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137話 姉より優れた妹もいるものです

 見ず知らずの少女が抱きついたと思ったら、いきなりおねーちゃん呼びとか、状況が全く分かりません。


「えーっと、その〝おねーちゃん〟ってどういうことなんですか? わたしたち、会ったことないと思うんですけど」

「ぶー! あたしは妹なんだから、もっとフランクに話してくれないと嫌! でもそうだね、実際に会うのは今日が初めてだよ!」

「つまり貴女は、お嬢様のことをどこかで知った追っかけみたいなものですか?」

「ちっがーう! あたしとおねーちゃんは姉妹なの! 家族なの!」

「「えっ!?」


 ちょっとまって、ほんとまって、わたしに妹がいるとか聞いたことが無いんだけど。

 そもそも居たらお母様が教えてくれるはずだし……。もしかして狂言? 思い込み? 妄想とかかな?


「でも、わたしに妹なんて居な」

「妹だよ! 居るんだよ!」

「あ、はい。とりあえず放してくれま、いや、放してちょーだい。さすがに抱きつかれたままだとアリサが暴走しちゃうから」

「しょうがないなぁ、おねーちゃんのためだからね、その人間のためじゃないんだからね!」


 やれやれ、ようやく解放されたわ。

 とゆーか完全にセクハラだよ、いろんなとこ触りすぎです。なのに嫌悪感が無いんだけど、どうしちゃったんだろわたし。





「えっと、とりあえず自己紹介してくれる? わたしの名前は」

「知ってるよ、ユキおねーちゃんでしょ! あたしメイっていうの!」

「メイ、ね。それで、メイの両親って」

「あたしのママはヨシノ! パパはベラルゴだよ!」


 ……誰? 聞いたことないんですけど。

 だけどうちの隠し子じゃないのはわかって一安心。居るわけないとは思ってるけど、妹を名乗る人物が急に現れたら、少しだけ不安になるのです。


「なるなる。それで、メイはどうしてここに来たの? それと倒した人たちは何?」

「ここに来たのはおねーちゃんに会うためだよ! あたしってね、未来予知ができるの! だけど誰に会いたいとか、逆に会わないようにするとか、あたしに都合がいい未来しか見ることができないの」

「限定的な未来視、ってやつかぁ。わたしの危機察知と似たようなものだけど、わたしよりも優れてそうね」

「いいでしょ!」


 正直、ちょっとだけ羨ましい。

 わたしの危機察知って任意に発動できないから、あまり役に立ってくれないし。


「それとあそこのミジンコたちは、あたしの邪魔をしたからぶっ飛ばした!」

「ミジンコってまた過激な……わたしも人のこと言えないけど。んで、その邪魔って?」

「なんかねー、ここにある桜の木を一本もっていこうとしてたの。でもね、あたしは今の光景でおねーちゃんと会いたかったから、『持っていくのヤメテ』って言ったんだけど、聞いてくれなかったの。だからぶっ飛ばした!」


 お、おぅ、かなーり過激だぞこの子。

 一本くらいなら数年で元通りなのに、あくまで自分の、それも未来視した光景を優先したってことね。


 でもそうなると、この人たちは悪者じゃない、普通の冒険者ってことか。


「ねぇアリサ、悪いけど周りの人たちを回復してくれる?」

「かまいませんが、それですとお嬢さまが危険に」

「あたしがおねーちゃんと戦うわけないじゃん! ほんと人間ってバカだねー。どうしてこんなミジンコを傍に置いてるの?」

「どうしてって、アリサが好きだから? 特に変なことじゃ、って、アリサ、顔が真っ赤って、あー、うん、そういうことね」


 相変わらずアリサ、わたしがさらっと好きとか言っちゃうと照れて、ほんとかわいいですね!

