取れているの。当然レオパルド君とかも仲が良いから、本当は国交もすぐに結べるの。だけれど、あの国にも事情があってね」

「レグラスと異なり、少し厄介な同盟国がいるそうです。先代からの同盟国らしいので、強硬策にも出られないとも言っていましたね」


 なるほど、メイの国はいろいろと大変なんだね。うちもメンドクサイ国に絡まれてるけど。

 あれ? そういえば


「はいっ、質問!」


 いつもの癖でビシッと手を挙げるわたし。ほんと治んないなぁこの癖。


「はいユキちゃん、どーぞ」

「えっと、どうして今は別の異世界に住むみたいな状況なんですか?」

「それはね、私の姉、つまりメイちゃんのお母さんが原因なの」

「あ、やっぱりメイのお母さんってお母様の家族なんですね。そうじゃないかなと予想はしてたけど」


 でもすごーくなっとく。外見といい術装といい、わたしとメイがそっくりなのは当たり前ですね。だって従姉妹ってことなんだから。


「そうよ~。姉さんは私とほぼ同じ存在なのだけど、周りが少し心配するくらいおっとりしていてね」

「おっとり? なんかメイとは真逆っぽいなぁ」

「たぶんメイちゃんはお父さんの性格を受け継ぎ、体や魔力、感性なんかはお母さん譲りじゃないかしら」


 なるほどなぁ。でもおっとりしたメイも……ダメだ、想像できん。短期間でメイに対する印象や性格が完全に固定されてるわ。


「それで原因って、何かしちゃったんですか?」

「それがねぇ、たまたま開いていた次元の狭間に落っこちちゃったのよ」

「はい? 落ちるって、落とし穴みたいに?」

「そうなの」


 お母様がすっごい苦笑いしてる。どうやらおっとりどころじゃない、天然キャラっぽい気がしてきたわ。


「なにかの影響で現れた狭間を見て『あらあら~何か面白いものがありますね~』って言って、無警戒で傍によって、そのまま落ちちゃったの」

「……え、えっと、その」

「安心してユキちゃん、お母さんも当時同じように理解に苦しんだから」


 天然じゃない、超天然キャラかいな。それがお母様のお姉さん……なるほど、お母様がエロカッコいいのは、天然ボケ担当のお姉さんを反面教師にしていたからですね!





「それでまぁ姉さんが落ちた後、ベラルゴ君が血相を変えながら追う形で飛び込んだの。ベラルゴ君と姉さんは交際していたからね」

「さすがに私たちも飛び込むことはできませんでした。それに、二人ならたぶん大丈夫だろうという予感もありましたし」

「二人とも、私たちと同程度の力を持っているからね。実際、数年後に向こうから連絡が来たのよ。ただねぇ……」


 おっと、またお母様が苦笑いしてますよ。これはまーた何かしでかしたんですが伯母様!


「姉さん、当時のエリュシオン王を無自覚に侮辱しちゃったようで、監禁され死刑になりそうになったらしく、それをベラルゴ君が助けに行ったそうなの」


 ちょっと伯母様、マジで何やってるんですか!?

 あれですか、天然のトラブルメーカですか?


「まぁ結果ベラルゴ君は姉さんを救出したのだけれど、愛する者のために戦ったベラルゴ君を民たちが心酔しちゃったの。対する当時のエリュシオン王は悪評が多かったらしく、その結果あれよあれよと王位争奪戦になっちゃったらしいの」

「そしてベラルゴ君が勝者となり、現在のエリュシオン王となっているわけです」

「ほえー、なんていうか、その、伯母様ヤバいですね!」

「やっぱりそう思っちゃうわよねぇ……」


 伯母様がすべて原因とか、ちょっとね、笑っていいのかすごく難しいです。お父様とお母様もすっごい苦笑いだしね……。

 たぶん良い人なんだろうけど、ほんとヤバい才能の持ち主ですねぇ。

伯母はおっとりのほほんトラブルメイカー

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