 ただ同時に、メイがすっごく不機嫌になって、今にも戦いが始まりそうな気配。いろいろと危ない子だなぁ。


「とりあえずアリサ、お願いね! んじゃメイ、せっかくだからもっと桜がきれいなところでお話ししよーか」

「おねーちゃんがそう言うならしょうがないなぁ。命拾いしたね、人間」

「はいはい威嚇しないの」


 このままだとアリサがマジで危ないので、ちょっと強引にメイの手を引っ張って移動。

 とゆーか、明らかにアリサも反撃しそうな雰囲気だったし……。なんか精神的に疲れそうな予感がひしひし。





 アリサから少し距離を置いたところにレジャーシートを敷き、そこに座る。もちろん防寒のために空間制御用魔道具を全開発動させて! お菓子とかも一緒にだしておこう。


「えーっと、それでメイに聞きたいんだけど、ガーディアンの工場ってメイが作ったの?」

「がーでぃあん? なにそれー、あたし知らなーい」


 見る限り、嘘ついてる感じはない。つまりガーディアンとは無関係、たまたま、というかわたしがこのダンジョンに来るのを未来視したから来ただけか。


「あたしからも質問! なんでおねーちゃん、そんなに小さいの?」

「げふっ、わ、わたしが思いっきり気にしてることを」


 割り切ってるけど、それでも言われると気にするのです。


「だってあたしよりもだいぶ小さいじゃん? どうしてなのかなーって」

「身長が低いのは、今のわたしって魔力のほとんどを魔石の修復に充ててるからだよ」

「ふーん、それってあの人間に魔石を分けたから?」

「そこまでわかっちゃうの? でもそうだよ、アリサにはわたしの魔石の7割くらいかな? あげちゃったよ」


 もっとも、最近の鈍化は3年前に無茶したせいで破損した部分の影響の方が大きいけど。思ってた以上に治らないものだねぇ。





「へー。つまりおねーちゃんにとって、あの人間はそこまでするほど大事ってことなんだね」

「かな? ちゃんとしたお友達って、アリサが初めてだったからよけいにね」


 友達はいるにはいたけど、それは精霊だったり、お弟子さんたちの子供だったり、王家に連なる人など、うちの環境が起因の友達ばかりだった。

 だけどアリサは違う。あの日たまたま会って、わたしから仲良くしようとして、いろいろあって、そして今では専属メイドになった子。ほんと特別なのです。


「そっかー。それじゃあの人間は殺さないでおくね!」

「殺すって、物騒だなぁ。そういえばメイって種族何になるの? 見たところ只人族っぽいんだけど」


 髪はわたしに近い金色だけど、獣耳も尻尾も無いんだよね。もしかして隠してる?


「お、その感じ、正解だよ!」

「あぅ、初対面の子にすらバレバレだったよ……」

「その困ったような表情、かーわいい!」

「むぅ、手玉に取られるとか、これじゃどっちが上なんだか」

「むふー。それじゃあたしの真の姿、見せてあげるね!」


 そう言ってメイは偽装解除したけど……マジ?

 正直信じられないし、信じたくない。だって……


「尻尾が、9本……」

「そうだよ、あたしは完全な九尾の狐族! だからね」


 にこやかなんだけど、急にすっごく冷たい感じがしてくる。


「おねーちゃんはあたしに絶対勝てないの。だから敵になろうなんて思わないでね。敵になったら……殺すよ?」


 ヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 この子、わたしよりも圧倒的に強い。それにわたしと違い、冷静冷酷な状態との切り替えが恐ろしいくらい自然。つまりそれは感情を完全に制御してるってこと。


 しかもそれだけじゃない、一瞬のうちに術装を顕現させたようで、切っ先をわたしの喉に当ててる。

 さらに術装もヤバそう。どういうわけかわたしの月華とそっくり。二刀流だし、違うのは色だけかな? 月華は純白だけど、メイの術装は少し赤みがかかった白になっているわ。


「ちなみにあたしの術装、『桜華』っていうの。おねーちゃんも同じような術装なんじゃないかな? 見てみたいから出して! 出してくれないなら……刺すよ?」

「わ、わかったから。だから術装をどけて?」

「嘘つかないでね? ついたら……斬るから」

「な、なんかすっごい怖い子になってるよぉ……」


 解放されたら逃げちゃおうって一瞬考えてたけど、やらない方が正解だね……。

 はぁ、急にできた妹が予想以上の強キャラで、さらにすっごく怖い人で、わたしはちょっとショックです。

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